きゃりーぱみゅぱみゅ、原宿から世界を席巻!? 田向潤監督が明かすMV「PONPONPON」が出来るまで!!

2011.08.22 Mon

 

田向潤 プロフィール:映像ディレクター/グラフィックデザイナー。1980年生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン科を卒業後、E.に入社しグラフィックデザイナーとして2年間在籍。その後Caviarに移籍し、映像ディレクターユニットtamdemとしてミュージックビデオやCMをディレクション。2011年8月よりフリーランス。
今話題急上昇な原宿ファッションレぺゼン・モデル、きゃりーぱみゅぱみゅが先日リリースした待望のデビュー・ミニアルバム「もしもし原宿」。そのリード曲「PONPONPON」のミュージック・ビデオ(MV)の監督に抜擢されたのは、2011年8月に4年半所属したCaviarから卒業し、フリーランスのディレクターとして歩み始めた田向潤氏。capsuleの中田ヤスタカ氏プロデュースによる楽曲はリリースされるや否や国内外で話題になり、iTunes Storeのフィンランドのエレクトロチャートで1位に、MV「PONPONPON」は数週間でYouTube上で200万以上のアクセスを記録する。

海外からも絶賛アクセス中の、ポップで不思議な4分間のめくるめく脳内世界を、田向監督と一緒にレッツトリップ!

■ “カワイイ”の無限大へ挑戦!
きゃりーぱみゅぱみゅ「PONPONPON」 dir: 田向潤|ca: 吉田好伸|l: 上野甲子朗|a: TRYTRY, 増田セバスチャン|sty: 飯島久美子|hm: 松本順|cho: 振付稼業air:man|dancer: 小宮美穂|pr: 高山宏司|prod: TC.MAX
舞台設定は、きゃりーぱみゅぱみゅの部屋。壁にかかる不思議な窓は彼女の脳内ワールドへ通じる扉。窓の向こうに広がる妄想世界と現実がどんどん混ざり合っていく・・・。
――演出の狙いを教えてください。
きゃりーぱみゅぱみゅちゃんのことは、うっすら知ってたんですね。MVのお話をいただいて、ちょっと特殊な方だなって思っていて。元々読者モデルでブログも面白くて、自分プロデュースで人気の出てきた子なので、MVも彼女の魅力を僕なりに引き出すようにやるのがいいんだろうなって思っていました。実際に会ってみると、想像と違ってすごくしっかりした子でした。こちらの企画意図も理解してくれるし、自分がこうしたいっていうのもしっかり持っている。なので、彼女の意向もとりいれつつ、彼女の新しい魅力や元々持っている魅力を伝わるものが作りたいなって。例えば「私、一輪車得意なんです」「じゃ、それやろっか」という具合に。

――MVで活かしていこうと思った彼女の魅力とは?
変顔とかブログにアップしてたり、ファッションにしても、ほどよくズレてる感じがすごくうまくて、こういう子たちは“カワイイ”って言葉を使ってるんだけど、その言葉の概念を少し広げることが出来る人だなって。MVもそういう方向を狙っていて、“カワイイ”の使用範囲を広げるべく、「これカワイイのか?」っていう結構ギリギリのところを攻めています。でも、そこできゃりーちゃんがカワイイと言えば、世の中的にもカワイイって認識されちゃうというようなことをやりたかったんです。ちょっと外にはみ出たカワイイ。なので、もちろんより多くの人に好きって言ってもらいたいなって思って作ったんですけど、少数の人に生理的に受け付けないって言われてもしょうがないって覚悟もありました。すごい好きな人がいる代わりに、すごい嫌いな人もいるだろうなって。流石に嫌いな人が半分近くになると大変なことになっちゃうんで、そこは考慮してやっていますが。

■ 田向監督による副音声的ナビゲーション!
ここからは、「PONPONPON」の名場面を田向監督の解説でどうぞ!
オープニングから沢山のカワイイに囲まれたセット。装飾美術は増田セバスチャン、スタイリングは飯島久美子が担当。
増田セバスチャンというアーティストの方が美術を担当していて、「6%DOKIDOKI」っていう原宿のお店もやっています。きゃりーちゃんがよく行くお店なんですが、セバスチャンさんはインスタレーションなどもやっていてアート・ディレクターでもあるんです。海外に“KAWAII”っていう言葉を広めた人でもあるんです。で、こういうの全部私物で持っていて、撮影の朝、トラックいっぱいに積んできて。宝箱のような(笑)。

技術的なところですが、背景のブルーのストライプの壁は、ブルーバックの役割もあって、合成の際にクロマキー処理の効率化を図っています。ただの青だと単なるブルーバックなので、ストライプにデザインして。グリーンバックほどきれいに抜けないので結局手作業は必要になるんですが、作業短縮には一役買ってくれました。

――衣裳もおとぎ話に出てきそうなキュートさと、目玉が印象的ですね。
スタイリストさんが飯島久美子さんで、Caviar時代の先輩の児玉(裕一)さんと東京事変のお仕事などをされている方なんですが、以前ご一緒にさせてもらって素晴らしかったので今回お願いしました。で、飯島さんときゃりーちゃんは打ち合わせからすごく気が合っていて、飯島さんも服の趣味とか「若い頃の私を見ているようだ!」って盛り上がってました。衣裳については、飯島さんときゃりーちゃんがディスカッションして出来上がったデザインなんです。飯島さんが衣裳を作っているときに電話がかかってきて「目玉つけたいです」って。「いいですね」と答えたところ「監督、目玉の素材持ってないですか?」と。目玉は持ってなかったので、CGで作って、アイロンプリントで張り付けました。そのCG目玉はMVの中にも登場しています。

