気鋭のフォトグラファーにして映像作家の奥山由之インタビュー!監督作品サカナクションの最新MV「スローモーション」など奥山が探求する表現の世界を語る!

2015.08.14 Fri

 

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奥山由之:写真家/映像作家。1991年生まれ。広告、CDジャケット、雑誌、カタログの他、映画、MVなどの映像作品も手がける。主な写真集に「Girl」(2012 PLANCTON)、「A REAL UN REALAGE」(2012パルコ出版)がある。第34回写真新世紀優秀賞受賞。
中学生の頃からストップモーション・アニメーションを作りはじめ、高校生で作った映画は全国コンペでグランプリを受賞する。大学に進学するとその興味は写真へと移ってゆく。現在24歳の奥山由之氏は、最も注目されている気鋭の写真家にして映像作家だ。その稀有な経歴、写真家として表現に込める想い、そして最新作のサカナクションMV「スローモーション」についてインタビューをお届けする!

――中学生の頃からアニメーションを作ったり、高校生で作った映画は全国高校生映画コンクールでグランプリに輝いたりと、かなり早い段階から創作活動をはじめられていますが、どんなキッカケがあったのですか?
Aardmanが作ったアニメーション映画「チキンラン」を小学生の時に観たんです。4年かけて作ったストップモーション・アニメーションなのですが、モノづくりにかけるその労力に驚いて。人形をほんのちょっとずつズラしながら、1コマ1コマ写真を撮っていって、それを繋いで映像にしているらしい、と。それを自分もやってみたい、と思ったんです。

僕が通っていた中学校では年に一度、生徒たちによる美術展があったのですが、そこで自作のクレイアニメーションを展示しました。そしたら、美術の先生が物凄く褒めてくれて、それで嬉しくなってしまい・・・。結局、中学の3年間は、家にこもってアニメーションを作り続けていました。1人でコツコツと。今思い返すと結構、暗かったなと思います。

そうして作っていると自然に、今度は“多くの人に見てもらいたい”という欲求が湧いてきてしまい、なぜだか渋谷のスクランブル交差点にあるモニターで流してみたいと思ったんです(笑)。それで、QFRONTを管理していた方に作品を見てもらったところ、気に入っていただけて、「このビル自体の広告として流しましょう」と。1日500回くらい流れたんです。当時中学生の僕としては、もう感動し過ぎてしまって、逆に怖さすら覚えました。たくさんの人に裸を見られているような感覚というか、「あぁ、悪いことをしてしまった・・・」みたいな(笑)。

それで、高校に進学したとき、それを見てくれていた友達が「実写の映画やろうよ」って、廊下で声をかけてくれたんです。

――それは・・・「桐島、部活やめるってよ 」じゃないですか!
あはは。そうかも。面白そうだなと思って実写映画をすぐに撮り始めたのですが、本当にうまくいかなくて。

■コメディ映画の影響は国語の授業でヘビロテされた三谷幸喜作品群!

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くるり10thアルバム「坩堝の電圧」の特典写真集より。
――実写はアニメーションとは違った苦労があったと。
録音ひとつにしても、カット割りにしてもよく知らなかったので、とにかくいろんな映画観て、「じゃあ、こういう風にやってみようか」という試行錯誤が2年くらい続きました。

一応、映画部として活動していたのですが、先輩もいなくて、何をどうしていいのかまったくわからず。役者も演劇部の友達に出演してもらうのですが、いかんせん男子校だったこともあり、男子しか出ないお話ばっかり作って(笑)。

――ますます「桐島、部活やめるってよ」ですね。
しかも、うちの学校厳しくて、校内での撮影は禁止だったんです。部室の中ならバレないだろうって、クーラーもない離れの部室棟で撮影したりして。絶対に存在しないような、架空の部活動を題材に、短編のオムニバス・コメディを作りました。

ただそれも、撮影初日にワクワクしながら部室へ行ったら、建物の周りに鉄骨が組まれていて、ガガガガ!!!って音が・・・。部室棟の工事がちょうどその日から始まったんです。「やめてください」っていう間もなく、補強工事、ガーッ!って。撮影どころじゃなくて。仕方ないから工事の合間合間にゆっくり撮っていきました。執念深く(笑)。

――その作品で全国高校生映画コンクールのグランプリを受賞したわけですね!
中学生のとき、国語の先生が授業中に、三谷幸喜さんの作品をたくさん見せてくれたんです。変わっていますよね。特に「HR」というドラマが衝撃的で。会場にお客さんを入れて1話分のお話を1回本番で通して演じるんです。まさに演劇と同じ状況です。それを8台くらいのカメラで撮影して、編集したものをドラマとして放送していました。海外では主流の、いわゆる“シチュエーションコメディ”のスタイルを、日本ではじめて取り入れた作品でした。それが本当に面白くて。

