森野和馬(CGアーティスト):クールな印象とは対照的に、自身についてユーモアたっぷりに語ってくれた。コンセプチュアルなメディアアート作品でもどこか明快で親しみやすいのは、この”サービス精神”から来ているのかもしれない。 STRIPE FACTORY、
森野氏ブログ
「DAWN」トレイラー dir: 森野和馬|この「DAWN」の世界観を是非3Dで体感してもらいたい!
左から中西泰人氏、平野啓一郎氏、森野和馬氏、ケンイシイ氏
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東京都現代美術館「DAWN」展示会場。通常の映像上映作品とは異なり、3Dメガネをかけた観覧者は、展示スペースをあちこち動き回りながら、 このインタラクティブな3D立体視映像インスタレーションを楽しんでいた。
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NVIDIA製の3D立体視メガネ「3D VISION」。実勢価格は19,000円前後。
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そして、幾重にも重なるレイヤーのように構成された小説「DAWN」の世界観を3D空間に再現した映像は圧巻である。展示スペースに常備された3Dメガネをかければ、小説のモチーフである様々なイメージや言葉が目の前に溢れ出し「DAWN」の悲しくも美しい壮大な近未来世界にあっという間に引き込まれていく。
原作者平野啓一郎氏も「想像を超えて面白いものになった」と称賛を惜しまない。では、この3D版「DAWN」の生みの親、森野氏とはどのような人物なのか――
森野和馬氏は1966年静岡県生まれ。アルスエレクトロニカ準グランプリを受賞のほか、世界最高峰のCG学会SIGGRAPHで10年間連続入賞など、メディアアートの分野における実績をはじめ、TVCM、企業CI、井上陽水氏の「花の首飾り」をはじめとするミュージックビデオなどの商業ベースの活動まで、そのフィールドは幅広い。
氏について、今回の「DAWN」プロジェクトでも音楽を担当し、時にはDJとVJ、時にはミュージシャンとミュージックビデオ監督として10年来親交のあるケンイシイ氏は語る―
「その時代の最先端の技術・スタイルを常に取り入れながら、オーディエンスに分かりやすい形で伝えるコマーシャルの部分とアーティスティックでクリエイティブな部分を持っていて、そのどちらのバランスも取れる。そこが素晴らしい」
■「夢の世界」の映画と音楽に夢中だった少年時代
「親戚が映画館を経営していて、時々ふらっと行くと映写室に入れてもらって、なんか面白い機械があるなぁみたいな…映写室から眺めている風景を覚えているんですよ。映写機がカタカタいう音とか…。現実じゃない夢の世界、そういう所に感動して」
「夢の世界」としての映画。特に小学校5年生の時に観た「スター・ウォーズ」は、森野少年に相当なインパクトを与えたようだ。また、作品の「核を調べたくなる」性分から、メイキング本で制作スタッフや技術までもチェックしていたというから驚きだ。
「ある種オタクだった」という少年時代、 映画ともう一つの「夢の世界」として魅了されていた音楽を片っ端から吸収してきたものの、高校卒業後は両親の希望により地元の一般企業に就職する。
■「コンピュータ・グラフィックス」との出会い
しかし仕事には夢中になれず将来を模索する中、氏はあるテレビCMに強く惹きつけられる。
「あれはパナソニックかな…ピサの斜塔からボールをポーンと落とすCMがあったんですよ。それが、いろんな形に変わっていってドーンと落ちるというコンピュータ・グラフィックスで作られた映像で面白いなぁと思って」
こうしてCGクリエイターの道を目指し、88年、森野氏は上京を決め、CGの専門学校に入学する。学校ではいつも放課後まで残って必死に勉強を続けていたという。なぜなら、当時はCGの創世記。自宅にCG制作環境を持てる程安価なPCなど無かったからだ。
■CGのパイオニア達との出会い、そしてプロの世界へ
そんな学校生活を送っていた森野氏に、ある大きな出会いが訪れる。
「太陽企画という会社にアルバイトに行ったんですけれど、そこにいた久保田孝*さんという方が、実はあのパナソニックのCMを作った人だったんです!その人にいろいろ鍛えられて…まあ出会いですよね」
*久保田孝:USリズム&ヒューズ・スタジオ エフェクトTD。1983年、日本初のCGプロダクション、JCGL(ジャパンコンピュータ グラフィック ラボ)の2期生として入社。以後、太陽企画CGルーム、ポリゴンピクチュアズを経て、1997年よりSQUARE USAに入社、渡米。フルCG映画、劇場版「ファイナル・ファンタジー」(2001)にレイアウト・スーパーバイザとして参加。2006年より、リズム&ヒューズ・スタジオにてエフェクト制作に従事。
専門学校を卒業後、そのまま太陽企画に入社。当初は、プロの世界に圧倒されたようだ。こんなエピソードがある。会社で使用しているツールでは、どうしても思い通りの表現ができないので、それが実現できるツールがあるのか上司に聞くと、「ないなら、プログラムで作ればいいじゃない」。そんなプロならではの厳しいアドバイスも森野氏はポジティブに受け止め、地道にスキルを磨き、入社3年目あたりからプロジェクトを任されるようになる。そして会社の作品を作る傍ら、会社に残って自分の作品を制作するようになる。
「皆さんが帰られた後にね、夜こっそり自分の作品を作っていました。やっぱりどうしても、自分の作品を作りたいというのがあったんで」
■「STRIPE BOX」の成功、そして「STRIPE FACTORY」の設立
