元気ロケッツ最新MV「make.believe」六本木ヒルズを湧かせた立体視MVの生みの親東弘明監督インタビュー

2010.08.25 Wed

 

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東弘明(ひがし ひろあき)監督。
2010年5月21日(金)から25日(火)までの5日間六本木ヒルズアリーナにて開催された、ソニーのキャンペーン、好奇心活性化プロジェクト”make.believe”の一環イベント「dot park(ドット・パーク)」。そこでは様々なジャンルの3D映像がお披露目された。その中でも特に注目を集めたのが元気ロケッツの新作ミュージックビデオ(MV)「make.believe」(メイク・ドット・ビリーブ)。ソニーグループのブランドメッセージ”make.believe”のあらわすスピリットからインスピレーションを得て、元気ロケッツが最新の3D映像技術と音楽を融合、世界初となるフルCG3Dミュージックビデオを完成させた。そしていよいよ同作品が今月8月25日よりPlayStation Networkにてダウンロード販売スタートとなる。予算5,000万円を投じて制作されたこのコンテンツのメイキングについて東弘明監督に話を伺った。

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元気ロケッツ「make.believe」 dir: 東弘明
30年後に生まれた17歳のLumi。宇宙で生まれ、まだ地球に降り立った事は無い。しかし、身体は宇宙にありながらも色々な情報とシンクロできる存在である。そんなLumiが想像する地球をイマジネーション豊かに描いている。
――今回の作品元気ロケッツ「make.believe」のコンセプトをお聞かせ下さい。
Lumiは遠い宇宙のどこかで眠っているんですが、宇宙の記憶を感じ取って夢の中で目覚めるんです。夢の中では思考と創造は同時に起こっていて、Lumiが自然について思いを馳せると森が現れ、地球の文明について想像した時には巨大な都市が現れます。でも彼女は実際に地球に降り立った事が無いので、様々な情報と彼女の妄想が絡み合い、現実とは違う神話の様な世界を創造してしまうんです。それでも最後には人々の想いや記憶を通じて、ずっと憧れていた現実の地球に降り立つ「夢」を見るというお話です。ほぼ全編ハイスピード撮影しているのですが、最後の地球に降り立つシーンに関してはノーマルスピードで撮って現実感を演出しています。遂に地球に降り立って、オーストラリアやサハラ砂漠、ボリビアの湖を旅をする。”人の想いが、夢を現実に変える”というメッセージです。

―― 上映環境が六本木ヒルズに設置された280インチのLEDという前提でしたね。
それは今まで見た事の無い様な大きなヴィジョンで、立体視映像のデモ映像を見た時、これは観るというより体験だな、って思いました。サンプル映像の画が変わるごとに、場の雰囲気が変わるんですよ。だからMVを作る際にも色んなシチュエーションを盛り込みたいと思ったんです。見終わったら世界を旅したような気分になれる、そんなビデオを作りたいと思いました。
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元気ロケッツ「make.believe」 dir: 東弘明  約二ヶ月の制作期間で創られた。
――立体視という事で演出を考える際にどういったところを意識しましたか?通常の3DCG映像と違って、経験値による最終形の予測が難しいかと思うのですが。
最終形が見えない分、意識的に構成を組み上げていきました。このカットではこれはどれくらいの奥行きで、次のカットでもっと手前にこなくては気持ち悪い…とか。立体視の場合”何となく”で進めていては良いものができません。コンテもいつもよりずっと詳細なものになりました。そしてその内容をカットごとにスタッフ全員と事前に共有しました。基本コンテの他にイメージビジュアルに特化したコンテともう一つ、奥行きのコンテと3種類に加え、Vコン(ビデオコンテ)を2種作っています。一つはCGチーム用で、一つは撮影現場で参照するVコンです。それだけやって初めて意図的に撮る事が出来た様に思います。逆にそれが無いと成り立たなかったと思います。大変な作業だったけど、今まで演出出来なかった奥行きを意識的に表現できた事は本当に楽しかったです。
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スクリーン面からの位置と、人物の大きさのみを表した奥行きコンテなど、合計3種類に及ぶ。
――撮影時に立体視ならではのこだわりなどありますか?
立体視って情報量が多いので、カメラや被写体が早く動きすぎると人の目で認識できなくなるんです。MVの場合、カットを短く刻み、音に合わせてガッとカメラを振るのが個人的に好きなんですが、それをしてしまうとせっかくの立体視が生かされない。だから今回はカメラをゆっくりとクレーンで動かし、ワンカットを長く見せる様に意識しました。しかしただ奥行きがついただけのフィックス気味の画では単調になってしまうので、一枚一枚の画にもドラマが感じられるように意識してレイアウトをしています。

