サカナクションからPerfumeまで。映像作家、関和亮の演出術

2010.03.31 Wed

 

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関和亮(せきかずあき)プロフィール:1976年長野県生まれ。1998年ooo(トリプル・オー)所属。2000年より映像ディレクターとして活動を始め、2004年よりアート・ディレクター、フォトグラファーとしても活動。現在に至る。
2010年1月、ある1本のミュージックビデオ(MV)が話題となった。それがJ-POPバンド、サカナクションの「アルクアラウンド」。夜更けの幕張メッセで、バラバラに置かれた文字のパーツがある1点でのみ形を成すアイデアを魅せた作品だ。これを手掛けたのが、超人気のアイドルグループPerfumeのアートディレクションで活躍する映像作家、関和亮氏。映像作家、写真家、デザイナーなど多岐にわたってユニークな作品を生み出すクリエイティブ術について聞いた。

■「監督になりたい」と「映画を作りたい」は違う
サカナクション「アルクアラウンド」 dir: 関和亮
子供の頃から映画が好きだったという関監督。「プラトーン」や「フルメタル・ジャケット」などの影響を受け、自宅のHi-8で友達と戦争映画を撮影して遊んでいたという。父が自宅に作った暗室の影響で高校の頃には写真にも興味を持った。MVという表現を初めて意識したのは、「ミュージックトマト」や「ビートUK」など深夜TV番組を見て。音楽と映像が一緒になった世界観に魅了されたという。

――どのようにしてこの道に入られたのでしょうか。
理系の大学に進学したんですが、やっぱり「音楽ビデオがやりたい!」と思って親に内緒で3ヶ月で自主退学しました。もちろんバレましたけど(笑)。その後バイト先の店長が錦織良成監督(映画「守ってあげたい」)と知り合いだったのが縁で、2年間助監督として働きました。助監督業と並行して映像の専門学校にも通っていたんですが、最初は"監督になれるわけがない"と思っていたんです。僕は監督という職業に憧れていただけだと。つまり「監督になりたい」と「映画を作りたい」は違うんだと気付いて。専門学校でのノンリニア編集の授業がきっかけで編集マンを目指そうと。理系なのでコンピューターやソフトって面白い!と思ったんです。

でもやっぱりMV制作がやりたいという思いはずっと胸の中にあって、周りにもその意志を伝えていました。すると、先輩がトリプル・オーを紹介してくれたんです。アルバイトで初めての現場はカスケードの「S.O.S ロマンティック」(永石勝監督)の制作をしました。その後、永石さんが80年代からBOOWYのMVを手掛けるクリエイターだと知って驚きました(笑)。

ノンリニア編集が出てきた頃、VJ世代というか、TOMATOやデザイナーズ・リパブリックら、モーション・グラフィックスの全盛期でした。もちろん自分でもAfter Effectsでアニメーション制作がやりたいと思って挑戦してみましたよ。でも、会社の仕事が優先ですから時間がなくてちゃんと取り組むことができない。グラフィックを動かすスキルが足りなくて、もがきました。逆に仕事ではミュージシャンや役者などの写真撮影現場が多く、止め画のグラフィックの強さに惹かれていって。主役のパフォーマンスや勢いをどう画面に収めていくか、ということを現場で学ぶのが第一でした。

■サカナクションMV「アルクアラウンド」撮影の舞台裏
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サカナクション「アルクアラウンド」の撮影風景より
――サカナクション「アルクアラウンド」のMVはかなり凝った作品ですね。
楽曲を聴いた時にまずコトバが入ってきました。全部日本語だし、ですます調で耳に残る。この曲の詩の面白さを表現するためには、前から温めていた「オブジェクトがある1点からだけ形に見える」というアイデアがぴったりだと閃いたんです。アーティスト側からも自由に制作して欲しい、と全面的に任せて頂いて、企画の段階ではたくさんのアイデアを詰め込みました。例えば歌詞を全部パネルにしたり、"白い文字が黒い背景に重なった時だけ見える"などトリックアートのような仕掛けを作ったり…。結局プロデューサーに止められ(笑)、実際の撮影現場で調整を行って現在の形になっています。ダークな色味や夜のイメージは、ボーカルの山口くんからのリクエストです。

――文字が1点だけで形を結ぶというのはすごく面白いアイデアですよね。
でも、なんだかんだ言ってもそこに文字が置いてあるだけですから。本当にスゴイと思わせるためには、もうワンステップが必要。それがワンカット撮影でした。実は撮影に入るまで、果たしてこのアイデアは本当にかっこいいのか?と半信半疑だったんですよ。事前テストもできなかったので、ますます不安に(笑)。撮影現場には文字を並べやすい、幕張メッセの廊下と外のテラスを選びました。

――実際の撮影ではどうでしたか?
前日に撮影現場に入ることができなかったので、当日の建て込みで朝7時にスタッフが現地入りし、リハーサルを始めたのが夜中の12時。アーティストたちのリハーサルは3時間程度しかできなかった。夜がテーマの作品なので、朝が来る前に撮らなければならない。それなのに、1回目のリハでは、まったく何もできなかったんです。これは焦りました。