そんな作品の中から「STRIPE BOX」が生まれる。
「STRIPE BOX」dir: 森野和馬 社名の由来にもなった代表作。
この作品は93年のSIGGRAPHアメリカに出品され、会場の観客からは、スタンディング・オベーションで迎えられた。そして見事”Electric Theater”入選を果たす。「こういう業界でやっていけるという気持ちになれた」と自信をつけた森野氏は98年、より幅広いフィールドを求めて独立し、STRIPE FACTORYを設立。現在では、映像表現にとどまらずiPhoneアプリの制作やデザインなど、挑戦を続けている。 今回の3D立体視プロジェクト「DAWN」も、こうしたチャレンジ精神から生まれたものだ。
■「かつて」と「新たなる」3D立体視プロジェクト
森野氏と3Dとの関わりは、実は、89年にまで遡る。当時、名古屋で開催されていた世界デザイン博覧会で、太陽企画が携わっていた富士通パビリオンの5面マルチスクリーン立体映像がそれだ。ディレクター柳瀬三郎氏*のもと、3D立体視作品の面白さを学んだが、一方で不自由さも感じたという。
「とにかく当時は、3Dっていうと前に、前に出すっていう、物体が浮いている楽しさみたいな所を追い求めたCG表現が基本だったので、飛び出す物体がフレームにかからないように構図を作っていたんですよ」
*柳瀬三郎:映像監督。毎日放送映画、東洋シネマを経て、太陽企画に。手塚プロ時代にアニメーターの経歴も。森野氏は太陽企画入社当時に柳瀬氏の絵コンテを見て、あまりの上手さに衝撃を受けたという。
こうした経験から、今回の「DAWN」プロジェクトでは、より奥行きを意識し、枠にとらわれない立体空間を作り出すことに力点を置いたようだ。制作期間は2009年12月下旬から約40日。
■3D版「DAWN」の制作過程
Mayaで左右2つのカメラを設定したプレビュー画面。視差を調整している。
「上映の際の画面の表面を0だとしたら、奥行き2%、手前に2%で、合計4%くらいが限界」と森野氏は語る。とはいえ、シーンやストーリー展開により、視差のメリハリをつけ、シーンによっては、6%くらい視差をつけている。
アナグリフ(赤青メガネ)で視差を確認する森野氏。
続いて、Mayaから書き出した素材をAfter Effectsやshakeに立ち上げ、光や影、色味などの質感の調整といったコンポジット作業を行う。Mayaでこの作業を行わないのは、作業効率が悪く、レンダリングの処理では微妙な質感の違いを生むのに限界があり、コントロールしにくいからだ。さらに、Mayaのパーティクルでは出せない、動きにアクセントを出したいようなオブジェクトの追加や、フルHD CG作業で起こるマッハバンドの消去もここで行う。
これらの作業もL、Rの全てのレイヤーに対して行なわなければならない。この作業時間は、通常作業時間の単純に倍というわけではなく「左右のバランスを確認しながら行うので、ゆうに倍以上の作業時間を要する」(森野氏)
編集作業にはFinal Cut Proを使用。
3D映像を上映するPCは、NVIDIA QUADRO FX 4800を搭載。約40日という展示期間中でも問題なく上映を続けるには、パワフルで信頼できるグラフィックボードが不可欠。
現場でチェックを行う森野氏。「現場の画面サイズで見ないと分からない事がある」
このように気の遠くなるような作業の末、完成した今回の3D立体視プロジェクト「DAWN」。しかし、当の森野氏は嬉しそうに振り返る。
■3Dのこれから、森野和馬氏のこれから
「今回作品の3D上映をしてみて、やっぱり面白いなと。10年、20年、作ってきて2次元に慣れていた所があったんですけれど、3Dで動かすという事を改めてやり始めると、表現の幅がもう一つ広がった感じがして面白いですね。それは、初めてアニメーションで動かした時の感動を味わった感覚に似ていて、今回、空間の驚きを作り出すことができて、同じような感動を味わうことができました。ジュラシック・パークがCGというものを爆発的に広げる要因になったように、アバターも作品として良いものだったから、3Dの表現が、今後広がる可能性は十分にあると思います。例えば今回使用した3Dメガネ(NVIDIA 3D VISION)も、軽くて、かけていて違和感がないし、どんどんレベルアップしています。こうした技術的な所から見ても、3Dはもっと身近になると思います。これからも、もっと3Dの表現というものに挑戦していきたいですね」
取材・文:長谷川聡志(映像ディレクター/ライター) 写真:丸毛透
■「NVIDIA 3D Vision」
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5つの質問 一問一答
Question 1: 影響を受けたものを教えてください
谷崎潤一郎「文章読本」
Question 2: この職に就いたきっかけは?
久保田孝氏のパナソニックCM
Question 3: 一番好きな映画は何ですか?
スター・ウォーズ
Question 4: 作業場のまわりに必ず置いているものベスト3は?
コーヒー、お花、ミニカー
Question5: 今おもしろいもの/事って何ですか?
子育て
Question 1: 影響を受けたものを教えてください
谷崎潤一郎「文章読本」
Question 2: この職に就いたきっかけは?
久保田孝氏のパナソニックCM
Question 3: 一番好きな映画は何ですか?
スター・ウォーズ
Question 4: 作業場のまわりに必ず置いているものベスト3は?
コーヒー、お花、ミニカー
Question5: 今おもしろいもの/事って何ですか?
子育て
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