映画「るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編」の舞台裏! 「ロスト・イン・トランスレーション」などアメリカでキャリアを積んだ撮影現場の石坂拓郎が語る、アクションエンターテイメントの撮り方とは!?

2014.10.17 Fri

 

 

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石坂拓郎:シネマトグラファー。1974年生まれ。神奈川県出身。撮影助手時代に、「セクレタリー」(02)、「ロスト・イン・トランスレーション」(03)に参加。その後、2006年にFrameworks Films Inc.を設立する。「ホノカアボーイ」(08)には、照明監督として参加。「さくらん」(07)、「昴-スバル-」(09)、「MW-ムウ-」(09)、「ゴースト もういちど抱きしめたい」(10)、「キミとボク」(11)、「るろうに剣心」(12)、「階段のうた season6」(12/TBS)、「震える牛」(13/WOWOW)などを手掛ける。
高校時代に渡米し、大学卒業後はそのままアメリカを拠点に活動するシネマトグラファー、石坂拓郎氏。TVドラマ「ふぞろいの林檎たち」(1983年)などで知られる脚本家 / 作家の山田太一氏を父に、「101回目のプロポーズ」(1991年)や「風のガーデン」(2008年)などのTVドラマ演出家として知られる宮本理江子氏を姉に持つという映像一家で育つ。11歳離れた姉の影響が大きかったという石坂氏は、大学時代に写真にハマり、カリフォルニア州のチャップマン・ユニバーシティ・フィルムスクールの映画製作学科へ編入。チャップマンスタジオとして映画製作も行う同校の環境は、石坂氏をプロの道へと誘っていった。

ギャファー(照明チーフ)を経て、撮影監督としてキャリアをスタートさせた石坂氏は、「ロスト・イン・トランスレーション」(ソフィア・コッポラ監督|2003年)や「世界の中心で、愛をさけぶ」(行定勲監督|2003年)「拘束のドローイング9」(マシュー・バーニー監督|2005年)に撮影助手として携わり、撮影監督として「さくらん」(蜷川実花監督|2007年)、「るろうに剣心」(大友啓史監督|2012年)などを手掛け、グローバルに活躍している。そんな石坂氏の最新映画作品である、「るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編」の舞台裏について語ってもらったインタビューをお届けしよう!

「るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編」予告編
あらすじ:動乱の幕末で“最強”の伝説を残した男、緋村剣心。かつては“人斬り抜刀斎”と恐れられたが、新時代を迎えて、神谷薫ら大切な仲間たちと穏やかな日々を送っていた。そんな時、剣心は新政府から、“影の人斬り役”を務めた志々雄真実を討つように頼まれる。新政府に裏切られ焼き殺されたはずが、奇跡的に甦った志々雄は、日本政府を狙っていた。
――アメリカでキャリアをスタートさせた後、日本にも活動領域を拡げられていますが、きっかけは何だったんでしょうか?
篠田(昇)さんです。彼が岩井俊二さんと「リリイ・シュシュのすべて」のポストプロダクションをロスでやっていた時、パーティーでお見かけして、篠田さんの作品が好きだったので、話しかけたのがきっかけでした。ちょうどその時、自主映画をHD24pで撮ってたんですね。HDがやっと24コマで撮れるようになった時代で、お互い、そういうHDの先駆けだったので、色々と情報のやりとりをさせてもらいました。

その1ヶ月後、篠田さんから「日本で一緒にやってみない?」って誘われて。で、初めて仕事で日本に行ってみたら、なんと行定勲監督による浜崎あゆみの予算3億円のMVという大きな仕事でびっくりしました(笑)。

――撮影監督方式のアメリカと、撮影部カメラマンの日本と、システムが違いますが、その辺の仕組み上はすんなり入っていけましたか?
日本は撮影チーフがいて、フォーカスマンがいて、セカンド、サードがいるって聞いていたので、行ってみたら、「チーフもフォーカスもお前がやれ」ってことで、メニュー、フォーカス、チーフと全部やることになりました。篠田さんからも「大変だったな」って(笑)。でも、上手いことやれたので「セカチュー(世界の中心で、愛をさけぶ)」に呼ばれたんです。結構なプレッシャーの中で必死でやりました。そこから、知り合った人たちに映画「さくらん」の仕事をいただいたんです。

