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《Deer》 ©Kiyoshi Kuroda
神田のTETOKAにて、黒田潔の新作ドローイングを紹介する個展「線」が開催されている。9月23日(火)まで。

1975年東京都生まれ、東京を拠点に、イラストレーター、アートディレクターとしてマスメディアの分野で活躍する一方、繊細でダイナミックなドローイングを武器に数多くのアートワークを発表している黒田潔。近年では、アラスカの森の情景を描いた作品集「森へ」(2010年)、古川日出男とのコラボレーション「舗装道路の消えた世界」(2012年)、さらに2014年には「舗装道路の消えた世界」がパリ装飾芸術美術館のパブリック・コレクションに収蔵されている。

都心ながら自然に恵まれた環境で育った黒田は、東京の都市文化を背景とした現代的、装飾的な線遣いで、幼少期から関心を持ち続けている動植物の世界を描いており、動物や昆虫が今にも動き出しそうな躍動感あふれる画面、植物の持つエロティックでなまめかしい質感の描写、自然の崇高さを感じさせる繊細で綿密なタッチからなる作品は、白と黒を基調としているにもかかわらず、鑑賞者に鮮やかな印象を残す。

本展では、近年中心となっていた鉛筆を使用した精密な描写から離れ、黒田の原点ともいえる白黒のシンプルなタッチによる新作ドローイングを発表している。

また9月13日には、黒田の盟友である放送作家の寺坂直毅とファッションデザイナーのヌケメを招き、一夜限りの歌謡曲イベント「ザ・ベスト選」(19:00開演、入場料1,500円、1ドリンク付き)を開催する。詳細はWebサイトにてご確認を!

黒田潔「線」
会期:2014年8月23日(土) – 9月23日(火)
時間:16:00 – 23:00
入場料:無料
会場:TETOKA
東京都千代田区神田司町2-16 楽道庵1F

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《小西紀行「無題」》 2014年 キャンバスに油彩、H194.0xW130.3cm
1980年生まれの画家、小西紀行が描くのは、家族あるいは身近な存在。その姿、目鼻立ちは記号的かつ多角度的に描かれており、大きく運ばれたうねるような筆致により、鮮やかで深い色彩のなかに光や身体が削り出されるようにして存在している。

本展のタイトルの「人間の行動」とあるように、小西は現在の制作について、「人間の行動それそのものをそれそのものとしてまず見てみること。絵を描くことは何の根拠もない行動が先にあり、後から思考を発見すること」と語っている。そうして産み出された作品たちは“肖像画”としてだけでなく“絵画”としても本質的な魅力を備えはじめていると言えるだろう。

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《小西紀行「無題」》 2014年 キャンバスに油彩、H112.0xW194.0cm
本展では約8点の新作を発表しているが、現在開催中の「ノスタルジー&ファンタジー:現代美術の想像力とその源泉」(国立国際美術館)、「絵画の在りか」(東京オペラシティアートギャラリー)にも参加するなど、その活躍は目覚しい。ぜひ実物を目近で眺めてみたい。

小西紀行「人間の行動」
会期:2014年8月23日(土) – 9月20日(土) 日月祝休
時間:11:00 – 19:00
入場料:無料
会場:ARATANIURANO(アラタニウラノ)
東京都港区白金3-1-15 2F

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三谷幸喜が作・演出を務める新作舞台「ショーガール」が、渋谷のパルコ劇場にて上演されている。9月14日(日)まで。

1974年から1988年まで福田陽一郎の脚本・構成・演出、木の実ナナ、細川俊之の2人が出演し、パルコ劇場でシリーズ上演された、パルコ・ミュージック・ステージ「ショーガール」。大人の恋の物語を歌と踊りで綴り、渋谷の夜の街を彩り、そして多くの観客を魅了し、愛された作品であり、パルコ劇場の歴史が語られる時には必ず話題に上がる。そんな「ショーガール」は、多くのクリエーターにも愛され、そして影響を与えてきた。三谷幸喜もその1人であり、今回は「いつかは「ショーガール」のようなショーをパルコ劇場で作る」という三谷幸喜の念願の企画だ。

出演は川平慈英とシルビア・グラブ。この2人と共に三谷幸喜が紡ぎ出す小粋な“男と女の物語”を歌と踊りで綴っていく、新しい「ショーガール」。夏の夜の渋谷で、大人の時間を過ごしたい方にはぜひともオススメ!

