ICAF2014
六本木の国立新美術館にて、アニメーション教育を行う大学・専門学校の教員推薦による映画祭「インター・カレッジ・アニメーション・フェスティバル(ICAF)2014」が開催される。東京本大会は9月25日(木)~28日(日)、その後、北海道、金沢、京都、名古屋でも順次、開催される。

「ICAF」は、アニメーションを専門的に学べる教育機関が推薦する学生作品を一同に集めて2002年にスタートした、日本で最初の学生のための本格的なアニメーションフェスティバル。作品を推薦した教員や出品した学生が上映後に登壇するなど、作者と観客の距離も近く、日本全国の各大学、専門学校の作風の違いや指導の違いを見ることができるのが特徴的だ。

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未来のアニメーションを担う世代が一堂に会する本映画祭、この先話題になる可能性を秘めた作品が多く出品されている。たとえば、2013年に参加した多摩美術大学の冠木佐和子の作品は、昨年のアヌシー(フランス)とオタワ(カナダ)のアニメーション映画祭で入選以降も、世界各地でコンペ入選を重ね、ザグレブ国際アニメーションフェスティバルでは学生部門でグランプリを獲得している。また、先日閉会した「広島国際アニメーションフェスティバル2014」では、主要な賞の多くを学生作品が占めていた。

いま、一番短編アニメーションで脂が乗っているのは、学生作品だと言えるかもしれない。お見逃しなく。

インター・カレッジ・アニメーション・フェスティバル(ICAF)2014
【東京本大会】
会期:2014年9月25日(木) – 28日(日)
会場:国立新美術館
東京都港区六本木7-22-2

【北海道】
会期:11月3日(月祝)
※「新千歳空港国際アニメーションフェスティバル 2014」内にて開催
会場:新千歳空港国内線ターミナルビル
北海道千歳市美々

【金沢】
会期:2014年11月8日(土) – 14日(金)
会場:金沢シネモンド 4F映画館
石川県金沢市香林坊2-1-1 KOHRINBO 109.4F

【京都】
会期:2014年11月29日(金) – 12月1日(日)
※「京都メディアアート週間 2014」内にて開催
会場:立誠シネマプロジェクト
京都市中京区備前島町310-2(木屋町通蛸薬師下ル)

【名古屋】
会期:2014年12月6日(土)
会場:愛知芸術文化センター12F アートスペースA
愛知県名古屋市東区東桜1-13-2
※いずれの会場も入場無料

shinseiki2014
グランプリ受賞作品 須藤絢乃「幻影 -Gespenster-」
恵比寿の東京都写真美術館にて、第37回を数える公募形式の写真コンテスト「写真新世紀」の受賞作品を展示する「写真新世紀 東京展 2014」が開催されている。会期はわずか、9月21日(日)まで。

本展は、新人写真家の発掘・育成・支援を目的としたプロジェクト「写真新世紀」の2014年度(第37回公募)受賞作品を紹介するもので、1,028名の応募者の中から選出された優秀賞受賞者5名と佳作受賞者20名の作品展示に加え、2013年度にグランプリを受賞した鈴木育郎の新作個展「最果(SAIKA) Taste of Dragon」を同時開催する。

去る9月12日(金)に公開審査会が行われ。大森克己(写真家)、佐内正史(写真家)、椹木野衣(美術批評家)、 清水穣(写真評論家)、ヒロミックス(写真家)という審査員5名の合議により、須藤絢乃の「幻影 -Gespenster-」がグランプリを受賞した。

今回展示されている作品を楽しみながら、新人写真家たちの今後の活躍にも期待したい。

写真新世紀 東京展 2014
会期:2014年8月30日(土) – 9月21日(日)
時間:10:00 – 18:00
入場料:無料
会場:東京都写真美術館 地下 1 階展示室
東京都目黒区三田 1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内