当時は、三谷さんのことを知らなかったのですが、こんな作品を作ってしまうなんて、なんてかっこいいのだろう、と。こんなにも人を笑わせて、自分は顔を見せずに操っているなんて。その感じズルい、って(笑)。それからは、コメディ映画しか作らなかったです。

――めちゃくちゃ影響受けていますね。
その後、商業映画も撮ったんですが、“制作”ではなくて、“製作”になってくると、学生の感覚ではよく分からないことが出てきて。完成した作品は気に入っていたんですが・・・。それで映画はいったん止め てしまいました。

■気持ちがグラデーションしていった写真への興味

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2012年発行、初の写真集「Girl」(PLANCTON)より。
――その頃、写真に興味を持ち始めるわけですね。
そうですね。映画のコンテ用に、記録として写真を撮っていたのですが、四角のフレームの中で何かを表現するっていういうことに、映画にも通ずる面白さを感じて。ただ写真は、映画よりも表現として相手を刺せる手数が少ないじゃないですか。言葉もなければ、音もないし、前後関係ではなく、瞬間の話。それに色気を感じて。いい意味で曖昧で、奥行きがある、と。各々に想像する余白があって、見る人でその感じ取り方は違う。

学生当時、人としての経験がまだ浅い自分でも、いい意味で、知りすぎていないゆえの抽象的な表現ができる気がして。

――写真だとそういうところから解放され、表現にフォーカスできますね。
はい。なので大学生になってからは、どんどんと写真表現にのめり込んでいきました。最初は、同じカメラサークルにいた可愛い女の子に片思いして、ただ、どう話しかければいいのか分からないんですよ。6年間男子校でしたから。じゃあ、カッコいい写真を撮って振り向いてもらおう、と。ハーフで顔立ちのいい先輩 にモデルになってもらい、なんちゃってファッション写真みたいなのを撮り始めるんです。

――モテたい、それが動機だったんですね(笑)。
最初はそうでしたね(笑)。でも震災などを経るうちに、「いつ死ぬか分からないな」って、自分が生きた証をカタチとして残しておきたいと思いはじめるんです。感情とか、記憶とか、そういうブツとしては存在しない、宙に浮いているものを写真に刷り込ませておきたいな、と。それで、自分が一番感情を寄せている対象を撮りたくて、その同級生の子に「ちょっと撮らせてほしいんだけど」って言って。完成した作品が、写真新世紀で優秀賞を受賞して、その後「Girl」という写真集になりました。それからは少しずつ、お仕事としても写真を撮らせていただけるようになっていて。

――どんなカメラを使っていたんですか?
友達と行った旅行で、フィルムで撮った写真を見たときから、フィルムカメラをすぐ買って、そこから1回もデジタルカメラで撮ってないんです。

――え、一度も?
はい、一度も。シャッターも1回も押してないです。もう、気持ちが悪いんです。

――現在はカメラは何を使っているんですか?
フィルムカメラを15個くらい使い分けています。

――当面、デジタルカメラを使う気はないんですね。
デジタルじゃなきゃ出来ない面白いことが生まれて来ればいいんですが、デジタルに求められていることが、表現というより、利便性のほうが大きい気がして。利便性が勝っている間はそっちにいけないですよね。一瞬一瞬が大事になる、焼き付ける行為の緊張感とか、月並みですが、目の前の空間に起こっていることに、ボクのすべてを注がないといけないですから。

デジタルだと、スタジオ撮影の時とか、みんなが集中するのって、被写体のいる空間ではなくて、確認用のモニターなんですよね。それが全てになってしまっている。もっと広い世界でコトは起きてるのに。どう切り取るのか、もちろん話し合うことは絶対に必要なのですが、最終的に責任を持つのはカメラマン1人でいい気がするんですよ。そうでないと、結局その人が撮る意味ってないんじゃないかと思うんです。最終段階の話ですけど。

■写真ってもっと可能性があるものだと思うんです

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A REAL UN REALAGE」(パルコ出版)より。
――プロの写真家としてキャリアを歩み始めるのですが、奥山さんの撮る写真は広告や雑誌にしても一線を画していますね。
たぶん世の中の人から最も目にされる写真って、駅や街中にある広告ポスターだと思うんです。けれど学生の頃の僕には、それらの写真がどれも同じものに見えてしまって、目を通り抜けるだけというか、引っかかりが無くて感情に届かず、次の日には忘れてしまっているようなものばかりでした。