当時は、撮影監督システムで、日本でも照明も自分でやっていたのですが、作品規模が大きくなってくると、機材屋と付き合いのある照明技師さんの方が安く持ってこれるし、細かい指示を撮影と照明全てにおいて僕がするかしないかだけの違いだけなので、日本では日本のやり方の方がいいかなと思いました。結局、優秀なギャファーと優秀な照明技師って、やっていることって同じなんですよね、コミュニケーションの取り方が違うだけ。しかも僕は、カメラオペレートもやらなきゃいけなくて、照明の方を瞬時に出来ないことが増えてくるんですね。ですから、あまり仕組みにこだわらず臨機応変にやっています。

――「るろうに剣心」も、そういう人との繋がりから関わることになったんですか?
スタッフの方から電話をもらいました。最初は、違う監督作品という話で、僕としては作品とその監督の作品性がマッチをしていないように感じて、躊躇していたんです。その頃に見た、NHK大河ドラマ「龍馬伝」の大友(啓史)監督のような人がやればいいのになと思っていたんですね。大友さんは演出家としてだけでなく、NHKであの映像をOKにさせた政治力がハンパない人だとも感じていて、周りの人に「大友監督のやり方面白いよね。いつか一緒にやってみたいな」って言っていたんです。

そうこうするうちに、「るろうに剣心」の企画が練り直されて、監督が大友さんになっていたんです。嬉しくて、最初の顔合わせはSkypeだったんですが、いきなりもう、そこでワーッて色んな話になりました。僕からも精一杯アイデア出して、「オッケー、じゃあ一緒にやりましょう」となったんですね。でも、この「るろうに剣心」シリーズの制作は面白かった。美術や関わっているスタッフも、別の現場でみんな助手時代に会っていた人が多くて。それが、まさかここで、全員こういう形で集まるとは。

■「るろうに剣心」始動。撮影の強力な助っ人はMoVI!
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©和月伸宏/集英社 ©2014「るろうに剣心 京都大火/伝説の最期」製作委員会
――大友さんの言葉に、「アクションを撮るというのはモーションを撮るということで、でもドラマはエモーションで撮る。エモーションとモーションは一つだから、それを表現していかないといけない」とありますが、続編の「京都大火編/伝説の最期編」ではそれが大きな挑戦だったかと想像します。
第1作目の「るろうに剣心」の時からルールは同じなんです。“誤魔化しのアクション映画はダメだ”。アメリカの低予算映画によくある「芝居を長玉2台で挟んで、カメラを揺らしてシャッター切って、パラパラさせて、はい、カッコいいねー」ってやつ。そういうのって物凄くカット数が多いから、何が起こっているか分からないけど、凄いことやっている風に見えるんです。

でも、それをアクション映画でやっちゃうと、全編そうなっちゃってダメじゃないですか。だからやっぱり、「どういう意図でこの闘いのシーンが始まって、彼らは何をしようとしているのか」ってことをはっきり動線の中に入れなくちゃいけない。誤魔化さないで、ちゃんと撮る。何故ここで手が出て、どうしてここで蹴りが出るのかっていうのが、ギリギリ情報として残りながら、迫力を失わない距離感みたいなものを探さないといけない。

レンズって、被写体と離れれば離れただけ、見る人もその気分になるんですね。長玉を使ってアップで撮っていても、離れた感じになるんです。一方、ワイドレンズで近づいて撮ると、そこにいるって感じがするんです。ですから、本作はなるべく近くで撮影しています。もう、殺陣が当たらないギリギリで。これは「るろうに剣心」の時から一貫してやると決めていたことです。

とは言え、実際、僕もバンバン斬られるし、肘もバンバン当たる。それでも頑張ってやる。役者ともお互い当たってもしょうがないねって気分ですよね。ただ、彼らに怪我をさせてはいけないので、そこは気を遣いました。

