Stash 92にも登場した修了制作「CHANNELER」が出来るまで。大橋史インタビュー

2012.06.29 Fri

 

中央にある黄色いパンダのロゴは大橋氏のトレードマーク。同じく多摩美術大学の学生だったデザイナーの彼女によるものだ。
大橋史(おおはしたかし):モーション・デザイナー。1986年生まれ。2012年多摩美術大学大学院修了。言葉、図形譜、ビジュアルミュージックをテーマにCGの有限性・限界線を意識したアニメーション表現の研究と創作活動をする傍ら、ビデオパフォーマンスグループ“metro moon”を主催。映像作家100人2011年度版、Stash、onedotzero、DOTMOV、FETE DE L’ANIMなど国内外のデザインカルチャーのマガジンや映像祭で上映/掲載されている。
今年2012年に多摩美術大学大学院を卒業したばかりの大橋史氏。専攻した情報デザインでは、CG作家としても有名な原田大三郎氏らが教鞭を執る。メディア芸術の一環としてモーショングラフィックスを研究してきた大橋氏だが、入学当時は、イラストレーションやアートディレクションに興味を抱いていた。

そして、サウンドアート研究家、久保田アキヒロ教授に授業で、Rosas、アルバ・ノト、池田亮司らのオーディオ・ビジュアル作品を見せられた時「体中にエレキが走ったんです。絵なんか描いてる場合じゃない!」と覚醒し、以降ミシェル・ゴンドリーによるケミカル・ブラザーズ「Star Guitar」の洗礼を経て、音と映像の関係を探っていくことに。多摩美時代の「何をやってもいいんだ。もっと自由に表現していいんだ」という発見は一番の喜びだったという。そんな大橋氏の最新作であり、大学院修了作品の「CHANNELER」をインタビューとともにお届けする。

■ 制作のきっかけ、出会い、そして“言葉”をテーマにした理由
「200 Nanowebbers」
dir: Semiconductor
大橋氏が衝撃を受けたという作品の一つ。音と映像が同期したCGアニメーション作品。
――大学院の修了作品として制作された「CHANNELER」ですが、原田大三郎教授からのお題は「ヤバいのを作って、それをネットに出して、世界中をアッと言わせろ」という自由かつ難問だったそうですね。
どうしよう・・・って。丁度スペースシャワーTVの「Canvas 1.0.0」用に、藝大の音楽環境創造科で作曲を勉強している羽深由理さんとニコ動界隈で有名なシンガー兼ミキサーのPUPIくんと一緒に「Animatope」というアニメーションを作ったところだったんです。

「Animatope」
dir/animation: 大橋史|composer: 羽深由理|singer: PUP
ニコニコ動画の「全部俺の声」カテゴリーで有名な謎のシンガーPUPIをフィーチャリング。多摩美入学当初はFlashをメインツールとしていた大橋氏。外部ソフトを使わなくても直感的に図形を描けることやレイヤー的な構造の考え方は現在大橋氏の技法や、考え方にも強く影響をしている。
――「CHANNELER」とは作風がまた違いますね。
大学一年生のころに授業でFlashを習ったときの影響があるんですが、今、日本のモーショングラフィックスは公共的でクリーンな作品が多いと思うんです。Canvasではティモテさん、TAKCOMさん、細金卓矢さんなんかまさにその最先端、トップを走ってる人と一緒に並ぶわけで、似たような方向性のビデオを作ったら勝てるわけがないと思って。それで、そうじゃない方法というか、大衆的なルックもそうだし、映像と音との関係も、彼らがやらないもので勝負しなくちゃって考えたんです。

――そこで、音楽を研究している羽深由理さんとコラボレーションされたんですね。
トレンドのエレクトロを作る人よりも、アカデミックに作曲を勉強してる人と組んだ方がお互い発見があるかなって。Twitterで大桃洋祐さんの「farm music」を見て、曲がよく出来てるので作曲を担当した方を検索したら羽深さんを見つけて、しかも藝大で作曲してて・・・っていうのが出会いのきっかけです。
彼女はもともと映画音楽の作曲を専門に研究していて、それこそ当時はジブリとかディズニー映画といった方向性の作品を創っている方。「Animatope」のような形で音と同期するアニメーションを作った経験はあまりなく、新鮮だったみたいです。このビデオって、最初と最後以外はシーンがどんどん上に向かっていくんですが、彼女の凄いところは、それを見抜いて、曲の構造もどんどんキーが上がっていく提案をしてくれた。ルールや構造に基づいた、映像と音楽の関係性から出来上がっていくって凄いなって。その観察力や直感に惚れ込んで「CHANNELER」でも一緒にやろう、とオファーしました。しかも今度は「言葉をテーマにした作品」を創ろうよ、と。

