サブカルBUTエンターテインメント/島田大介のものづくりへの情熱

2008.07.15 Tue

 

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海外でモデルの仕事でパリコレに出たことがある…など目立つトピックが一人歩きしている島田大介監督だが、ご本人はいたって真摯にものづくりと向き合い、様々なご苦労もされている模様。
Mr.Children「掌」のミュージックビデオ(MV)で一躍注目を浴びた島田監督。現在ではCMにも活躍の場をひろげ、勢力的に活動を続けている。映像に携わるようになったきっかけから、現在に至るまでのユニークな経験や苦労、そしてものづくりへの熱い情熱を語ってくれた!

―― まず、学生時代のお話を伺いたいのですが、松本俊夫さんと伊藤高志さんに映像を学ばれたそうですがお二方との思い出を聞かせて下さい。
島田:実験映画とか、ビデオアート、うちの学校(京都芸術短期大学映像科)はそういう 傾向が強くて、アングラな映画とかばっかり見せられました。元々と好きだったんで その学校入ったんですけど…。

―― ゼミとか、濃密におつきあいされたんですか?
島田:松本俊夫さんは特別講義ぐらいしかないですけど、実験映像コースで伊藤さんは割と濃密に…。

―― 卒業制作は、伊藤さんの元で作られたんですか…?
島田:それはもう…封印してますね(笑)。おしゃれな感じ…女の子二人がぺちゃくちゃしている「ひなぎく」みたいな感じです。ケーキぶちまけたり、壁に落書きしたり。そういう感じの(笑)。総尺で20分ぐらいで。

―― 今作られているMVなどは、エンターテインメントの要素も押さえてらっしゃいますよね。実験映像を学ばれたっていうのは意外な感じもしますが?
島田:たぶん、その後の影響が強いですね。ジャン・バプティスト・モンディーノってカメラマンとターセム・シンって監督。彼らは、広告なのにすごいえぐいことしてる。日本で実験映像ってサブカルチャーなもので、割とメジャーにいけない部分がある。でも彼らはテレビで流すもの、広告として成り立たせているのがすごいな、と思って。
「Björk “Violently Happy”」 dir:Jean-Baptiste Mondino| Mondinoが撮影した「BJORK / Debut」のジャケット写真はあまりにも有名。アルバム中の曲「Violently Happy」のMVもMONDINOが監督した。
―― それは、ロンドンに滞在していた頃ですか?
島田:そうですね、その時は撮られる側だったんですけど。彼らのことをなにも知らなくて。「モンディーノの撮影だから絶対いける!」って言われても「そうなのかな?」って(笑)。モンディーノは後でその作品を見て再評価した感じです。ターセムは…もの凄かったですね。どういう映像になるのかな、って撮影中ずっと思ってた。

―― 島田さんはどういう役だったんですか?
島田:CDを焼けることがウリのCDプレーヤーのCMでした。僕はひたすら雨の中を走ってるんですよ。走っていくと途中で馬が前足上げてたり、ぶつかって牛乳瓶が割れてぶわ~ってスローモーションになったり、双子の女の子のマスカラがぶわ~っととれてたりして…で、そこを横切って僕は家に帰って来て、CDを焼く、っていう…(笑)。すっごい強引な…。

―― (爆笑)すごい前半がやりたかった…みたいな感じですね。
島田:それで「すごいな~!」と思って。規模もでかかったんで。こんなことを金を使ってやってんだ、って思って。広告っていいな、って思ったきっかけでした。ターセム監督は当時はミュージックビデオでちょっと有名になってて、その後CMに行って。新作「落下の王国 – The Fall -」は、ディテールが凄かったですよ。
「落下の王国 – The Fall -」 ターセム・シン監督の新作は、9月公開予定

■下積み時代~日本のCM業界

―― 日本に帰ってきてからのお話を聞かせて下さい。
島田:最初は「ゲマインシャフト」っていう名前で、2人でVJとか主にモーショングラフィック的なものをやってました。ヘア・ショーとかの映像を作っていた。その流れで、グラフィックを使ったMVを作ってくれって依頼がきたんですよ。それでMVをちょこっとやるようになったんですけど、環境的にしっくりこなくて。