――誰もが知りたいと思っていることに、あのダイナミックなアクションシーンをどうやって画に捉えたのかということです。既に情報としてCG無し、早回し無しというのは出ていますが、現場で演じているライブの迫力をどう押さえていったんですか?
本当に、(アクションに)近づいて撮ることですよね。それで殺陣が当たって、殴られてもしょうがない。シャッタースピードも、必要なところ以外は切ってないですね。ブレを無くすらために切るだけです。本当にアクションが早いんですよね。

――ドラマ部分とアクション部分の撮り分けは意識的にされていましたか?
やっぱり、それが一番の課題でしたね。アクションはモーション、それをどう撮り切るかの勝負。アスリートみたいなもんですよね。
ところがドラマのエモーションになってくると、全く違うモードになります。あるものをありのまま撮るんじゃなくて、その後ろにある感情を撮りに行くという意識です。

撮影部がその切り替えを気持ちの部分からやらないといけないけど、そう簡単にはいかなくて。感情を撮るということでいうと、すぐに本質を見せないといった細かい所に気を配っています。格子の間から抜けて、だんだん見えてくるとか、ちょっとした工夫をしています。

アクションに関しては、本当に動きが激しいから、こっちも動いちゃうと、情報が多すぎてわけ分からなくなってしまう。だから、「るろうに剣心」では、カメラはアクションと一緒に移動するんだけど、手持ちじゃなくてレールを敷いたり、安定させたカメラの動きにしています。

続編も考え方は同じなんですが、手持ちがどうしても増えてきちゃって。理由としては、「るろうに剣心」はアクションの動線が直線だったんですが、続編では、もう、回る回る、どんどん回る。それでもなるべく安定させて撮影するために、途中からMoVIというリグを導入しました。まだ、アメリカで発表された直後だったのでプロトタイプが世界に2台しかなくて、Freefly社の社長に手紙を送ったり、最終的には現地に行ってもらって交渉して、8月にデモ機第1号を入手して、次の日から使いました。

――そのMoVIで実現出来ることは何だったんでしょうか?
ステディカムは物凄い大きいし、中間からローアングルのカメラワークが出来ないんです。MoVIは、そこが得意なんですね。それに加えて、どんなに荒れた動きをしても、手ブレしない、映像が安定する。
スケジュールがとにかくタイトなのでどんどん撮らないといけないけど、時代劇だから、森、石の中庭という舞台セットに、その都度レールを敷いて、撮ってまた敷き直してなんてやっていたら、まぁ終わらないんですよ。

MoVIはレールを敷かなくてもどんどん撮れる。届いた翌日から、使い方も分からないまま取り敢えず使って、それからはほぼ毎日使いました。いやもう、たぶん無かったら出来てないです。

――MoVIを使った手持ちで様々なアングルで捉えるということは、体力的にも過酷な現場だと予想されます(笑)。
もう、相当走りましたね。役者が回る殺陣だとすると、僕らカメラマンは外周を回らなきゃいけないんです(笑)。しかもロケーションでやっているので、足場は悪い。「こっちに行ったら崖!」みたいなところで撮るんですよ。スタッフに体を抑えてもらって、落ちないようにしながら回り込んでいく。
四乃森蒼紫(伊勢谷友介)との戦いは究極に足場が悪かったですね。通りでアクションをしている役者を、僕は石垣を飛び越えて横から撮っていかなくちゃいけない。「よいしょー!」って石の上に乗って(笑)。

おまけにプロトタイプを使っていたのでMoVIも重かった。それにカメラ、サイドハンドルがついて、その中にバッテリーがあって、リモートフォーカス、ワイヤレスビデオ、自分のモニター、そのバッテリーが2個って全部付いてくと、物凄い重量になっちゃうんですよ。だから、撮影直前までスタッフにサポートしてもらうんです。

芝居の時はもう、台詞の間に腕が上がらなくなってくる。で、揺れても揺れても画面に映らないから、誰も分かってくれない(笑)。 でも、あれがなかったら撮れていないシーンは沢山あります。瀬田宗次郎(神木隆之介)が最後の決戦で倒れて泣くシーンは、本当に地べたから狙っていて、MoVI無しでは難しかった。