「CHANNELER」
dir/design/animation: 大橋史|composer: 羽深由理|mixer: 石田多朗|Lyric/MC: ONIPARI|recording engineer: 元木一成|special thanks: 原田大三郎(Professor)
※楽曲はSound Cloudからダウンロード可
――その「CHANNELER」についてですが、「言葉」をテーマに置いた理由は?
この作品は“言葉の変容”をテーマにしていて。ヒップホップの韻を踏む構造に合わせてアスキーアートのキャラクターがどんどん変わっていく内容になってますけど、初めはこういうものを作ろうという意識はなくて、言葉って何なんだろうと疑問に思ったところからスタートしたんです。「無意味な言葉ってあるのかな?」ってことを考えてたんですけど、日本語のルーツである大和言葉って、言葉の最初に濁音がほとんどないんです。例えば、バラって言葉も昔はイバラって言ってたり。そういう言葉の仕組みが今の日本語と色々繋がってて凄く面白いんです。「す」って言葉があるじゃないですか。「す」は、実際「す」って言っただけでは意味がないと思うんですけど、「す」って直線的な動きをイメージした言葉らしくて、「すすむ」とか「さす」って言う風に直線的な言葉に使われている。どんな言葉にも、必ず意味があった。
更に調べていくと「パパ」とか「ママ」も、親を意味するほとんどの言葉は母音が「あ」なんですよ。何故かっていうと、幼児って仰向けで喋ることが多くて、その時にどうしてもあ行でしか喋れなくて、「パパ」「ママ」になった。つまり、そこに父親っていう意味というよりは、「親と話したい」という本能から出た身振りの言葉っていう発見があったんですね。「話したい」っていう本能だけでも言葉は存在するんですよね。
一方でネットスラングや丁寧語は、成長によって言葉のパッケージングの仕方が、どんどん変わっていくという現象があるんですね。

――言葉も生きてるって感じしますね。
言葉がどんどん変容していって、ただ話したいだけなのに、ストレートな伝え方もあるのに、人を傷つけたくないからとか、こじらせたくないから言葉を変えたりだとか、言葉とコミュニケーションがどんどん歪んでいく怖さもあるんです。
僕は家で引きこもって作業する時はほとんどTwitterとFacebookしか見てなくて。その時って言葉のパッケージングの仕方が全然違うじゃないですか。それも凄く面白いなって思ったんです。じゃあ、そういうどんどん成長することによって、言葉の在り方が歪んでいく、そのもどかしさとかヤバさみたいのを、アスキーアートで表現してみようと。「CHANNELER」って言葉は「2ちゃんねらー」からもじってる部分もあるんです。

――チャネリングの方じゃなくて、2ちゃんねらーの方なんですね。
両方なんです。多様な2ちゃんねる的な言葉にアスキーアートを使うっていうのと、「人と話したい」っていう本能で生まれたものなのに、どんどん知性が介入して、そういう知性に取り憑かれた言葉に、また人間も取り憑かれてるっていうのが凄くイタコっていうかオカルト的、チャネリング的なイメージもあって。
僕らは言葉を操ってるのか、言葉に操られてるのか分からなくなる瞬間、それで「CHANNELER」っていうタイトルが一番ピンときたんですよね。こういう妖怪っぽさを出すために、ブラウザとかで使われているプロポーショナルフォントじゃなくて、ヒラギノ明朝体を使って、金剛力士像みたいなちょっとマッチョなビジュアルにしました。

――その企画を踏まえて、ヒップホップという音のジャンルの提案はどちらから出てきたんですか?

