映像クリエイターに聞くー発信し続ける会社「WOW」の10年 

2007.09.06 Thu

 

WOW所属 中路琢磨さん、阿部伸吾さん

WSがWOWの存在を知ったのが2005年にRESFEST World Tourで上映された「JURYOKU」名義の作品「The Poetry of Suburbs」、仙台の街をモチーフにしたデザインフィルム。そして、続く2006年のUONUMAによる「4F」がきっかけでした。それぞれ個人で活動されているユニットだと思いきや両チームともWOW所属・・・!ということで一体どんな会社なのか真相を探るべく早速お話を伺ってきました。

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左から中路さん、阿部さん

本日お話を伺ったのはUONUMAの阿部伸吾さんとJURYOKUの中路琢磨さん。

WS:まず、お二人のWOWでのお仕事の肩書きをお教えください。
中路:僕はデザイナーです。

阿部:僕はデザイナーとディレクターで、CGデザインはコンテやプランがあらかじめあって、「こんなものを作ってください」と言われることが多いです。ディレクターの場合は、企画から関わることも多いですね。

WS:どのような経緯で、WOWに入社されたんですか?
阿部:もともと僕は監督志望でした。前の年に大学のカリキュラムの一環でインターンシップで働いていた縁で、志望したのがきっかけです。WOWのオリジナルの作品群を見て「好き放題させてもらえる!」かと思って入ったら、1年目はもうずっと修行期間で制作には触らせてもらえませんでしたね。※現在はインターンシップは行っていません

於保浩介さん(WOWクリエイティブ・ディレクター):大体みんなそう思うんですよ。オリジナル見て、「こういうの作れるんだ!」と思ってノリノリで来るんだけど、そうそう作らせてはもらえない。でも阿部は早いほうですね。


WOWで阿部さんがCG制作に参加した作品「coke+iTunes」

WS:中路さんは学生時代の作品「5DDAM JAPONISM DESIGN COMPLEX BEVEL 8」がRESMIXSHORTS(2002)で上映されていましたね。その当時ずば抜けて異質でしたよね。仙台に就職したとは話に聞いていたのですがWOWだったんですね!
中路:はい。WOWは毎年デモリールの制作や新しいことに挑戦しているところが他と違っていて、そこに惹かれて入社したんです。

WS:いままで印象に残った作品は?
中路:僕は表参道ヒルズで行ったインタラクティブ・インテリア、HITACHI WOOOの海外VP、パルックなどが印象に残っています。自分だけの力だけではなく、才能あるディレクター、イラストレーター、プログラマーの方々と一緒に一つの作品を作り上げれた仕事は全部印象深いです。

阿部:仕事はどの仕事も楽しいんですけど、印象に残るっていう意味だと企業のCI(コーポレートアイデンティティ)ですね。CIはコンテに沿ってというのではなく、ロゴをもとに作って見せて自分のアイディアが認められればOKという世界です。プレゼンの段階でOKがもらえることも多いですね。

WS:阿部さんの手がけたGAGA CommunicationsのCIは、星の形がロボットのような生命体に変化する動きが印象的でした。音と動きがぴったり合っていて、聴覚、視覚どちらにも訴える作品ですね。
阿部:GAGA CommunicationsのCIは入社2年目の時に手がけたものです。まず既存のロゴの文字をいただいて、それから星の部分と動きを考えてデザインをしました。

於保:基本的に、任せられるものは任せたほうが意外なものができるし、「こんな考えもあったのか」っていう驚きがあります。あまりこちらが指示しすぎるとモチベーションも下がるし、かえってできなくなってしまいますから。


中路さんのユニット「JURYOKU」の作品


クリエイティビティを保つ最高の環境

WS:社内に和気あいあいとした雰囲気を感じますが、クリエイターのみなさんは普段から仲がいいんですか?
中路:オフィスの中にクリエイターだけが使う部屋があって、そこで食事や情報交換をしています。その部屋では他のクリエイターがなにやってるのか見に行ったりするのも全然OKで、閉鎖的なところがないですね。「なにこれ、どうやってんの?!」って教えてもらったり。それも後輩に(笑)。そういうことを人に聞くのはかっこ悪いっていう風潮がこの業界だとあるんですけど、WOWではオープンに聞ける環境があります。

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光が沢山入る窓とスタイリッシュなインテリアで、海外のようなオフィスです。


「社内ユニット」とは?