―― なるほど。
島田:で、師匠というものをつけてみたいと思ったんです。谷田一郎(JJD)さんは、当時「Design Plex」って雑誌でコラムを書いてて、それがおもしろかったんですよ。谷田さんのところで、CGとか合成はすごい勉強しました。その当時自分はAfterEffectsをかなり使えると思って入ったんだけど、こんなに色んな機能あったんだって。2000年ぐらい、AfterEffectsのバージョン4とか5の頃ですね。

―― 谷田さんのアシスタントとしてどんなことやられてたんですか?
島田:僕はCMのオフラインとか仮合成やってました。オフラインのツールはmedia100でした。CGツールは3ds MaxとかSOFTIMAGE|XSIですね。

―― 谷田さんのところには何年ぐらいいらっしゃったんですか?
島田:1年ちょっとしかいなかったです。でもすごい濃厚な…ずっと泊まってました、会社に。すごい長いこといた気がします。で、広告辞めて「俺はMVやる!」と(笑)。

―― MVのどんなところに魅かれたんですか?
島田:MVはオリジナリティがある人たちが面白いもの作ってて。そういうとこでやってきたいってのはありますね。なんかやっぱりビジュアル的におもしろいことをしたいタイプなので。CMでは爆破とか難しいですよね。表現の幅がMVの方が魅力的でしたね。

―― 「ビジュアル的におもしろいこと」って、具体的にいうと?
島田:掛け合わせが好きなんですよね。このオリジナル作品「脳内サーカス」もそうなんですけど、技術を見せたいんじゃなくて、技術とアイデアの掛け合わせで見たことないものができる。現実にはあり得ない世界。割とそういうのが好きです。ダンスでも、普通にダンスするよりは水中でとか、そういうのを常に考えてますね。
Qotori filmオリジナル作品「脳内サーカス:circus brain」dir:島田大介
渋谷で6月からtaico club artproject と題してシブヤテレビ街頭ビジョン計6カ所で放映

■暗黒そして浮上~MV制作への情熱

―― JJDをお辞めになってからいかがでしたか?
島田:暗黒でしたね(笑)、不毛なバイトとかしてたし。そーれで、さすがに、がんばらないと、もういやだ!と思って(笑)。

―― それは、おいくつぐらいの時ですか?
島田:27、8歳ですね。制作会社に営業したりしました。といっても、自分の作品もあまりなかったのですが、ゲマインシャフトの時のツテでMVの監督ができて。それがワンドットゼロで上映されたWORD「ECHO」です。面白いって言ってくれて、WORDのメンバーがBACK DROP BOMBのボーカルやってたこともあって、BACK DROP BOMBのMVをやらせてくれたんです。で、一気に予算が増えて。予算をどう使っていいか分からなかったので(笑)、前からお世話になっていたMAZRIの千葉プロデューサーに相談に乗ってもらって。

■現在の活動~アーティストと共に創る喜び
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一青窈「ただいま」dir: 島田大介
「ただいま」と帰って来てドアを開ける行為にひっかけて、ドアがあるたくさんの部屋をアーティストが行き来するという内容。ドアを開くと壁がワイプし、カメラのアングルが変わったり、アーティストの動きを逆回転させて用いるなど、まさに実験映像的な表現が見どころだ。
―― 最近はCMも制作されてますが、MV制作とどこが違いますか?
島田:CMは制作過程が分業。こんなに分けていいの、って思います(笑)。MVは企画から出来て、全工程に関われる。最近はますます自分でなんでもやるようになってて、カメラまで全部自分。

―― 監督の仕事は、どこが一番楽しいですか?
島田:やっぱり作品が完成して披露する時が一番楽しいですね。いい企画ができたら嬉しいけど、MVって予算だったり、なかなかそのままできないから、ものになってからの方が嬉しいですね。MVはCMと違ってアーティストと作るところも、ダイレクトに作る喜びが感じられて、嬉しいですね。

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臼井嗣人「春紫苑」dir: 島田大介
ケンカした彼女へ素直に謝りたい男性の心を描いた歌詞。MVでは、恋人たちがそれぞれ孤独に過ごす姿を交互につなぎ、観るものの想像をかきたてる意味深なカットを挟み込むことで、唄の世界観をひろげている。
―― 最近の作品だと、臼井嗣人さんの「春紫苑」は、ストーリー性があるもの、一青窈さんの「ただいま」はギミック、木村カエラさんの「Yellow」はビジュアル的に派手ですよね。島田さんの作品は見る度に驚きがあるというか、さまざまな表現の引き出しがありますね。
島田:どうせだったら目立つもの、っていう関西気質なところもあるかもしれない。やっぱり、実験映像学んで、海外のファッションフォトグラファーとかディレクターと仕事して…そういうのが出てるんでしょうね。元々サブカルチャーなんですよ。

―― MySpaceで島田さんが手がけたアーティストのMVが紹介されてましたね。
島田:ウリチパン郡ですか?