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恵比寿にオープンした現代美術を扱うギャラリー「Fm(エフマイナー)」にて、水野健一郎、管弘志、浮舌大輔、伊波英里が参加する企画展「期待と回想」が開催されている。9月23日(火)まで。

本展は、同ギャラリーのオープニング企画展で、美術の分野に捕われることなく制作活動を続けている4人の作家が参加している。

水野健一郎はこれまで多くの展覧会に参加すると同時に、ジャンルを超えたコラボレーションを積極的に行ってきた作家。テレビアニメからの無意識な影響を抽出して映像及び平面作品を制作している。

管弘志は、雑誌やCDジャケット等に作品を提供する一方、国内外での展覧会に参加。直線を用いてモチーフをデフォルメし、マスキングテープやカラス口、ぼかし網などを使って繊細に着彩した作品を制作している。

浮舌大輔は、映像、グラフィック、音楽など複数のメディアで活動を続けている。アーティストグループ「20TN!」の主宰や、OPENdANのメンバーとして作品を制作するなど、ハイブリッドな着想、手法で作品を制作する。

伊波英里は、映像作品を中心に、平面および立体作品を制作。1980年代前半〜90年代前半にかけてのデジタルグラフィックを思い起こさせるモチーフを取り入れ、デジタルを用いた表現の可能性を押し広げている。

なお、展覧会タイトルの「期待と回想」とは、哲学者・鶴見俊輔の書籍のタイトルを引用したもの。現在まで制作されてきた美術史に残る作品に学び、発展させることでマスターピースが誕生する。本展はこれまで制作されてきたマスターピースを“回想の次元にとじこめず、期待の次元で捉えなおす”作家たちによる展覧会だ。

期待と回想 prospect and reflection
会期:2014年9月6日(土) – 23日(火)
時間:11:00 – 20:00
入場料:無料
会場:Fm(エフマイナー)
東京都渋谷区恵比寿南1-14-12 ルソレイユ3 303

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(左)大谷直史:Saatchi & Saatchi Fallon Tokyo/Account Supervisor。2004年に大学を卒業後、一旦は無線通信関連のエンジニアとして就職するが、1年で退職。その後広告業界へ。2012年3月より現職。
(右)藤吉匡:アートディレクター。2003年東京芸術大学 先端芸術表現科卒。同年よりto-kichi名義で衣食住のプロジェクトを多数手掛ける。2006年よりFallon Tokyo(現 Saatchi & Saatchi Fallon Tokyo) 所属。近年のプロジェクトとしてLexus Magazine BEYONDなど。
photo: 荻原楽太郎
Toyota Dream Car Art Contest(トヨタ 夢のクルマアートコンテスト)」は、世界中の子供たちが思い描いた“夢のクルマ”が寄せられる名物企画。毎回、オトナたちの常識にはとらわれない自由なアイデアが集結する。10年目、第8回を迎えた今回は、特設Webサイトの挑戦が話題だ。世界の各地域審査で選ばれたファイナリスト90作を、5月29日から毎日ひとつずつ「Today’s hero(今日のヒーロー)」として紹介。原画だけでなく、それを日本の気鋭作家が映像化した。

この映像化を担当したのは、アトリエKOCKA、井上卓氏、大島貴明氏(IMAGE UNITED)、竹内泰人氏(kirameki)、デコボーカル、ひらのりょう氏の6組。そこで、仕掛人であるSaatchi & Saatchi Fallon Tokyoの藤吉匡氏と大谷直史氏に今回のプロジェクトに込めた想いを聞きつつ、映像作家の言葉と共に子供たちの名作群を紹介しよう。