言葉遣いの変化や法則をリスト化したもの
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リサーチの段階で、年齢によって覚える言葉の増加を、彼女がこういう風に表にしてくれたんですよ。
そしたら羽深さんとミキシングを担当した音楽家の石田多朗さんが、同じ意味でも年齢によって言葉の使い方を変えたら構造的に面白いっていう発見をしてくれて。同じことを言葉のパッケージングの仕方を変えて繰り返しやったら、音楽的にも面白くなるんじゃないかって言われた時に、“繰り返す”っていうのにピンときて。それで「ヒップホップが合うんじゃないか」って閃いて。

■ ヒップホップを選んだ理由とは
仮題「フォルマントム」とした初期の企画。フレーズ毎に大人の顔つきに変容していき老いて死んでいく内容。震災直後だったため、人間の本質について熟考した時期でもあった。
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――丁寧な創作過程ですが、どれくらいの期間をかけて企画をディベロップさせていったんですか?
プロットを3月中旬から初めて、企画がカチッと決まったのが6月末です。

――実際に制作していく上で表現における影響を受けた作品などあるんでしょうか?
愛と剽窃」(原題:Love & Theft)っていうドイツのアニメーション作家、アンドレアス・ヒュカーデのフレーズ毎に顔が変わっていくっていう構造に影響を受けてます。これは、歌モノじゃなくて、ロックミュージックにキャラクターの顔がフレーズ毎にメタモルフォーゼしていく作品なんです。
他にも、いとうせいこうさんが宇多丸さんとTBSのラジオで言っていた「百人一首みたいな俳句は凄くヒップホップ的だ」っていう話にも影響を受けてます。感覚を研ぎすませて聴くと俳句も韻を沢山踏んでるように聞こえるという話を知って、「日本語とヒップホップの相性って凄くいいんだ」っていうことに気付いたんですね。
あるルールに基づいて“フレーズと人間の成長”の変容を表現していく上では音楽はしっかりした構造が必要だったんです。そして羽深さんと多朗さんの言葉を覚えるプロセスや構造の指摘で閃いてヒップホップしかない! と。「アツい、ヤバい、ハンパない」って言った時に「アツい」で子供、「ヤバい」で若者、「ハンパない」で老人になるみたいな。さらに、風景だとか余計なことは描く必要がなくて、人の顔だけを変化させて表現出来るなってことを考えましたね。

――羽深さんはヒップホップというお題をどう受け止められてましたか?
最初は「やったことないし、ヒップホップ好きじゃないし」みたいな感じでした。もともと彼女は藝大でオケ書くようなバリバリの作曲の子なんですけど、ヒップホップに関してはミキサーの多朗さんの方が詳しく作曲をするうえでアドバイスもしていただきました。今回は生音は殆ど使わず、シンセサイザーの打ち込みメインの曲を書いていただき、その音源をミキサーの多朗さんにドライでフラットにミキシングしていただきました。彼女の作曲にもルールがあって。もともとのビデオの構造が、最初はコミカルな曲調に子供の言葉遣い(簡単な主語と動詞だけ)が被さり、大人になるにつれて本音と建前、ネットスラングとか、どんどん言葉の在り方が歪んでいくのを、コードがメジャーからマイナーになるような作曲の方法で、音が足されていく。足していって、それがひずんでいく感じにしたそうです。
結果、曲調をどんどんマイナーにしていったら自然とインド音楽みたいになったそうです。
それで、そのエキゾチックで、しかもフレーズが繰り返されるのが、お祈りしてるみたいにも聞こえるし。音源を聴いた時に「あ、プロポーショナル・フォントじゃないな」って気付いて。もっと妖怪みたいにしたくなって、ヒラギノ明朝体の曲線的な書体を選んで、タイピングの実際のアスキーアートのような厳密な文字組みでなく、回転させたり反転させたりするのをOKにして、最終的に昔の日本の妖怪みたいなビジュアルにしていきました。
あとは、やっぱりMCの方の存在が凄く大きかったですね。

――MCのONIPARIさんとコラボレーションするきっかけは?
MCが必要になった時に知り合いでラッパーがいなくて困ってた時に、ティモテの村井さんが「ヤバいMCがいるから」って紹介していただきました。ONIPARIさんって、下北沢に住んでいること以外はよく分からないミステリアスな存在の方(笑)。名前に鬼って付いてる位なんで、色々と凄く怖い方で・・・。彼は、いつもはこういうシステマティックなリリックを書いている方ではないんですけど、今回は、成長する毎に言葉を覚えていく仕組みやリサーチを共有して、それに基づいてリリックを書いてもらっています。出てきたものを取捨選択していき、結果に凄く良い感じのリリックを書いて下さいました。年齢も近いっていうのもよかったんだと思います。

大橋氏によるスケッチ
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当初、一人の男の人生を描く予定ではなくて、女の子の言葉があったらそれがギャル言葉になったりだとか、真面目な子が凄く難しい言葉を使ったりとか、オタクっぽい子がネットスラング使ったりだとか、人によってパッケージングが違うっていうのを表現したかったんですね。それはたぶん、□□□(クチロロ)の「CD」っていうアルバムの影響だとは思うんですけど。言葉の変容と共に、人の在り方も変わっていくというアイデアでした。それをこのような絵コンテにしてONIPARIさんと共有したところ、「一人の男の人生の方がスマートになるんじゃない?」って提案してもらって、今のかたちになりました。ちなみに「CHANNELER」のポスター、可愛くないですか?

