仏教ワールドへいざ行かん! 5色のメタファーが乱れ飛ぶ、ももいろクローバーZ新曲MV「GOUNN」長添雅嗣監督インタビュー!!

2013.11.22 Fri

 

wsGounn01_1
長添雅嗣:映像作家。武蔵野美術大学卒業。teevee graphicsに参加し、デザイナーとして数々のCM、MV制作に関わる。のちに映像ディレクターとしてもグラフィックデザインやアニメーションなどの手法を用いて表現の幅を広げる。2008年独立、2009年よりN・E・Wに所属。幅広い興味や遊びの中から生み出される「新しい感覚」や独特のリズム感を持つ編集、観客を引き込むストーリーづくりなどに定評がある。RESFEST、onedotzeroなどの映画祭を通じて海外でも高く評価される。SSTV MVA グルーヴ部門賞・特別賞、Canon Digital Creators Contest ブロンズ賞。代表作にXperiaシリーズのCMや東京駅プロジェクションマッピングTOKYO STATION VISIONなどがある。
2013年4月10日発売の2ndアルバム「5TH DIMENSION」以降、日産スタジアムでのライブやSUMMER SONIC 2013出演を経て、約半年ぶりの新作となるニューシングル「GOUNN」を11月6日にリリースしたももいろクローバーZ(ももクロ)。アルバムのリード曲「Neo STARGATE」「BIRTH Ø BIRTH」のMVで宇宙を舞台に壮大な物語の主人公となった週末ヒロインたちが、この「GOUNN」で新たに向かうのはスピリチュアルな仏教の世界! こだわりと裏設定が盛り沢山の本作を、長添雅嗣監督のインタビューと共にご紹介しよう! 「理想の自分に会いに行く」という「GOUNN」のテーマに、長添監督はどのように向き合ったのか!?

ももいろクローバーZ「GOUNN」
dir: 長添雅嗣|prod co: N・E・W|pr: 吉田真|pm: 葛西佑介|cho: 石川ゆみ|ca: 片平長義|l: 横堀和宏|ad: 吉田実|costume: IIMUAHII|sty: 関志保美|hm: 飛田卓司、伊達ともえ、なかじぃ、もとこ|on ed: 照井清、荻原千尋|CG: 草間順一朗、石田兵衛、坂本拓也
――長添さんはMIYAVIをはじめ、ロックな男性アーティストのMVの印象があります。女性グループを手掛けるのは珍しいですね。
実は、このMVの話をもらう2、3ケ月前くらいから急激にももクロのファンになったんです。そんな時、ちょうどMVの話をもらって、凄いタイミングだなと思いつつ、これはもう絶対に外せないって凄いプレッシャーでした。それと、モノノフのみなさんはMVをきちんと読み解いてくるっていうのを知ってたから。ももクロのファンはいい意味でちゃんと見てくれる、吟味してくれるから。

――このMVも10月28日に公開されたばかりですが(取材日は11月5日)、既にMVを分析したコメントが多数あがっているのを見受けました。その辺の種明かしもしていただきながら、今日はお話を聞きたいと思っております。「GOUNN」も前回同様、ビジュアルや衣装が先行して決定していて、MVの世界に発展していく流れだったのでしょうか?
今回も同じで、宮本(純乃介|プロデューサー)さんから「仏教的世界がテーマ」ということと、衣装は決まっていました。

――タイトルの「GOUNN」(五蘊=五つの塊という意味)が仏教用語なんですね。
前回が五次元(5TH DIMENTION)で宇宙ですよね。そこから、地上に戻って、もっと身近に、もっとスピリチュアルになる方向性です。

ビジュアル的なところでいうと、宮本さんは日本の仏教っていうよりは、もっとルーツ的なインドとかチベットのイメージを持たれていて。チベット仏教は日本とは色遣いが違っていて、華やかで、楽しそうな感じっていうか。そこから、仏教縛りを自分に作ってアイデアを膨らませていきました。

