Canon CINEMA EOS SYSTEM撮影事例レポート! 三木聡監督による乃木坂46「ススメ!橋本奈々未」撮影の裏側!!

2012.03.09 Fri

 

 

2012年1月31日に発売となったキヤノンのCINEMA EOS SYSTEM「EOS C300」。この新しいデジタルシネマカメラを使用した撮影事例を、2月9日に開催された「CANON DIGITAL MOVIE WORKSHOP」のセミナーから全2回に渡ってお届け!

第1回は、監督としてドラマ「時効警察」シリーズや映画「転々」「インスタント沼」などで活躍する三木聡氏が、映画「図鑑に載ってない虫」などでタッグを組んできたカメラマンの小松高志氏、プロデューサーの氏家英樹氏ら盟友と共に手掛けた、乃木坂46のショートムービープロジェクト「33人のクリエーター×乃木坂46」からの作品「ススメ!橋本奈々未」。「三木聡監督が描くアーティストのプロモーション・ビデオ」セミナーから、撮影の裏側をご紹介!

■ 総109シチュエーションの企画!「ススメ!橋本奈々未」とは!?
「ススメ!橋本奈々未」ダイジェストムービー
dir: 三木聡|assistant dir: 林雅隆|cam: 小松高志|l: 藤森玄一郎|art: 黒川通利、布部雅人、露木恵美子|m: 山崎惠子|post prod: シネマサウンドワークス|lable: ソニーミュージックレコーズ|prod: オーシャンコミュニケーションズ
AKB48のオフィシャルライバルとして2012年2月22日にデビューを果たした乃木坂46。デビューに際し、メンバー33人全員を日本を代表する各界のクリエーターが撮り下ろし、33本のショートムービーを制作する企画が行われた。その一編として三木監督が手掛けた本作は、YouTubeで約5万ビューを記録している。
三木 聡(映画監督):1961年神奈川県出身。「トリビアの泉」などの構成の他、シティボーイズライブの脚本・演出等も手掛ける。「時効警察シリーズ」でテレビドラマの演出も。映画作品は監督、脚本を手掛け、代表作として「図鑑に載ってない虫」(2007年)「転々」(2007)「インスタント沼」(2009)等多数。
小松高志(撮影監督):日本映画学校を卒業後、撮影助手として「ピンポン」(2002/曽利文彦監督)に携わる。撮影監督として「バトル・ロワイアルII 鎮魂歌 B班撮影」(2003/深作欣二・深作健太監督)、「図鑑に載ってない虫」(2007/三木聡監督)、「蟹工船」(2009/SABU監督)「映画 怪物くん」(2011)等を手掛ける。
氏家英樹(プロデューサー):「月はどっちにでている」(1993/崔洋一監督)等、映画、ドラマの製作担当。以降、ライン・プロデューサーとして、「ニワトリはハダシだ」(2003/森崎東監督)、「血と骨(2004/崔洋一監督)、熱海の捜査官(2010/三木聡監督/テレビ朝日)ほか2012年公開予定の「みなさん、さようなら」(中村義洋監督)等多数。
秋元康氏から直々のご指名で依頼されたというこの「ススメ!橋本奈々未」。注目すべきは、2日間に渡って撮影された怒濤の109シーン! 三木監督は企画意図をこう語る。
「何でもいいからやってくれとオファーがあり、何でもいいならやります!と(笑)。純粋な映画監督さんと、僕はだいぶ歩みも育ちも違うので出来ることは限られているんですね。以前手掛けた麻生久美子さん主演の映画「インスタント沼」のオープニングで、主人公の説明をするために、80年代のプロモーション・ビデオにあったような、細かい説明映像をダーッと見せていくんですが、それも108シーンくらいあったんですけど、それの橋本奈々未版なんです。
108シチュエーションってものすごい膨大な作業量で、映像を作られている皆さんだと容易に想像つくのではないかと思いますが、よせばいいのに、ほぼ同じ109シチュエーションにまた挑んだ訳ですね。こんなこと言うと仕事が減りそうですが・・・。109シチュエーションで女の子の色んな表情が撮りたいというのは表向きの理屈で、色んなところで色んな事をやってみると面白いんじゃないかと(笑)。それで「図鑑に載ってない虫」でご一緒させていただいた小松さんにカメラをお願いしました。」(三木監督)

