「妄想」とはなんぞや!?千原航による授業DCデザイン演習II 「妄想」の最終講評会に潜入!

2010.08.27 Fri

 

デザイナー/アーティストの千原航氏が講師を務める多摩美術大学造形表現学部デザイン学科(上野毛キャンパス)の授業、デジタル・コミュニケーションコース・デザイン演習II「妄想」の最終講評会に潜入してきた。この「妄想」授業は、自分の妄想力を活かして一ヶ月半の期間で作品を仕上げるというものだ。毎年、学生の傾向を考慮したうえでマイナーチェンジした課題メニューが配布され、その中から1つを選んで制作する。2010年度のメニューは以下の6つ。

・「行ったことのない国で制作・発行されている本を作りなさい」
・「行ったことのない国で制作・放映されているアニメーションを作りなさい」
・「画材、PCを使用せず実用的な書体を作りなさい」
・「テレビ、PC、携帯、プロジェクター画面など通常の環境”以外”で再生されて活きるアニメーションをつくりなさい」
・「あなたの家から物理的に一番近いお店の広告を作りなさい」
・「今はもう無くなってしまった、かつてあなたが好きだったものの広告を作りなさい」

ググれば何でもわかってしまうこの情報化社会で、情報を極端に制限して人間の持つ想像(妄想)力をカタチにすることが求められる、そんなクリエイティブの原点に立ち返る授業だ。最終講評会で発表された合計26作品から、white-screen.jpが気になった作品を紹介。

■No.1はメキシコの妄想アニメーション「アステカ人の風習アニメ」
メキシコで放送されてるアステカ人の風習アニメ「gemelo HIRATERZO」 制作:川本祐未
課題:「行ったことのない国で制作・放映されているアニメーションを作りなさい」
妄想内容:メキシコの人口のうちわずか1%しかいない先住民のアステカ人の風習をかわいらしい子供を通して描くコマ撮りショートアニメ。こども向けTV番組で、毎日17時58分から18時にオンエアーされている。 アステカ人が持つ独特の風習までも妄想。農耕民族の彼らは、毎朝鳥の声を聞いて一日の予定を決め、昼には植えた作物が育つように祈り、新月の夜には暗闇が怖いので一晩中ロウソクを灯す。

粘土で創ったキャラクターはデザインも動きも良くできており、こども番組で放送されていてもおかしくないほど。ナレーションのスペイン語も川本さんがネットの翻訳サイトを駆使して吹き替えたという。妄想と地道な努力が結実した丁寧な作品だ。

■クラフト系からアフリカの妄想フリーペーパー「マサイ族の新聞」
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「マサイ族の新聞」 制作者名:伊藤波
課題:「行ったことのない国で制作・発行されている本を作りなさい」
妄想内容:アフリカ・マサイ族の間で発行される情報誌「マサイ族の新聞」を妄想。マサイの村から毎週一回都会に行く人が、都会で得た情報を記事に書くというもの。「携帯電話というものが都会にはあるらしい」など、文明に驚くマサイ族の妄想ニュースが図形を組み合わせたオリジナルの手書きフォントで綴られる。

制作期間中、毎週1枚づつ記事を増やしていった。新聞は布などのオーガニックな素材で創られていて、一週間ごとに一冊にまとめられている。サイズや素材のバラバラな感じがプリミティブな印象を助長する。伊藤さんが制作した、木で創った鉛筆もかわいらしい。幾何学図形のフォントは、2008年度の優秀作・川島あぐりさんによる図形フォント作品の影響も感じさせる。

■入念なリサーチ力に感服!妄想「無人野菜販売所」の広告
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「無人野菜販売所の広告」 制作者名:松野綾香
制作の過程に魅力を感じた「無人野菜販売所」。 課題:「あなたの家から物理的に一番近いお店の広告を作りなさい」
妄想内容:実家の岐阜県飛騨市周辺にある無人野菜販売所の広告を制作。 この作品の面白いところは徹底的なリサーチ力。松野さんの調査の結果によると、近所の無人野菜販売所では「お金をちゃんと払わない人がいる」、「販売所からのコミュニケーション、アプローチは無いところが多い」、「いきなりけんか腰の張り紙が貼られている」などの問題点が明らかになった。そこで無人販売所とお客さんのコミュニケーション促進のため、考えついたのが”販売する野菜にレシピなどを記載したチラシを巻きつける”、”擬人化された野菜キャラが語りかけるポスターを貼る”というもの。

リサーチ力に加え、チラシの内容や添付の方法も更にデザインすると、もっと面白いアプローチになっただろう。 ほか、同課題で、松澤文子さんによる「がいあの広告」は、外から中の様子がまったく見えない謎の店「がいあ」をマダムが集まるロハスな喫茶店と妄想し、”フルーツ紅茶酢”などオリジナルメニューを制作した作品もユニークだった。

最後に、今年の作品たちについて、千原航氏にコメントを頂いた。

「今年は、今までで一番おとなしい作品が多かったです。時代なのか、自分のアドバイス不足なのか…。この授業で体験して欲しいことは、突発的に降ってくる無理難題に対して、自分なりの妄想、想像、推論を駆使しながら独自性ある回答を導き出す、ということです。課題完成までには、広くすべてのものづくりに関係する経路を通らざるを得ないので、リアルに「現在の自分」に向き合うことになり、さらにそれを超えていかなくてはいけません。つまり「仕事」の疑似体験ともいえます。情報や技術が豊かになったとしても「結局はそれを使う自分しだい」だとか「自分の見方、考え方がオリジナルであればどうにかなるのでは?」という点を刺激したいな、と思っています。毎年30名弱の学生を同時アドバイスするのはなかなか厳しいのですが、やるからには人数分の新しい価値観や表現方法を見せて欲しいので奮闘しております」

上記作品を含む今年の多摩美術大学のWebサイトにて近日公開される。他、2009年度の優秀作品、杉野杏奈さんの「ふわりんのCM」など、これまでの優秀作品は多摩美術大学のWebサイトにて見ることができる。 来年も自由な発想に期待!

2007年度・優秀作品
2008年度・優秀作品
2009年度・優秀作品

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