凄く可能性が広がった。採用して大正解でした。アクション監督の谷垣(健治)さんも本当に気に入ってました。というのも、手持ちじゃないと間に合わないし、動きを予測して反応しないと間に合わない。アクション部からの厳しいご意見に応えていかなくちゃいけないので、MoVIがあって本当に助かりました。

■ アクションとカメラワークの関係
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©和月伸宏/集英社 ©2014「るろうに剣心 京都大火/伝説の最期」製作委員会
――アクションを先に作ってから、カメラワークを決定していくんですか?
まずは、アクション監督の谷垣さんによる予想カットを元に、ポイント、ポイントで意見を出し合って進めていきます。谷垣さんがやっぱり凄いから。
もう少し詳しく流れを説明すると、まず、谷垣さんから予想カットの発表があります。例えば「ここで始まって、子供を取り返しに来ているのを回り込んで、ここでは縄を切って・・・」という風にバーと出すんです。そのままだとワンカットで撮影するには長いので、アクションを切っていきます。一連のアイデアを監督に見てもらって、OKが出たら役者さんが場に入って、動きを監督が再度つける。でも、大友さんは、基本カットを割らないんです。とりあえず全部撮るんです。それが、物凄い大変なんです(笑)。

そして、それを見ながら台詞の位置を決めていきます。「ここだったら台詞言えますね」という風に、アクションの“間”をどこで作るか決めていく。その後、芝居から撮っていきます。斬られたり、血が出てくると一気に撮影出来ないので、その都度カットしていきます。

ただ、ワイドマスターに関しては、頭から最後まで通しでやることも多いんですよ。血がついてなくても気にしないで1回撮っちゃうんです。もしくは付いたままで。そうするとみんな、このシーンで何が起こるか、どう流れていくか把握できる。そういう流れを大友さんは大切にするのがいいんですよね。それでも、「京都大火編」の神社のシーンは、アクションあり、こっちでは刀を取りにいくわ、と大変でしたね(笑)。

――大友監督とのやりとりについてですが、大友監督への取材時に「指示をしない」とおっしゃっていました。
そうですね。全然指示されないですね。前述の通り、全員が分かるようなマスターを撮ります。それが監督の中で前後のシーンと繋がり合わせてOKってなった瞬間から、中に入っていく。
その時の、僕のちょっとした工夫なのですが、そのマスターの画がエキサイトするくらいのサイズから入っていくのが重要なんです。そうすると、大友さん、燃えてくる。監督が燃え上がると、色んなアイデアが更に出てくるんです。

だから、毎回、どうマスターを作ろうということを考えるんです。まぁ、そこで撮ったものは、ほぼワンカットとしては使われないですけれど(笑)。でも、それがあると、どっち側から撮るのが、気持ちとして入っていきやすいのかといった本質的なことも見えるんです。剣心の背中からなのか、剣心を受けるのか・・・。カメラは先に行くべきか、一緒に入っていくのか・・・。とにかく時間はかかります。

――それは大友監督特有のスタイルなのですか?
特有ですね。たまに「じゃあ、任せたよ」っていうタイプの監督さんも他にはいますが、多くのそういう方は、責任持たないのと、自分の考えが無い人もいるんです。なので「それいいねー、これもやっぱいいねー」と優柔不断になっちゃうんですよ。大友さんは自分の設計図があって、その上で「お前はどうするんだ」ってことをしているんです。違うことをやると、正解が見つかるまでやらされる。そういうやり方なので、たとえ間違えても、監督が責任を取るという覚悟でやられているのを感じますね。

他に独特というと、カットがちゃんと撮影のルールに従って正確に繋がらなくても、別に気にしないっちゃ気にしないんですよ。気持ちが繋がればコンティニティがちょっとズレててもOK。映画の既存のルールとか関係ないんです。演技がしっくりくるものが撮れたらOKなんです。