WS:お二人とも、「JURYOKU」と「UONUMA」は同じ会社のメンバーと個人的に作品作りをしているんですよね?社内ユニットというのはかなり変わった制度だと思いますが?
中路:社内ユニットは社内で2、3人くらいのユニットを組んで、仕事ではないプロジェクトを進めるチームのことです。ユニットは相性の合う同僚と自然発生的に生まれていて、現在社内に4つくらいあります。

WS:そういう個人活動は、仕事が終わってからやるんですか?
中路:僕らJURYOKUは「やりたいので時間をください」と言ってやらせてもらったりしてます(笑)。3人のユニットなんですが、今回はもう 一人参加してもらって、それぞれ業務時間内に交代で作っていますね。そういう個人の活動に時間を裂かせてくれるところがこの会社のすごいところです。

WS:社外の人と組むのはありなんですか?
於保:ありですが、できれば映像以外の人と組むのが理想ですね。表現に広がりが出ますから。

WS:お二人の個人ユニットで今進めてるプロジェクトはありますか?
於保:Tent Londonの映像を、阿部がまとめ役で混成グループで進めています。
中路:JURYOKUは今回WOW10に載せた「ホメオスタシス」のムービーを作ります。

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WOW10収録の森脇大輔+JURYOKUの作品「ホメオスタシス」


WS:WOWは「Quartz Composer」(Mac OS Xに付属のリアルタイムに様々な映像をつくることができる開発ツール)でも有名ですね。映像作家と何か制作する予定などありますか?
於保:実はビッグプロジェクトがあって、来年くらいに発表する予定です。今は詳細は言えませんが楽しみにしていてください。

心から楽しそうに仕事に取り組むお二人が印象的でした。
会社がクリエイターに自由度を持たせて好きなことができる環境をつくり、バックアップすることが全体のクリエイティビティを高めてよりよい仕事につながっているというのを実感。
後半では二人を抱える会社「WOW」に迫ります!




発信し続ける会社「WOW」の10年

中路さん、阿部さんが所属するのは仙台から彗星のように現れたクリエイティブ集団WOW。東京と仙台に拠点を置き、かわいいキャラクターの住友林業、動感が気持ちいいvolvicENEOSなどクオリティの高いCM、PV、VIなどの映像デザイン、CG、ディレクションのほかオリジナルワークの制作も勢力的に行っています。CMや企業CIで、心に引っかかる「気になる映像」の制作元をたどるとほとんど彼らに行き着くと言っても過言ではありません。

彼らは今年10周年を迎え、記念碑的アートブック「WOW10」を出版。 WOWの軌跡と高いクリエイティビティを保つ秘訣を代表取締役社長の高橋裕士氏とクリエイティブ・ディレクターの於保浩介氏にお話を伺いました。


WOWは1997年に仙台でウェブデザインの会社としてスタート。その後、鹿野護氏(「未来派図画工作」の活動でも知られるアートディレクター)と映像の分野へ移行する。2001年東京に進出し、現在は本社を東京に移し、仙台は鹿野氏を中心としたテクノロジー研究ラボ的存在。


WOWでは毎年 違うことにチャレンジをさせます

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於保クリエイティブ・ディレクター

WS:個性とクオリティが両立している商業作品、世界に発表するオリジナル映像と、WOWの作品は、希有なものが多いと思いますが。
高橋:僕たちが目指してるのは、他の会社と全く違う、何にもあてはまらない会社です。普通は製作、プロダクション、CG製作とか、どれかひとつになってしまうことが多いですが、WOWでは私が提案したテーマのもとに、毎年新しいチャレンジをさせています。それが今回出版したWOW10だったり、昨年発売したDVD「Motion Texture」だったりするんです。

毎年の新しいプロジェクトはみんなと相談して決めています。僕が「シンプル」とか「トリップ」とかキーワードを提案して、それをみんながメディアに落とし込む。好きなことをとことんやらせる環境づくりを目指しています。

