大橋史によるメグとパトロン「パリパリパーリー」MVは、メグちゃんが電子の世界を大冒険! CGアニメーションに潜むゲームネタ、アナタはいくつ分かる!?

2014.03.14 Fri

 

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大橋史(おおはしたかし):モーション・デザイナー。1986年生まれ。2012年多摩美術大学大学院修了。言葉、文字、図形譜をテーマにCGの有限性・限界線を意識したアニメーション表現の研究と創作活動をする傍ら、VJ/MVや広告映像のモーションデザイナーとして活動する。これまでの作品はStash、onedotzeroなど、国内外のデザインカルチャーのマガジンや映像祭で上映/掲載されている。 代表作に「こうこう」「CHANNELER」など。
さよならポニーテール(さよポニ)のメンバー、メグによるソロユニット、メグとパトロンの新曲ミュージックビデオ(MV)「パリパリパーリー」を担当するのは、「CHANNELER」などを手掛けるモーション・デザイナーの大橋史氏。連作シリーズになるというメグとパトロンの第1弾MV「パリパリパーリー」は、TVゲーム「ビブリボン」のような線画によるCGアニメーションで、メグちゃんが電子の世界を大冒険! 随所に滲み出る、大橋氏のゲーム愛も必読のインタビューをどうぞ!

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――「CHANNELER」や「こうこう」で取り組んできた、アカデミックなアプローチのアニメーションとは一味違う作品となりましたね。
「CHANNELER」や「こうこう」といったオリジナル作品は、過去の文脈を踏襲してそれをどうやってアップグレードしていくかを目指した映像ですが、もう一つのアプローチとして、自分ルールや制限を敢えて設けたロジカルな世界に、ユーモアや可愛らしさを同居させた映像作品も作っています。その1つが2.5DのIDなんですが、それをさよポニのプロデューサーのクロネコちゃんが見てくれて、今回のお話をもらいました。さよポニのメンバーでサックスやコーラスを担当しているメグちゃんがソロデビューをすることになって、そのMVを作ってくれないかと。

さよポニの文学が匂い立つ音楽性とメグちゃんの楽曲は全く違う世界観なので、MVでも明確な差別化を図りたいというのが依頼の大前提でした。イメージ的には、IDのビビッドで激しいCGグラフィックに、女の子でも受け入れられるような、可愛らしいものを組み合わせ、且つビデオゲームのような雰囲気が欲しいという、結構明確なものがありました。そのポイントをおさえていれば、あとはお任せということだったので、CGの潔いグラフィック感を主軸に考えていきました。

――CGのグラフィックスとゲームという相性抜群の画になりましたね。
「パリパリパーリー」って、いい意味でチープなエレクトロのサウンドで、楽曲を聞いた時、90年代の終わり頃に話題になった「ビブリボン」ってソニーのゲームを思い出したんです。そこから、波形のような線描の世界がパっと湧き上がりました。アンチエイリアスのかかってないローポリのバキバキのCGグラフィックスが確実にハマりそうだなって。
ただ、そのままだと「ビブリボン」まんまになっちゃう。クロネコちゃんのオーダーをもう一度組み直していく中で、“理系モチーフ”というもう一つの軸が閃きました。線描にハマるテーマだし、光と音が出会う電気の世界、電子回路図の中をアミダくじのようにキャラクターが冒険するのって面白いんじゃないかなって。

メグとパトロンのMVは連作で作っていくので、第2弾、第3弾にも繋がるアイデアであることも考えておかなければいけなかったんですが、理系テーマで統一出来るし、ノーテーションやダイアグラムをモチーフに絞ることによって、世界観もさらに統一される。そういう手応えもあって、この“電子回路図の冒険”っていうアイデアに行き着きました。

「2.5D 2nd Anniversary ID」
dir: 大橋史|sound: Seiho|pr: 中川義和


■ 作りながらぶち当たった壁:画面の弱さを克服せよ
メグとパトロン「パリパリパーリー」
dir: 大橋史|pr: クロネコ
「メグちゃんの冒険 in 電子回路図」。目を覚ましたメグちゃんは電気の世界の冒険に出発し、この世界に光を与えていく。そして、音響系の電子回路を呼び起こし、光と音が出会っていく。電子回路図に「これからパーティーが始まるよ」とメグちゃんが伝えると、電子回路図はどんどん目を覚まし、最後にみんなでパーティーをするのだ。
――「パリパリパーリー」はテーマ、モチーフ、ルックが上手く重なり合ったアイデアですが、どのように制作していったのでしょうか? ドラクエのように大きな1枚のマップを作られているのですか?
初めはそうしようかと考えたんですけど、それをやっちゃうと終わらないなって(笑)。そこで、最初にイメージボードを作りました。イメージボードに簡単なシンセの電子回路図を重ね合わせ、ノーテーションを舞台に、線描のメグちゃんが登場し、メガホン片手に電子のかけらを呼び集めるという展開を考えました。