TOYOTA「Dream Car of the Day – Your like will bring a Dream to Life」
dir: 大島貴明、竹内泰人、宮島由布子&池田恵二(アトリエKOCKA)、上甲トモヨシ&一瀬皓コ(デコボーカル)、ひらのりょう、井上卓|a: Saatchi & Saatchi Fallon Tokyo|film prod co: kirameki|senior ad: 藤吉匡|account supervisor: 大谷直史|account dir: 愛波理恵子|website prod co: COPILOT、SHIFTBRAIN|pr: 船橋友久|assistant pm: 鶴巻瞳|dir/pm: 仲村直|dir: 町田大樹|ad/de: 鈴木慶太朗|html coding: 鈴木丈、國仲義則|pl: 安友裕秋|creative supervisor: 加藤琢磨|pr: 郭 勝|pm: 髙田ゆみこ、佐藤幸|ph: 藤本伸吾、古賀親宗|l: 河田弘樹、前 宏樹|3d printing: iJet|art: 長谷川千純|sound de: 吉武諭
――今回の「Dream Car of the Day」サイトの概要を伺えますか? 藤吉さんがクリエイティブ&アートディレクション、大谷さんがWeb制作の進行とユーザー解析、およびソーシャルメディア展開のご担当だそうですね。
藤吉匡(以下、藤吉):まず「Dream Car Art Contest」について説明しますね。これは世界中の子供たちから、夢のクルマを絵画のかたちで募るコンテストです。絵のサイズがA3というのだけ決まっていて、縦長 / 横長どちらでもいいし、画材も何でもOKという自由さです。今回で10年目を迎え、応募総数も66万件以上と盛り上がってきました。こうした背景があって、その魅力を子供たちだけでなく、より広い人々へ拡散させようとの狙いが、今回の「Dream Car of the Day」プロジェクトの出発点です。

大谷直史(以下、大谷):このサイトでは、各地域のローカルコンテストを勝ち抜き、且つワールドコンテストでファイナリストとして選出された全90作を紹介しています。内訳は、7歳以下、8~11歳、12~15歳の3カテゴリから各30作。特設サイトでは今年の5月29日から毎日ひとつずつを「Today’s hero」として紹介してきました。それぞれの原画をもとにVine映像化したことがキャンペーンの大きな特徴です。

藤吉:もともとクライアントからの要望は、Webを活用した“投票サイト”というものでした。ただ、引き受けた後になって、考えれば考えるほど、ある矛盾に突き当たるようになった。つまり、「Dream Car Art Contest」はその名の通り審査されることが前提ですが、サイト上でも観衆を審査員のようにとらえるのがベストなのかどうか、ということです。

――その魅力を感じてもらう別の届け方もあるのでは、ということですか?
藤吉:はい。閲覧者から各作品の支持数を取得することも簡単にできますが、それは本質ではないように思いました。それよりも、90の「夢のクルマ」一つ一つについて絵そのものをじっくり感じ、その魅力を深掘りする楽しさを提供したい。これは僕らが実際に作品を見せてもらう中で、そこに子供たちの想いやイマジネーションが目一杯詰まっていること、さらにディテールに宿るチャーミングさなどのポテンシャルを強く感じたことも影響しています。

――そこから映像化のアイデアも生まれたのですね。日本の映像作家6組をディレクターに起用し、さまざまな手法を用いているのも特徴と感じます。
藤吉:最初にプロトタイプとして、ある作品を3Dプリンターで立体化したところ、内部での反響が良かったんですね。子供たちの筆さばきによるテクスチャーもそのまま貼り込む形で活かせるなど、クレイなどとはまた違うインパクトがありました。
ただ、原画にない部分を勝手に解釈しない方針上、中には形状的に立体化が無理なもの、難しいものもあった。また、別の手法で映像化した方が原画らしさを活かせそうな作品もありました。例えば「3DCGにしてください!」と言わんばかりの立面図付き作品もあって、これは物質化するよりモニター上の3D表現が向いていそうだと感じさせました。

