NHK Eテレ番組「びじゅチューン!」から卒業制作作品 「赤ずきんと健康」まで。病みつきになるアニメーション作品を生み出す井上涼インタビュー!

2015.12.04 Fri

 

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井上涼:アーティスト。1983年兵庫県小野市生まれ。2007年金沢美術工芸大学卒。映像(アニメ / 実写)、漫画、インスタレーション、パフォーマンスなど幅広く活躍中。代表作に卒業制作「赤ずきんと健康」、2013年からNHK Eテレで放送中の「びじゅチューン!」など。
卒業業制作にてBACA-JA佳作受賞し、YouTubeとニコニコ動画で280万再生となった「赤ずきんと健康」、NHK Eテレで放送中の世界の有名な美術作品を1分30秒のアニメーションで紹介する番組「びじゅチューン!」など、一度見たら病みつきになるアニメーション作品を生み出す井上涼。その波動は敏感な子供にもおよび、まさに大人から子供まで広く愛されている。2014年春まで広告代理店でアートディレクターと、アーティスト活動の二足のわらじ生活だったが、現在はアーティスト活動に専念する。自身を"動かさなきゃシンドローム"だという井上涼ワールドの総まとめインタビュー!

■井上涼さんが出来るまでを軽く振り返ってみよう!

「赤ずきんと健康」
dir:井上涼
――楽曲もアニメーションもすべてご自身で手がけられるスタイルは、金沢美術工芸大学の卒業制作時に既に完成されていました。どう構築していったのですか?
親が美術の教師をしながら彫刻家をしているという家庭に育ちました。“電気で動くかかしの彫刻”とか変わった彫刻ばっかり作ってるんです。この前神戸で個展をやったのですが、"なんでこんなになっちゃったんだ"っていう歪な動きをする彫刻なんです。

――これは!通じるものがありますね(笑)。
よく言われます・・・ (笑)。そういう感じで、美術というものには幼少の頃から晒されていました。

――大学ではグラフィックの道に進みましたが、卒業制作の「赤ずきんと健康」はアニメーションですね。
そうなんです。金沢美大の視覚デザイン専攻だったのですが、自分のやりたいことを模索する時間を与えてくれて、かつ設備のサポートやケアの仕方がすごく確立されているんです。それで、既に広告代理店に就職が決まっていたので、卒制はやりたいアニメーションや音楽に振り切りました。

ただ、考え方はデザイン的思考にもとづいて作っているんです。目的から逆算して何を作るか決めて「赤ずきん~」が出来ているんです。

――その辺詳しく教えてください。
卒業制作だけにホロっとくるいい話を作りたいっていう欲求がありまた。でも、浜崎あゆみさんばりの「お前ら夢持て!」みたいなことは自分には言えないけど、“健康でいましょう"くらいのことなら怒られないんじゃないかなって。“健康”をデザインでいう“目的”に据えているんです。当時メタボリックシンドロームっていう言葉が流行っていたのですが、誰もイマイチよく分っていないように感じたので、噛み砕いて伝えるアニメを作ろうって思ったんです。目的から逆算して手法を選んだらああなったんですね。

――歌も歌って、作詞作曲もするのは自然なことだったんですか?
そうですね、人にお願いするのがそもそも苦手なんです。「ここもうちょっとこうして欲しい」っていうのが上手く伝えられなくて。怒られるのが嫌なので、怒られないように進めると独りでやる方向になっていっただけで、絶対自分で全部やらなくちゃ嫌というわけじゃないんです。

結果、この手法でよかったなって思うのは、映像と音楽を同時に作り進めることが多いので、ここでこういう音が欲しいって時、音楽に戻ってカーンって音を入れたり、その逆の時の画に戻ったり、行き来出来るところですね。

■キッカケは椎名林檎。作詞・作曲・歌・アニメーション、時々主演のスタイルの“音”の部分。

「ハヤシフサイ」
dir:井上涼
――音と画をいったりきたりとのことですが、どういう作り方をされるのでしょうか?
大体、歌詞が先行します。歌詞が決まったら、それを無理矢理音楽にする工程があります。歌詞を書いた時点で音のアップダウンみたいなのがイメージに浮かんでくるんです。言葉には元々音程があるから、そのまま歌にするようにすると自然にメロディーになるっていうか。椎名林檎さんが「喋り言葉と同じ音程の歌を作りたい」とインタビューで語っていたのを読んで、なんだかよく分からないままそう思いこんでやっていたら、こうなりました。

歌詞が出来た時点で何となく曲のムードの方向性もイメージ出来ていて、ここから、和音にして、ベースはウッドベースにしましょう、とか徐々に決まっていきます。

――歌詞もデザイン的思考で作っていくんですか?
なにかを紹介する作品の場合、例えば「モナ・リザ」だったら、“笑ってるけど怖い人”とかいくつかある言いたいことを、歌詞に入れ込むことだけは決めて、後は語呂を大切にしつつ、気持ちいい響きや、言いたくなるような響き、濁点の音を等間隔にいれたりと五感重視でつくっています。わたしヘタウマだから、高い音程で発音しにくい音が来ないように気をつけたり。