「CHANNELER」のポスター
※画像クリックで拡大します。
――可愛いです(笑)。
ONIPARIさんからのリリックがフィックスして具体的な画を描いているので、言葉が軸にあって、それに対して映像と音楽を作っていくって感じでした。
例えば中学校時代になると、リリックの中に気になる女の子が出てくるので、しずかちゃん的な女の子のデザインを描き起こしたりとか。「いい点とらないと超怒られる」ってリリックで、恐い先生だとか。リリックにおいてはテーマ以外にかっちりディレクションはしてなくて。なので、ONIPARIさんはどちらかというとMC以上に、脚本家としてのポジションがデカいですね。
Vimeoのページにリリックを記載しているので見ていただけると分かると思うのですが、終盤の物語というか人生が破綻したリリックも、本当はこういうリリック書いてくれなんて、僕は頼んでないんですけど、ONIPARIさんが勝手に書いてきたんですよ。でも、それが凄い面白くて「これを利用しない手はない」と思ったんです。
ラストも言葉の歪みをモンスターにして可視化する方向にしました。当初、プロットも人が知性に取り憑かれても最後は本能に回帰していく、多少は救いのある物語を考えていました。しかしONIPARIさんの救いのない展開の方が面白いなって。赤い背景の時に現れるモンスターも、韻を踏むごとに3つ目、2つ目、1つ目って人間の内面が歪み化け物になって行くことへのカウントダウンを意味しています。

■ アスキーアートで挑戦した表現の試行錯誤
幼少期は主語と動詞で構成されているが、形容詞、接続語が登場し、高校生になると、「だめぽ」「カオス」といったネットスラングが加わってくる。社会人になると本音と建前が生まれ歪、最後は化け物になっていく。
――背景があるわけでもなく、凄いシンプルな中で5分間っていうところを見せていく難しさってあったと思うんですけど。
そこは本当にしんどかったですね。フォントで画を作るっていうことは、思い描いたイメージを紙とペンを通して再現するんじゃなくて、直接PCに向かってタイピングしていくので、最終的にどういうルックになるのか想像出来ないのが凄くしんどかったですね。

――シンプルだけどダイナミックに見せていく苦労とか?
ありましたね。「愛と剽窃」を見た時に、ミニマルだけどダイナミクスがあるのはどうすればいいのかを考えさせるキッカケを与えてくれました。基本的に言葉の音節に合わせて、アブストラクト・アニメーションを同期させてフォントがパーティクルのように飛び散り、韻を踏んだらアスキーアートになっています。本音と建前のシーンは、フレーズを二つ(AパートBパート)作って、それが組み合わさると上下画になったり、頭韻を踏むとアスキーアートが迫ってきて画面が反転するってことを考えたりとか。
途中でギターのリフが出てくるんですけど、今までアスキーアートは韻を踏んだら弾けるだけだったのが、メタモルフォーゼしたりとか、どんどん音の要素に対してのビジュアルの要素がフレーズ毎にルールを変えていって展開していくっていうのに集中して、演出を突き詰めました。
言葉、音、ビジュアルがお互いにどういう風に関係してるのか?って色んなパターンでもって見る人を飽きさせない努力をしました。

――音と映像とコトバのチャネリングをやってるようなものですね。
「愛と剽窃」にいちばん憧れたのは、ポップでエンターテイメントなのに、批評性があって、それを表現するためのプロセスが凄く実験精神がある。そういう風なものを作れないかって。

■ 制作の背景、制約を課した創作活動

――Flashで映像制作を始めているとのことですが、今作のツールについて教えてください。
今ではAfter Effectsで作っています。全部シェイプのレイヤーで一旦Illustratorでアウトライン化した文字をシェイプのパスでコピーしたりとか、あとは実際にフォントレイヤーを動かしたりして作りました。文字化けのようなシーン、キュルキュルキュルって動くところは、一つのコンポジションの中に動きのバリエーションを複数作って構成しています。プログラミングは一切使ってなくて、手打ちです。