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追加公演として9月8日(月)22時と9月9日(火)22時の2回も決定! チケットは全席指定5,000円で、各回の当日券の情報も含めて、詳細は公式サイトをチェックしよう!

「大人の時間に、大人の劇場で、大人のSHOW。尊敬する福田陽一郎先輩への最大限のリスペクトを込めて、気恥ずかしいくらい、お洒落な舞台に仕上げるつもりです。こんなお芝居が観たかった人、結構いるんじゃないかな?」(三谷幸喜)

パルコ・ミュージック・ステージ「ショーガール」
会期:2014年8月21日(木) – 9月14日(日)
料金:5,000円(全席指定・税込)
上演時間:約1時間(休憩なし)
作・演出:三谷幸喜
出演:川平慈英、シルビア・グラブ
演奏:荻野清子(ピアノ)、一本茂樹(ベース)、萱谷亮一(パーカッション)
当日券販売:希望公演の当日11時~12時、下記電話番号にて当日券予約を受付。
チケットぴあ 当日券予約専用ダイヤル:0570-02-9998
会場:パルコ劇場
東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷パルコ パート1 9F

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メルヴィン・モティ《クラスター錯覚》(部分)2014年 絹に染色、55×70cm
Courtesy : Meyer Riegger, Berlin and Karlsruhe
六本木の森美術館にて、日本初紹介となるオランダ人アーティストの個展「MAMプロジェクト021:メルヴィン・モティ」が開催されている(「ゴー・ビトゥイーンズ展:こどもを通して見る世界」と同時開催)。8月31日(日)まで。

神経学、科学、歴史と視覚文化の関係について、綿密なリサーチを基に作品を制作するアーティスト、メルヴィン・モティ(1977年、オランダ生まれ)。2013年、「第55回ヴェネツィア・ビエンナーレ」で一躍、脚光を浴びた。

日本初個展となる本展では、「クラスター錯覚」と題した新作の絹染めのシリーズを発表している。星図と着物の細密な小紋柄を組み合わせた本作は、ランダムに並んだ点や抽象的な文様から、具象的なイメージを想像したり、そこに何らかの摂理を見出そうとする人間の習性について考察するものだ。江戸小紋を代表する3つの柄「鮫」「通し」「行儀」と、作家オリジナルの図案を用いて、染師の協力により制作したのだという。

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メルヴィン・モティ《アイゲンリヒト(宇宙における内なる自己)》2012年
35mmフィルム、無音、18分
2013年にアーツイニシアティブトウキョウ[AIT/エイト]のアーティスト・イン・レジデンスに参加し、約3ヶ月の東京滞在の間に、着物の小紋柄のリサーチを本格化。これを発展させて今回、日本で新作を完成させた。Webサイトでは、展覧会パンフレットのPDF版を見ることができるので、こちらも参照したい。

また、11月3日(月祝)まで開催中の「ヨコハマトリエンナーレ2014」にも参加しており、やなぎみわや大竹伸朗らとともに、新港ピア(新港ふ頭展示施設)にて作品が紹介されている。ぜひ合わせて見に行きたい。

MAMプロジェクト021:メルヴィン・モティ
会期:2014年5月31日(土) – 8月31日(日)
時間:10:00 – 22:00
入場料:一般1,500円、学生(高校生・大学生)1,000円、子供(4歳 − 中学生)500円
※森美術館「ゴー・ビトゥイーンズ展:こどもを通して見る世界」と共通、展望台「東京シティビュー」への入館料も含む(スカイデッキへの入場料は別途)
会場:森美術館
東京都港区六本木6−10−1 六本木ヒルズ 森タワー53F

