IKEA「The Joy Of Storage」
dir: Dougal Wilson|a: Mother|prod co: Blink|cd: Tim McNaughton, Freddy Mandy|ad/c: Rich Tahmesebi, Pilar Santos|ed: Joe Guest|DoP: lasse frank|post ptod co: MPC
寒風吹きすさぶ大地に降り立ったのは、越冬する渡り鳥の群れ・・・ではなく、なんとTシャツの群れ!? 鳥さながらの動きを見せる色とりどりのTシャツ達は、常時ブルブルと震え、ある時は川の中、ある時は嵐の中へと移動を繰り返す。銃声に怯え、子供や犬に脅かされながらも、目指す彼の地とは・・・!?

“Tシャツが帰りたくなるほどの収納システム”を大胆に映像化したIKEAのCM「The Joy Of Storage」。 2014年より“The Wonderful Everyday”をタグラインにキャンペーンを展開する家具ブランドIKEAは、これまでにサステナビリティにフォーカスした「Forest」や、常日頃使うものこそ上質なものをと訴求する「beds」、生活リズムの違う家族にIKEAの製品が調和をもたらす「Kitchen Carousel」など、独創的なCMで製品の魅力を紹介している。

本作でディレクターを務めるのは、映像プロダクションBlinkに所属する、躍進目覚ましいDougal Wilson(ドゥーガル・ウィルソン)。2年連続で手掛けたイギリスの百貨店John LewisのホリデイCM「Monty」、「The Journey」などのハートフルな作品から、アニメーションと実写を織り交ぜて殺人ラビットのドタバタ劇を描くRoyal Bloodのバイオレンスなミュージックビデオ(MV)「Out Of The Black」まで、巧みに表現方法を使い分ける監督だ。 IKEAのCMを手掛けるのも2度目で、過去にはIKEAのキャンペーン用MV「Playin’ With My Friends」を制作している。

“鳥の群れのように振る舞うTシャツが戻る家を見つけられない”というアイデアは、IKEAのCMを何作も手掛けてきたアートディレクターのRich Tahmesebi(リッチ・タームセビー)とPilar Santos(ピラール・サントス)によるもの。ストーリーや表現方法に関してはウィルソン氏に委ねられた。2人のアイデアが気に入ったウィルソン氏は、“日用品”であるTシャツを対照的な世界に置いたら面白いと考え、あえて壮大な筋立てを作った。その際、降り立ったところが極寒だったり、川辺にいるところを銃で狙われたりと、Tシャツ達が移動し続ける理由も詳細に練られている。

「The Joy Of Storage」メイキング
絵コンテや、撮影風景、ポストプロダクションの様子が収められたメイキング映像。
実はこのTシャツたち、全てがCGで作られたもの。リアリティ溢れるTシャツたちの質感や動きを再現するのが、この作品における一番の挑戦だった。動きに関しては、実際の渡り鳥のドキュメンタリー映像を参照し、雨の中を突き進むシーン等は、操り人形師のJonny Sabbagh(ジョニー・サバッグ)とWill Harper(ウィル・ハープ)が演技をつけたTシャツを撮影し、CGに反映している。企画から完成まで要したおよそ10週間のうち3週間をポストプロダクションに費やしたそうだ。VFXを請け負うのは、イギリスのポストプロダクションカンパニーMPC。VFXスーパーバイーザーのDiarmid Harrison Murray(ダーミド・ハリソン・マレー)氏が指揮を執っている。

スウェーデン、スコットランド、イギリスで撮影が行われた本作の撮影監督は、「The Long Wait」などでウィルソン氏と度々仕事を共にしているlasse frank(ラッセ・フランク)が務めている。

因みに本作の壮大な音楽は、アメリカの音楽制作会社Two Steps From HellのThomas Bergersen(トーマス・バーガーセン)とNick Phoenix(ニック・フェニッス)が2013年にリリースしたアルバム「Classics, Vol. 1」より「Strength of an Empire」を採用。Two Steps From Hellは、映像作品の予告音楽を専門に手掛けるアメリカの音楽制作会社で、これまでに「アバター」や「インターステラー」など、大作の予告編を数多く手がけている!
ws_ansatsukyo-shitsu_1
「しゃべるコミックスアプリ」
co dir/pl: 井戸正和|com pl: 加我俊介|art dir: 柴谷麻以|dir: 三上裕之|tech dir: 中山誠基|voice actor: 福山潤|a: 電通|prod co: salvo Inc.
クラス全員殺し屋!? 有名進学校である椚ヶ丘中学の落ちこぼれクラス、3年E組の“担任”としてやってきたのは、謎のタコ型超生物、「殺(ころ)せんせー」!月の7割を破壊し、1年後には地球をも破壊すると宣言している正体不明の生物を止めるため、各国はこぞって暗殺を試みるが、最高時速マッハ20で移動する超人的な動きの前に、手も足も出ない事態に。そんな時、殺せんせー自らの提案で、なぜか椚ヶ丘中学の教師として赴任。成功報酬100億円で、政府から秘密裏に殺せんせーの暗殺を託される生徒たちだが、生徒と(暗殺を通して)本気で向き合う殺せんせーに次第に心を開き始め・・・。