それにしても、シーンが目まぐるしく展開する、プロダクション的にも大きな挑戦が想定されるこの企画に、C300を採用した理由は何だったのだろうか?
「キヤノンの5Dや7Dはよく使っていたんですね。その流れも汲む動画に特化した新しいカメラが出来たっていうので興味津々でデモ映像をみたんです。で、「あ、これだけのことが出来るんだな」って感じましたね。5D、7Dも非常に綺麗な映像が撮れるんですけど、ドラマの現場でお芝居を撮るとなると操作性の問題など課題もありました。いつかこういう、従来のビデオカメラとは発想の違う動画用のカメラが出るんじゃないかなって予想していたのが、ここに具体化してた、未来はこういうことになるんだなって実感したのが最初の印象でした」(三木監督)

撮影部にとっては厳しい諸条件の中、全く新しいカメラを使用するというのはそれなりにリスクを伴うものだ。撮影前、小松カメラマンに託されたテスト期間はわずか半日。DAY(日中)の絞りに対しての映りをマスモニ上で確認し、シネ1、シネ2のガンマ、Canon Logの感触を掴んだところで撮影突入となった。

さらに届いた香盤表はA4の紙3枚に渡り、箇条書きが109個羅列されているもの。それには早朝から夜、合成のシーンも含まれている。しかも撮影期間は2日のみ。

3時間で収録するシチューションが並べられた香盤表。ロケーションだけでなく衣装替えもはいる凄まじい内容となっている。「普通のプロデューサーが見たら、頭おかしいなって思われますよね」(三木監督)
※画像をクリックすると拡大します。
「香盤を見た時に、あ、これやるんだ(笑)って思いました。同時に、カメラ構えてテストして段取りして撮るのではなく、現場に行ってその環境でどう撮るかってやっていかないと終わらないなって思いましたね」(小松カメラマン)

カメラの機動性も作品創りには不可欠な要素となったようだ。
「動画からキャリアをスタートさせている僕たちにとって、デジタル一眼の最大の課題ってどう覗くかってことだったんです。カメラ背面の液晶モニターだけなので、オプションで外付けを工夫したりしていたんですが、今回のC300のファインダーは相当使いやすくなっていて助かりました。自分でフォーカスも送れるんじゃないかっていうくらい見やすかったですね。
例えば、渋谷のスクランブル交差点で匍匐前進をするシーンがあるんですけど、地面を這ってくる被写体を撮ろうとすると、カメラも地面を這うように構えなくてはいけないですよね。C300のファインダーだと、もうカメラを低く下ろすだけで撮れちゃうんですよね。デジタル一眼の液晶だとどう撮るかが問題になってくるところですが、C300は動画を前提にしたカメラだなと実感しました」(小松カメラマン)

「非常に難しいカットなんですよね。監督は何も難しいことはないんですが(笑)。捉え方によっては渋谷の交差点で匍匐前進をしているようには見えないんですよね。本人の顔も撮れて、後ろには渋谷の街の背景、行き交う人々が撮れて。うまい角度で捉えないと、どこでやっても同じとなってします。そのヤバさがいいってことではないんだけど、そのアナーキーな感じ、デビューしたての女の子がこんな状況になっても、進んでいくんだっていう一応の意図があるわけです。信号が青に変わった瞬間に撮るぞってバーッと行って、“匍匐前進”って言ったらすぐにやって、すぐにおさえる。信号が点滅し始めたらすぐに引き上げるっていう状況で的確な絵をおさえないと、せっかくの匍匐前進が気の毒なことになってしまう。その面で、小松さんにはかなり的確に撮ってもらえた印象がありました。正直難しいと思ってたんですが。
他にも、移動中の車窓から、このカット欲しいなって思ったら、小松さんにこれ撮れますか? って急に発注するわけです。“いける”ってなったら信号待ちの間に、車窓を背負った女の子のカットでワンシチュエーション埋めていっちゃう。僕がいきなり思いついたことにも対応できる。小松さんが凄いのか、カメラが凄いのか(笑)。監督としては自由度が上がりますよね」(三木監督)

■ いざ撮影!スタッフについて
撮影現場より。手持ちで台車を使ったドリーなどを利用し、コンパクトかつ身軽な撮影スタイル。EFレンズの中でも、全て絞りも稼げる、俗にいう絞りの開く赤玉(Lレンズ)ズームレンズを採用し、マジックアワーを除く早朝、日中、夜、屋内、屋外ほぼ想定されるすべての環境に対応できる措置がとられている。
現場スタッフもかなり小規模なチーム編成で行われた今回の撮影。撮影部は小松カメラマンを含む3名。アシスタント2人のうち1人がフォーカスマンで、もう1人が計測とDIT(digital imaging technician:収録マスターの管理から仕上げまでを管理する技術者)込みのチーフ1名という布陣となっている。