――具体的に“仏教縛り”でどんな要素を盛り込んでいったのですか?
まず、仏教について手始めにWikipediaを(笑)、読みまくって勉強して(笑)。輪廻転生とか、偶像崇拝だとか、響いた色んなワードを集めていきました。

そして、今回、レーベルからのオーダーが「メンバーのソロのシーンを立たせる」というものでした。たしかに、最近のももクロのMVでは“あーりん(佐々木彩夏)だけの世界”みたいな演出はあんまり見ないな、なんて思いながら、ソロパートを考えていきました。
やっぱり5色に分けたいしって考えていて、仏教にまつわる、五色旗っていうのがあるんだけど、それがぴったりだなと思ったんです。5色の扱いは国や時代によって違っていたりするんですけどね。

■ 五色旗をテーマにしたソロパート
wsGounn09
長添監督によるイメージビジュアル。大きなインスピレーションとなった五色旗が描かれ、チベット絵画になぞらえた舞台設定となっている。頭上に描かれている木は、MV本編にも一瞬登場するので見つけてみよう。
――五色旗を軸にソロパートが展開するんですね。
五色旗って、各色に意味があるんです。赤は“仏陀の血の色”で、黄色は“仏陀の肌の色”、紫が“仏陀の髪の毛の色”、ピンクは、五色旗では白なんだけど“仏陀の歯の色”です。白の解釈は、白い歯と赤い歯茎を合わせてピンクと解釈。混ざったらピンクでしょ(笑)? 緑は“仏陀の袈裟の色”なんですね。血、肌、髪、歯、服と、仏陀の色の解釈をももクロの5色と掛けているんですね。

――なるほど、だんだんと各ソロパートの謎が見えてきました。五蘊ではなくて、五色旗からきていたと。
実は“五蘊”というのは、後々決定したんです。MVの方が楽曲のタイトルよりも先行して制作に入っていたので、この企画を考えてる時は、まだなかったんです。先に決まっていたら“五蘊”から紐解いたかもしれませんが。でも、やっぱり、五色旗の方がいいんじゃないかな。

――前作「BIRTH Ø BIRTH」のエンディングに登場した5色の飴玉が、地上に舞い降りるところから始まりますが、この地上の世界、舞台設定を教えてください。
前作の世界から今作の世界へのブリッジになるオープニングです。ももクロというグループ自身が一貫したストーリーを持って活動していると感じたので、MVも繋がっていくべきだと考えたんです。ちょうど、前2作を手掛けた黒田監督も連続したMVを作っていらしたので、僕もそれを受け取りたいなと。
ただ、あのイントロシーンは実際に作っていくのは大変だった。CGで作っているんだけど、浮遊感やカメラワークは納得いくまでやり直ししています。雲の形にもこだわっていて。

――雲のこだわりとは?
このシーンを抜けてももクロの世界に入ると、雲はモコモコしているんですね。でも、ここはまだガス状にしているんです。前回のMVとのブリッジのシーンでもあるから、ガス状の雲の漂う入口を抜け、チベット仏教の世界、ももクロの世界に入る。雲だけじゃなくて、山もそのギャップを出すために変えているんです。イントロではチベットの仏教画の山の描き方を意識したリアルなタッチで、中に入るともっとデフォルメしているんです。

そして、ももクロの世界に入ります。偶像崇拝、曼荼羅、輪廻転生、この3つをキーワードにしています。立体曼荼羅を模したももクロタワーのような仏像。永遠と続く曼荼羅をくぐり抜けるトランジション。そして回転し、ループし続けるカメラワーク。MVを表現する核となる部分も仏教の考え方から固めました。

――面白いですね。
そう、世界の中心にももクロがいる。ロマンチックな言い方ですけどね(笑)。ソロパートは五色旗で表現して、メインの世界観は仏教の宇宙のイメージで作っているんですね。