――素朴な疑問ですが、大友監督は詰めた画が好きなんでしょうか?
大好き。大好物なはずです。「るろうに剣心」では自分的には寄りが多すぎる印象だったので、続編にあたっては、ワイドで切らせてもらえるように都度囁いていました。広い画を編集に残してもらえるように、続編では頑張りました。大友さんも、続編では基本任せてくれました。

――1日に大体何カットぐらい撮影されたのですか?
多い時で、26カットくらいですね。そもそも特殊なやり方なので、カットっていうのがもう分からない。26回戦と言った方がいいでしょうか。カメラ位置を26回変えて撮るのですが、抜けに何かが映り込んでいて、撮影チームにどこ使うんだって言われても、全部使うんで撮って下さいって言うしかない。それがルール。もしかすると、いいもの撮れてちゃったら、使っちゃうかもしれないでしょ。どこまでそれを僕らが細かくやりきるかっていう勝負。予想外のものを撮る為に時間がかかるっていう覚悟ですよね。

――その26回戦をどう撮るかというのは、当日に決めているのですか?
今回、ロケハンに1回しか行けないから。当日行って、その朝リハーサルで初めて出来たのを見て決めるスケジュールだったんです。だから、たまに「え?」っていうとこから始まったりする。自分の撮影プランが全部崩れるんですよ、バラバラバラって。

そういう時に参考になったのが、アートボード。イメージを描いてくれているのですが、それが最高なんです。そのイメージをみて、みんなで勝手にやりだすっていうスタンスでした。

こんなこと言うと関係者から怒られるかもしれないですけど、日本のクルーに一番足りないのは適当力だと思います。アメリカや香港映画は、「今日やっぱこっちで撮るわ」となった時に、「そこにありません。言われてません。会議で聞いていません。だから用意をしてません」じゃなくて、適当に別のシーンで使った中から使えるものをバーンと置いて、作っちゃう。全てそれでは流石に無理ですが、大友組は良い意味でそこをやらされるし、出来るから凄いって思いますね。

■ カラーグレーディングにおける挑戦!
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使用ソフトはLustre。コンポジットも出来るオールインワンのソフト。
©和月伸宏/集英社 ©2014「るろうに剣心 京都大火/伝説の最期」製作委員会
――続編では絵がどっしりとした印象がありました。MoVIの他に新しく取り入れたアイデアがあれば教えて下さい。
「るろうに剣心」ではノーマルでライティングをして、撮影では色はつけず、カラーコレクションで色を付けていましたが、続編では影にグリーンを、中間はシアンをいれ、ハイライトはY(イエロー)、という風に、現場で色のスタイルを作って、色でコントラストを付けていきました。陰影でコントラストを付け過ぎると、エンターテイメント作品として暗くて見えにくくなってしまうんです。

大作感をどう扱うかがテーマでした。そのソリューションの一つが、“暗さ”を色で出していくことだったんです。暗いところも全部見えるけど、それは認識として色が青いから暗く感じるように心理的な効果を利用しています。
・・・だったんですけど(笑)、大変だったのが、全体をシアン系に持っていくと、オレンジ系がいい感じにならないんですよね。そしたら、照明の平野(勝利)さんが、明暗の差をカラーライトで作ってくれました。このライトがいいオレンジでフィットして。カラーライトが凄い効いているんですよね。

――火を扱ったシーンも多かったと思いますが、その辺はいかがでしたか?
火に関しては、オレンジ想定にしていたんですけど、最終的にはやっぱり赤、それも、ちょっとオーバー目に赤を目指しました。

カラコレでもやっぱり議論は色々ありましたね。最初作り方を探る作業が難しくて。「るろうに剣心」では、全部1カット1カット指示を出すやり方だったんですが、それは流石に二度と出来ないですし。

ピクチャーエレメントの齋藤(精二)さんという凄腕の方に出会い、続編をお願いしました。技術的にも、アーティスト的にも分かってくれる方なんです。ただ、最初に「京都大火編」をやってもらった時、物凄くいい感じなんですよね。いい感じなんだけど、“るろ剣ルック”の派手さが無かったんです。悪くはないけど、どこか寂しい感じでした。