小松氏は、バカなことを本気でやる三木監督の現場が好きだと語る。
「香盤にかいている文言が、ダジャレか親父ギャグなんですよね。これどういう意味ですかって監督に聞いちゃいけないことも書いてある。真面目に読むとくだらないことを、みんなで真面目にやるのが三木さんの現場なんです」(小松カメラマン)

泥沼の撮影現場より
総力戦となったという本作の美術部のスタッフには、映画「血と骨」(監督:崔洋一)のスタッフや、映画「ディア・ドクター」(監督:西川美和)の美術デザイナーなどが名を連ねている。

■ Canon Logとその注意点

本作ではDAYのシチュエーションではCanon Logをガンマとして使用し撮影している。Canon Logはダイナミックレンジを広く持った収録がウリでもある。アイドルの撮影ならではのフェイストーンの美しさを担保しなければならない本作だが、ライティングでフェイストーンを作っていくことが叶わない現場でもあった。
「テストで半日テストした時に思ったのが、ハイの情報が確実に残っているんですよね。ログ撮影時、C300のモニター上は暗く落ちて見えるんです。それでもログ撮影=カラーグレーディングをするという前提なので、最終的に得すると信じて撮影しました。
ただ、映画をやってきた経験値に即すると心理的な不安はありました。(暗めに映る)モニター上の見た目で直感的にフェイストーンのいいところで合わせて撮ってしまいがちですが、我慢してログ収録をちゃんとしておけば、フェイストーンを助け、空などのハイのディテール、そして直射の当たらない暗部のディテールも残せると思います。僕は今回そこまでのテストを事前に出来てなく、やりきれてないはいないのですが、ログの適正で撮っていればより広いレンジの絵が抑えられる確信はもてました」(小松カメラマン)

この状況は、最初誰もが直面する課題だろう。モニター上の見た目では「絞りを間違えたのか、感度を間違えたのか?」と疑問が浮かぶ暗めの見え方だ。それを回避するためにもお勧めしたいのが、ビューファインダー内にあるビューアシスト機能。ビューアシストを使用することによって最終のルックに近い状態でモニターすることが可能となる。波形モニターも付いているので両方の情報を併用することで、ハイやローのディテールが残っているかどうか確認しながらの撮影が可能となる。

■ 撮影部を驚かせた高感度
ISO 3200で撮影されたシーン。(上)カラコレ前 (下)カラコレ後
※各画像をクリックすると拡大します。
撮影部が驚いたのは、ナイトシーンでの撮影。ナイトシーンはシチュエーションに合わせて、ISO 800/1600/3200と使い分けている。
「プロユースだとゲインを上げていくのはご法度な部分があるんですね。6dbだと成立するけどノイズは出てしまうように。避けようとしている部分でもあるんです。今回の撮影で分かったのは、ISO 800で撮影したものを(グレーディングで)持ち上げようとすると、ノイズがすぐに出てきて破綻するんです。C300に限っては、難しい状況でモノにしたい場合はゲインをためらわずに2000とか2500に上げて、撮影時に稼いでおいた方が結果として得るものは大きいです。
さらに凄いところが、感度を上げたところでそんなにノイズが出ないんですね。占いのシーンはISO 3200で撮っているんですが、従来の感覚だと3200というとザラザラが始まっているはずなんです。これが3200で撮れたっていうことは僕自身驚きました」(小松カメラマン)

照明も最小限に抑えられた環境。演出的には「地灯りに近い雰囲気」というオーダーがなされていた。ドキュメンタリー的な演出を狙い、少し離れた場所から撮影。
「当初、今までの経験から画面がザラついたルックを考えていたんです。でも、上がったのを見たらこれはこれでいいなと。現場で小松さんと話してたんですけど、凄い作りこんだライティングで夜の街を撮っていくのか、あるいはこういう風にカメラの感度を上げて撮っていくのかっていうのは、監督として作品創りに大きな2つ目の道を開くことになるんだろうなって。こういうシーンの場合、今までならザラついた画面という狙いしか選択肢はなかった。
「転々」は2006年末に作った映画ですけど、やっぱりナイターの歩きのシーンとか思い出すと、テクノロジーの差を感じますね。少ない機材と、少ないスタッフィングでナイターの街を捉えていく、一つの道を開く可能性があると感じました」(三木監督)