なにかやるときは、完全にやりきらないと認められない。どこでも作っている映像ではなくて、テーマとしては「残るものを作る」。来年はもっとすごいですよ!って毎年言い続けてるんですけど(笑)。

WS:クリエイターだけでなく企業としてもクリエイティブですね。
於保:WOWがWOWである所以は、自ら発信しているところだと思っています。普通だと頼まれたものをこなすソリューションだけになってしまう。実はクリエイティブといわれている業界の中でも発信している人ってものすごく少なくて、それができている映像系の会社は日本だとほとんどない。WOWに 入ったのは5年前なんですが、そのときに「なんか変なの作ってんな」という印象が強くって、それをやり続けようと。

WS:と言うことは、CG、モーショングラフィックのイメージが強いですが、実際はどのあたりまでカバーしているんですか?
於保:企画の段階から携わって最後の編集までやるケースもあれば、実は企画だけってケースもあるし、ほんとうにケースバイケースですね。個人的には、もう分業の時代じゃないと思っています。

私は代理店のCD(クリエイティブ・ディレクター)だったので、代理店の外と内の要望がわかるんです。広告の世界は分業ではっきり役目が分かれているのです が、それはナンセンスだと思う。

どういう役割の人でも、「なぜこうなっているか?」を理解しないとダメです。 クリエイターに最後の表現のところを頼むに しても、なんでこういう表現になるのか理解できてないと、何かあったときに対応できない。でもわかっていればこのへんでつまづいたとしたらこっちの方向もある、と考えられる。そうやって一人ひとりが考えられるようになると凄い仕事が出来る。言われたことだけやっているのはWOWではありえないんです。

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社内にはWOWメンバーとWOW10に参加したアーティストのアートワークが


WOW10-WOWの10年とこれからの10年

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wow10表紙。ぜひ手に取ってその完成度を確かめてほしい。


WS:十周年記念本のWOW10についてお聞かせ願えますか?
於保:WOW10は海外向けに作った本なんです。日本以外をターゲットにしています。中身もバイリンガルだし、海外の人に見てほしい。実際海外からの問い合わせも多いです。

いつもはデジタルで作品を作っているので、本は紙の風合いなど触ったときの質感、素材にこだわりました。デザインはクリエイティブグループartlessに依頼しました。海外の人に細部までこだわったこの本で日本のデザインの繊細さを見てほしいと思っています。

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出版の常識をやぶる豪華装丁。布張りに型押しされた文字、丸く開けられた穴からは木目が覗く。


WS:WOWに所属するクリエイター5組と、他の表現分野の5組のクリエイターを招いて創られていますね。
於保:前半のゼロセクションは10年間のオリジナルワークをこの本のために、紙メディアのグラフィック作品として改めて制作したものです。作品に合わせて紙質を変えたりしてるんです。10周年といっても、単なる集大成的なものを作るのは避けました。過去を振り返るのでなく、これからの10年に向けた作品にしようと。既存の作品がベースですが、全て一から作り直すくらい手を入れて生まれ変わっています。

後半のセクションは異業種や他ジャンルから、独断と偏見で選んだアーティストの作品です。
たとえばこの華道のページですが、CGは10年で予想もつかないくらい変わるけど、華道のような伝統芸能は10年じゃビクと もしない。型の表現とデジタルの表現を対比させたかった。また付属のDVDには今までのオリジナル作品を全部収録しています。

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池坊流石渡雅司氏とのコラボレーション


WS:日本でこういった活動をしているプロダクションってないですよね。
於保:本をディストリビュートしてる人にも言われましたね。「こんな本、グラフィックやってる人でも日本で作ってるところない。」って。出版も自ら、 ISDNコードを取得してやってます。原価のことはあまり考えてないですね。普通の本屋だとこういう特殊なアートブックは売れにくいと思うので、いい本屋さんにだけ置いてもらえればいいと思っています。