そんなキテレツな設定とストーリーを生み出したのは、漫画家、松井優征氏。2004年に「魔人探偵脳噛ネウロ」でデビューし、翌年、同タイトルで週刊少年ジャンプにて連載。2007年にはテレビアニメ化も果たした。そして2012年にはこの「暗殺教室」の連載が始まり、2015年にテレビアニメ化、実写映画化もされた人気作家だ。

「暗殺教室」は現在13巻まで発売中で、単行本のシリーズ累計発行部数は1,300万部に上る。書店で売り切れも続出しているという評判っぷりから、今度はコミックスと連動したスマートフォン用アプリが登場した!

「暗殺教室」しゃべるコミックスアプリCM
dir: 石川貴之|DoP: 熊谷太祐|ed: 村橋昭男|p: 春田寛子|pm: 堀有希|a: 電通
「殺せんせーの抜き打ちテスト」と題したこのアプリは、スマートフォンを各コミックスの表紙に描かれた殺せんせーにかざし、口元にセットすると、スマートフォン画面に口が映し出され、表紙の殺せんせーがしゃべり出す。出題される、各コミックスにまつわる“抜き打ちテスト”に挑戦していくといったもの。

ナイスなサプライズは、殺せんせーと直接会話ができてしまうこと!音声認識と画像解析といったテクノロジーをミックスし、アプリをコミックスの表紙にかざすだけで、そんな体験がお手軽にできる。シンボリックな殺せんせーの顔にぴったりな企画だ。クリエイティブディレクターである井戸正和氏は、アニメ化や実写映画化とコンテンツが“声”をもつタイミングにあわせ、漫画のキャラクターもしゃべり出したらおもしろいだろう、というところに着目した。その狙い通り、「何これ!?」と思わず言ってしまう体験は、周りの友人や家族にも試してもらいたくなること間違いないだろう。

プランナーの加我俊介氏は今回の企画に関して「全巻、殺せんせーの顔で統一されているコミックスの表紙デザイン。コミックスへの興味を掘り起すというお題を頂いた時、書店の本棚の中でもひときわ存在感を放っている、このユニークポイントを活用したいと考えたのが発端です」と語っている。

こうした今までにないコンテンツ展開は、原作ファンのみならず、アニメファンにもたまらない仕様になっているのではないだろうか。

ws_ansatsukyo-shitsu_2
コミックス全13巻(続刊)。それぞれがシンプルかつ目をひくデザイン。
“抜き打ちテスト”は、3月16日に発売された、週刊少年ジャンプの16号の表紙や映画の劇場前売券とも連動し、追加のテストも受けることができる。既にダウンロードしてお楽しみ中の方は、アプリをアップデートする必要があるので、アップデートして挑戦してみよう。

アプリ内での殺せんせーの声は、テレビアニメでも同役を務める声優、福山潤。若い世代から絶大な人気を誇り、「コードギアス 反逆のルルーシュ」のルルーシュ・ランペルージ役や「中二病でも恋がしたい!」の富樫勇太役など、数多くの人気作の主演に起用され、外国語映画の吹替も手広くこなす実力派だ。

3月21日から公開している実写映画でも、初日から2日目で既に、動員数35万人、興行収入4億円を突破している。テレビアニメに映画にと、止まらない殺せんせー旋風!この機会に是非、アプリをダウンロードして、生徒になった気分で殺せんせーとガチ対決してみては?
Alt-J「Pusher」
dir: Thomas Rhazi|prod co: Division Paris|pro: Jules de Chateleux, Roman Pichon Herrera|ed: Delphine Genest|DoP: Nicolas Loir|post prod co: Home Digital Pictures|VFX co: Mathematic
リーズ大学で出会ったThomas Green(トーマス・グリーン)、Joe Newman (ジョー・ニューマン)、Gus Unger-Hamilton(ガス・アンガー・ハミルトン)の3人組みで、グラミー賞と並び称されるBRIT Awards 2015では“Best British Group”および“Album of the Year”にノミネートされたAlt-Jのセカンドアルバム「This Is All Yours」より、「Pusher」のミュージックビデオ(MV)が先日公開された。同アルバムより既に発表されている、2バージョンからなるMV「Every Other Freckle」(Boy Ver.Girl Ver.)や「Left Hand Free」(1 Ver.2 Ver.)とはまた趣を異にした、コンセプチュアルで物語性の高い4分間の映像世界を堪能しよう!