――オープニングを抜けるとソロパートに入ります。
メンバーは白い天女の服を纏っているんです。MV用に作ってもらった衣装なんですが、僕の中でここではまだ神様じゃなくて。神になる前の状態で“天女”を設定した。5人揃ってダンスをするシーンから、神形態になるんです。

wsGounn04
“神形態”でのダンスシーン撮影現場から。衣裳はこれまでと比べると、ローブ風の丈の長いものになっている。コレオグラフもその衣裳を活かすように作られた。
――日本の宗教観、神仏混淆的なものも入ってくるんですね。
そこは考えてなかった(笑)。でも、「私は 私の 化身になりたい」って歌詞ともリンクしているんだけど、「理想の自分に会いにいく」っていうテーマがこの楽曲にはあって、このMVのなかでも天女から神様にどんどん成長していくというのを、天女のソロパートと神様のダンスシーンで描いているんです。
それと、「私は 私の 化身になりたい」の歌詞に合わせて一瞬、曼荼羅モーショングラフィックで、天女と神様の関係を表してる画が入っているんです(笑)! 真ん中に理想の自分がいて、両端に天女がそれぞれいる。
wsGounn10
「私は 私の 化身になりたい」の歌詞に合わせて挿入される、天女と神様の関係を表す構図。真ん中に神となった理想の自分、両端に天女がいる。
――天女のソロパートの演出について教えてください。どういうところを一番意識して作られましたか?
この楽曲はどんな表情で歌うといいんだろう? 真剣に歌う? 切なそうに歌う? と悩みました。でも、僕は楽しそうに歌うももクロを見たかった。きっとみんなそうなんじゃないかなって。仏教ソングを最高に楽しく歌うももクロを目指して演出しました。振付の(石川)ゆみ先生にも、笑顔でダンスしてほしいとお願いしました。

コンセプトがしっかりしてるグループだから、どんなイメージでも出来ちゃうんですね。でも、僕の思う、ももクロの一番いいところって楽しく一生懸命なところだと思ってるから。笑顔無しのコンセプト先行なMVになったら、本末転倒な気がしたんです。とは言え、所謂アイドルMVにならないよう、コンセプトもちゃんと伝わるところを探りました。宇宙、仏教、スピリチュアル、だけど、ももクロらしい楽しいビデオにしたいなって。

――そういう狙いでは、満足度の高い仕上がりとなりましたか?
はい。でも、正直なところ、もっと、メンバーのおちゃらけシーンを入れたかったんです(笑)。ももクロの悪ふざけ的な自由演技を入れたかったな。採用はしていないんですが、しおりん(玉井詩織)がそうめんを作ってる仕草を撮影したものとかあったんです(笑)。
曼荼羅モーショングラフィックスの箇所は、ざっくりとした振付は用意はしていましたが、自由にやってくださいと言ったら、しおりんは一曲分そうめんを作る動きをしていました(笑)。僕は、凄いいい画が撮れたなぁって思ったんだけど、そこまで出せなかったのが悔やまれるところですね(笑)。

――シチュエーション的には、神様の衣装で5人のダンスシーンと、天女のソロパート、自由演技の曼荼羅用と、全部で3シチュエーションで撮影してるということですね。CGの箇所、美術の箇所の解説いただけますか? まずは、“仏陀の血の色”の赤、百田夏菜子さんのパート。
血の池に血管の、ミニチュアのセットを作って、背景の空、境界線にある蓮の花より向こうをCGで作っています。ミニチュアは、横150mから180m程度のセットを5種類作っています。
wsGounn11
血の池と血管のミニチュアセット。
――CGかと思っていました。
あまり実写だと気付かれてない。僕、しおりんが座ってた手が欲しいんですよ・・・、もらって帰りたかった・・・。

――メンバーは全員、シンボリックな何かを手に持っていますね。
仏像って、持物(じぶつ)というメッセージのある持ち物を持っています。そこになぞらえています。血の世界なので、夏菜子ちゃんが手に持ってるのは注射器です。座り方では悩みました。

――半蓮華座ですね。
チベットの仏教画にこの座り方で沢山描かれているんですが、美しいって思って採用しました。ソロパートのトップだから、相当パンチ力が欲しかったんです。それと、眼力のあるイントロを撮りたいって。