電子回路図って基本、水平垂直に線画があって、そこに記号が組み合わさっているんですけど、メグちゃんをその世界に置いていくにあたってテストで画面を組んでみたら、野暮ったい絵になっちゃったんです。スケール感を出そうと引き絵にすると、更に野暮さが強調される。これはまずいな・・・と。画面が弱くて野暮ったい。

実は、今回絵コンテを作っていないんです。いつも描いているのですが、時間が全くなくて。「絵コンテ無しでやってみるものいいかも!」と気持ちを切り替えてみたのですが、結果的にいろんな問題に直面しています(笑)。でも、あまり理屈で考えすぎないように注意しました。でないと、余計なものがどんどん増えていっちゃうんです。

イメージボード。企画当初は、スピード感出すためにメグちゃんにローラースケートを履かせている。
※画像クリックで拡大します。
――画面の弱さはどう解決したのですか?
普通の線描だったら、線と線の間を使ったり、細かいレイアウトで見せていくやり方があるんですけれど、電子回路図って水平と垂直の線の世界。グラフィカルな絵にし辛いっていうのがやってみて分かったんです。
そうすると、この電子回路図のデザインを脚色する必要があるわけです。参考にしたのは、昔の容量が少なかったゲームボーイやファミコンの色の作り方です。ベタ面にドットを細かく打ち込んで色を複雑にみせる技術。実際は点の集まりだけど、見る人は面として意識できるので、これで画面が強くなるんです。そうやって面を作ることにしました。

もう一つの工夫は、光の表現です。光の残像のようなストロークを描けば、これでも面が稼げることに気づきました。画面を強くするために、いかに面を稼ぐかっていうことをやっていくと、自然とこういう絵になっていきました。
あと細かいところでは、前半は電球を積極的に使った演出にしました。面を稼げるというのにプラスして、電球のオン/オフは電子回路図で一番分かりやすいモチーフだし、電気の通った世界だと伝わる、結果的にメリットの大きい思いつきとなりました。

――キャラクターや背景のモーションについてのこだわりを教えてください。
そこでまた課題が出てきたんです! 引き絵の時、メグちゃん以外に動く要素がないという事実。これは、電子回路図の線に電気が通っている感じが出る挿し色を加えたり、ちょっと線を揺らがせたり、パキパキってなるエフェクト的なアニメーションを随所に加えていくことによってクリアしました。そうすると、やっと画として出来上がってきた。実際やってみないと分からないことが多くて、そういうところが凄く難しかった作品でした。

電気の線に差し色やエフェクト的なアニメーションを加えて通電感を出すとともに、背景の動きを演出。
※画像クリックで拡大します。
――クライマックスに向かって大胆に色を取り入れているのも、面を上手く使った演出なんですね。
当初は色を付けることは考えていませんでした。でも、大サビに向かっていく過程で、絵的に明快な差別化が欲しかったんです。
ヒントになったのは、ネットでみた電子回路図の写真達。背景にビビッドなグリーンが結構使われていたりするんですよね。その理由は全く分からないのですが、「こういう見方もあるんだ、面白いな~」って。ラップの箇所とかで背景に色を思いきって使うと、レイアウト的に凝ったことをしなくても、メリハリが出て印象的になりました。

■ 「パリパリパーリ」で課した自分ルールとは?
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――大橋さんはソフトウェアの使う上で自分ルールを作り、制限を課した中で映像制作に挑戦するという特徴があります。本作ではどのような自分ルールを設定し、そこで何を追求したのでしょうか?
これまではソフトウェアの使い方に限定していたのですが、今回は更に領域を拡げています(笑)。2Dの横スクロールのビデオゲームって、“ジャンプ”がキーとなるアクションだと思うんですけど、このMVでメグちゃんは一度もジャンプしないんですよ。横スクロールゲーム的たるジャンプ・アクションは絶対入れないルールを課しました。表現的には、ジャンプをさせると、落下や上昇というアクションもたくさん考えられるので、スピード感や迫力のある演出が出来たかもしれないのですが。そこをやらずに電子回路図の世界を冒険したらどういう演出が生まれるのかっていうのを僕なりに探求したMVなんです。

裏設定で、メグちゃんがジャンプ出来ない理由も作りました。この世界に生きているメグちゃんは電気で動いているんです。だから電子回路から離れたら死んじゃうんです。
そうなると、メグちゃんが出来ることって、歩くしかないんですよ。電子回路図のモチーフを使ってどういう演出が可能か、知恵を絞ることが出来ました。