そこから“るろ剣ルック”へもって行く作業が難しかったです。大友監督も交えてディスカッションを続けていく内に、齋藤さんの使っているコントラストのカーブをもっとアグレッシブなカーブにしてもらって、それを当て直してもらった。そうした時にやっと色がバーンって出て、派手な“るろ剣ルック”が立ち上がってきた。
「これだね!」っていう瞬間があったんですよ。高い技術を持っている人と、目指すところを探っていく過程というのは、大変でしたが僕にとってもすごく勉強になりました。

「京都大火編」では派手さを残しつつも大人へと成長し、一方、「伝説の最期編」では、やっと大人になれたという色味を目指しています。「伝説の最期編」はオーバー目にグレーディングするのを一切やめました。その時にポイントとなったのが、LUTをカスタマイズしたものを使ったのですが、昔のコダックのフィルムのルックがベースになっているLUTなんです。
キャラクターの色のボケ方、ハイライトのYR系、暗部にシアンという特徴があるのですが、それを見た時に「あぁ、そうか」って思ったんです。僕は、長年フイルムで見てたものに辿りつきたくて、デジタルをいじってたんだなっていうのに気付いたんです。

■ カメラマンとしての挑戦!
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©和月伸宏/集英社 ©2014「るろうに剣心 京都大火/伝説の最期」製作委員会
――続編でも引き続き沢山の挑戦が行われたわけですが、石坂さんの中で特に大変だったことって何でしょうか?
とりあえず生き抜くことですかね(笑)。いや、本当に移動、スケジュール、ハードな撮影と大変だし、1日倒れることも許されないわけですから。

――撮影自体も、日本では初と言われているカメラマンもワイヤーで吊るされて撮った場面もあるとか伺っています。
しました、しました。楽しかったですけどね。僕、結構、高いところ大丈夫なので。
「伝説の最期編」の後半、宗次郎が2階から飛び降りるシーンは、吊るされる以上のことをやりました。MoVIを使って、何が出来るのかって話をアクション監督のチーフの大内貴仁さんと話して出てきたのが、とにかく(役者と)一緒に飛び降りて撮りたいね、ということでした。

そういう撮り方で有名なのが、マット・デイモン主演の「ボーン・シリーズ」なんですが、「それをどう超えるんだ」みたいな話になりました。「ボーン」はバーンって飛んだら、そこでカットなんですよね。ガシャーンって飛び込んでガラス割ってカット。それじゃあつまらないから、その後も(役者に)付いていこうって案を出しました。

可能なのかどうかわからなかったんですけど、大内さんに球を投げた。そしたら大内さんから出てきた答えは、大内さんがMoVIを持って、一緒に飛び降りるというアイデア。宗次郎役のスタントに付いてカメラを回しながら、穴に一緒に飛び降りて、着地して、そのままスタントを追い越して、回りこんで撮影をしたんです!
ジャンプの体制でアングルがズレてしまうので、そこは僕がリモートで、アングルの上下をコントロールしました。一連を20回ぐらいやって、やっと撮れた。あれは凄い大変でしたね。でも、絶対いいものになるって確信があったので、時間はかかるけどやりきりましたね。

――他に想像以上に上手くいった場面はありますか?
最終戦で四つ巴でバーーッと戦って、バーンって間合いを離して散らばる俯瞰の箇所でしょうか。散った時にクレーンが上がるんですけど、役者やスタントマンがフリースタイルで通しで戦っているのを、タイミングを見計らってクレーンをボーンって上げたり下げたり、ライブで撮影しているんです。

クレーンの超ベテランのオペレーターに要望を伝えて、あとは彼の感覚に任せたところ、ピタリとハマりました。(役者が)バーンって散ったら、クレーンはぐわぁーって上がって、(役者が)再び突っ込んできたらクレーンも突っ込んでいく、そこら辺のタイミングが最高でした。