――続いてが緑の“仏陀の袈裟の色”、有安杏果さんのパートですね。
後で知ったんですが、杏果ちゃんはウインクが苦手なんですよね(笑)。でも、凄く可愛く撮れたんで3カットも編集で使ってしまいました。手に持っているのは、これはもう糸巻きですね。袈裟、服の世界。木に棚引く布がテーマのパートです。

―― 一瞬見ると蛇を連想させるような木も、よく見ると仏教的なテキスタイルとなっています。
美術はda Vinciの吉田実さんが担当しています。方向性として、最終的には絶対的に可愛くなるので「グロいの入れても大丈夫です」って伝えました。例えば、歯をポップに丸くデフォルメしてコミックっぽくやる方向もあるだろうけど、ここはリアルに。表面もヌメヌメしてほしいって。

――その歯の世界、佐々木彩夏さんのパートです。
仏陀の歯なので、歯ブラシを持っています。
佐々木彩夏が歯ブラシを持つパートの、長添監督によるイメージビジュアル。
※画像クリックで拡大します。
――そして、黄色の“仏陀の肌の色”ですが。
しおりんの持物だけ途中で変わりました。「肌だと何だろう?」って悩んだんです。悩んだ挙句に、身体を洗うヘチマを持たそうと最初は考えた。でも、ちょっと距離感があるというか。血液で注射、歯で歯ブラシ、ダイレクトでしょ? でも、肌からヘチマって遠いなって思って。で、ここは「しおりん=カレー好き」ってことで、カレーにしました(笑)。変化球。

――長添さんが気に入っていたという、玉井さんが腰掛けている手もいいですね。
チベットに実際にでっかい手だけの偶像があるんです。今回のセットは、チベットの仏教美術をかなり参考にしています。
wsGounn12
長添監督のお気に入りの黄金の手。1/6のミニチュアで制作。
――そして、高城れにさんのパート、“仏陀の髪の色”の紫ですね。
これもダイレクトでしょ。髪の毛だから櫛。れにちゃんには、表情で「色っぽい感じ」ってオーダーしたんだよね。そしたら「出来ません」って言われた(笑)。「いちばん苦手なんですよ」って。過去にそういうれにちゃんを見たことないし、曲の感じを出すには大人っぽいれにちゃんがいいなって。でも、苦手といいながら、やってくれてますよね。大人っぽく撮れたと思っています。
2サビ前の「こんなにも こんなにも」のソロパートはとても綺麗に演じてくれました。
wsGounn13
メンバーが天女のソロパートで手にする持物。左から櫛、カレーポット、糸巻き、歯ブラシ、注射器。


■ アニメを意識したオープニング
長添監督による立体曼荼羅のイメージビジュアル。インド仏教の古代の宇宙観、天動説をモチーフにしている。かつて、インドでは地球がこのように亀の上に象が乗っかっているものだと考えられていたという。
※画像クリックで拡大します。
――他にソロパートでのこだわりはありますか?
どアタマはアニメ感を意識してるんです。アニメのオープニングのタイトルインの仕方って、独特なものがありますよね、あの、ドンッていう出方が凄い好きで。楽曲の作り方も、そう意識してんじゃないのかなって僕は感じたんですが。
※キングレコード コメント:音楽制作は、もともと「さよなら絶望先生」などを手掛けている、アニメ畑の宮本純乃介さんが担当しており、長添監督がおっしゃる通りアニメが根本にあります。