――実写のパートについてですが、CM級の美しさで撮影されていますね。
今まではグラフィックスやアニメっぽい表現で登場していたLumiが今回はじめて実写でメディアに露出する企画でした。彼女は本当に綺麗な方で、これは絶対にビューティーに撮りたいと思ったんです。それを実現する為にも撮影は化粧品などのCMを手掛けているカメラマン、照明の方にお願いしました。

それに立体視の場合、2Dと違い後処理での補正が難しいのです。産毛まで感じてしまうほど高精細に見えることもあり、もし左(眼用画像データ)でなにかを消すると、右も全く同じ消し方をしないと左右で差異が出て、その箇所が明滅してしまうんです。間違い探しの絵本とかで寄り目で見ると間違っているところだけ光るのと同じ原理です。かといって全体的にぼかしたりすると、触れてしまえそうな立体ならではの質感が失われてしまいます。そういった事情もあって、立体視では撮影現場での画作りがより重要だと感じます。

――なぜ合成撮影、CGを使う企画にしたのですか?
最近の日本の立体視映像というと、2カメで撮影した実写を繋いだコンテンツが多く、ノウハウも確立されてないため合成企画は余り多くないんです。しかしながら空間を表現する点で立体視とCGは非常に相性が良いので、はじめからグリーンバック撮影は避けて通れないと思っていました。また撮影方法もより自然な立体感を感じとれる様に平行法でなく交差法を多く用いました。

――平行法と交差法の違いはなんでしょう?
人が物を見る時って交差法で見ているんです。そのため特に立体感が分かり易いヨリのカットではその自然さが顕著にでます。平行法だと立体感が薄れますがその変わり、撮影後に奥行きの調整ができるというメリットがあります。交差法で撮影した素材は撮影後の視差の調整が難しい、撮る前に”(スクリーンより)手前”とか、完璧に位置を決めていなければなりません。故に、より意識的な準備が必要です。視差の知識に関してはカメラマンの米田一央さんが熟知されていて、今回本当に助けられましたね。

――ハイスピード撮影ですが、実際に使用したカメラは?
ファントム2台を使って平均5倍~10倍で撮影しています。万全に準備をしていたのですが、撮影中カメラ2台の同期がとれなくなり撮影続行できず1日目が潰れてしまったりと、いろんなトラブルがありました。同期するカメラを探して、その日東京の機材屋にあるファントムを全部手配したり、それでもダメだった時の為にREDをスタンバイして撮影に望んでいました。今回立体視で実写でMVを撮ると決まったとき、やっぱりハイスピードしかないなって思ったんです。立体視で撮ると密度や空気感、ボリュームをすごく認識出来るのではないかと。風を巻き込んでなびく髪や、膨らんだ服のボリューム感が効果的に見えるだろうと思い、それを見せるためにはハイスピードだなと思いました。

――楽しかったエピソードはありますか?
現場では42インチのモニターで立体の確認をしていたのですが、撮る度に見た事の無い画が上がってくるので毎回歓声があがって盛り上がりました。撮ったその場ですぐ見れるという環境がとてもよかったです。クオリティの向上にも繋がったと思います。

――CGも凄い迫力ですね。
CG作業はコンテがあがった段階で打ち合わせをして、実際には撮影後から稼働していたと思います。CGは最終的に4社が関わる事になりました。これも大変で納品10日前にあがってきた素材が想定してるクオリティを満たしてない状況だったんです。そこからは各デザイナーと直接連絡をとりあって、指示を出し、なんとか巻き返していきましたね。

合成作業は一週間に渡る白垣絵夢さん(インフェルノエディター)のブラッシュアップのおかげで今のクオリティーまで持っていくことができました。レンダリングした素材は横幅を110%大きめで制作してあり、最終的に視差調整が出来るようにしてあります。これによってカットを繋いで見た時におこる視差のずれを修正することができました。
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――いつも東監督は自分でCGも制作されますが、今回は?
今回はオープニングをはじめとして、宇宙とグラフィックスのシーケンスを担当しています。

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東監督が担当した、オープニングのシーンより
――監督自身、凄くディテールを詰める方という印象がありますが、あがってくるもののクオリティ・コントロールも厳しくされたのではと予想されますが?
僕は自分でCGを制作することもあって、中途半端な物があがってくるとどこで落としどころをつけているかが透けて見えるので、CGクリエイターにしてみると大変な監督かもしれませんね(笑)。でもモチベーションの高いクリエイターにとっては一緒に意気投合して制作に取り組めるので良い面もあるかと。