でも実際にやってみると、"これは絶対面白くなる"という確信が生まれました。そういう空気感は現場にも伝わるので、現場はすごく盛り上がりました。昔から一緒に組んでいるカメラマンの矢部弘幸(SPACE SPARROWS)さんと相談し、トリックの取捨をして撮影を進めました。ひたすらリハとテイクを重ねて、最終的に撮影したのは十数テイク。その中で2つ完璧なテイクができたんです。1つは既に朝になってしまっていたので(笑)、夜のバージョンを採用しました。朝焼けの別テイクをもすごく良いので、いつかリリースできる機会があればいいなと思っています。

――カメラは何を使用されたんですか?
Canon EOS 5D Mark II(以下 5D)を使っています。本来はステディカムで撮影するべきですが、5分のワンカットをステディカムで撮影するのは困難でした。現場には5DとSONY XDCAMを持ち込み、試し撮りで選びました。今回は行き過ぎた時に戻れたり、修正ができるという機動力を考えると5Dになったんです。

■いわゆる"プロデュース"ではないPerfume演出術
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写真集「Perfume Livefolio
――関さんといえばPerfumeのアートワークやMVで知られていますね。
Perfumeはインディーズ時代の「モノクロームエフェクト」のCDジャケットからやらせて頂いて、MV監督から写真集の撮影まで行っています。他のアーティストの担当者に「女の子のアイドルやる?」って聞かれて、詳細もわからないのになぜか「やる!」と即答したのがきっかけ(笑)。決まった後に中田ヤスタカさんの曲を聞いて、ようやくこれはスゴイぞと思ったんですよね。

――Perfumeと作曲家の中田ヤスタカさん、振り付けのMIKIKOさん、ビジュアルの関さんの四つ巴で作られている感じがすごくします。
インディーズ時代のPerfumeはかわいくてキュートというイメージで売っていたのですが、メジャーデビューに際して違うイメージを考えてほしい、という依頼がありました。カワイイだけでは既に成功しているアイドルに勝てない。一線を引くようなものは何か?と考えて、もうわかりやすく宇宙に行っちゃおうと思ったんです。ちまちまと細工するのもだめだろうし、オシャレなイメージでファッションリーダー的な存在で引っ張っていくのは、東京に来たばかりの15歳には難しい。幸い第一弾からPerfumeがピコピコした音とCGの背景で踊るのを面白がってもらえて。あとは本人たちの魅力と、中田くんの曲の力があると思いますね。

――ずっと同じメンバーで手がけられて、どのような戦略を立てているんでしょうか?
よく聞かれるんですが、明確な戦略は立てていないんです。事務所からも自由にやらせて頂いていますし、1年先のビジョンを決めたりとか、流行を作っていこうとかそういう意識もありません。ある程度長く同じメンバーでやっているので、テイストが出てきて、それがPerfumeのイメージを作っているんだろうなと思います。僕らのやり方はいわゆる"業界の音楽プロデュース"とは違いますし、僕の中では女性アイドルを創っているつもりはないんです。

――だから既存のアイドルの幅を超えた支持を受けているんですね。
僕が撮影した写真集では、アイドルものではありえないほど影や逆光が多い(笑)。自分がディレクションするビジュアルでは、大人っぽく、感情がなさそうに演出しているところがあります。もし既存のプロデュースであれば、もっと可愛らしい方向に行くのかもしれませんが…。

■MV表現において大切にしていること
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トリプル・オーの永石勝氏撮影による写真集「Telomere 」。関監督がグラフィック面で永石氏の影響を強く受けたという。
――最後に、MV表現で大切にしていることをお教えください。
自分の中で決めているのは、ミュージシャンがひきたたないとダメ、というルールです。あとは記憶に残ること、音が聴こえてくること、音に合っていること。そんな作品を創るのが目標ですね。

MVを制作するときは、音楽を聴きこみながらメモ用紙にうかんだことをひたすら書き出します。丸なのか、球体なのか、立体なのか。それらのモチーフからビジュアルが浮かぶものをピックアップしていくんです。僕は絵が苦手なので絵コンテをかくのに苦労するんですけど(笑)。また、起承転結といった物語性も重要な要素です。最近面白かったMVはSOURの「日々の音色」。こういうことか!と思わされました。

最終的には映画を撮ってみたいと思っていますが、それは演出力やテクニックをもうちょっと勉強してから。目標も自分で手がけたいですね。

ディレクターとしての信念は「エンターテインメント」。どうやったら人を楽しませたり、驚かせたり、面白いと思わせるものができるかが根底にあると語る関監督。次回は新人の女性アーティストのデビューを手掛ける予定とのことだ。

5つの質問 一問一答
Question 1: 影響を受けたものを教えてください
映画、マンガ、音楽
Question 2: この職に就いたきっかけは?
人のつながり
Question 3: 一番好きな映画は何ですか?
タクシードライバー
Question 4: 作業場のまわりに必ず置いているものベスト3は?
PC、コーヒー、積み木(Nef社のもの)
Question5: 今おもしろいもの/事って何ですか?
料理、食
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