川村真司、レイ・イナモト、GROUP94らが語るクリエイティブの根幹とは。「APMT5」

2009.09.25 Fri

 

APMT5.jpg
(左から)ディルク・パースマンス(JODI)、ヨアン・ヘームスケルク(JODI)、Pascal Leroy(GROUP94)、レイ・イナモト、川村真司、平川紀道
デザインポータルサイトCBCNETが主催するデザイン&アートカンファレンス「APMT」が今年も開催された。2005年より始まった「APMT」も今年で5回目。今回は、2週間に渡って10以上のイベントを行う「APMT:WEEK(アパートメント・ウィーク)」として開催。なかでもメインイベントとなる「APMT5」は、様々な分野で活躍するデザイナーやアーティストがプレゼンテーションを行うカンファレンスだ。9月14日(月)、ベルファーレ九段にて行われたイベントは、CBCNET栗田洋介氏の挨拶に続き、YouTubeで大ヒットを記録したSOUR「日々の音色」のライブ演奏と共に幕を開けた。

■「シンプルでユニバーサルな表現を目指す」川村真司
hibinoIMGP0827.jpg
SOUR「日々の音色」の綿密な進行表。
トップバッターは、ホワイトスクリーンにも登場した、NY在住のメディア・アーティスト川村真司氏によるセッション。川村氏のリソースは、慶応大学SFC佐藤雅彦研究室にある。TV番組「ピタゴラスイッチ」にて川村氏が手掛けた「ピタゴラ装置」では日用品を使ったユニークな装置を制作。卒業後は博報堂に入社、4年間で約80本CMを制作した後、現在はBBH NYでアートディレクターとして活躍している。川村氏が海外に拠点を移したのは、ある種の閉塞感だ。日本では、優秀な人材が多いが、その広告の作り方に疑問を抱き、新しい表現を目指すため日本を離れた。広告仕事とはまた別に、SOUR「半月」やアートブック「レインボウインユアハンド」なども披露。クリエイティビティを成長させるために、クライアントから与えられる課題をこなすだけでなく、課題から自分で考えるプロジェクトを手掛けていきたいと語る。他にも「視点が違っているだけで面白いものが生まれる」、「言葉が分からなくても分かる、シンプルでユニバーサルな表現を目指す」など、川村氏のクリエイティブの根幹を見ることができた。

■「あらかじめプログラムされた世界」平川紀道
hirakawaIMGP0860.jpg
平川氏は1982年生まれ、島根県出身のメディアアーティスト。制作途中のプログラムを特別に公開してくれた。
続いて登場したのは文化庁メディア芸術祭やICCにて展示された作品で知られるメディア・アーティストの平川紀道氏。Webサイトの情報を可視可した「DriftNet」(OPEN GLで制作)や、天動説/地動説をモチーフに、島根の海辺で撮影した素材を使い、地球の地軸を変えるというメディアアート作品「a plaything for the great observers at rest」について語った。平川氏は装置の設計もIllustratorのCADプラグインで設計し、電子部品や金属部品の組み立てから自分で行ってしまう。「世界を模倣する作品ではなく、世界があらかじめプログラムされているものと捉えたうえでの作品」や「結果から原型が導き出せない作品を作りたい」など、独自の世界を語ってくれた。

■Webデザインのカリスマ、GROUP94 ベルギーに拠点を置き、世界的にその名を知られるWeb制作プロダクションGROUP94のドン、創設者でありクリエイティブ・ディレクターのPascal Leroy(パスカル・リロイ)氏が登場。GROUP94はMagunum Photosなど、写真を使ったWebサイトの構築・デザインに定評がある。最近手掛けたWebサイトから、人気Webレコメンドサイト「FWA」の写真版「FWA Photo」を紹介。クライアントからの依頼は「カモメが飛び立つようなインターフェイス」ということで、オーガニックに写真を見せるWebサイトを作り上げた。また、オックスフォード大学とのコラボレーション・プロジェクト「moofe」も。これは画像データを分析し、テキスト検索(「山」や「道路」など)に対応するという高度なフォト・ストックWebサイトだ。ほか、著作権対策としてスクランブルをかけた写真をサイト表示時に再構築して表示するプログラムなど、Webクリエイティブについて幅広く語った。

■伝説のネット・アーティスト、JODIが遂に来日!
str.jpg
JODIのキュレーションしたグループ展。ちなみに近頃はYouTubeの映像をダウンロードすることにハマっているそう。
続いて、90年代半ばのインターネット黎明期から活動するネット・アートの大御所、JODIが登場!メンバーのJoan(ヨアン)とDirk(ダーク)は、その過激な作風とは対照的に穏やかなたたずまい。柔らかな語り口で、謎に包まれた作品を紐解いてくれた。

彼らが代表作「http://wwwwwwwww.jodi.org/」を作ったきっかけは、HTMLコーディングで「>」を忘れるという初歩的なミスをおかしたこと。それから「テクニックがないことをスタイル」に、一見サイトが壊れたかのようなローテクなインターフェイスの作品を次々発表。それもプロバイダから契約を切られてしまうほどの破天荒な作品ばかり。その破壊的な作風について観客から質問が飛ぶと、「アンディ・ウォーホルらが多用するシルクスクリーンも、絵を壊してしまうテクノロジーですよね。それと同じように、壊れたフォーマットを表現手段として使っているのです」と語り、「昔はページソースを見ることでお互いに学ぶことができる、オープンソースな環境だった」と黎明期を振り返った。現在もtwitterと連動させたキーボードをスケートボードに改造して若者に走らせる「SK8Monkey」や、googleマップの上を見慣れたアイコンが暴れ回る作品「globalmove.us」など、変わらずパンクな活動を勢力的に行っており、頼もしい限りだ。

■レイ・イナモト from AKQAの華麗なプレゼン
inamotoIMGP0912.jpg
こんなタイトルのビジネス書があったらベストセラー間違いなし…!
トリを飾るのは、「広告界のイチロー」こと、AKQAのレイ・イナモト氏。堂々とした態度のプレゼンはまさに日本人離れしたパフォーマンス。イナモト氏は「もっとも良い広告は広告ではない」というAKQA創設者の言葉を引用し、メッセージを伝える際広告という意識を持たないほうがよいと語った。そして繰り出したのが「仕事を良くする3つの法則」。その3つの法則とは、1.1つの視点で、2.自分でありき、3.引き算方式、というもの。「1つの視点で」ではWebのムービーのために映画レベルの巨大ジオラマを制作し、ファンの心をつかんだ「Halo3」を。「自分でありき」では、27番目のアルファベットは「” “(space)」であるというアートプロジェクト「undiscoverd letter」を。「引き算方式」では、ルーニーを起用したコカコーラの大ヒットバイラルムービー「SKILLS」のエピソードとともに紹介した。そして最後は、小説家を目指して毎日小説を書き続けた父の話と、ポール・アーデンの言葉「どれだけ「凄い」かより、どれだけ「凄くなりたい」かが大切。」を引用。持って生まれた才能よりも日々の努力が大切だと語った。

当日は観客による、twitterでの会場レポートも盛り上がりを見せた。東京のクリエイティブ界を縦断し、刺激的な体験を数多く与えてくれたアパートメント・ウィークの締めくくりにふさわしい、充実のカンファレンスだった。

Tags:
トラックバックURL:http://white-screen.jp/white/wp-trackback.php?p=2957