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(左)Olivier Casamayou(オリビエ・カサマヨウ):パリのソルボンヌ大学で公務員になるための古典文法・言語の学位を取得しながら、ソロやトリオ(Natyam, Techno Animal, 3003)公演を通じて、独学にダンスを習得。1996年ベルギーでAlain Platel主催のダンスコンペに出演し、様々なダンススタイルが絡み合ったユニークな演技でベストダンスソロ部門で1位を受賞。過去には、Jérôme BelやMarco Berrettini、Edouard Levéらと共演している。
(右)Carine Charaire(カリン・シャレール):4歳からクラシックバレエを習い始め、コンテンポラリーダンスを20年間学ぶ。これまでにコレオグラファーのBlanca Li、Marco Berrettini、Jérôme Bel、コンテンポラリーアーティストのPierre Joseph、Elodie Pong、Boris Achour、Edouard Levéらと共演。
Olivier Casamayou(オリビエ・カサマヨウ)とCarine Charaire(カリン・シャレール)による、既存の型にはまらない、フランスのコレオグラファーデュオI COULD NEVER BE A DANCER。現代アート、ファッション、ミュージック、ダンス、クラブ、TV、広告などの様々な分野を、階層や価値の偏見なしに平等に統合させるアプローチで、コンセプトワーク、コレオグラフィ、キャスティングからディレクションに至るまで、トータルにクライアントの世界観を演出する。

現在、MV、CM、インスタレーション、ダンスパフォーマンスを中心に、ヨーロッパ、北米、アジアで活動中で、同じフランスのMegaforce、Jonas & Francois、So-Meといった勢いのあるディレクターとコラボレーションするなど、注目を集めている。7月某日、Cartier(カルティエ)の舞台「La Panthère」の演出のために来日したI COULD NEVER BE A DANCERの2人のインタビューをお届けします!

Willy Moon「Yeah Yeah」
dir: Alex Courtès|prod: Division|pr: Jules De Chateleux|DoP: Axel Cosnefroy|steadicam: Loic Andrieu|cho: I COULD NEVER BE A DANCER|sty: Elise Bouguet, Reem Kuzayli|make up: Marielle Loubet|hair: Kazue Deki|ed: Nicolas Larrouquere
――お二人の存在を知ったのがWilly Moon(ウィリー・ムーン)の「Yeah Yeah」でした。楽曲の世界観とコレオグラフの演出がハマった、カッコいいMVでしたね。
Olivier Casamayou(以下、Olivier):MVではダンスを演出の中心とするケースが多く、企画の初期段階から関わることが多いのですが、特にこの作品は、コレオグラフを軸とした企画でした。監督のAlex Courtès(アレックス・コルテス)は、セットのラフなアイデア、大きな鏡を使うことや中央に設置するウィリー・ムーンの鏡のステージ、そして反射を使った演出、黒い衣裳に身を包んだダンサー軍隊といった考えを持っていました。ただ、そこまで決めきったものではなかったので、僕たちで5、6パーツのコレオグラフィを作って・・・。

Carine Charaire(以下、Carine):設置した鏡の位置ごとに異なるコレオグラフを提案しました。

Olivier:それを元にして、監督と話しながら決めていきました。一番のポイントは、ダンスがこのMVのキーとなるということです。

Carine:ストーリーもダンスによって語られていきます。

Olivier:ウィリー・ムーンは50年代ロックの影響を感じるシンガーですが、実はサンプリングで楽曲制作をしています。つまり、50年代ロックをヒップホップメソッドで作っているのです。なので、ダンスでもその要素を取り込みたいと思いました。
ボディ・ポジションはElvis Presley(エルヴィス・プレスリー)のようなロックポジションなのですが、ステップはJanet Jackson(ジャネット・ジャクソン)のようなブラックミュージックを取り入れたコレオグラフにしています。両方を融合させながら、全く新しいダンスとして見えるように心掛けました。その為に、ステップも今までにない、新しいステップを開発しています。トータル的にはカタチやリズムがまだ使われていない、新しいシェイプを探しました。

