デザイナーと言えばクリエイティブな仕事で、華やかなイメージから強い憧れを抱き、この業界へ進むという方も多くいらっしゃいます。
しかし、表にはわからない苦労などが多い業界でもあります。
デザイナーとしての悩みを解消する転職先や、自分の持つ強みやスキルを分析しながら次のステップに踏み出す方法などをまとめてみました。
よくあるデザイナーから転職したい理由
デザイナーの種類によって異なりますが、一般的な理由を整理してみました。
1.就業時間が不規則
デザイン会社で働いていると、クライアント主体の生活になります。制作したデザインを提出しても、クライアントから修正依頼がかかる場合が多いからです。
納期が短い傾向があり、徹夜することも多いのが特徴です。納品前には休みがとりにくく、休日出勤もあります。
就業時間内に仕事が終わらず「家に持ち帰り作業すると深夜になる」「朝まで仕事をしていた」ということが多くなり、不規則な生活に疲れる人が多いでしょう。
2.才能がないのでは
新しい意見やアイディアが出てこない、さらに採用されないことが続くことで、メンタルがやられると言います。
感性やセンスが非常に重要なデザイン業界では、自分のデザインが受け入れられない、スランプに陥るという状況になると、自らの才能に自信が持てず、業界を離れるという選択肢が出てくる場合が多くあります。
3.将来設計ができない
「いつまで現役でやっていけるだろう…。」先輩や同僚が評価される一方で若い世代の力がついてきたというプレッシャーに挟まれている。そうした不安が将来設計を危うくします。
そのため、早々に見切りをつけ安定を求めるために転職を行うという方も多数存在しています。
4.待遇問題
これも才能問題と将来設計が築けないことに関連するのですが、これだけ時間を費やしているのに給料が見合ってないのではという不満になり得やすいです。
5.経営が不安
小さい規模の組織が多いため、大きなクライアント1社の売り上げに依存している会社は、そことの関係が切れてしまうと売り上げは激減します。
企業によっては福利厚生も不十分かも知れません。一昔前に比べれば会社の考え方やデザインに対する需要なども変化してきましたが、まだまだビジネスとしての波に乗れていないという現状があるでしょう。
デザイナーが身につくスキル
スキル=資格という点で見ると、デザイン業界に資格制度は少ないようです。しかし日々の業務を通じて身につけたスキル=能力は他の業界では得難いものとなるでしょう。
デザインスキル
自分の好きや嫌いという感情でのデザインだけではなく、経験を積むことでクライアントの望むもの、多くの人の心を惹きつけるものを生み出すスキルが育まれていきます。
PCのデザインソフトを使うことが多いので、そうした機材の使いかたや周辺機器の取り扱いにも慣れていると言ってもいいでしょう。
クリエイティブ力
“作る”“生み出す”力は簡単に身に付きません。有能な先輩や同輩からの影響をうけながら少しずつ身についていきます。
個性的な人材が多いことも他業種では味わえない力につながります。独創性も磨かれていき、自分だけの特別な強みとなるでしょう。
コミュニケーション能力
デザインを書いたり、色付けしたりする作業はひとりで行うことが多いのですが、そこに達するまではチームで取り組みます。
自社スタッフだけでなくクライアントの担当者やフリーのクリエーターなどが混在するので、多くの方々と接していくうちに自然と高いコミュニケーション力が身につきます。
進行管理能力
写真撮影やコピーの打合せなど、デザインの現場では様々な作業が同時に進行しています。全体を観察しながら自身の作業に遅れがないよう調整しなければいけません。
スケジュールを把握していないと各方面に迷惑がかかります。そのため、多くのタスク管理能力や現状把握などという高度なスキルを身につける事が可能となります。
課題解決力
問題点や利点を整理して、その解決策を見つけることでデザインの糸口が見つかります。製品を客観的に比較する力も備わっているはずです。
調整能力
進行スケジュールだけでなく、ほかのスタッフがどのような提案をしようとしているのかを確認しながら、時にはスタッフのアイディアを参考にしつつ現場の流れを作り出す必要があるので自然と調整能力が身につきます
デザイナーから転職するときのポイント
デザイナーはいわば職人といっても過言ではありません。ビジネスマンとしての基本的マナーや経験などが十分でないことが多いようです。
転職を決意したなら、これまでとは違う観点で職業(仕事)を捉えてみましょう。
デザイナーならではの経験をアピール
自分のデザイナーとしての経験や出来事を客観的に見つめ直し、こんな時はどうする、あんな場合はどう対処するなどといった具体的なアピールが出来るよう、しっかりと準備しておきましょう。
希望の条件はしっかり伝える
デザイナーからの転職の場合、雇用形態や就業時間などの基本的な契約項目がこれまでと大きく変わるという事もあり得ます。