――見る側としても、そのディテールが見た時の感動に直結していると思います。背景となる風景など実写を使っている箇所はあるんですか?
今回実写はなく、ほぼマットペイントなんです。彼女が想像する世界なので写真というより絵画的な画を目指しました。マットペイントのアーティスト富安健一郎氏に描いてもらっているんです。彼の画がクオリティの担保になるので、すごく助かりました。富安氏の描いた絵をCGチームに渡して立体化していきました。
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マットペイント:撮影出来ない背景やセットをフォトショップなどで専門職の方が描くものをマットペイントと呼んでいる。
――森の箇所もマットペイントですか?カメレオンがいたりリアルですよね?
森のシーンは基本CGなのですが、一番こだわったところは一番手前に本物の木をクロマキー撮影しているところです。立体視に限らずグリーンバックで撮る時に気をつけたいことって現実の手触り感なんです。その為には画面の一番近いところに美術のセットや木々を配置しておくと後ろのCGもその実写のクオリティに引っ張られるんです。このカットは最後の4日間であがってきたものなんですがオムニバスジャパンの優秀なクリエイターが本当に良く創り込んでくれました。

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基本全ての合成は「インフェルノ」で行われ、最終視差調整は「パブロ」というマシンを使用した。
――立体視で創られたMVとして圧倒的な完成度だと思いますが、完成しての感想は?
立体視という事で作業工程など今までと違う事も沢山ありましたが、普段から脳内で映像を想像しながらコンテを切っている時、やっぱり空間を意識して考えているんですよね。それを現実として演出出来るというのはすごく監督冥利につきるというか、「やっと本当に意図するものが表現出来る」という感じでした。3DCGをやってきた事が活かせる媒体が現れたなという感覚でした。

――今後の課題などありますか?
今は立体視で映像を制作すると目新しく、話題になりやすい時期だと思いますが、2Dにしろ立体視にしろ、より良いコンテンツを創っていかないと廃れていくと思うんです。飛び出せば、引っ込めば良いって事じゃなくて、立体視でも、2Dで見てもおもしろいものを制作していかなければいけないと思います。映画「AVATAR」は非常に良い実例だと思います。立体視での視聴環境ってまだ整ってないから、2Dで配信、放送されることもあるだろうし、2Dで視聴してもしっかりと映像作品として成り立つような演出を意識していきたいです。ごまかす為のテクノロジーじゃなく、よりリッチな体験をする為のテクノロジーだと思うので。3Dって撮影している時点で童心に返れるんですよね。触れそう、って確認用のモニタに向かってみんなが手をのばしたりして。それだけ解像度が高く、現実の様に感じられるという喜びって何ものにも代え難いと思う。今までの映像って見るものだったと思いますが、体験できるというレベルにシフトした感じはあります。その為にもより良いコンテンツを創っていかなくてはいけないと思いますね。

5つの質問 一問一答
Question 1: 一番影響を受けたものを教えてください
SF小説、ジャパニメーション
Question 2: この職に就いたきっかけは?
自分の絵を動かしたかったから
Question 3: 一番好きな映画は何ですか?
コンタクト
Question 4: 作業場のまわりに必ずおいているものベスト3は?
iPhone、タブレット、糖分
Question5: 今おもしろいもの/事って何ですか?
子育て

■国内初!新曲「make.believe」の3DMVがPlayStation Networkにて8月25日よりダウンロード販売スタート
元気ロケッツの世界観を、息をのむような迫力溢れる5,1ch対応の音楽と最新映像技術で表現した、高画質・高音質のフルCG3Dミュージックビデオが、 8月25日よりPlayStation Storeにてダウンロード販売スタート。 PlayStation 3とソニーの3D対応テレビ<ブラビア>を通して、いつでも楽しめます。
PlayStation Store

■元気ロケッツ「make.believe」とは
ソニーのブランドメッセージ “make.believe”のあらわすスピリットからインスピレーションを得て、元気ロケッツが最新の3D映像技術と音楽を融合し仕上げた3D映像作品。2010年5月21日 – 25日に六本木ヒルズで3Dライブを初披露してから、瞬く間に世界へと広がる。ワールドカップ開催期間は、南アフリカのネルソンマンデラ広場(3Dドーム)にてO.A。それを見ていたブラジルスタッフよりリオでのO.Aをオファーされる。さらにまたリオからサンパウロへ。そして、そんな同曲を含む4曲の3Dライブが、9月3 – 8日のIFA(イーファ。独ベルリンで行われる世界最大のエレクトリックショー)で、IFA会場内最大のソニーブースにて上演決定。

■世界を飛び回る元気ロケッツ。「make.believe」の音楽と3D映像体験を日本でも再び!
2010年8月27日 – 29日東京ビックサイトにて行われるGOOD DESIGN EXPO 2010内3DシアターにてMV「make.believe」が急遽上演決定!

■最新情報はこちらから
元気ロケッツオフィシャルサイト
アゲハスプリングスWebサイト
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