――YouTubeでは300万ビューを超える人気となりましたね!
Olivier:(笑)。ヨーロッパと日本で人気になりました。新しさを感じて、魅力的に思ってくれたのです。でも、アメリカではそうはいきませんでした。YouTubeのコメントを見ると、「このダンスは何だ!?」「このコレオグラファーはクビにすべきだ」などなど(笑)。ダンスについてネガティブな発言をしているのは、大体がアメリカ在住の人ばかりだったんです。
アメリカではダンスにジャンルがあって、それぞれが完全に独立したものなので、この作品のコンセプトを全く読み解くことが出来なかったんです。このダンスは彼らにとって新しいボキャブラリーだったんです。実はリリース当初はそういう大変なことばかりでした。

Carine:本当に驚きましたね。リアクションは想像よりも強いもので、でも言い換えればそれだけコレオグラフが印象に残ったということです。普通なら「ウィリー・ムーンがカッコいいね!」とか、楽曲についてのリアクションが多いものですが。

――クラッシックバレーを4歳から学んだカリンさん、そして、教員でダンスは独学だったというオリビエさん、お二人のバックグラウンドが対極的で、チームを組むことになった経緯に興味があります。I COULD NEVER BE A DANCERという名義に込められた想いも教えて下さい。
Olivier:それは長い話になりますね(笑)。

Carine:今から15年程前に出会いました。私はまだカンヌのダンススクールの学生でした。その時に友達になったダンサーが、オリビエの友達だったのです。

Olivier:そう、彼がパリからカンヌに引っ越したので、ある夏カンヌに遊びに行ったんです。そこでカリーヌに出会ったのですが、それは美しい衝撃でした(笑)。

Carine:(笑)。そうやって友達になり、卒業後はパリに行ってダンサーとして仕事を始めました。

Olivier:それでよく会うようになったのですが、お互いにとても気が合う相手だと感じていたんです。

Carine:自然な流れで仕事を一緒にすることになり、2回目には2人でコンセプター兼ディレクター兼アートディレクターとして組んで、ダンスに留まらない領域で活動を始めていました。名義については、私たちが“Dance”に対して普通と違った見方をしているところに由来します。

Olivier:一般的にダンスやコレオグラフというと、情熱であり、毎日ダンスをして修練をします。僕たちにとってダンスは全く別のものを意味します。

Carine:もっと大きなものに対して“関係するもの”として捉えています。

Olivier:僕たちにとってダンスは表現の一つであり、唯一の手段ではありません。時にはダンスが重要でないときもあります。もちろん、ダンスは大好きでダンサーたちが大好きですが、技術を追求したことはありません。僕たちがダンサーをキャスティングする時は、パーソナリティやプロジェクトのイメージに合っているかどうかを重視します。

Carine:凄くテクニックに長けたダンサーよりも、まず感情や賢さやを見るのです。それは技術力から来ていることもありますし、パーソナリティから来ていることも、その両方から来ていることもあります。

Olivier:そして、I COULD NEVER BE A DANCERは、互いの人生においてもパーソナルな意味をもっています。

Carine:その通りね。

Olivier:僕の話をすると、僕はダンスのトレーニングを遅く始めたんです。18歳からダンスを始めて、将来はコンテンポラリーのダンスカンパニーに行きたいと思っていました。同時に、既に教員として働いていて、ラテン語、フランス語、ギリシャ語を教えていました。ダンスとは全く違うことですよね(笑)。
しかし、ダンスを習い始めると、自分には生まれつきダンスの才能があることを発見しました。でも、正式なトレーニングや教育は受けてきていないので、後悔の気持ちを抱えつつ、全く違う視点でダンスを見ることも出来ました。10年間ダンススクールに通ったダンサーではないからこその視点です。

Carine:私がそちら側の例ですね(笑)。私は凄く小さな時からダンサーでした。それからダンススクールに行って、コンテンポラリーダンスカンパニーで踊って・・・。
でも、20歳くらいからなんだか違和感を感じるようになっていました。将来、凄いダンサーになってステージに立つという考えにしっくりこなくなっていたんです。私はいいパフォーマーだと思いますが、スーパーダンサーではないと思いますし、そこに興味はないのです。それよりもコンセプトや世界観を考えて、それをダンスと統合したパフォーマンスを考える方に興味が強くなったんです。