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wowメンバー、阿部伸吾さんの作品


・wow10公式サイトはこちら
・wow10は都内アート系ブックショップ、amazonで購入可能


グローバル発信をするフレームとしての海外活動

WS:最近は海外での活動も増えているそうですね。
高橋:仕事に関しては、やはりグローバル展開のWEBなど海外の仕事のケースも多くなっています。そうなると現地の人にむけて、ローカルなネットワークが必要になる。もし我々の拠点がロンドンにあれば、ヨーロッパの映像業界と繋がりも出来るし、デザイン、ファッションなどほかの業種とも繋がりができる。そうやって自分たちの世界を広げていきたいですね。

今進めている海外プロジェクトとしては、WOW10に関連したエキシビジョンをロンドンのアートフェアTent Londonで行います。Tent Londonはロンドンデザインフェスティバルの開催中に行われるプログラムで、300以上の展示がある大規模なエキシビジョンです。現在新しいムービーを作成中なんですが、なかなかいい感じに仕上がっていますよ。

Tent London
〔開催期間〕2007年9月20日(木)から23日(日)まで
〔会場時間〕20、22日:10時-21時、21日:10時-19時、23日:11時-17時
〔パーティー〕21日 20時-23時
〔会場〕Truman Brewery, Brick Lane, London, E1 6QL
会場周辺地図はこちら

グローバルな感性でエネルギッシュに進むWOW。今後の動向にも注目です。



阿部伸吾:
映像アーティスト。2004年東北芸術工科大学卒業。在学中に制作した〈real / MAZE〉、〈6/9 TOKYOSTATION〉は、NHK Digital Stadiumで2003年のベストセレクションに入賞し話題を呼ぶ。国内ばかりでなく海外でも多くの受賞歴がある。WOWではCoke+iTunesのCMやGAGAのCIなどを手がける。

5 つの質問 一問一答
Question 1: 一番影響を受けたものを教えてください(一言理由も)
阿部:旅先の景色 海、山が大好き
Question 2: この職に就いたきっかけは?
阿部:もてたい。
Question 3: 一番好きな映画は何ですか?
阿部:となりのトトロ
Question 4: 作業場のまわりに必ずおいているものベスト3は?
阿部:(1)マッキー、(2)裏紙、(3)デジカメ
Question5: 今おもしろいもの/事って何ですか?
阿部:バイク


中路琢磨:
映像アーティスト。中路琢磨・水野祐佑・工藤薫で結成されたJURYOKU名義で活躍。『The poetry of suburbs』でresfest2005ワールドツアーにノミネート。最新作ではインターフェイスに反応し、レイアウトが無限に変化するリアルタイムモーショングラフィックスを発表。WOWではPLAYSTATION3やSONY ERICSSONのCMなどを手がける。

5 つの質問 一問一答
Question 1: 一番影響を受けたものを教えてください(一言理由も)
中路:住む環境に影響を受けます。その環境で感じたことを表現していきたいです。
Question 2: この職に就いたきっかけは?
中路:何かつくりたかったから
Question 3: 一番好きな映画は何ですか?
中路:茶の味
Question 4: 作業場のまわりに必ずおいているものベスト3は?
中路:メガネ、コンタクトレンズ、コンタクトレンズ液
Question5: 今おもしろいもの/事って何ですか?
中路:青山WOWのスタッフ


於保浩介:
WOWクリエイティブ・ディレクター。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒。CMを中心とした映像全般のプランニング及びクリエイティブディレクションを手掛ける。アートブック[WOW10]では編集長を務め、WOWのオリジナルワーク全般をクリエイティブディレクションする。最近の仕事は、SONY ERICSSONなどCMの演出、WOWOWなどCIのディレクション、Panasonicなど展示用映像の演出、etc

5 つの質問 一問一答
Question 1: 一番影響を受けたものを教えてください(一言理由も)
於保:出会った人々(常に影響受けてます)
Question 2: この職に就いたきっかけは?
於保:美大が楽しそうだったから
Question 3: 一番好きな映画は何ですか?
於保:「ディーバ」
Question 4: 作業場のまわりに必ずおいているものベスト3は?
於保:飲み物、タバコ、子供の写真
Question 5: 今おもしろいもの/事って何ですか?
於保:自転車


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