その状況にかなり危機感を感じていて。これから大人になる子供たちが “こういうものが写真なんだ”と思って育つのは、写真に限らずビジュアルを捉える日本人の力がどんどん落ちていってしまうような気がして。写真には、もっともっと伝え方の可能性があると思うんです。すごくもったいない。ちゃんと感情に届けることに執着したら、ああいうことにはならないと思うんです。広告の概念が変われば、もっとみんなの物の見方が変わるのにって。

そう思い立ち、アートディレクターを目指して、大学卒業後は広告代理店に入社したのですが、結局、まずは自分が力強い写真を撮らなければ、強い素材があってこそのディレクションだ、という原点に戻り、すぐに退社してしまいました。

――電車に乗ると汗が止まらないほどの人見知りだそうですが、目的のための行動力はあるんですね。
勝手に誰も求めていない使命感を感じているっていうか。だっておかしくないですか?と思うことが多過ぎるんですよね。

ポスターって1人につき2、3秒しか見られないから、記号的に素早く、そしてできるだけ強く伝える必要があって、けれどだからと言ってそんなに押し付けなくても・・・というケースがほとんどで。見せようとして力を入れる部分がみな同じで、安直というか。

抽象的な例えですけど、赤いものがあったとして、それがどれだけ赤いかを素早く伝えるっていうのが広告物の使命かもしれません。けれど、赤の横には白もあって、それで赤が白に変わっていく場合もあって・・・みたいに、その変化の過程を部分的に抽出していくっていうのが表現だと思うんですよ。

人間の感情だって、常に移ろいがある。ハッピーから悲しいへ、悲しいからハッピーへ。でも“とにかくハッピー!”みたいに大声で急に横で叫ばれるのが、今の広告の気がしていて。きっと人の心にグっとくるものって、何かと何かの狭間を見たときだと思うんです。もっと曖昧だったり、危うかったり。そこにある波に、色気を感じるんですよね。質感としての色気を。

■映像作家としての奥山由之。サカナクション「スローモーション」を語る

dir:奥山由之|prod co:band & ROVA|pr:生田岳大 、比留田貴子|ani:山本ロビン|DoP:安本奈緒子、中野貴大|l:上野甲子朗|de:松本千広|gimmick work:magma、田中佑佳|sty:三田真一|hm:根本亜沙美|cho:振付稼業 air:man|dancer: Miho Itakura 、Aira Yui 、Hiroko Kurotani 、Moe Sudo|cast:LUKA|ed:佐藤孝至|costume:DARIO(PR01.)
――これまでのお話だと、時間軸がそもそもある映像のほうが難しいと感じられたと。
(山口)一郎さん(サカナクション)がボクにMVを依頼してくれたとき、それまで監督したいくつかのMVをみて「写真で感じる奥山くん独特の、前後を想像させる雰囲気や、色んな要素が見えてなさ過ぎることによる奥ゆかしさみたいなものを、あまり感じられないかもしれない。奥山くんの中にいる、全く別次元のもう1人の奥山君が作っているように思える」と言っていて。

それは自分でも何となく思っていたことなのですが、じゃあなぜなんだろうと。確かに写真と映像とでは現場での在り方からアウトプットに至るまで、制作過程での人間性が別人な気がしていて。とは言え、写真が持っている良さを映像に活かせないか、と無理に考えるのも違うと思うんです。今は、映像なら映像で「これがやりたい!」と素直に思えるものを楽しんで作れているので。

ただ、楽しさの一方で、まだ映像表現の入り口に立ったばかりなんだろうな、という事実はすごく感じるというか。映像ってこれまたすごい可能性がきっとあって、今僕が見えている可能性は、まだまだ映像で出来ることの“ほんの一部の一部”なんだろうな、と思っています。特に自分以外の方の作品を観て、挑戦心を駆り立てられることが写真よりも多いです。「あぁ、こんなことも出来てしまうんだぁ。これカッコいいなぁー!」みたいに。なので写真でもそうですが、毎回新しいことやって、毎回見たことないもの作ってやると、常に思っています。

■クリエイターとして使命感で共鳴し合った出会い

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「スローモーション」撮影中の奥山氏。
――「スローモーション」ですが、写真家としてサカナクションとお仕事をしている中でのファーだったんでしょうか?
共通の知り合いを通じて初めてお会いしたとき、不思議なほどにお互い話すことが似ていたんです。“なんでこの人は、僕がこれから話そうとしていることと全く同じことを話し出すのだろう”と。朝5時まで、2人で話し込みました。