Olivier:そういう意味で、僕らは多くのコレオグラファーとは考え方からして違っているのです。

――I COULD NEVER BE A DANCERの設立と同時に、ダンサーからコレオグラファーに転換したのですか?
Olivier:そうですね。でも、その前からとも言えます。

Carine:I COULD NEVER BE A DANCERは、意図的に職種を固めていないのです。結成から1年間はI COULD NEVER BE A DANCERとしてやっていく方法を模索していた時期でした。というのも、私たちの目指しているものは前例のない事で、それは、沢山の職業の中間に存在していて、周りの仕事関係者に理解してもらうのが大変だったんです。

Olivier:僕たちは本当に新しいポジションを築いたと思っています。ビジネスにおいてもアートにおいても。というのもI COULD NEVER BE A DANCERはその両方の領域に属しているからです。アート業界もビジネス業界も最初は全く理解をしてくれませんでしたし、僕たちの存在も全く知られていませんでした。

Carine:みんなに知ってもらうまでに何年も要しました。

Olivier:今では、ユニークな存在として確立されたと感じています。それはフランスだけでなく世界的に見ても。

Carine:唯一無二といってもいいんじゃないでしょうか。

Olivier:なぜかと言うと、僕たちは多くの受けてきた影響を融合させた演出をしていますし、全てがコンテクストに沿っていて、正確であり、アップ・トゥ・デイトであり、そして常にいい趣味で、ブランドであり、ロケーションであり、アーティストであると心掛けているからです。

――世の中が振り向いてくれるきっかけとなった出来事や作品はなんだったんですか?
Olivier:「この作品です」と言うのは難しくて、1つ1つの積み重ねだと思っています。とはいえ、中には大きなステップとなった作品もいくつかあります。シャネルの指を使った演出のCM「Shade Parade」、ウィリー・ムーンのMV「Yeah Yeah」、インスタレーション「Babydisco」などです。「Babydisco」は子供用のディスコがテーマのインスタレーションです。今挙げたこの3つでも、それぞれが全く違ったものだと分かっていただけると思います。

――紹介文に「私達の時代について発言するためにポップカルチャーの規定に挑戦しながら、ポップカルチャーに関わっていることを楽しんでいます」とありますが、ダンスに留まらない高い志を感じます。
Olivier:僕たちはポップカルチャーが大好きですで、インスピレーションの一つです。問題は、ポップカルチャーはある意味政治的でもあることです。ポップカルチャーは人々を楽しませるもので、みんな一旦消費すると、チョコレートのように「おいしかったね」とそれで終わり。その後、特に想いを巡らすこともないでしょう。

また、多くのポップカルチャーは、本質や考えることから我々の意識を逸らすことにも使われます。ですから、ポップカルチャーとある程度距離を置いて、考えが巡るように、そして、ポップカルチャーを他の何かを生み出す素材としても使っています。

Carine:ポップカルチャーに疑問を投げかけているのです。過去50年を見ても、コンテンポラリーアーティストの中で、我々ほど熱心に取り組んできた例をみませんし、アートとコマーシャルの狭間で活動しているというポジションも類を見ないと思うのです。私たちは、異なるジャンルへこれまでとは違った視点を提供しているのです。

――その想いは、コレオグラフだけでなく、監督やアートディレクション、スタイリングなども手掛けられていることからも見てとれますね。
TEDxSummit 2012 in Doha「The Power of X」
dir: Körnerunion|a: WE ARE Pi|prod co: Raphaël|cho/casting: I COULD NEVER BE A DANCER|m: Yasmine Hamdan
Olivier:監督をするときは、スタイリングもアートディレクションも全てやるように努めています。例えば、カリンはTEDの「The Power of X」のほとんどを手掛けています。

Carine:Körnerunion(コーナーユニオン)監督には、内側が鏡で出来た18mの三角形のタワーを使うという万華鏡のアイデアがありました。

Olivier:監督からの相談は、タワーと床の隙間が1メートルしかないため、どうやってコレオグラフされたダンサーが入ったり出りすればいいかということでした。毎回同じ方法や方向で出入りするのは退屈だと思い、フロアがスライドして変化していくというアイデアを提案しました。そうすれば、ダンサーは多様な入り方が出来るからです。