Dream Galaxy Dragon Car」 Toth Borbala Monika、13歳、ハンガリー。3DCG作品。
大島貴明:原画を初めて見たとき、空力まで想像して描いたような有機的で未来的なデザインに強いインパクトを受けました。風を切って稲妻のように広がる炎のようなフォルムです。獰猛な動物のような息遣いと圧倒的なスピード感を強調し、まるで生きているかのような走りの力強さを表現しました。
――作品側から「映像化するならこうしてくれ」と語りかけてくるような・・・。
藤吉:そこで、3Dプリンターでの立体化に加え、3DCG、コマ撮り、2Dアニメーションといった各手法を念頭に、複数の映像作家さんに監督を依頼することにしたんです。制作会社kiramekiさんに相談したところ、今回の6組を提案してもらい、全員が快諾してくれました。

大谷:最初は「これは3DCG向き」「これはコマ撮り?」と、こちらで1作ずつ検討しましたが、判断に迷うものもあるんですね。二次元、三次元といった考え方を超越してくるようなものも多いので(笑)。そこでディレクター陣も交え、各自で手がけたい絵を決めてもらうようにしたところ、スムーズに進んでいきました。

藤吉:普段から可愛らしい表現も多いデコボーカルのお二人は、年齢の小さな子供たちの作品に惹かれたり、選択にも個性が出ましたね。一方で僕ら側から「この絵の世界観はぜひ、ひらのりょうさんに」といった要望を伝えた上で、最後は各ディレクターの意向を尊重し、選んだもの勝ちという感じでした。

Go Travel! Flying Car」 Cheng,Yi-Lou、6歳、台湾。2Dアニメーション作品。
上甲トモヨシ(デコボーカル):僕らのアニメーションは手描きが基本です。普段はモチーフを動かすためのデザインに変えてアニメートしますが、今回は子供たちの絵を崩さずにそのままトレースし、動きにこだわって作画しました。鉛筆、筆ペン、マジックやクレヨンなどを選択し、絵の世界がより拡がるように意識しました。
――3Dプリンティングを用いた映像はどんな体制でつくられたのでしょう?
藤吉:立体物やコマ撮り手法をよく扱う2組、アトリエKOCKAと竹内泰人さんが主に担当しました。3Dプリントしたクルマを用いたコマ撮りが中心です。3Dプリントはアイジェット社の全面協力で、3D Systems社のZPrinter 850とZPrinter 650を用いました。

大谷:担当映像ディレクターとアイジェットの3Dモデラーさんが何度もやりとりを重ねて、カタチにしています。3Dモデリングが絡む映像については、関係者ほぼ全員がMeshLabを自分のパソコンにインストールして、イメージを共有しつつ進めました。

TOYOTA – Future」 Yuriy Vitaliyovych Rudnytsky、10歳、ウクライナ。コマ撮り作品。
アトリエKOCKA:陸・空・水中と要素の違う3シーンを、演劇の舞台転換のように背景を切り替えて1シーンで撮影する方法を思いつきました。また、ループ再生されるVine動画の面白さを活かすために、最後の海の中のシーンでは背景の水が徐々に干上がり、最初の陸シーンに舞台を戻していく表現をしています。
――一方、原画をもとに切り絵で繊細なストップモーション・アニメに仕上げたものなど、ハンドメイドの手触り感が魅力のものもあります。
藤吉:実はそれも、同じく竹内さんやKOCKAさんに多いケースです。この2組はコマ撮りが多いこともあり、撮影スタジオを用意して共同で使って頂いたんです。互いに隣でやっている作業が見えるから、手の内を明かしまくりとも言える状況です(笑)。そこから両者の映像が進化していくような局面もあり、見ていて興味深かったですね。
他のディレクターはご自分の作業場で制作しましたが、全てのコンテや映像はDropBoxで共有したので、そこでも似たようなことは起きたかもしれません。また制作後半には、アトリエKOCKAさんが粘土での半立体化に取り組んだものもあり、これも独特の味わいがありました。