そのイントロが明けて、杏果ちゃんのシーン。エヴァンゲリオンとかでも、綾波レイの切なそうな表情が一瞬入ったりとか、表情がパチパチってインサートで入りますよね。アニメでは、キャラクター紹介も兼ねてよくやる技。それを、杏果ちゃんとあーりんにもやって欲しくて、歌ってる合間に、一瞬指先をピッてやってもらっているんです。これは、僕の中で、アニメ感を出してるつもり。
そういう狙いがあったから、二人に自分なりのブリっ子な表現をお願いしたら、杏果ちゃんから「ブリっ子はいやだ」的な。ファンの人はご存じだと思いますが、ライブの流れで、「あーりん可愛い!」って始まって、みんなで可愛い真似をしていって、ラストに杏果ちゃんが「やだ!」って言うネタがあるですが、撮影現場でもそういうノリで、サービス精神旺盛でした。だからもちろん、ちゃんとやってくれるんです。

でも、大きなところでは天女らしく歌うことをお願いしました。人の上に存在する神に限りなく近い存在なんで(笑)、優しくもあり厳しくもある、そんな菩薩のような表情を撮りたいと伝えました。

――途中にインサートで入ってくる曼荼羅についても教えて下さい。
繰り返す、輪廻転生のイメージですね。曼荼羅は僕がアニメーションを作っています。チベットカラーを全面に出すようにしています。曼荼羅デザインはアシスタントが50個くらいひたすら描いてくれました。やっぱり、音楽を表現出来るところだから、それを一番意識して作りましたね。
これまでもよく使ってきたモーションの付け方なんですが、今回こそドンピシャだって思いました。「ここでやんなかったらいつやるんだ」と。

――この、奥に進んでいくモーショングラフィックスですね。長添さんらしいな、と思いました。

■ 撮影について
wsGounn05
カレーポット片手にソロパートの撮影に臨む玉井詩織。撮影に使われたカメラはSony F55が一台。RAW撮影をし、カラーグレーディングでCGと色味を合わせていく。
――撮影についてもお伺いしたいと思います。
肌の質感が、これまで仕事の中で一番気に入ってます。画のトーンとしては、カリッとしたかった。僕、柔らかい映像は好きじゃないんです。ガリガリに硬い感じにして、絵画にも見えるような質感を狙っています。ただ、女の子は綺麗に撮りたい。それを、照明部の横堀(和宏)さんとカメラの片平(長義)さんがクリアしてくれました。
メンバーの周りって、全部グリーンバックなんですが、グリーンバックで見ていてもでこの質感は素晴らしいって手応えがありました。さすがのライティングでしたね。

――ミニチュアと人物の照明やパース感を合わせたり、凄く自然に合成されていますが、どういう工夫をされたんですか?
例えば、夏菜子ちゃんと、彼女が座っている台座は別々に撮影して合成しているんです。台座は1/6のミニチュアセットなので、凄く小さいんですね。なおかつ、カメラが動いてトラックインしてるんだけど、合成時を考慮すると、実物大での移動距離と、ミニチュアでの移動距離は変わってくるんです。実物大で3m接近したら、ミニチュアでは60cmくらい接近するといった計算を、撮影チーフの渡邉(寿岳)くんがしています。

しおりんが座っている釈迦の手が特に難しくて、ミニチュアと同じ手のカーブの、グリーンに塗った台を準備して座ってもらっている。そうすることによって天女の衣裳の布の垂れ具合も自然に作れているんですね。接地がズレると凄い違和感が出るところだから。カメラのミリ数や距離感も、1mmズレただけで違和感が出るから、気を配りましたね。
オンライン編集でも照井(清)くんが更に細かく配慮してくれていて、合成のところにも細かく影を付けてくれたりしているんです。2つライトがあったら、影は2方向にこうやって伸びているはずだ、というのを計算して。そういう努力もあって、ミニチュア合成が凄くうまくいったと思います。

――フィックスではなく、カメラが動く中、合成素材を撮影するのも大変だったと想像します。
マイロっていう日本に2台しかない、モーションコントロールカメラで合わせてやりました・・・と言いたいところですが、全部手作業でやっています。
実は全カット、カメラ動いてるんですよ、カメラが止まると音楽も止まってしまう気がする。もちろん、ポスプロでレイヤーを上手く使ってやっているところもあります。雲で移動感を出していたり、別撮りした木とかを手前のレイヤーに配置しているのですが、手前の物って奥よりも早く動くので、そうやっていろんな合わせ技で演出しているんです。