Carine:コレオグラフの難易度は上がりましたが、フロアの色も変えられて、よりリッチな映像表現になりました。とっても素敵なプロジェクトでしたね。

TEDxSummit 2012 in Doha「The Power of X」メイキング映像
――そのタワーの仕組みについてですが、メイキングを見ると、タワーの内側が鏡になっていて、下でポージングをすると反射して、万華鏡のように写し出しているんですね。床をスライド式にして色を変えるというのは本当にいいアイデアですね。
Olivier:メイキングを見れば、合計12人のダンサーがいて、タワーの下に床が入って来た時、ダンサーの作る万華鏡の模様にバリエーションが生まれることが分かりますよね。

Carine:しかも、これはワンカットなんです! もちろんCGは使ってません。

Olivier:約20テイクやっていて、一番最後のテイクが採用されました。リハーサルは2日間スタジオで行い、1日は実際のセットを使って仕上げをしました。中心がズレたりするのを合わせていくのが難しかったですね。 実際に公開している完成版も、いくつか失敗しているところがあります。ラストテイクでOKが出たのですが、もう1回やらせて欲しいと頼んだところ、監督は「これがいいんです。ちょっとした失敗もこの作品の一つの要素なんです」と、無事に完了したのです。

――別々に稼働したりするのですか? 2人の間でどう進めているのですか?
Carine:仕事が重なると仕方なく別々に動くこともありますが、そうしないように努めています。

Olivier:離れて仕事をする場合も、お互い密に連絡を取るんです。

Carine:何かしらの決定が必要な場合は、2人で決めています。

Olivier:別々で現場をやる場合は、事前準備はパリで一緒にやって、現場に1人が行くようにしていますね。

Carine:2人でやる方が、いい結果が出せるんです。

Olivier:まさしく! 結果も良くなるし、スピードも速いんです。疑いの余地なく、これが僕たちの働き方なのです。どうやって進めるかというと、それはとっても複雑で、特にルールはありません。

Carine:それぞれのバックグラウンドから得意な分野というのはありますが、それも軽々と飛び越えてアイデアを出し合います。

Olivier:2人から出てくるインプットをミックスして作るんです。時には全面的に賛成するし、時には意見が分かれることもありますが、話し合って決定していきます。本当にルールはないんです。不思議な力が作用しているような感じで、秘伝のレシピはありません。

――2人の共通しているビジョンは何でしょうか?
Olivier:グラフィック的ということでしょうか。2人ともグラフィッカルでクリーンなビジュアルが好きなんです。汗をほとばしらせながら舞台で踊りまくるアツい感じはあまり好きではなくて、ポージーでデリケートで・・・。

Carine:そして、洗練されている。クラシックなものでも、技術寄りなものは好みではありません。

Olivier:例えばバレエだと、何回スピンしたかとか技術寄りのロシアンバレエはあまり好みではなく・・・。

Carine:クリーンでシンプルなラインながらも、完璧な動きの美しいフレンチバレエの方に惹かれるんです。

Olivier:僕はインドのダンスにとても影響を受けています。インドの伝統舞踊バラタナティヤムなどは、腕を使ったとても正確な動きをします。
あとは、ヴォーギングです。僕の最初のダンス愛はインディアンダンスで、そしてヴォーギングでした。どちらも正確な動きが特徴的です。その影響は自分にとって、とても大切なものとなっています。そして、とても音楽的です。

Carine:そう!