――特にどんな所が共通していたのですか?
“作ること”に対しての姿勢から、生き方まで。特にこれから音楽を聴く人とか写真を見る人などに、自分はどういうものを表現すればいいのだろう、どう見せることがこれからの日本の各シーンを盛り上げていけるのだろうか・・・ということを考えるべき存在として、勝手に使命感を持っていたり。

――「スローモーション」のMVの内容についても密に話し合われたのですか?
もちろん話し合った部分もありますが、基本的には好き勝手にやって欲しいって言われていたので、企画から完成まで自由に作らせていただきました。

――どういう設定のMVなんでしょう?
オファーをいただいてから改めて曲を聴き直したときに、まず最初に思い浮かんだのが「スローモーション」という実験番組を作ることでした。

テレビが導入されて間もなかった頃、深夜に放送されていた番組は、試行錯誤しながらも挑戦しているものが多かったらしくて。そもそも誰が見ているのだろうと思うような、マニアックな科学の番組や教養番組みたいに実験的なものだったり。あとは深夜帯に限らず昔の子供番組って、意外と大人向けのメッセージも内包していたり、キャラクターも可愛いどころか、怖いぞってデザインだけど、やけに哀愁感があったりして。観ているうちに癖になってくるような、ある種の洗脳力みたいなのがあったんじゃないかなと思っていて。

そんなことを、曲を聴いたときにパッと思い出して。サカナクションの曲って、凄く良い意味で“聴いているうちに異次元に呑まれていく感じ”がある。だからこのMVでやりたかったのも、“見ているうちにある種の怖さや違和感を憶える”みたいなことだったりして。曲の雰囲気とは一見不釣り合いなポップなビジュアルを当てることで、可愛らしさと奇妙さ、その裏腹の要素を同時に感じてもらえたら面白いだろうな、と。

具体的には、見たことの無い奇妙な装置が出てきて、その装置の動きをスローで見てみましょう!という実験番組の構成です。モンスターと共に登場する女の子は琉花ちゃんというモデルさんなのですが、さっき話したMV全体のイメージが浮かぶと同時に、彼女だなって。自分の中では、なぜがそこが一番最初に決まっていました。そこから、装置や衣装、照明、美術、振り付けなど、皆さん僕のわがままに対して本当に真摯に向き合って下さったので、その温もりというか、それぞれのお力が現場に集約された時に、「わっ、こんなことになるんだ!」みたいな。グググッとパワーが集まってきた感じで、とても心強い現場になりました。

モンスターデザインと制作は、2体が田中佑佳氏、1体が本編の装置制作も手がけるmagma、白いハートヘッドのキャラクターはファッションブランドDARIOからの借り物。ダンスシーンの振付は振付稼業 air:manによる。 ※画像クリックで拡大します
――カレンダーをめくって、バンドのシーンにいくワンカットのシーンが印象的でした。
ああいうワンカットの流れが、すごく好きなんです。SuperflyのMV「On Your Side」で使った幕の演出もそうですけど、空間の遮りをバっと下ろすだけで、別の空間が現れる瞬間とか、そういう驚きが単純に好きで。小説で言うと、短編集だと思って読んでいた流れが最後には繋がってくる、みたいなことでしょうか。

■映像もやっぱりフィルムカメラで!

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――撮影は、ムービーもやはりフィルムカメラを使われていますね。
今回の場合、最初は16mmで撮ろうと思っていたのですが、質感はもしかしたら8mmの方が似合うなと思いました。過去なのか未来なのか、どちらかはわからないけれど、確実に言えるのは、今、現代の映像ではないという見え方にしたくて。

さっき話したような、昔のテレビ番組のような匂いがする、それは70年代とか80年代とか、そういう細かい年代の話ではなくて、とにかくざっくりと懐かしさを感じるとか、フィルム映像の存在を知らない世代の人が見たら未来のことのように見えるかもしれない、いずれにしても今の映像じゃないよねっていうものです。

あとは要素として、存在感があり、”濃い”雰囲気のものが多かったので、決して生々しく映らないように、全体を一直線でまとめあげてくれるくらいの、強い癖のある映像質感がいいなということもあって、8mmを選択しました。

――テレシネはどうしたんですか?国内でやったんですか?
結果的に撮影までの過程で予算を使いすぎてしまい・・・テレシネは業者に出せなくなってしまいました。そこで、カメラを回してくれた中野貴大さんが、8mmカメラに詳しい方なんですが、彼がテレシネまでやってくれたんです。「え、やれるんですか!?」みたいな(笑)。何日も徹夜していただいて、本当、中野さんいなかったら完成してないです。あの質感も、その“自家テレシネ”ならではの風合いで、これまでも8mmで撮ったことは何度もありますが、今まで業者に出していた時はこういう質感じゃなかったんですよね。