そこは灰色の空の下。サッカー場を思わせる広大なフィールドに、同じような服装に身を包んだ没個性のスキンヘッドたちが、何かを待ち望むように佇んでいる。そこへやって来た一人の男は、中心に置かれた演説台に立ち、曇り空に一瞥をくれると何かをおもむろに語りだす。辺りが暗くなるにつれ、その男の弁舌は過激さを増していく。ジャケットを脱ぎ捨て、髪を掻きむしり、懸命に何かを表明するも、もどかしさから頭を抱え、最後は指を咥えて押し殺すように絶叫した後、男は自らの首を強引に捻り、その場に崩れ落ちてしまう・・・。

ジョージ・オーウェル「一九八四年」やレイ・ブラッドベリ「華氏451度」で描かれるディストピアを連想させる重苦しい世界観にジョー・ニューマンの美しいファルセットが重なり、得も言われぬ哀愁を醸し出す本作は、フランス、パリの映像プロダクションDivisionに所属するディレクター、Thomas Rhazi(トーマス・ラジ)氏によるもの。撮影監督としてファッション業界で培った独特の美意識に基づくフレームワークと照明演出、そして抽象度の高いビジュアル表現でストーリーを語る彼は、これまでにベルギーのエレクトロ・ロックバンドGooseのMV「Your Ways」やショートフィルム「ANTON」などを手掛けている。

Thomas Rhazi「ANTON」
dir/Writing/pro: Thomas Rhazi|prod co: pro: Wanda Productions|Laurence Nguyen|DoP: Thomas Ozoux
この「ANTON」をきっかけにラジ氏は物語表現を探求し始める。ある特殊で緊迫した状況下にキャラクターを配置し、そこで起こる人生のごく短い瞬間を描き出すことが好きだと自らを分析。その為に重要な要素はロケーションとキャスティングだと語る。
「Pusher」のMVのコンセプトは、バンドのフロントマンであるジョーから持ち込まれた“ある男が非常に詩的に自分の首を折る”というもの。舞台設定で参照したのは、“スピーカーズ・コーナー”という1970年台のイギリスで行われていた集会や演説。経済状況がどん底にあった当時のイギリスでは、このスピーカーズ・コーナーが盛んに行われていた。ラジ氏は「ヒーローは時にとても過激な振る舞いをするが、暗く悲しい時代の中にあって、他人の心を揺さぶるために出来ることはそれしかないのです。この映像は、人間臭く、奥深く、そして可能な限りシンプルになることを目指しました」と語る。

また、このストーリーは広大なフィールドを360度駆け回るワンカットのようなカメラワークで描かれている。一体どのように撮影されているのか興味津々だが、ラジ氏は本作の神秘性を守るために多くを明かしていない。しかしながら、「この撮影はこれまでで一番複雑なものになった」と語っている。モーションコントロールカメラや円周のドリーは使用せず、またポストプロダクションでモーフィングのテクニックも施されていないそうだ。その代わり、事前に3Dアニマティクスを作り、パーツ別にどう撮って繋ぎ合わせればワンカットのような自然な映像に仕上がるかを徹底的に検証し、撮影に挑んでいる。

因みに、男が首を捻るラストシーンには、ラジ氏の秘められた想いがあった。

「現実に自らの首を折るのは物理的に不可能と言われています。この点は、何人かの整骨医と理学療法師にリサーチしました。これはとても重要なことで、みんな、彼は“死んだ”と思っています。でも私は、彼を“死んだ”者として扱っていません。象徴として描いているのです。不条理な世界の中で、言葉では足らず、涙を流しても挑戦しても、愛をもってしても上手くいかない時、それでも宗教心ではなく、信念をもって“人間とはかく在るべき”というアクションを取り続けるしかないのです」(トーマス・ラジ氏)