――緻密に計算し、撮影時に全て想定して、収録しているんですね。
物撮りは、現場で一回軽く合成したんです、確認も含めて。深夜、メンバーを撮り終わってから、ミニチュアのセットを撮り始めたんですが、その時に撮影した素材を仮合成をして、もうちょっと手前にレイヤー要素が欲しいな・・・とか現場で追加したりしています。
wsGounn06_2
和やかな雰囲気でソロパートの撮影に臨む百田夏菜子。手前は長添監督。
――ももクロならではの、撮影中のエピソードがあれば教えて下さい。
いっぱいあるんですけど、夏菜子ちゃんのソロの撮影時。MVって通しで撮るから、長い時は一曲分フルで半蓮華座の体勢になってもらいました、痺れるだろうし辛かったと思うんですね。で、風も当てたりしているから、長く回してると、髪の毛が顔にくっついちゃったり、衣装がなびいて引っかかったりと、途中でカットしたくなるトラブルが発生します。
ただ、カットして撮り直しなんてしてると撮影時間がどんどん延びてしまう。なので本番中に「髪の毛を直して」とジェスチャーで伝えて自分で直してもらうんです。でもね、普通の演者さんだとそうした瞬間にカメラから目線がズレてしまう、そうなるとその瞬間は編集で使えないことになってしまいますね。
でも、夏菜子ちゃんは違った。「髪の毛を直して」とジェスチャーでお願いすると、カメラのレンズの奥から1mmも目をそらさずにサッと髪を直したんです。しかも自然な動きの中で髪を直してくれた。驚いたのは髪を直すだけでなく、ゆみ先生からの振付アドバイスのジェスチャーも受けていたこと。凄い集中力と視野の広さを感じました。
今まで色んな演者を撮影してきたけど、全くズラすことなくやってくれた人は初めて会いました、感動した。「こんな凄い人いるんだ」って(笑)。

■ 15日間に渡る怒涛のポスプロ作業、そして長添監督の編集点の秘密
wsGounn15
CGで制作したこの曼荼羅も精密に作られており、メンバーの顔が視認出来る程のクオリティ。担当したのは、リバティアニメーションスタジオだ。「アニメーションが特にうまいスタジオです。テストやシミュレーションも率先してやってくれるので頼もしかったです」(長添監督)
――大量のCGを使っての本作ですが、制作期間はどれくらいなんですか?
8月上旬に企画提案をして、8月下旬に撮影をしました。撮影は一日建込みとリハーサル、そして本番は一日です。
編集はオフラインを自分でやったんですが、5日間くらいで仕上げて、CGは同時並行でやりながら、15日間オンライン。いや~、これまでのキャリアの中で一番つらかった(笑)。

――長添さん自身が担当されているオフライン編集ですが、作業が凄く早くてスタッフがびっくりしたという話を伺っています。
そこは自信あります(笑)。

――特徴として、マーカー打ちが凄く多いと。
マーカーの数は日本で一番多いと思います、自分でも(笑)。音楽を流してて、ピンと来た音は全部マーカーを打つ。譜面の音楽的なリズムとかではなくて、ピンときた箇所に打つんです。テンションが上がるワードみたいなのを、全部拾っていく。ぶっちゃけ、ズレてるのね、音とは。言葉拾う時もあるし、リズム拾う時もあるし。曲のその瞬間によるんです。

そうすると、タイムラインが全部赤くなる、マーカーで(笑)。でも、それを打っておくと編集が早くなるんです。後で迷わないんですね。通常、編集エディターさんは、気になるところをループ再生して「あ、ここらへんかな」「いや、ここらへんかな」ってやるんだけど、僕は数百個のマーカーをあらかじめ打ってるから、ちょっとズラしたかったら、2、3フレーム前にある1個前のマーカーにピッとズラせばいい(笑)。だいたい1曲につき100~300個打ちますね。

