CAVIAR中村剛監督「ZAMURAI 大江戸編」から木村カエラMV「Ring a Ding Dong」を語る

2010.08.19 Thu

 

「ZAMURAI 大江戸編」 dir: Takeshi Nakamura (CAVIAR)
7月に公開された「ZAMURAI 大江戸編」。実は2009年にスペースシャワーTVの番組「ZAMURAI TV 弐」のDVDリリースのために創られたプロモーション映像だった。「ZAMURAI TV 弐」とは、ブレイクビーツユニット、HIFANAが主催する異ジャンル格闘型パーティ「ZAMURAI 5」のライブ映像をベースに気鋭の映像作家がミックスアップするスペースシャワーTVの番組だ(2007年に放送)。しかしこのDVD、諸事情によりリリースが見送られ、映像の公開も延期となっていた。1年の時を経て、遂にお披露目となった「ZAMURAI 大江戸編」を中心に中村剛監督のミュージックビデオ(MV)の近作について伺ってきた。

――ライブ感溢れる「ZAMURAI 大江戸編」の企画はどのように生まれたのでしょうか??
ZAMURAIは「和」がテーマで、この楽曲も「和」なので、それを感じさせる映像にしようと。楽曲の構成が、ZAMURAIのメンバーが順番に登場し、演奏したり、ラップしたりとなっているので、映像も同様、一人ずつちゃんと紹介していくようなイメージはありました。ZAMURAIの中心人物HIFANAとのディスカッションの中で、侍の格好とかおもしろいんじゃないかという話になり、「ロケ地は日光江戸村しかないね」と(笑)。日光江戸村では観光者に衣装の貸し出しサービスを行っていて、それを利用しています。パンフレットに掲載されている、変身できる人物一覧、一心太助、森の石松、お代官様、遊女等、それらを見ながら「Tuckerは虚無僧がいいね、鎮くん(鎮座ドープネス)は魚屋の一心太助がいいね、ケンタロウ(dj KENTARO)はNinjaTuneなので忍者」と、キャラクターを割り振っていきました。

――今回はパフォーマンスだけでなく演技的要素も必要だったと思うのですが。
ミュージシャンなので音楽にのせてパフォーマンスできるという担保はありましたが、衣装を着てどれだけやれるかって言うのは未知数でした。撮影内容の詳細を知っているのはHIFANAだけで、他の人は日光江戸村集合で、当日の朝に「はい、これ着てください」って、そこではじめて説明しました。最初みんなちょっと不安だったんじゃないかな。でも衣装を着た瞬間、すごいノリノリになっちゃって(笑)。みんな刀を振り回すのが楽しかったみたいで、切っちゃうのは内容的におかしいけど、ま、おもしろそうだからいいかって。鎮くんの変顔も傑作で、本番でもそれを活かしてもらったり。あのはまり方は大爆笑でしたね。GAGLEのハンガーくんも代官役にハマってましたね。みんな衣装を着た瞬間、自然に役が乗り移ったようで、撮影前から楽しい物になりそうな予感はありました。

――この作品にはモノクロ版とカラー版がありますね。
隅々までアートディレクション可能な環境じゃなかったので、統一感を出す為にモノクロでいこうと思ってました。モノクロだと見ている人に時代劇という設定も解りやすいですし。でも、色を抜いたカラー版もHIFANAサイドで捨てがたいということになって2バージョン存在してます。今回僕的にはその辺のこだわりは特に無くて見せたかったのは、アーティストのみんなが楽しんでセッションしている感じが伝わるかどうかという事でした。

――ワンカットですが、リハーサルは入念にやったんですか?
リハーサルでは、ここでフレームインしてとか、ここでアウトしてとかアーティストがカメラの画角にどう収まるかをチェックしていきました。だいたい3、4回くらい。本番も5回くらいやって夕方には終了しました。時代劇の格好というのは日常とのふり幅が大きいので、気分を盛り上げるのには効果的でした。あと彼らは日頃から仲がいいっていうのが大きかったなぁ。なんか本当に楽しそうだった。