――学生の時はアクションスクリプトとかやってたんですよね?
それで、プログラミングがトラウマになったんです(笑)。

After Effectsの作業画面より
※上下ともに画像クリックで拡大します。
――気になる原田教授からの評価はどうだったんですか?
「問題ない」って(笑)。
ツールの話で言うと、After Effectsで完結する作品を作ってるんですけど、そこには理由があって。デビッド・オライリーっていうアイルランドのCGアニメーション作家がCGの在り方について問題提起している文献「アニメーション基礎美学」に凄い衝撃を受けたんです。要は、CGっていうのは基本的にどんなものでも再現出来るんだけど、それは一方で凄く危険な表現で、例えばプラグイン使ったりだとか、手描きの素材、撮影したビデオ素材なども組み合わせられて出力を拡張出来るんですよ。アニメーションにおいて作家のアイデンティティは、メディアの制約があること、例えば砂でやると砂でしか出来ない表現があると同時に、砂だと出来ない表現があるじゃないですか。そういうような手法が持っている制約があるからこその恩恵があって、CGの弱点は実はそれがないことだっていう、その問題提起に凄い衝撃を受けて、じゃあ、自分に何が出来るかって言ったら、After Effectsで完結させることで出来ないことを敢えていっぱい作って、そこから生まれる思考やAE特有の質感が出来ると思ったんです。たとえるなら真剣振りかざしてるような侍を相手に、木刀で勝っちゃうような人になりたいなって(笑)。
あと、CGらしさって何なのかっていうのを考えた時に、ポリゴン、グリッジ、ワイヤーフレーム以外にもアプローチはあるよなって考えていて。「CHANNELER」では実践してませんが、一目でCGなのは分かるんだけど、次第にCGであることを忘れさせる実在感を表現するための方法論で、cokiyuのMV「Your Thorn」を作ったんですよ。

cokiyu「Your Thorn」
dir: 大橋史
IllustratorもPhotoshopも使ってなくて、After Effectsの標準機能だけ。サードプラグインも使ってないんです。「それで全部やってやろう」って決めたMVです。基本的にはシェイプアニメーションで作ったベースとなる動きに色んなエフェクトを重ねています。グローとかレンズフレアの標準のダサいやつだけ。でも、意外とそのダサいレンズフレアもそうは見えないのが面白い発見でした。

――モーショングラフィックスでは構成以外にも、やっぱり“モーション”だけに、どう動きをつけていくか、動きが見た人にもたらす感覚における拘りや研究してること等あるんですか?
動きについては、短編アニメーションを参考にしています。「アニメーション基礎美学」を土居伸彰さんが翻訳しているのですが、土居さんは山村浩二さんが主催してる、アニメーションを研究する団体 Animationsや、大山慶さん、和田敦さん、水江未来さん、橋本新さんを中心メンバーしたアニメーションレーベルのCALFにも所属していて、短編アニメーションの世界を色々と紹介してる方なんです。で、短編アニメーションっていったら「チェコのアニメーションとかロシアのアニメーションとかのフォロワーばっかりなんでしょ?」っていうノスタルジーな感じの作風ばかりだという偏見があったんですけど、土居さんと山村さんがキュレーションしたアニメーションズ・フェスティバルという映画祭でコンテンポラリーな短編アニメーションを見た時に、凄く多様な表現があるのに衝撃を受けて上映終了後、しばらく両手の震えが止まりませんでした。
それまで僕は手描きやコマ撮りのアニメーションをすごくバカにしてたんです。「モーショングラフィックスの方が断然新しいし、面白いだろう」って思ってたんですけど、「熱量もモーションの在り方も全然負けてる!」って思って。短編アニメーションの多様性に衝撃を受けたあとに改めてモーショングラフィックスの世界を見渡したときに日本の現状はある種の一神教みたいな、似たような作風の中で技術とセンスを競い合っている様に見えてきて。
モーショングラフィックスってフレーム補完で、タイムラインを俯瞰してるじゃないですか。一方アニメーションはコマで考えていて、コマとコマの間に時間がない。その時間を積み重ねるっていう感じが凄いなって思って。それってフレーム補完とは違ってコマで考えると先が見えないんですよ。その先の見えない合理的でないところ面白さがある。「Your Thorn」に関しては、キーフレーム補完をあんまり使ってないんですよ。クラゲみたいな動きも1フレームずつ、29フレームを手打ちで少しずつ動かしてて。ペジェ曲線の性質である点(アンカーポイント)と線を結ぶ構造が生む動きの質感を追求しています。「Animatope」も1フレームずつ時間を積み重ねて、動きを積み重ねていくことの快感を生かした作品です。だから、合理性とか目的ベースで技術を開拓するっていうよりかは、After Effectsで完結する手法や、コマで動かすような感覚で作った時にどういうものが出来上がるのかっていうプロセスを楽しんで作ってます。