(上)竹内泰人氏がコマ撮りで手掛けた、台湾のWang, Yu-Tzu(8歳)による「My Wonder Land」の制作風景。(下)竹内氏による絵コンテ(画像クリックで拡大)。
竹内泰人:運転手のイメージした通りに姿を変える車です。変形の様子をどう表現するか悩み、最終的に折り紙の様に畳んで、開いたら形が変わるという手品のような手法にしました。原画もとても上手で、絵のタッチをそのまま使ったコマ撮りらしい表現が出来たと思っています。
――映像を見せるプラットフォームとしては、6秒ループの映像投稿サービス「Vine」を用いていますね。どういう狙いがあったのでしょう?
藤吉:ここは、クライアントとの相談でも重要だった点です。「6秒の映像で絵の魅力が本当に伝わるの?」ということですね。いかに子供たちの作品が素晴らしくても、いきなりポンと示されたとき、どれだけじっくり見てもらえるのか。そこを考えた結果、ふだんのテンションのまま自然に入り込んでもらえて「これ、意外と深いな」みたいな体験を目指しました。その点、Vineの映像は6秒という短尺だからこそ、ここは面白い!というポイントが各映像作家にピックアップされるのではと期待しました。

――ループ再生がデフォルト、という条件を活かした工夫も見られますね。
藤吉:ループ映像の鑑賞は、絵を鑑賞する際の目線の動きにも似たところがあります。繰り返し眺めることで気付くディテールやストーリーがあったり、絵の端にいる名脇役的な存在や、小ネタ的な工夫を見付けたりする体験も、作品に愛着を抱いてくれるきっかけになる。見る人それぞれが「あ、ここ好きかも」と自分目線のチャームポイントを発見してくれたら嬉しいです。

Wat Pho Massage Car」 Jirawat Yodsing、10歳、タイ。2Dアニメーション作品。
ひらのりょう:個人的にタイが大好きなのもありますが、まず原画の美しさ、緻密さ、色の美しさに一目惚れしてアニメーションを担当させていただきました。絵の味を損なわないようにしながら、マッサージを受けている人たちを一人一人全部動かしました。また音楽も絵にあうよう何度もやりとりを重ねてつけていただきました。
――各作品へのLike数も表示されますが、これは最初のお話の通り、何かの評価基準にするものではない?
藤吉:はい。このプロジェクトの大きな目的は、コンテストの魅力の拡散やシェアです。でも一方で、自分たちのことを振り返ってみると、FacebookもInstagramも使うけれど、そうそうシェア行為にはつながらない。やるとしたら“Like”くらいのシンプルさが気軽だねという話も出て。そうした点からも、Vineは今回の目的に適していると考えました。

――サイトでの各作品紹介は、①原画 → ②Vine映像 → ③舞台裏紹介(Behind the scenes) → ④原画&作者メッセージ、という流れで統一されていますね。
藤吉:「Behind the scenes」では制作時の記録写真や、ディレクターが原画のどこに着目したかなどをヒアリングした結果を反映しています。「どうやって作っているの?」と思う人も多いでしょうし、これも作品の魅力を感じるヒントになればとの想いがあります。

大谷:当初、「素材をこのような三部構成で見せるだけだとインパクトが弱いのでは?」という声もあり、そこへ「1日1作品、90日間で90作を見せよう」というアイデアが加わるまでは時間がかかりました。ただ、サイト構築担当のCopilotさんとShiftbrainさんが深く関わってくれたので、デザインに進んでからはスムーズでした。現場では、サイト上での体験とその演出を、映像コンテ的なものでやりとりして進めました。
例えば、各作品紹介の最後には「ありがとう」を意味する言葉が、日中英および、スペイン語、アラビア語のいずれかでランダムに表示されます。この5ヶ国語は、Webで多く用いられる言語を参考に選んだものです。

藤吉:それこそ子供にも易しい操作を前提にしつつ、時間軸に沿ったラフな企画コンテを最初に渡しています。Shiftbrainさんは各種デバイスできっちり動く見せ方を考えてくれました。結果、モバイル版がFWA Mobile Of The Day Award(2014年7月17日)を受賞するなどしています。