――作曲はどうしているんですか?
高校生の時に吹奏楽部だったのが役に立っています。吹奏楽のバンドってその団体自体が曲の構造になっているんです。パーカッションがいて、低音パートがいて、高音のフルートがいて。曲ってどういう風に出来ているかっていうのを3年間で身体で覚えたことをベースにしてるんです。

■"動かさなきゃシンドローム"。作詞・作曲・歌・アニメーション、時々主演のスタイルの“画”の部分。

「ゲイの歌 2005」
dir:井上涼
――アニメーションを作る時に一番意識するのはどんな要素でしょう?
動くことが大事かなって思っています。自分が作ることと、人が見て楽しいことのどちらも充実させようと考えると。動かないと、作っててあんまり楽しくないんです。"動かさなきゃシンドローム"なんです。

――その動きもまた独特ですがどこから生まれてくるのでしょうか?
歌もそうですが、自分に出来ることでやろうとすると、ちょっと変な仕上がりになったりする。それが意外と受けちゃって、ラッキーみたいなことですね。よく「狂気を感じる」なんて言われたりしますが、「狂ってる、わたし・・・」などとは思っても無いんです。

どちらかというと、J-POPが好きなので、J-POP感みたいなのを出したくって。内省的だったり、コミュニケーションを拒絶するようなものが、自分で作る場合、あまり好きでは無くて。面白いって思ってもらうのが好きなんですね。

■アニメーションのテーマ、どうやって思いつくの?

井上涼氏個展「マルチダ先輩と忍者合唱団」
プロジェクションマッピングを使い空間を作品としてみせた個展。その非日常空間を出るときには、はいるときよりちょっとだけ気持ちが変わった自分がいる。子供も楽しめるように9分間という長さの映像がプロジェクションマッピングされる。「仕事から疲れて帰ってきた人が寄ってくれたときに、明日も会社いこうって思うくらいの作品が作れたらいいなと思いました」(井上氏)
――アニメーションのアイデアはどう生まれるのですか?
生活をしてるなか、もやもやする気持ちってみんなあると思うんです。例えば、「YADOKARI」っていう作品は、私がOL生活をしていた時の体験や感想をもとに作りました。そうしたら、観た人から「同じ気持ちです。火曜日に絶望しています」って共感してくれたり、癒されたって言ってもらえたりして。

――「マルチダ先輩」もOL時代の体験がベースなんですね。
はい。会社を見上げて、「ああ、悪の巣窟だわ」って。本当はそんなことはないんですけど(笑)。もはや、OL体験のことは忘れちゃいそうになっているのですが、そういった気持ちや体験をベースに作ってます。いつも人の気持ちを描きたいっていうのは変わらないですね。

■仕事と作家活動の両立ってどうでしたか?

「YADOKARI」
dir:井上涼
――昨年まではアートディレクターとして広告代理店に勤務されていて二足のわらじ生活でした。退職されたキッカケは?
会社の広告の仕事が、自分の生活の中のかなりの割合を占めていたのですが、広告をつくる感覚が合わないと感じていたんです。やはりクライアントのための制作物なので、自分には理解できない修正とかいっぱいあって、自分にとっては回りくどいなって感じていたんです。そんな自分のバランスをとるために、作品を作り始めました。会社で疲れたから、作品を作りましょうって。アーティストとして一旗あげるぞ!なんて言うのは無くて、違和感を無くすための手段だったんです。

――ひとつのストレス発散方法だったと。
そういうとOLみたいですね(笑)。バリ行っちゃおう♪みたいな感じで、アーティスト始めました♪ (笑)。実際、発散されるものがありました。社会人になって2年目位のときやった個展で、自分のつくったものを見に来てくれる人もいるんだっていう体験をして、可能性を感じたのもフリーになった大きなきっかけでした。

■子供ファンが増加したTV番組「びじゅチューン!」

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「保健室に太陽の塔」
dir:井上涼
画像をクリックで、「びじゅチューン!」公式サイトの動画一覧よりご覧いただけます。
12月20日に新作がオンエアー予定。年明けにも続々と新作が予定されているそうだ。12月20日にオンエアされる「夏野菜たちのランウェイ」は年末を盛り上げるムード満載の内容となっているそうだ!
――子供ファンも多い井上さんですが、「びじゅチューン!」の放送がはじまったのがキッカケでしょうか?
前にテクネに出させてもらったとき、NHKのプロデューサーさんが帰省中に僕の映像をチェックしていたところ、姪っ子さんが歌詞を覚えて歌い始めたみたいなんですよ。それで、「こいつ使えんじゃねーか」って思われて(こんな汚い言葉は使われない方です)、子供向けの美術教育の番組を作りましょうと声がかかったんです。