Olivier:音楽に含まれている情報はすべて使うようにしています。ですから、MVも色々オファーをもらいますが、音楽が好きになれないとお断りせざるを得ない場合があります。MVは低予算だし、凄く労力を使いますから、正しいプロジェクト、アーティスト、楽曲、監督であるかどうかをとても重要視しています。そしてオファーをもらうタイミングも重要です(笑)。

――監督をしたCMについて教えてください。同時期にChloé(クロエ)「Blowing Roses」とNina Ricci(ニナ・リッチ)「The Ballet Bag」を手掛けられています。
Nina Ricci「The Ballet Bag」
dir/concept/ad/cho/casting: I COULD NEVER BE A DANCER
Carine:この2つは全く違うアプローチになりました。

Olivier:クロエはTBWAグループのDAN Parisから話が来ました。以前、コレオグラファーとして参加したOPIのCM「Instinct of Color」で信頼してくれて、「興味があれば監督としてやってみないか」と打診がありました。もちろん僕たちは「興味あります!」と返答しました。ラクジュアリーブランドのCM制作で有名なPsychoと組んだんです。いやぁ、CMの監督業というのは長い期間に渡っての作業なんですね。

Carine:特にコミュニケーションが。色々勉強しました(笑)。

Olivier:大変だったけど、やっぱり面白かったですね。
ニナ・リッチは代理店がいなくて、直接のオファーでした。この作品は僕たちらしい作品になったと思います。バッグをプロモーションする映像が欲しいこと、予算は多くはないけど快適なレベルという前提でした。このアイデアは長い間温めていて、本来は靴を想定していたものでした。しかし、バックでも面白いんじゃないかと思ったんです。僕たちの大好きな70年代のベルギーアーティストJacques Lizène(ジャック・リゼヌ)に影響を受けたアイデアです。彼のアプローチはポリティカルで皮肉めいていて、それはこういう高級バッグにもぴったりだと思いました。

Carine:よくあるような、街の中をモデルの女性が歩いていて・・・というようなものは避けたかったんです。

Olivier:最後に言い訳のように、商品のバッグがチラッと出てくるやつだね(笑)。

Carine:私たちは逆のアプローチをとったんです。それは、バッグを思いっきり前面に出すこと。バッグを中心にしてセットもコレオグラフィも作りました。コンセプトワーク、セット、アートディレクション、スタイリング、キャスティングなど全てを手掛けました。

――コレオグラフだけを担当するのと、やはり出来上がった作品に違いはありますか?
Olivier:ダンス仲間からは「君たちが監督したのが分かる。ダンスに君たちならではの視点が表れているから」とよく言われますね。

Carine:ダンスの使い方も、コレオグラファーではない監督が作るのとは全く違います。監督はダンスをダンスと捉えています。でも、私たちはダンスを強力なツールだと考えているのです。

Olivier:全てを白紙から作り上げた作品という意味でも、この作品には特別な思い入れがあります。映像の監督業は、舞台のディレクションをしていたのでそんなに大きなジャンプという気持ちはありませんでした。自然な流れという方がふさわしいかと思います。

Carine:そうですね、大きなシフトとは思いません。監督をやるからといってコレオグラフィを辞めるわけでもないし、監督もアートディレクションもコレオグラフィも同じ活動の一部だと思っています。

Chloé「Blowing Roses」
dir/cho/casting: I COULD NEVER BE A DANCER
テーマは“Rose&Blow”。当初、依頼されたのはアプリの企画だったが、実現が難しいと考えた2人は、アプリ用の制作とフィルム制作を提案した。予想通りアプリが完成することはなかった。フィルムではクライアントとの調整が難航し、ポストプロダクションは2ヶ月にも及んだそうだ。
Olivier:僕たちは、コンテンポラリーダンスのコミュニティに属していません。コマ―シャルのダンスコミュニティにも属していません。ファッションコミュニティでもありません。周りの友人はみんなファッション業界で働いていますが。繰り返しになりますが、全ての間に存在しているのです。

Carine:だからといって中立的でもありません。極めて個性的な存在です。プロジェクトに着手する時も、明確にアーティスティックなポジションに位置します。もちろん、ブランドの目的も踏まえた上でお仕事はしますが。

Olivier:Hermès(エルメス)や、レコードレーベルのEd Banger(エド・バンガー)と仲良しなんですが、そこに留まって仕事をすることはありません。だからプロジェクトに多様性が生まれるし、それを気に入ってます。

Carine:凄く飽きっぽいんです(笑)。

Olivier:そう(笑)。プロジェクトが長引くと途中で飽きちゃうくらい(笑)。いつも変化していたいんです。2年前にした仕事を振り返ってみると、「あんまり好きじゃないかも」って本気で思います。

Carine:次々に進みながら、実験して、新しい人に会いながら進化していくんです。

Olivier:次は、なんとヒップホップのコレオグラフをやるかもしれません(笑)。バリバリのアメリカのヒップホップのプロジェクトで、今までやったこともないのでとても興奮しています!