TOYOTA the Cheetah」 Jakub Wyzywniak、7歳、ポーランド
一瀬皓コ(デコボーカル):絵をゆっくり覗くと、描いてあるもの、意図、心が見える。一枚ずつ作者の線をなぞり動画を描くと、線を引いた順番、リズム、力に気付く。私は制作中、作者との一体感を感じた。その場の音や景色や香りも受け、時間と空間を共有する。作者と対話しながらの作業を、心から楽しいと思った。
――子供たちが夢を描き、アートディレクターや映像ディレクターの大人たちは、誰もがまずコンテ=体験の流れを描くのに注力した。これはこのプロジェクトを象徴するようでもあり、面白いですね。
大谷:サイト制作に関していえば、そこでの体験をデザインしていく上で、今後はよりそういう作り方になっていくのかな、とも感じています。

藤吉:最初にディレクター陣に了承いただいたことがあります。それは「主役はあくまで子供たちの絵。僕ら大人は黒子で、サイト上にはお名前も出さず、どこの国の誰が映像化したのかも分からないくらいの形でいかせてください」ということ。また、90作品も作るので、進める中で映像化も成長していけるようなプロジェクトにしたい、とも伝えました。実際、後半は「背景の街を光らせちゃおうか」など、各ディレクターが自発的に色々と挑戦し始めてくれたのも嬉しかったです。

My Dream Car」 Luca-Filip Clima、6歳、ルーマニア
井上卓:男子はメカの断面や内部構造に弱いもので、一目でこの絵に惹かれました。猫背でシャクレたお手伝いロボットや、ピカピカのエンジンがクッションの上にボフッと落ちるところなど、チャーミングな発想がたまりません! アニメーションに関しては、原画の魅力をいかに最大限に活かして動かすかに尽きます。やっぱり「僕の絵が動いてる!」って言って欲しい。子供のイマジネーションとアイデアにエネルギーをもらいました。
――映像化で苦戦したものなどもありますか?
藤吉:実は「これ、動かさなくてもよくない?」と思えるものもあって(笑)。言い換えれば原画だけで充分魅力が伝わるものとも言えますが、それでもディレクターさんと密に相談していくと、絶対に答えがあるんですよね。試しに大画面で拡大すると、めちゃくちゃ可愛い描き込みを見つけたり、「これって何を表してるの?」という摩訶不思議なものも、よくよく見つめると「あ! ここをフィーチャーしたいね」という部分が出てきたり。いずれのディレクターもご一緒するのは初めてでしたが、彼らの多様性に助けられたところもあります。

――自分の描いた夢のクルマが実際に動いているのを見た子供たちは、かなり嬉しいでしょうね。
大谷:90作品の応募地域は43ヶ国/地域に渡り、お国柄が感じられたり、逆に「このテイストは東欧かな?」というのが意外と南の方の子供だったり、その多様性も面白いです。なお、日本からも4作品選ばれています。

藤吉:全体的には、いくつかの傾向も見てとれますね。動物をクルマ化したようなものや、リサイクルやエコ / サステナビリティを志向したものなど。一方で、亡くなった友だちを想い、世界から暴力をなくすクルマを発案したお子さんがいたり、ごく個人的な体験から生まれた作品もありました。

大谷:社会問題にフォーカスする際のトピックも、新しい時代を反映しているように感じます。人口過密の解消のために、火星へ住宅を輸送するクルマなど、子供たちは、かなり先を見てますよ(笑)。

藤吉:「Hapiness carrige」などは、トヨタが考える未来のスマートモビリティ社会にもつながる感覚を持ちました。運転がオートマチック化され、事故もなく、社会的燃費もいいカーライフ、ということですね。このあたりはトヨタの「夢を描くことは、ものづくりの原点」というメッセージともリンクします。もし数十年後に実現すれば、「僕があのとき考えたクルマだ!」となることもあり得るかもしれませんね。