「例えば卓上LEDライトが6個あれば、C300だと8畳くらいの部屋だと結構凝ったライティングが作れるんですね。カメラマンもそういう発想に持っていけるかどうかが重要だと思います。そこを面白いって思える人にとっては凄く可能性に満ちているカメラなんじゃないかと思いました」(小松カメラマン)

ドラマの撮影現場では発電機のノイズが問題になることがあるそうだ。低電力のACや乾電池でライティング作れ、なおかつ見せたいシチュエーションをある程度実現出来るのは、監督にとって選択肢が増えることを意味する。
「小松さんの話じゃないですけど、不利な条件を面白がってやっていけるかどうかっていうのは結構大きいと思います。かつて印象派の画家が、チューブ入りの絵具が発明されたことによってアトリエから外に出て行ける状態になったように、芸術と呼ばれるものがテクノロジーによって変化することも多い」(三木監督)

“撮れるか、撮れないか”の選択肢から、撮れることを前提に“どう撮るか”という選択肢を与えられる。それと同時に、ライティングへの柔軟な考え方も広がる。今後そこから生まれていくであろう、新しい景色に期待したい。

■ ワークフロー
8ビットMXファイルでファイナルカットでもサクサクとストレスのないオフラインが可能だ。
※画像をクリックすると拡大します。
C300の特徴であるロー・コントラストな収録素材。カラーグレーディング時に“色をどうやって戻していくか”という課題があったそうだ。それを掴むまでは多少の時間が必要だったそうだが、結果として、重要なフェイストーンの見え方には満足の出来だそうだ。更に追い込んでトーンを作り込む企画でも威力を発揮するのではないかとの感想が上がっていた。

深夜の撮影で、アーティストの稼働が不可能な為、合成が用いられたシーン。4:2:2の色情報の多い信号は、合成のシーンでグリーンの抜けも問題なく、監督からも太鼓判を押されて作業完了。
「109シーンというのは大変な作業で、女優さんの肌にとっては何一ついいことはないんですよね。2日目のナイターあたりで映像的にどうフォローできているかっていう確認も含め問題ありませんでしたね。どのシーンが2日目のナイターかは、僕たちしか知らないでしょうけど(笑)」(三木監督)

■ C300で今後にトライしたい作品とは?
Canon EOS C300 ボディー(EFマウント)
肉眼で見えるものが自然と再現される印象という声が多いC300だが、C300を使ってどのような作品に挑戦したいと感じたのだろうか。
「かつて石井聰互監督(現:石井岳龍。2011年11月より改名)が作った映画「爆裂都市 BURST CITY」(1982年)じゃないですが、僕がやるんでバカバカしいのになるんでしょうけど、ロックものに興味がありますね。ロックってステージの明るい灯りと暗いライブハウスっていう状況で、撮影的にライティングを作り込まず、どう切り取っていくかっていうテーマがあるんですね。
1980~90年代、若かった時にやっていたバンドの雰囲気を、このカメラで撮ったらどうなるんだろうって思いますね。小松さんの得意な手持ち撮影のスタイルで、そのまんまあの雰囲気を切り取る方法がこのカメラで出来ないかなって思いました。見たまんまがなんで映らないんだろうってストレスが、今までありましたから」(三木監督)

「今回の撮影では照明、衣裳を積み込んで、マイクロバス一台での現場だったんですね。私もそんな大作ばかりやってきてるわけではないのですが、この規模は初めてでしたが、小回りが利くとか、このメンバー、この体制じゃなきゃ撮れない画っていうのは確実に感じたので、C300だとそういう企画を考えられるなと思いました」(氏家氏)

「今回使用したのはスチル用のEFレンズだったので、まだタフなフォーカスではありましたが、ドキュメンタリースタイルのようにフォーカスマンだけでなく、カメラマンも手を出して合わせることが出来るシネマレンズ(2012年1月末より順次発売中)には期待するところです。特に低予算プロジェクトには向いていると思います。照明機材が少なくても、おそらくものにすることができると思うんです」(小松カメラマン)

「人数が多くなると意思の疎通がとれなくなるんですよね。今回僕の言ってること、橋本(奈々未)くん以外は全員分かった状態でしたからね。スタッフ100人の現場で「そんなことナイチンゲール」とかいっても「何のことだっ!?」ってなりますよね。集約されたチームの意思疎通の出来た中で撮るメリットは大きいです。低予算だからという理由以外にも、もっと積極的に取り入れる方法はないものかとも思います」(三木監督)
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