―― はい! なんじゃこれ! と思って。すごいインパクト。
島田:良く言われるんですよね~。

―― かなり奇天烈な感じで、好きです(笑)。
島田:もともとサブカルだから(笑)。

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ウリチパン郡「ゼノン(edit ver.)」dir: 島田大介
4月にリリースしたセカンドアルバム「ジャイアント・クラブ」が好評なウリチパン郡(レーべル:AKICHI RECORDS) 。肩の力が抜ける、軽快なポップにマッチした、奇天烈な世界観のMVは必見!
―― (笑)ウリチパン郡のMVを作るきっかけを教えて下さい。
島田:三年ほど前、二階堂和美さんのライブで初めて彼らを見てすごく好きな感じだったんですよ。で、ちょうど、大阪のgrafって家具・空間・アートにわたってさまざまなクリエイティブ活動を展開する会社のレーベルAKICHIRECORDSから出すことになって。偶然grafに高校の同級生がいて、また別の偶然もあって、、スパイラルレコー ズにいた山崎真央さんって人が今回担当だったんですけど、僕上京したての頃スパイラルの地下のCAYってところでアルバイトしてて、その時から真央さんと知り合いで。そんでもう、「ものすごい縁だ!」と(笑)。

―― なるほど~。あのぶっとんだ世界観はすごいですよね。
島田:あのCDジャケットにも使われている帽子は、ウリチパン郡のメンバーが、学生が卒業制作で作ったやつを気に入って使わせてもらったみたい。支えがないとかぶれないんですけど…上から吊って撮影してるんです。浮いてるんですよ。

―― 撮影も島田さんが?
島田:大阪で撮影したんですけど、カメラ持って新幹線乗って。照明も自分でやりましたね(笑)。

―― ものづくりがお好きなんですね!
島田:そうですね。好きなアーティストとか音楽があって、MV作って行く過程で、お金がないこととかどうでも良くなるんですよね。そのモチベーションだけでやってるんです。なので仕事を受ける時にも慎重にやってます。

―― 好奇心とか、テンション保っていくのって大変じゃないですか?
島田:波がありますよすごい。でも友達の児玉裕一君とかの仕事見たりして「がんばってるな~」って思うと、自分もがんばろうと励まされたりしてます! 

淡々としていながら、話しているとものづくりへの静かな情熱がじわじわと伝わってくる島田監督でした。学生時代で学んだこと、イギリスでの希有な経験など、様々な経験を血肉にして、サブカルBUTエンターテインメントな映像世界を生み出してきたのだとわかりました。これからも、通をうならせる凝った映像で、私たちを楽しませて下さい!

5 つの質問 一問一答
Question 1: 一番影響を受けたものを教えてください
カメラ
Question 2: この職に就いたきっかけは?
バンドとカメラ
Question 3: 一番好きな映画は何ですか?
薔薇の葬列(松本俊夫監督)
Question 4: 作業場のまわりに必ず置いているものベスト3は?
ギター/雑誌/いい香のするもの
Question5: 今おもしろいもの/事って何ですか?
自主制作
島田大介
大阪府出身。京都芸術短期大学卒業。音楽MV CM など多数手がけ、完成度の高い映像美が注目を浴びる。WORD「ECHO」のMVはUKの映像イベント「onedotzero7」や「韓国Seoul film fes」で上映されるなど、高い評価を得た。現在は「コトリフィルム:Qotori film」という名義で活動中。

・櫻田千枝子(SAKURA堂)/取材&文
CGWORLD編集部を経て現フリー。自分好みの素敵オモロ映像を日々探索。好きなものは、南の島、代々木公園、のんのんばあ、フォルティ・タワーズなど。

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