――現場では奥山さん自身カメラをまわすのですか?それとも演出に徹するのですか?
その時々ですが、今回は撮影の方が2人いたので、基本的にはその2人が回していて、フレーミングに拘りたい時や手持ちでカメラが動く時は自分で回しています。カレンダーを破るワンカットのシーンやダンスのシーンなどは僕ですね。

■サカナクション山口一郎氏にとって一番辛かった撮影現場の理由

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――間奏のバンドのシーンについて教えてください。山口さんも登場されているそうですが。
全体通してそうなのですが、写真を撮影する時のように、ハッと思いつくビジュアルを大切にするような構成にしています。”流れ”とか繋がりとかは無視してしまって。だから、突然モンスターが楽器を持って演奏していても、突然、一郎さんがドラムを叩いていても画としてカッコよければOKなんです。

今までの撮影でも、一郎さんが重い人形を担いだり高いところから飛び降りたりと大変な現場はあったけど、今回の撮影が一番辛かったと言っていました。

――というのは?
実は、一郎さんのウィッグがとても重くて・・・。



――衝撃的です。
ここまでやらせてくれるんだって、嬉しかったし楽しかったですね。撮影現場にいたスタッフも、最後まで一郎さんだって気づかなかい人もいたんじゃないですかね。あのウィッグは重いということもあって、頭の締めつけが凄いんです。だから脳に酸素が回らないって言ってました。その状況下でドラムを叩くっていう・・・。

■夏休みに諸君に捧げる“学生時代にすべきこと”

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――ちょうど、夏休みシーズンですが、学生の時にやっておくと良いことをアドバイスください。
僕が偉そうには言えないのですが・・・学生の時ってまだ無茶が出来るじゃないですか。日々の行動から、モノ作り、恋愛や人間関係にしても。モラルが欠けていてもギリギリセーフと見てもらえるというか。

僕も今思うと非常識だったなって思うことをたくさんやってましたが、常識を越えた無茶の範囲には、ある匂いが宿っていて。これ伝わるかな・・・。

卒業して3年目なんですけど、最近思い出すんです。おセンチなやつだと思われたら怖いんですけど、”あの時の匂い”みたいなことって、常軌を逸している、つまり無駄な範囲にこそ存在していると思うんです。今の作品にもその匂いがたまに顔を出したりするんですけど。時代の匂い、体内から感じる匂いがある気がしていて。そういう物をいかに貯蓄出来るかが、学生時代の勝負だと思っているんです。未だにその匂いの延長線上で、モノ作りをしている気がします。

例えば写真集の「Girl」を今見返すと、自分が撮ったもののようには思えないんです。きっとこの人ってこういう気持ちで撮ったんだろうな、みたいな。自分が昔撮った写真を見返すと、じめじめした湿度のような、抑えきれない何かを感じる。そういう“バーン”って破裂して飛び出したストックをかいつまんで、今、作っているところがあると思うんです。

一郎さんも何かのラジオで言っていたのですが、「25歳までに感じたことが、その後の表現も決めていく。っていうぐらいに吸収力が違う」って。だから、絶対にやりたいと思ったら、早いうちに何事でもやったほうがいいと思うし、失敗したとしてもやりきった方が良いと思う。むしろ失敗したことの多くが、今の糧になっています。

初めて友達みんなで映画を作った時のあの気持ちや、片想いをしていた時にその子を撮っていたあの学校の風景とか、川に反射する光とか、そういうものに感情を投げかけていたのが、今も記憶の根底にキレイなものとして残ってる。

何か抑えきれないものがあったから写真を撮っていたし、感情の中で見た景色を残したくて写真を始めたから。冷静にならないで何も気にせずに駆け抜けた人ほど、“バーン”の余力が長いんでしょうね。初期衝動をどこまで大事に持ち続けられるかっていうのが大切だと思うんです。おじさんみたいですね(笑)。

――年末には個展が控えているそうですね!
3年ぶりの写真集の出版と、初の大規模な個展があります。どちらも早く見てもらいたくて仕方ないです。楽しみにしていてください。

■ 5つの質問 一問一答
1: 一番影響を受けたものを教えて下さい
学生時代
2: この職に就いたきっかけは?
写真が撮りたくて、周りの方々の導きで気がついたら・・・という感じです
3: 一番好きな映画は何ですか?
ディナーラッシュ
4: オススメのレストラン or バーを教えて下さい
トロピカーナ のグレープフルーツジュースが美味しいです
5: 今おもしろいもの/事って何ですか?
東京の変化、街のそれぞれの匂い


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