――演出も現場でどんどん変えていったのですか?
ある程度の構成はロケハン時にシミュレーションしていましたが、決定していることは半分くらい。あとは扮装した大勢のミュージシャンが、江戸村に立った瞬間にイメージが生まれ、その場でどんどん話し合いながら演出していきます。現場のグルーヴ感が出るのが、ワンカットの面白さですよね。想像している以上のことが、かけ算でどんどん出てくる。クラムボンの「JAPANESE MANNER」も、ロケハンで技術的な部分とある程度の構成は準備しておいて、現場で創る実験的なやり方をしています。演出の内容をイメージ出来ていたのは僕だけで、カメラマン、制作、演じ手の人は何も知らない状態。銭湯という場所で何が出来るかという大喜利のようでした。桶があったので、桶持って歩こうとか、シャワー使って撮りたいから、傘をその場で買ってきたり…スリルを楽しんでます。そして放出されるアドレナリンで沸き出るアイデアをインプロビゼーションしていくおもしろさがあります。
クラムボン「JAPANESE MANNER」 dir: Takeshi Nakamura (CAVIAR)
――経験値がないと崩壊してしまいそうな気もします。
最初に全体像をしっかりイメージすることが大切です。それはどんな作品にしたいかということです。そこはきっちり決めておいて、ディテールはその場の空気感を感じながら、みんなでどんどん創っていく。演じ手が待ち時間にどんなことやっているか観察して、ああいうのやりたいのかな…?と思ったら実際に本番でもやってみてもらったり。

木村カエラ「Ring a Ding Dong」 dir: Takeshi Nakamura (CAVIAR)
「カメラ、照明、美術、衣装、メイク全てディテールの積み重ねなのでどれも手を抜けないですね。基本、一枚一枚の画のデザインで考えるところはあります」(中村剛)
――MVを手掛ける際、全般的に心がけてる事ありますか?
ベーシックに変わらない部分、自分らしさというのがあると思うんですが、それ以外では「自分はこういう演出しかしない」って決めないようにしています。スタイルを固定したくない。たまたまこの2本はアドリブ的な演出でしたが、木村カエラのMV「Ring a Ding Dong」は全て決めうちです。同じワンカットですが、表情は本人に任せ、あとは事前にきっちりと決めて創っています。彼女の場合、キャラクターの可愛さと楽曲の世界観を引き出す事にフォーカスしています。

MVに関しては、この音楽好きだなとか、アーティストがいいなと思わないと良いものができないなと思います。エンターテイメントなものを創ってるので、頑張ってこの曲の良さを伝えたいなっていう動機がしっかり持てないと厳しいですね。ビジネスとしては全く成立していないので、やるんだったらそういう意味を自分で持ってないと。逆に素晴らしいアーティストや楽曲に出会えたら、どこまでもがんばれちゃう。

――CMの場合はどうですか?
こういう商品を、こういう風に売りたいと事前にしっかり決まっているので、それを踏まえて視聴者の気持ちを考えながら演出をします。TVCMする商品って自分が買う可能性も高いし、販売戦略も決まっているので、商品の良さや売りが明確です。MVだと、ほとんどの場合、依頼時に楽曲を渡されるだけなので、自分の感性で理解出来ないものだと何を伝えていくのか定まりにくい。そういう意味でMVって難しいですね。

――MVにまつわる環境もこの10年で変わってきたと感じますか?
すごく変わったと思います。まずCDが売れなくなってるから、オンエアされる機会がどんどん少なくなってる。プロモーションビデオなのにプロモーションとして全く機能していない。創んなくちゃいけないから創ってるって感じがしますね。いらない時はいらないって割り切っていいと思いますけどね。宣伝っていろいろな方法があると思うから。

5つの質問 一問一答
Question 1: 影響を受けたものを教えてください
ヒップホップ
Question 2: この職に就いたきっかけは?
ながされるままに
Question 3: 一番好きな映画は何ですか?
社長シリーズ
Question 4: 作業場のまわりに必ず置いているものベスト3は?
たばこ、灰皿、ノートパソコン
Question5: 今おもしろいもの/事って何ですか?
ZINE
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