2014年にギター/ベースを担当していたGwil Sainsbury(グウィル・セインズベリー)がバンドを脱退し、3人組となったAlt-J。3月からは43公演、およそ5ヶ月にも及ぶ世界ツアーが始まった。残念ながら今回のツアーリストに日本は入っていないが、去る1月に単独来日を果たした彼らだけに、また近いうちに生演奏を聞かせてくれることだろう。その日を心待ちにしたい!


ishikawa
《ARCHIPELAGO》石川直樹 photo:Naoki Ishikawa
©Naoki Ishikawa
外苑前のワタリウム美術館にて、「ここより北へ:石川直樹+奈良美智」展が開催されている。5月10日(日)まで。

「きっかけが何だったのか思い出せない。“青森県と北海道のアイヌ語地名を訪ねてみよう”そんな思いつきから足を踏み出したのかもしれない。(中略)きっかけが思い出せないので、旅のゴールも曖昧なまま、気が付けば、石川君と北へ北へと移動していた」(奈良美智)

「奈良さんと会ったときは、こうした旅をともにするなんて思ってもいなかった。僕だけだったら決して出会うことのなかった人や場所を通して、自分の中にあった地図が次々と塗りかえられていった」(石川直樹)
nara
《ニヴフの子 おかっぱ》奈良美智 2014年
photo:Yoshitomo Nara ©Yoshitomo Nara
辺境から都市まであらゆる場所を旅しながら、作品を発表しつづける写真家、石川直樹と、日本を代表する現代美術家、奈良美智。本展は、2014年6月の青森、7月の北海道、8月のサハリンと、2人で北へ向かった旅の記録を紹介する写真展。

旅の写真のほか、2人の幼い頃のアルバム、靴や日記、リュックサック、本、レコードなどの身のまわりの日常品や創作に使う道具なども展示されている。これまでとは違う一面が見られそうだ。
ここより北へ:石川直樹+奈良美智
会期:2015年1月25日(日) – 5月10日(日)
※月曜休(祝祭日を除く) 時間:11:00 – 19:00(水21:00まで)
入場料:大人1,000円、学生(25歳以下)800円、小・中学生500円、70歳以上の方700円
ペア券 大人2人1,600円、学生2人1,200円
※会期中何度でも入場できるパスポート制チケット
会場:ワタリウム美術館
東京都渋谷区神宮前3-7-6

dobutu250_01
「動物絵画の250年」チラシ 土方稲嶺《猛虎図》後期展示
府中市美術館にて、166点もの作品が登場する「動物絵画の250年」が開催されている。5月6日(水)まで。

大自然の中で動物と出会った時や、身近な動物を見つめている時、私たちは、人間とは別の“生命”の不思議さに思いを寄せる。また“動物”という存在によって、人は様々な美術を生み出し、特に江戸時代の動物絵画は実に多彩だ。

中世からの伝統を受け継ぐ作品はもちろん、個性的な画家による楽しい作品も数多く見られる。“芸術とはこうあるべきだ”といった考え方に必ずしも縛られない時代であり、人と動物との多様な関係が、ありのまま作品に映し出されている。
dobutu250_02
(左)《麦穂子犬図》円山応挙(前期展示)、(右)《猫の当字 ふぐ》歌川国芳(ギャラリー紅屋蔵。後期展示)
“もし動物が人と同じことを演じたらどうなるだろう”、“こんな動物がいたら面白いのに”・・・といった、想像の世界を描いた作品に驚かされると同時に、伊藤若冲が描いた鶏のように、動物の姿や動きから触発されて、思わぬ斬新な造形が生まれた作品もある。

さらには、動物が呼び起こす、得も言われぬ風情やおかしさ、そして、愛おしくて仕方ない気持ちや切なさなど、江戸時代の動物絵画は、現代に生きる私たちと何ら変わらない動物への気持ちや動物を描く楽しさを伝えてくれる。

なお、本展は2007年の「動物絵画の100年 1751 – 1850」展の続編として開催されているもので、前/後期で完全入れ替え、166点の作品を見ることができる。ぜひ“動物という存在の力”を味わいたい。
動物絵画の250年
会期:2015年3月7日(土) – 5月6日(水) 月休(5月4日を除く)
《前期》3月7日(土) – 4月5日(日)
《後期》4月7日(火) – 5月6日(水)
※前後期で全作品の展示替えを実施
時間:10:00 – 17:00
入場料:一般700円、高校生・大学生350円、小学生・中学生150円
※2回目は半額で観覧出来る割引券つき
会場:府中市美術館
東京都府中市浅間町1-3(都立府中の森公園内)