――ジャンプを禁じ手にし、歩くだけで演出を考えていく。行き着いた結果を知りたいです。
メグちゃんのアニメ―ションのパターンをとにかく増やしました。ビデオゲームってノンリニア的に展開する世界で、自分でキャラクターを操作をすることにより、ユーザーは感情移入していきますよね。マリオも、アニメーションのパターンは少ないのに、のめり込めるっていうのは、自分がそのゲームを操作して感情移入しているからですよね。MVのリニアの世界でそれを踏襲しても感情移入出来ないんです。そのかわり、アニメーションのパターンを沢山作ることによって見ている人を引き込めるのではと考えました。
そうやって自分ルールに挑戦してはじめて面白いものが出来るという美学があるんです。

清竜人「The Movement」
dir: 大橋史
低予算且つ2週間という制作期間で作ったリリックビデオ。時間の無い中、音符をアウトライン化し、フォントデザインもした作品。
――自分を追い込んでその先にある何かを作品制作を通して掴みたいということなんですね。
そうですね。それと前にも言ったことですが、“CGの使い方”に対するこだわりでもあります。今主流のCGの使い方とは真逆の考え方というか。CGって現実の物事を超リアルに再現するツールとして主に使われていますが、今や、レンズを通さなくても映像を作れる時代なのに、「なぜCGを使ってレンズ越しの世界を表現するのだろう」と思うんです。出来るだけ潔いCGの世界を作りたいという気持ちは、僕の中でどんどん明確に強くなってきています。

――アンチエイリアスのかかっていない質感ですが、作業中もずっとバキバキなんですか?
作業中は(アンチエイリアスが)かかっていて、滑らかな線描の世界なんです。最後、レンダリングの設定でドラフトを選んで書き出すと、アンチエイリアスがかからずに書き出せるのでそれを利用しています。

――2D的なゲームの世界、使用したソフトウェアを教えてください?
After Effectsの3Dレイヤーをプリコンポーズしたものを、3Dレイヤーにかけて、NULLに適用させたカメラを使って手ブレっぽい演出をしていますが、基本的にパースのある世界は一切描いていません。光学的に表現されるレンズフレアといった表現も排除して、漫画のスクリーントーンで表現しました。あとは、いつもやっているシェイプアニメーション、そしてマスクを使ってプリコンポジットしたドット絵をアニメーションさせています。

1レイヤー感にこだわって仕上げたシーン。手描きのラフ、編集画面、完成画。
※画像クリックで全体を表示します。
――ラストの大きな引き絵で、画面全体が一斉に動いているシーンなど作るは大変そうですね。
大変ですよ~。だから、なるべく効率よくっていうのは考えます。
例えば、このシーンの背景はシンメトリーなので、半分だけ作ればいい。スピーカーがあって、スイッチがたくさんあって、2つ回路が繋がって音が出るっていうスケッチを元に、実際に組み上げながら画面の密度を上げていきます。電球やコイルやメーターを付け加えて盛っていくんです。盛り方も、レイヤーが重なっているように感じさせないように、1レイヤー感を出来るだけ大事にしています。1レイヤーっぽい世界にめちゃめちゃ要素あるっていうのが凄く好きなんです。作るのは凄くしんどいですけどね。

画面全体に揺らぐモチーフがたくさんあるのは、昔エス・エヌ・ケイ(現 SNKプレイモア)ってゲーム会社が作った「メタルスラッグ」というアクション・シューティング・ゲームに影響を受けています。全ての要素が動いてることで生まれる画面全体の揺らぎやグルーヴが凄くかっこいいんです。おまけに、「メタルスラッグ」のこのドット絵ヤバくないですか? これ全部ドットで描いているんです! この背景ヤバイですよね。ドットでしか描けないんですよ、当時のゲーム機のスペック的な問題で。これは確か90年代の終わりのゲームなんですね。

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©SNK PLAYMORE 「メタルスラッグ」は(株)SNKプレイモアの登録商標です
SNKプレイモアWebサイト「メタルスラッグ3」STEAMサイト
――「メタルスラッグ」はiPhoneの復刻版ゲームも出ていますね。
iPhoneのものとは別に、3DCGでリメイクされたものがリリースされていたのですが、一部のファンからは不満が出てました。みんなドットの塊が動くことに感動するんですよ。画面全体がドットであることとゲーム性の面白さが評価されたゲームなんです。制作スタッフのインタビューを読んだんですが、「こんなにアニメーションのバリエーションを増やさなくてもゲームとして成立するのはスタッフみんな理解しているけど、これくらい無駄なことをしないと人は感動しないんだ」って。その言葉には僕も凄く影響されて、画面全体を動かしているというのがあります。

