レーザーポインタで建物に光のグラフィティを描く”L.A.S.E.R Tag”(レーザータグ)などのプロジェクトで知られている、NY発のアートユニットThe Graffiti Research Lab(以下GRL)が日本にやってきた!ユニークなアートワークとともに、作品の技術をオープンソースで公開していることでも知られている彼ら。アートとストリートとコンピュータ、すべてのカルチャーを取り込んで唯一無二のスタイルを確立している。CBCNET主催のAPMT4で来日したエヴァン・ロスに、アートをオープンソースで発信する理由や彼らのバックグラウンドについて訊いた。
■The Graffiti Research Labとは?
The Graffiti Research Lab(GRL)とは:Evan Roth(エヴァン・ロス、写真中央)とJame Powderly(ジェイム・パウダリー)によって2006年に設立され、グラフィティーライターやアーティストに新たなコミュニケーションのためのオープンソースなテクノロジーを提供することを目的に活動している団体。写真はGRLの個展にてデザインとペインティングを担当したメンバーとともに。
高層ビルの一面にLEDでGIFアニメを映し出す”Drive-In GIF Theater”など、たくさんのアートワークを手がけるGRLだが、メインポイントは2つ。一つは新しいテクノロジーやマテリアルを人々に届けること。もう一つは人々が発言する機会を作ることだ。「街には大きな看板があるけど、掲載するには大金が必要だよね。レーザータグは都市に住んでいる自分たちがメッセージを載せてコミュニケーションする手段なんだ」(ロス)
■光のグラフィティ”レーザータグ”
渋谷で行ったレーザータグ。この次の日には新しい看板が掲げられていたので、ギリギリセーフ!
「これはモーション・トラッキングを使っているんだ。まずビデオカメラをコンピュータに繋ぐ。そしてレーザーペンから発信する緑の光の情報だけをカメラが認識し、ソフトウェアに位置情報を伝える。プロジェクターはその情報に基づいて緑のポイントを追い、白い光をリアルタイムで投影していく。どれくらいの距離まで投射できるかはプロジェクターの性能で限界があるから、プロジェクタのレンズ前に画角を調整するものをつかったりしている。現場には数人のグラフィティ・ライターを招いたり、周囲の人にレーザーペンを渡して好きなように描いてもらってるんだ。グラフィティしたタグを消去する時はソフトウェア上で操作するんだ。」(ロス)
ちなみに広告会社からレーザータグを商業的に使いたいというアプローチは多いが、営利目的には絶対使わないというポリシーを持っているところもGRLらしい。
「若い子たちはグラフィティはカッコイイと思うけどコンピュータ・コードには興味を持たないよね。だからグラフィティにコンピュータを合わせるのはすごくいいやり方だと思った。それにレーザータグのようなプロジェクトを通して、その性質上、秘密主義のグラフィティ・アーティストたちと情報交換できるようになったんだ」(ロス)
■ジョシュア・デイヴィスの影響でオープンソースを知った
L.A.S.E.R Tag 2.0。コードのダウンロードはこちら。
そもそもオープンソースとは、コンピュータ業界で使われてきた言葉。デザイナーだったロスとオープンソースとの出会いは、Webアーティストのさきがけであるジョシュア・デイヴィスの作品からだった。ロスは「1999年ぐらいに、デイヴィスがデザインのコミュニティではじめてオープンソースを公開したんだ。彼が作ったFLASHのコードを見て僕もやってみたんだけど、すごく楽しかった。無料だったから勉強することができたんだよ」と当時の事を語る。
GRLのオープンソース志向は6ヶ月前に初めたもう一つのWeb上のプロジェクト”FFFFF.AT“にて、さらに進められ、プロジェクトに関わる詳細な写真やアート・テクノロジーが公開されている。こちらもぜひチェックしてみて欲しい。
また、彼らの情報共有への徹底したこだわりが感じられるのが、GRLの2006~2008年の2年間の活動を収録したDVD作品「コンプリート・ファースト・シーズン」のフリー・ダウンロード。パッケージ版の販売も行っているが、基本的には全てのコンテンツを公式サイトから無料でダウンロードできる。ジャケットを飾るのはメタリカのメンバー、ラーズ・ウルリッヒ。アルバムの楽曲ダウンロードに反対していたアーティストだけに、アイロニックなユーモアも見逃せない。
ロスがEyebeam Labsにて行った「whiteglovetracking」もオープンソースのプロジェクト。マイケル・ジャクソンが”ビリー・ジーン”を歌っているビデオで白い手袋の部分だけを抜き取り、他のものに変えてしまうというもの。巨大な手袋から燃え上がる手袋まで、さまざまな作品が作られた。プロジェクトに寄せられた作品はこちらから。
■グラフィティ=ハッキング
“Graffiti Taxonomy”
「僕の願いはハッカーコミュニティとラッパー(ヒップホップ)コミュニティを握手させること。ハッカーがコンピュータに侵入するみたいに、グラフィティで街に侵入する。グラフィティは平面に描かれたものだけではなくて、街にオブジェを出没させることをも含むんだ。」(ロス)
GRLにとってグラフィティとは何かに侵入し、自分の足跡を残す”ハッキング”と似た意味を持つ。 BANKSYが行った、大英博物館やテート・ブリテンなどの美術館に自分の作品をこっそり置いていったアートプロジェクトもそう。”L.A.S.E.R Tag”も都市へのハッキングなのだ。
これが彼らの”名刺”。紙幣をステンシル!これもハッキングの一つ。
■暇な時間でアートを作っちゃおう
SKYMALLの一つ。”hellokitty_vs_cigarettes”
テクノロジーに溺れず、ひらめきと遊び心を大切にしたGRLのアートはこれからも世界のファンをワクワクさせてくれるだろう。果たしてヒップホップ文化とハッカーの架け橋となるか?東京支部も作られるというGRL、今後の活躍にも期待!
・The Graffiti Research Lab(以下GRL)
・FFFFF.AT
■おまけ
ちなみにGRLの相棒ジェイム・パウダリーが日本に来ることができなかったのは、北京オリンピック会場で「チベット解放」のメッセージをレーザーステンシルで投影するプロジェクトに参加したところ、当局に拘束されてしまったため(現在は既に開放された)。北京ではインフラが整っていないため、レーザーの小さな点をレンズを使って拡大し、ステンシルで文字を表示するという工夫まで行ったが、発表は叶わなかったという悲しいエピソードが…。これがテスト画像。
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