僕は最初不安だったんですよ。デビューなので、ライブの資料もなく、彼女がどんな動きをするか全くみえなかった。そこで、現場で重宝しそうと考えたのが、この両手で持つタイプの魔法の杖風の棒つきマイク。僕の中でのモデルはフレディ・マーキュリーなんですけど、あれバカっぽいじゃないですか。スタンド・マイクなのに立たないっていう(笑)。そのバカっぽさが好きで、きゃりーちゃんに合うんじゃないかなって思って。

――このぽっちゃりした脳内世界担当のダンサーさんは?
ダンス歴20年のダンサーさんで、この体! なんです。これもカワイイっていうことの解釈の仕方で、一般的には“カワイイ”というと太っていることはマイナスかもしれませんが、でも単純に見た目のシルエットとか、太っている人ってカワイイなってことで、キャストしました。

きゃりーちゃんの顔がピンクになっている場面は彼女の脳内世界。前半は現実と妄想の世界をカットで割っているんですけど、後半になるにしたがってどんどんそれらの世界が混ざっていく流れとなってます。
REDカムで撮影。使用ツール:Apple Final Cut Pro, Adobe After Effects, Cinema 4D, Adobe Illustrator, Adobe Photoshop。
制作の上で、とにかくこの企画は作業量勝負だったんです。モチーフやタイポの数が2D、3D入り乱れて沢山あることに意味があるんです。今回は演出、オフライン、CG制作、合成もすべて一人でやるにも関わらず(笑)。凄い作業量で合成も多くて本当に大変だった。全てのグラフィックス、CGもこのMVのために作り起こしていて、迷っている暇はない。一つ一つの完成度の高さよりも、色んなものがあるっていうことに軸足を置いたディレクションなので「迷わず作業を続けろ、自分!」という感じでした。

3DCGも光の方向とかあまり考えてなくて、あえて合成感があったほうがいいかなとか、コントラストの強さも画面にあっていたりあわせてなかったり、グラフィックスの周りに縁がついていたりついてなかったり、ワザとごちゃ混ぜにしています。

――ダンスや、きゃりーっぽい動きもすごく印象的ですね。
ビデオの中の変顔とか工藤静香の振りとか勝手にやるんですよ、きゃりーちゃん(笑)。振付はサビの箇所はair:manさんにコレオグラフしてもらっています。そのほかのシーンは一曲通して自由に動いてもらっていて、彼女の自由演技なんです。初めてのMV撮影だし、僕も動きに関しては見えないところがあるので、とりあえず自由に一度フルで回したら、次々にいろんな楽しい動きが出てきたので何テイクも撮っていきました。

カメラは完全フィックスしか使ってなくて、どうしてかというと、既にある環境のなかで勝手に踊っている感じが出したくて、ある意味安っぽいカワイイを出したかったんです。
この一連のシーンは僕なりのこだわりを入れ込んだところなんですが、誰も気付いてくれない(笑)。この曲のiTunes配信が7月20日とかで、アナログ停波の時期だったんです。なので、もう使うことのないテレビデオを出したり、そこから天使の輪が出てるんですが、天に召されて停波する。アナログ電波を送出していた東京タワーが登場したり。で、東京タワーって戦車で出来ているっていうじゃないですか。鉄が足りないから戦車を溶かして作ってっていうところのオマージュで、戦車が出てきたり。そして、このCGの角は地デジカ(「地デジ化」推進の鹿のキャラクター)を表していて、一瞬だけ遺影のような感じでクマが出てくるんですけど、地デジカに対抗して、ネット上で生まれたアナログマというキャラクターがいるのですが、「アナログマは死ぬんだな」って思って遺影を飾ってみました。
このカットとかもきゃりーちゃんのアイデア。彼女が悪い顔して、まわりでダンサーが「ははぁ~」ってひれ伏すという内容です。
時計が8時になると、ヒゲダンス(加藤茶と志村けんによる「8時だョ!全員集合」で人気のダンス)が登場します。ヒゲダンスといえばやることは二つ。バケツに水をいれて回すのと、このリンゴ刺し! 本番では一発でOKでした!
実は「PONPONPON」には2つの公式MVがYouTube上に存在する。一つはTV用にカラーコレクションしたバージョン、そしてもう一つが今回ご紹介しているYouTube用に色味を合わせたものだ。

原宿から日本を、そして世界中を“カワイイ”で席巻するきゃりーぱみゅぱみゅ。その世界観を見事に映像化した「PONPONPON」は、田向監督の新たなる船出としてこれ以上ないインパクトとキャッチーさを持ったMVとなった。次にきゃりーと、そして田向監督が生み出す新しい作品への期待に胸を膨らませ、ともに時代の目撃者になろう!

■ 5つの質問 一問一答
1: 一番影響を受けたものを教えてください
ドラゴンボール
2: この職に就いたきっかけは?
YUKIの「JOY」とケミカル・ブラザーズの「Star Guitar」のMVを見たので
3: 一番好きな映画は何ですか?
ジュラシック・パーク
4: 作業場のまわりに必ず置いているものベスト3は?
コーラ、チョコ、電話
5: 今おもしろいもの/事って何ですか?
ゲーム
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