そのため、希望の条件をいくつかピックアップし、その中でも絶対に譲れないものだけを伝えるようにしましょう。あれもこれもと要求するのはあまりいい印象にはなりません。
特に自分の中で重要な部分だけを挙げ、そこをしっかりと伝えるようにして下さい。
キャリアビジョンを具体的に起こす
転職理由のひとつに現職の不安定さを感じている場合は、新しい仕事の将来像を描いてみましょう。
その仕事で何を得て何を目指すのかということです。具体的に何歳までに年収を上げる、キャリアアップを目指すというビジョンなども励みになります。
転職活動は在職中からはじめる
まず退職して雇用保険をもらいながら次の展開を考えようとしていると、その期間があっという間に過ぎていきます。
本来在職中の方がメンタル的に余裕を持つことができますが、退職した場合は間髪入れずに新しい職場に移る覚悟で準備しておいた方が良いでしょう。
一つの求人に固執しない
転職を考えると、一つの職種にこだわり他に全く関心を抱かなくなるという事もあります。しかし、デザイナーとしてのスキルや強みを発揮できる職場はそこだけではないということを忘れないでください。
転職サイトを見る、ハローワークの指導を受ける、地方での仕事も模索するなど自分自身の視野を広げてみましょう。
デザイナーからの転職でおすすめな職種
デザインすること、クリエイティブな仕事は好きだが、職場が不安または違ったコトに興味があるのであれば以下のような職種がお勧めです。
企画職
アイディア次第と思われがちですが、関わるデザイナーやカメラマンから信頼されていることが必要です。現場で経験を積んできたデザイナーであればその呼吸は理解しているはずです。
アートディレクター
デザイン全般の責任者を指します。デザインの作業だけでなく、色使いや相応しい写真の撮り方、モデルや演者の選定に関わることもあります。
デザイナーとしての経験を活かすことで、多彩な視点での現場指揮が可能となるでしょう。
広報
これまでは外注先としてクライアントの希望に叶うデザインや提案をしてきましたが、企業側の販促部門や広報部門でこれまでの経験を生かす方法もあります。ものごとを客観的に見ることが出来るので、歓迎されるようです。
マーケター
デザインをする上で代理店やクライアントから市場動向を示されることがあります。
その分析をするのがマーケターです。これまで自分が関わってきた作品がどのように受け止められてきたのか、今までは聞けなかったリアルな声を聞くことが可能となるでしょう。
デザイナーからの転職可能な業界
思い切ってこれまでの業界とは違う環境に転職したいとすればどのようなことが考えられるでしょう。似たような業界で経験を生かす方法、全く違う業界に飛び込む。二つの選択を整理してみました。
IT業界
グラフィックデザインからWebデザインに転身するケースが増えています。
それぞれ表現できることが違うので単純に比較は出来ませんが、需要はWebが増えているかも知れません。Webの基本を習得する必要がありますが、情報を伝えるという役割は同じです。
またオンラインゲームのデザインに転職する場合があります。プログラマーの役割を補填することで質の高いゲームが出来上がります。
印刷業界
簡便なデザインであれば外注せず、自社のデザイナーで対応するという印刷会社もあります。経費面からも効率のいい仕事になります。
これまでのクリエイティブという側面では満足できないかも知れませんが、会社の体質や待遇面では納得できることが多いはずです。
広告業界
代表的なのは広告代理店ですが、その中でもクリエイティブを扱う部署への転職が考えられます。デザインや写真を発注するプロダクションを束ねる役割があります。
これまでの経験を生かして、外注される側の立場に立って進行管理できるでしょう。
教育業界
デザイナーを育てる専門学校やデザイン科をもつ工業高校の専任講師という転職先があります。教育というよりもクリエイティブな現場の経験談などを後進の育成のために発信していくことが主な役割となるでしょう。
経験が大切なので、年齢が高い方でも歓迎される業界です。
アパレル業界
アパレル業界はファッションセンスだけでなく、服の組み合わせやバランス、体型によって変化させる着回しなど、様々な視点での提案が求められます。
デザイナーとしての経験上こうした事に長けている分、お客様の求めているものに対する理解も早く、適切な案内が出来るようになるでしょう。
これまでのデザイナーとしての経験を活かし、プレスとしての活躍の場なども十分あり得ます。
まとめ
多くのデザイナーの悩みは体力よりもアイディアの枯渇などメンタルに関わることが多いように感じます。
他者と比較されることもストレスにもなります。コンペで負けが続くと信用問題にもなります。しかし個人の力量で道を開いてきたという自信は忘れてはいけません。
転職するとしても、その基盤は大切にしたいものです。その絶対的自信を強くアピールすることで、転職の成功率もぐっと高めることが出来るでしょう。