――「CHANNELER」に戻りますが、「愛と剽窃」のごとくエンターテイメントして成立させるために考えたことはあるんでしょうか? 視聴者との距離感というか。
見終わった時に「うおー、やったぜ!」みたいな感覚をどうやったら表現できるかなって。終盤の方とかゾエトロープみたいな感じとか、その前のメタモルフォーゼするところとかも、見た人に「うおー、やったぜ!」みたいな感覚を持ってもらいたくて。コンセプトや文脈を切り離した時、見終わった時に爽快感というか「生きててよかった!」「やったぜ!」みたいな感覚が欲しいなって。やっぱり馬鹿なんですよね、僕(笑)。

――えっと、いきなりそこですか(笑)!?
あの(笑)、本当に終わりよければ全て良しみたいなところがあって、最後は本当にグワッてなってワッてなって「やったぜ!」みたいな感覚があれば、もう自分でも何言ってるか分かんないですけど(笑)、そうであればいいなって。

――でも、そういうの意外と大切かもしれないですよ(笑)。話が全然変わるんですけど、ティモテだったりとか周りの映像作ってる人たちと最近どういうことが話題になりますか? ティモテは多摩美の先輩なんですか?
村井さんが先輩なんですよ、学科は違うんですけど。あと、やんツさん(山口崇洋)は同じ学科の先輩です。
最近の話題っていえば、white-screen.jpの「Tell Your World」のインタビューを見たんですけど、今ああいうニコニコ動画を中心にしたアニメとかゲームの文化にマジで影響を受けて作品にしてる人が、僕らの下にいるっていうことが衝撃的っていうのを、ティモテの社長と話してて。今、ニコニコ動画の文化にどっぷりハマってるのって中学生とか高校生じゃないですか。その子たちが美術とか音楽とか作りたいって興味を持った時にどういう表現が出てくるのかっていうのは凄く興味深いです。
あとは、Vimeoとかニコニコ動画とか、動画投稿する場所でYouTube以外にも濃い文化圏が生まれているっていうのは凄い面白い。一方で文化圏が変わるとその中で評価されているものも全然違うし、ものづくりに対する思考の型も全然違うと思うので、そういう文化圏を飛び越えたものをこれから、文化圏の違う人と組んだら面白いものが出来るんだろうなって思っています。

――卒業されたばかりですが、今後はどういう活動の方向を予定しているんですか?
何も考えてないんですよね(笑)。就職もしてません。最近は、韓国の麗水万博の日本政府館の環境映像やったりとか、あと大学の先輩の斎藤渉さんの仕事を手伝ったりしてました。僕の手法で仕事になるのかなっていう不安もあります。After Effectsで完結する方法論って、人に伝えてもなかなかピンとこなかったりするので、仕事になるのかなぁって。昔は辻川幸一郎さんのようなMVのディレクター目指して映像をやってたんですけど、最近は音とビジュアルの関係って考えた時に、コンテンツも色々あるので、映像以外でも企画とかガンガンやっていって、それで飯が食えたら最高だぜって感じですね。
一方で、オリジナルの新作を作ってて。それも、藝大の羽深さんが今年大学院を修了するんですけど、彼女の修了制作になるんです。それも言葉をテーマにした作品です。「Animatope」と「CHANNELER」と新作とで三部作になる予定です。
クライアントワークもオリジナル制作も凄く楽しいので、別け隔てなく活躍出来たらクールかなって(笑)。

■ 5つの質問 一問一答
1: 一番影響を受けたものを教えてください
タワーレコード新宿店、多摩美の情報デザイン学科
2: この職に就いたきっかけは?
なりゆき・・・
3: 一番好きな映画は何ですか?
実写なら「バロン
アニメだと「もののけ姫
4: 作業場のまわりに必ず置いているものベスト3は?
元永定正の絵本、チョコレート、コーヒー、ゴミくず
5: 今おもしろいもの/事って何ですか?
チームラボの猪子さん。
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