あとは、「京都大火編」のオープニングの火の地獄の箇所ですね。

――いきなりクライマックスかと思うくらい、度肝を抜かれたビジュアルでした。
あの場面は、CG部とのやりとりが面白かったんです。ポストプロダクションに(撮影素材が)回って、「CGはこんな感じでどうでしょうか」って最初に上がってきたのが、全然ダメだった。でも、VFXスーパーバイザーの小坂(一順)さんが凄くて、もう、すぐ修正してくるんです。

あそこは、火の海、地獄絵図の場面なんですけど、REDのカメラはどうしてもハイライトが弱いんです。暗部まで撮る絞りだと、火の赤は残るけど、火の芯が飛んじゃうんです。特に、ガスで火を作っていたので、高温になる芯の部分は飛んじゃうんですよね。ガソリンだと、黒い煙が混ざるのでもうちょっと残るのですが。

小坂さんの方で、それを補完するように、火を、火と火の間に仕込んでくれていたんですが、芯のない火を増やしたから、どこに目をやっていいのか分からないくらい眩しくなってしまった。これではダメだってことで、ずーっと話をしてたどりついたのが、素材撮りをすること。実際にもう一回燻っている火やいろんな火を作って撮って、元の素材に混ぜ込んでいったんです。妥協なしのやりとりをしましたが、あそこまでリアリティーを上げてくれたのは凄いですよね。

――本作の撮影でREDのEPICを選択した理由は?
なんでREDかっていうと、1つはアメリカ人が作ったカメラだから。日本やヨーロッパ製のカメラには出ない独特の色があるんです。大味というか、派手というか、ちょっとこう、スムーズにいかない感じがいいなと思ったんです。

リドリー・スコットとかトニー・スコットとか、テレシネ時代で育った人たちだから、リニアルックが大好きで。彼らの映画を観てると、テレシネの仕方がリニアに近い、色とか出方が独特で、ギトギトしてる感じを受けるんです。フィルムで撮ってビデオっぽい環境でカラコレする質感。
REDの撮りっぱなしの画がそれに近いというか。そういうアメリカっぽい色の出し方が、アメリカ人の作ったREDにはあるなって。この映画に、繊細さは要らないと思ったんですよね。荒々しいのを作りたかったんです。

もうひとつの理由は、MoVIを使うから圧倒的に小さなカメラでなくてはいけないかった。
そういうサイズ感だから、役者に近づける。それで、手持ちで飛び降りたりできる。アクション映画では小さいカメラというのは有効ですよね。

――最後に、やりがいもあり、達成感もあった現場だったんじゃないかと思いますが、興行も大成功となりました。現在の心境をお聞かせ下さい。
やれなかったことをやれたんじゃないかな、と思ってます。一生の内に何回出来るか分からない現場の一つではあることは間違いない。スタッフみんなと話すと、「これが代表作で、あと何年僕らは代表作って言い続けなきゃいけないんだろうね」って。この作品をそれぞれがどう超えようかっていうのをもうみんな話していますね。

そういう意味で、このシリーズはいいことでもあると同時に、ずーっとこれに縛られるんだろうなとも感じていたり。ずーーっと「るろ剣みたいにしてください」と言われるのは困るでしょ(笑)。

この映画をやって、映画って共同作業だし、総合芸術だなって改めて思いました。1人の才能ではなく、みんなが持ち寄りで、凄くうまくいった。無理してでもやってやるっていう40代、30代、20代の、ギリギリ耐えられる体力を持ったみんなが集まった結果だったんです。罵声が飛んでもいい、意見は言うし、言われた人は結果で示す。今このタイミングで、この作品だからこそやるしかないっていうのは、みんなの共通の意識だったと感じています。

■ 5つの質問 一問一答
1: 一番影響を受けたものを教えてください
家族
2: この職に就いたきっかけは?
運命
3: 一番好きな映画は何ですか?
ラストエンペラー
4: 作業場のまわりに必ず置いているものベスト3は?
良い靴
5: 今おもしろいもの/事って何ですか?
全部
Blu-ray「るろうに剣心 京都大火編」
2014年12月17日発売|アミューズソフト|7,128円

取材協力:松永勉
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