Happiness Carriage」 Aysha Mohamed Abol Fateh、15歳、サウジアラビア
竹内泰人:子供たちの通学用の車です。車は3Dプリンターで作ってもらいました。原画を大きくプリントして背景にしています。絵の地平線のあたりで緩く曲げて床と壁にしているので、地面から空まで絵で一体化した背景にできました。車が連結した後にタイヤの向きが回転するところがこだわりです。
――各ソーシャルメディア展開にも力を入れている印象です。
藤吉:拡散が大きな狙いなので、ソーシャルメディアについてはFacebookとVineのほか、Twitter、Pinterest、Instagramと、各特性に合うかたちで対応しています。Facebookでは特設サイトの公開前に、過去の殿堂入り的な15作の原画を1日1作品、紹介しました。本番に向けたシミュレート、ティザー的意味合いでしたが、すぐに約20万件の“Like”がつき、現在は69万件を超えています。今回はグローバル展開なので、地域性に根ざした表現が他文化圏から誤解や中傷を受けないよう、これらのタイムラインを見守るといったこともしています。

大谷:グローバルということでは、テキストの英語表現はネイティブ的なクオリティより、どの地域でも伝わる言葉遣いを心がけました「90days, 90heros」などもそうですね。

藤吉:このプロジェクトは、絵画という表現を、映像という手段で広い対象に“翻訳”するような試みでもあったと思います。言葉では絶対伝えられない部分が、映像化のプロセスで見えてくる感覚もありました。

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Vine動画化を担当した映像作家たち。(左から)一瀬皓コ&上甲トモヨシ(デコボーカル)、井上卓、大島貴明(IMAGE UNITED)、竹内泰人(kirameki)、宮島由布子&池田恵二(Atelier KOČKA)。(左上囲み)ひらのりょう。
――サイト公開後のプロジェクト展開について教えてください。
藤吉:サイトでは、8月26日までかけて90作をすべて紹介しました。その直後の8月29日には、世界コンテストの授賞式がお台場の「MEGA WEB」で開催されました。金・銀・銅賞や特別賞が選ばれ、ベストファイナリストの30組は、各家族が日本に招待されたそうです。これをきっかけに日本文化に触れてもらうのも素敵なことですよね。

他方、僕らは「Dream Car of the Day」での全90作品の中からピックアップされた19作品を歌で紹介する「Dream Parade」という映像も作っています。より長期的にも、これらの作品が愛されるかたちを考えたいというのが制作動機です。それら作品の魅力を2分ほどに凝縮するつもりです。映像は今回のディレクター陣から、大島さんにお願いすることになりました。

大谷:去年の12月からこのプロジェクトに関わり、子供たちの絵と付き合ってきたので、その経験が活きていれば嬉しいですね。

――そうして、子供たちの夢がまた新しい形で走り出すんですね。黒子に徹した大人たちも、彼らの感性に刺激された感じでしょうか。
藤吉:そうですね。僕らも今、気分は子供のようにツヤツヤです(笑)。

■ 5つの質問 一問一答
1: 一番影響を受けたものを教えてください
藤吉:昆虫観察。つまり虫
大谷:Google
2: この職に就いたきっかけは?
藤吉:師匠の日比野克彦さんに「広告なら音楽も映像もイラストも全部できるんじゃない?」とアドバイスされたこと
大谷:インターネットが好き
3: 一番好きな映画は何ですか?
藤吉:CUBE キューブ」をスクエアプッシャーを聴きながら観ること
大谷:ドゥ・ザ・ライト・シング
4: 作業場のまわりに必ず置いているものベスト3は?
藤吉:iPhone、お茶、大判の付箋(To Doリスト)
大谷:うちわ、会社のマグカップ、あめ
5: 今おもしろいもの/事って何ですか?
藤吉:プログラミングで動く映像
大谷:舞踏を見る

取材・文:内田伸一