光栄だなって思ったんですが、美術教育がすごく苦手だったので、はじめは出来るのかな~、という不安もありました。

――脚本も井上さんのほうで作られているのですか?
脚本=歌詞になるんです。例えば、「保健室に太陽の塔」は、太陽の塔を保健室の先生に見立てた作品なんです。太陽の塔って中に入ると、"生命の木”っていうオブジェがあって、根元がアメーバで、上にいくと魚が出てきて、恐竜がいて、てっぺんに人間がおかれていて、木が進化を表しているんです。そんな命の成り立ちを知っているなんて、保健室の先生っぽいな、こんな人が学校にいたらなんでも相談できちゃうなって。もし、いたらこんな感じかなって歌詞を考えていきます。局から資料を頂いたり、美術に造詣の深いプロデューサーから嵐のようにでてくる情報を書き取ったりして、作品のポイントを自分でみつけて、「太陽の塔に相談すると、たいていこう言うわ」っていう感じで歌詞に落とし込んでいくんです。

曲に関しては、太陽の塔って大地母神って感じがするので、絶対大地っぽい曲にしようと思っていました。そして、歌い方も力強くしましょうと。大枠を決めて、生命の木を出すタイミングはこうしようとか、外堀から内側に向かって決めていきます。その時点でアニメーションはなんとなく頭の中にはできていて、ハープがバララランって鳴ったところで、花を咲く絵を描きたいなとか。

――はじまってみて、不安はどうなりましたか?
楽しいです。ただ、外堀から埋めていくやり方だから、どうしてもここのワンカットが埋まらないとか、回数を重ねていくと、これまでの回と似たものが出てきちゃうっていう悩みがあります。試写の15分前です!なんてところで最後のワンカットが埋まってないことも結構あって、そういう時は静止画にしたりテロップ対応でいこう!って(笑)。

――どのぐらいのペースで制作されているのですか?
2ヶ月で3本です。3曲同時に作詞作曲で1ヶ月、アニメで1本大体2、3週間。降りられない電車に乗ったみたいな感じですね(笑)。事務所にほぼ住みこみで、家には1週間に1回帰る程度。アニメってやっぱり時間がかかるし、寝て起きたときの頭がフレッシュな時に苦手な作曲に取り組みたいんです。そうすると不規則な生活になって、もはや帰るより、居たほうがいいなって。でも、これが大学生活と一緒で自分にはあってるんですよね。健康には気を使うべきだとは思っていますが。

■今後やってみたいのは大好きだった「少女革命ウテナ」の世界!

「サラ毛ぷっちょ」
dir: 井上涼
髪の毛の表現など「少女革命ウテナ」をひきずっている作品。追い求める髪の毛のツヤを描くと輪郭線を消す作業が必要で苦労したそうだ。
――影響を受けた作品や作家はいますか?
わたしはアニメが好きで、97年にオンエアされていた「少女革命ウテナ」っていうテレビアニメがあって、ざっくりと言うと、お姫様を女の王子様が救うっていう世界観なんですね。決闘シーンとか出てくるんですが、髪の毛がぶわーって広がったり、花がぶわーって咲いてぶわーっと散ったりとか、絵的な可憐さもすごくあるんです。しかも、お姫様が実は悪い人で、切ない話でもあるんです。人を好きになったり、嫌いになったりする美しさを描いたり、人とコミュニケーションする作品をつくりたいと思った元になったアニメです。ウテナへの憧れは今も強くあります。

――今年も年末になりました。どんな年でしたか?また来年の抱負をお聞かせください。
2015年はちょうど、テレビの放送で知名度というものがすごく膨らんできた年でした。それに伴って、色んな要望がふえてきて、それにひたすら応えていくっていう年でした。自分から発信する個展もやったし、やれるだけのことはやった年でした。それで、返ってくる声が多くなって、それに振り回されそうになっちゃいそうなので、来年は自分が今作りたいものを作って、本来わたしが持っていたものに一旦戻ったほうがいいと感じているんです。結局つくるの自分だよなって思うんですよね。もちろんご要望にもお応えしながらですけれど。春くらいから新しいシリーズを出そうと考えています。わたしがウテナに憧れて描きたかったものを忍者のキャラクターで作る予定です!

■ 5つの質問 一問一答
1: 一番影響を受けたものを教えて下さい
少女革命ウテナ
2: この職に就いたきっかけは?
やむにやまれず
3: 一番好きな映画は何ですか?
WE ARE Perfume
4: オススメのレストラン or バーを教えて下さい
豊前房
5: 今おもしろいもの/事って何ですか?
ライブでコールアンドレスポンスをすること


写真:永友啓美

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