The Ting Tings「Wrong Club」
dir: Lisa Paclet|cho: I COULD NEVER BE A DANCER
“コラージュ”がテーマとなったコレオグラフィは、タイトルにもある“Wrong”という楽曲のアイデアに従いながら、Kate Bush(ケイト・ブッシュ)やDonna Summer(ドナ・サマー)など様々な影響が混ざり合っている。楽曲に合わせてディスコ的な振付は避けつつ、それと正反対の方向性でありながらもポップでセクシーなものを目指した。正面から捉えた画で空間とレーザーで遊ぶような振付となっている。
――ダンサー仲間からはどういうリアクションを受けますか?
Olivier:そうですね・・・。変かもしれませんが、他のコレオグラファーに対して同じ職種、またはライバルと思ったことがありません。それほど違うと自認しているのです。
例えば、多くのコレオグラファーはヒップホップの振付仕事が多いですが、私たちはやりませんし、だいたいコンテンポラリーのディープなプロジェクトもやりません。次から次へと移っているので、まわりのコレオグラファーも僕たちをライバルとは思っていないのです。

Carine:ダンサーやプロからのフィードバックは、よく先進的と言われます。彼らは今こういう働き方がいいと気付いて、面白がってくれています。

Olivier:フランスには、60年代のヌーベルバーグのように、とても文化的な背景があります。みんなシステムやメインストリーム、そしてポップカルチャーに懐疑的な気質なのです。だから、僕たちの活動は良く思われないのが普通なのです。でも、過去5年間において、ポップカルチャーの中にいて外からのインフルエンスを取り込む方がいいと思い始めて、変わってきているように僕は感じています。ポップカルチャーの外にいて、無視したり、批判したりするのではなく、境界線をクロスしていくのです。

――最後に、日本のダンスカンパニーやコレオグラファーや監督、アーティストなど気になる人はいますか?
Olivier:今、カルティエの舞台演出の仕事で日本に滞在していますが、僕たちはラッキーだと思います。新国立劇場バレエ団の酒井はなさんとコラボレーションをしているのですが、素晴らしいダンサーです。まさに、私たちが求めているダンサーなんです。
他には、個人的にポップカルチャーやグラフィックスが好きなので、Perfumeが好きですね。そして、明和電機の大ファンです。面白くてナンセンスで最高です!

Carine:才能の無駄使いとしか思えないところが大好きなんです。

Olivier:凄く科学的だったり、コンピュータ技術を駆使して、どうでもいいモノを作っている。ダダイズムが好きなので、同じようなものを感じるのです。全般的に、日本のビジュアル表現にはいつも感激します。

Carine:彼は既に6回も東京に来てるほど日本贔屓なんです(笑)。次はまた12月に帰ってくる予定です。

――ありがとうございました! 今回演出されたカルティエの舞台が2015年1月にNHKで放送されるとのこと、そちらも楽しみに待っています!

■ 5つの質問 一問一答
1: 一番影響を受けたものを教えてください
Olivier:ピナ・バウシュ
Carine:アンディ・ウォーホル
2: この職に就いたきっかけは?
Olivier:ベッドルームでダンスのMVを録画したVHSを何度も巻き戻しながら見て、それを真似して踊っていました!
Carine:決心したから! 決断出来る自分でいるようにしています
3: 一番好きな映画は何ですか?
Olivier:パパ/ずれてるゥ!
Carine:キャバレー
4: 作業場のまわりに必ず置いているものベスト3は?
Olivier:M.I.A.の曲全て
Carine:TEDの動画、Willy Moonの動画、次にあるエルメスのイベント!
5: 今おもしろいもの/事って何ですか?
Olivier:アメリカのヒップホップのマーケットに入り込むこと。ハハハ(笑)!!!
Carine:カルティエ、エルメスの仕事