――オンライン編集がつらかったと先ほどおっしゃっていましたが・・・。
とにかく、作業量がとんでもなくあるから、編集スタジオの近くにホテルを取ってもらって、そこで仮眠してはスタジオでエディターさんと作業の繰り返しでした。エディターさんと机並べてマルチタスクで進めないと間に合わない。自宅からMac持ってきて、Flameの横に置いて、照井くんと二人でずっと。照井くんは「この段階で、この人まだ言うの?」って、僕にうんざりしてたようだけど(笑)。
この作品においては、ディテールにこだわって、全部妥協なしでやるって自分の中で決めていたから、ちょっと気になる箇所も最後まで粘るのをずっと繰り返していました。

wsGounn14
撮影本番前に打ち合わせをする佐々木彩夏と長添監督。
――そうやって全力投球して完成した本作ですが、振り返ってみてどうでしたか?
超楽しかった(笑)。思いっきりやらせてくれるんですよね、レーベルが。女の子のグループものっていろんな事情や制限がつきもので、そういう中で作ることが大半なんです。でも、ももクロチームはそういう事情的なことは一切言わずに「監督がいいと思ったのをやってくれ」と。最初に、コンテ描いてる時にイメージしてたものを全力でやらせてくれる。絶対、それが一番のものが出来ると信じているし、なにより表現の面で薄まらないものが出来上がる。

メンバーもキメるところはキメるし、ふざけて欲しいところではちゃんとふざけられる。両方きれいに出来るのは凄いですよ。そうめんつくったり、本人たちもきっと楽しんでやってますよね。やらされてる感がないというか。それがね、撮る側的には凄く嬉しいんですよね。疲れているはずだけど、一切出さないし、尊敬する。「カット!」って言った瞬間に「はぁー」ってなる人も多いんですけど、全然そんなことない。現場のスタッフの凄くモチベーションアップに繋がるから、最後はスタッフみんな、ももクロファンになっちゃっていました。 それに、制作のあっちこっちの部署に、大概一人くらいはモノノフがいるんですよ(笑)。だから、自ら挙手して「この仕事やりたい!」って参加しているから熱量も高くなる。

――「5TH DIMENTION」から、またガラッと変わった展開で常に挑戦と進化の体当たりを感じるももクロですが、この曲のテーマ「理想の自分に会いに行く」にちなんで、長添さんが現時点で目指す監督像を教えてください。
難しいよね(笑)。今は、監督を辞めるっていう意味じゃなくて、監督じゃなくなりたいです(笑)。監督っていう枠を超えたところでの、映像をやりたいなって思ってる。そもそも、監督になりたかったわけじゃなくて、映像をやりたかった。だから、それをそろそろちゃんとやりたいと思ってます。
MVからスタートして、CMもやって、ライブ演出やプロジェクションマッピングとかもやってきたけど、まだ想定内かなって感じていて。もっと別の媒体で映像をやりたいですね。

例えば、空に映像を映せる技術が完成したらやってみたい。これまで、CMやMVで勉強してきたことを存分に発揮して。もう僕も35歳になるから(笑)。リスペクトする映像監督はいっぱいいるけど、僕はそこを目指したいんじゃない。逆に、そのルートから抜け出したいんです。先輩たちが極めたことをやっても仕方ない。20代の時、絶対に出来ないって思っていたことも、今は出来そうな気もする。そういった意味で監督ルートから抜け出したいと思います。

■ 5つの質問 一問一答
1: 一番影響を受けたものを教えてください
少年カルチャー、小学生カルチャー
2: この職に就いたきっかけは?
2003年ごろのニュースステーションのオープニングを見て
3: 一番好きな映画は何ですか?
機動警察パトレイバー2 the Movie
4: 作業場のまわりに必ず置いているものベスト3は?
フィギュアなどのホビーコレクションと、その雑誌
5: 今おもしろいもの/事って何ですか?
キャラクターデザイン
トラックバックURL:http://white-screen.jp/white/wp-trackback.php?p=32525