■ 影響を受けたゲームネタ
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「ビートマニア」のジャムおじさんへのオマージュダンスをするメグちゃん。大橋氏が一人で作りあげた「パリパリパーリー」の制作期間は合計で2ヶ月半。コンポジットだけで約2ヶ月を費やした。初めて15fpsでのアニメーションに挑戦したところ、30fpsとは時間感覚がまるで違うことに驚いたそうだ。本作の画角は16:9ではなく2:1とし横スクロール感を強調している。
――「ビブリボン」や「メタルスラッグ」の他にも参考にした映像作品やゲーム作品はありますか?
ゲームの世界で「ビブリボン」が最初にあって、ローポリのCG表現というところでは、David OReillyの作品を改めて見たり、他にも「Airpushers」っていう、昔の作品ですが、ビデオゲーム、手描き素材、モーショングラフィックスが合わさった面白いのがあって、その辺の映像を研究しました。
ちなみに、メグちゃんのダンスは、昔コナミから出ていた音ゲー「ビートマニア」に出てくる、レゲエファッションのジャムおじさんへのオマージュです。

他にもあるんですよ、オマージュが! メグちゃんのメガホンから文字が出てくる演出なんですけど、これはナムコの「グラディウス」をセルフパロディした「極上パロディウス」というシューティングゲームがあって、パワーアップ・アイテムを取るとキャラクターの前にメガホンが出て、そのメガホンから全然キャラクターとは関係がないセリフが飛び出てそれが攻撃になるというところからきているんです。メグちゃんのキャラクターも、任天堂から出ていた「ゲーム&ウォッチ」っていう昔の携帯ゲームのような、かなりリミテッドなデザインを意識してます。

――ゲームへの愛を感じます。
昔、アニメはそんなに好きじゃなかったんですけど、ゲームは凄く好きでした。

fhána「kotonoha breakdown」
dir/ani: 大橋史|character design: ゆずさ
大橋氏の最新作となる「kotonoha breakdown」は、未だ鮮明な記憶が残る3.11以降にインターネット上で起きた出来事をモチーフに制作された楽曲のMV。80年代のCGアーティストLarry Cuba(ラリー・キューバ)のグリッド的ストロークのアニメーションが、John Whitney(ジョン・ホイットニー)のアラベスクのようなビジュアルハーモニーを描くような映像を意識し、アップデートした作品。イラストレーターのゆずさ氏によるキャラクターは、アバターやアメピグといった文脈から、そしてトトロ(※)にも見られる視聴覚モンタージュを、タイポグラフィのモーショングラフィックスで表現した作品。
※サツキが妹を探すシーンで、村人のざわめきなど周りの音が消えていくシーン。
――続く2作品も期待してしまいます。
1作目を超える気持ちで頑張ります! 小学校の義務教育で習う理科のざっくりとした分野をそれぞれやっていく計画なんです。これまで、CGアニメーションや、歴史とか文脈を意識して作っていたんですけど、今回はそういう文脈のアップデートを意識しなかったので、変に力まずに作れたのは新鮮でした。
もちろん、ビデオゲームを意識しているので、参照している元が単純に違っただけといえばそれだけなんですけど。僕の気持ち的には「本質を描かなきゃいけない」っていう畏まった感じじゃなく作れたというのはあります。そこに理由がいらないというか。メグちゃんが最後に踊るのに理由が要らない、このレイアウトに理由がいらない、楽しければいいだろみたいな気持で臨めました。

今年の秋にはメグちゃんのアルバムが出るのですが、そのアルバムのクリエイティブも携わることになっています。そもそも、CDのジャケットデザインをやりたくて美術の道を目指したので、やっと夢がかないました! インディーズに限らずMVって予算が削られていく中で、それでもやっぱり音楽と関わっていきたいんですけど、今回のようにジャケットと映像と、同じビジョンで提案出来るのって重要だと思うんです。レーベルやミュージシャンと、お互い共犯になれるような関係で何か作っていきたいなって思いますね。

■ 5つの質問 一問一答
1: 一番影響を受けたものを教えてください
タワレコ新宿店、ゲームセンター、多摩美
2: この職に就いたきっかけは?
なりゆき
3: 一番好きな映画は何ですか?
「かぐや姫」
4: 作業場のまわりに必ず置いているものベスト3は?
コーヒー、iPhone、チョコレート
5: 今おもしろいもの/事って何ですか?
音楽にまつわる物語
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