庵野秀明×樋口真嗣登場!映画監督が虜になるSFドラマ「GALACTICA/ギャラクティカ」とは?

2009.09.03 Thu

 

GALACTICA.jpg
「GALACTICA/ギャラクティカ」 あらすじ:舞台は未来。人工知能を備えたロボット「サイロン」の反乱により人類とサイロンの戦争が始まる。人類に残された唯一の戦力は宇宙空母ギャラクティカ。艦長アダマ、戦闘機バイパーのパイロットであるスターバック、アポロ、ブーマーなど個性溢れる登場人物たちが人間ドラマを繰り広げる。戦時下のカオスの中で、人が生き残るための条件とは何か。冷徹な女性指揮官ケインが下してきた、究極の判断とは!?
広大な宇宙が拡がるSFドラマの世界。日本アニメに例えてみると、歴史&人気ともに幅広いファンを誇る「スタートレック」が「機動戦士ガンダム」だとすれば、人間ドラマがウリの「GALACTICA/ギャラクティカ」(以下ギャラクティカ)は「装甲騎兵ボトムズ」といえよう。しかしそのハードなストーリーの魅力にとり憑かれたクリエーターは多く、日本でも映画「ALWAYS 三丁目の夕日」の山崎貴監督や映画「ローレライ」の樋口真嗣監督らが熱烈なファンとして知られている。

この玄人をも虜にする「ギャラクティカ」には、スピンオフ版「GALACTICA:スピンオフTVムービー」【RAZOR/ペガサスの黙示録】が存在する。登場人物の知られざる過去をクローズアップした、マニアにはたまらない作品だ。2009年8月27日(木)、新宿バルト9にてDVD発売記念イベントが開催され、庵野秀明監督と樋口真嗣監督によるトークショーが行われた。作品への愛情と独特の演出術が垣間見れるトークの全貌をお届けしよう!

■映画は監督のものじゃないけど、船は艦長のもの
0827_RAZOR01.jpg
左:庵野秀明監督、右:樋口真嗣監督 進行役はライターの清水節氏
――(清水節氏)「GALACTICA/ギャラクティカ」の魅力は?
樋口:なんといっても宇宙が舞台なことが最大の魅力ですよね!!ブーマー(韓国系アメリカ人女優グレイス・パーク演じる女性パイロット)が来日した時にはヤフオクで手に入れたギャラクティカ艦隊のフィギュアにサインをしてもらうためにイベントに参加したようなものでした(笑)。ブーマーに続き、このスピンオフでも、東洋人の“デレが無くツンだけ”みたいな美人キャラがいて、もうドストライク!なんで来日していないんですか!?

――すみません、予算の都合上…。庵野監督はいかがですか?
庵野:僕は映画「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」の制作が終わって、このイベントの依頼をもらってからイッキ見したんですけど、面白かったですね。アメリカはこんなレベルの作品を2003年に作っていたのかとびっくりしました。サイロン(人工知能を備えた敵ロボット)のやっていることは、9.11以降イラク戦争でのアメリカの行動に通じるものがありますね。

――「ギャラクティカ」のストーリーは、イラク戦争でのバグダットの状況を、占領された側から描いているとも言われていますからね。スピンオフ版「RAZOR/ペガサスの黙示録」のみどころはどこだと思いますか?
庵野:なんといってもアダマ艦長(エドワード・ジェームズ・オルモス演じる宇宙空母ギャラクティカ艦長)。これは男にしかわからないかもしれないけれど、船は艦長のものなんですよね。映画は監督のものじゃないですよ。観た人、プロデューサー、そしてスタッフのものでもある。でも軍艦は艦長のものなんです。

――この登場人物の過去が明らかにされましたね。これについてはどう思いますか?
庵野:僕は本編だけで充分で、いらなかったと思いますよ。(「RAZOR/ペガサスの黙示録」で)新キャラの視点になっているのは、本編と被っちゃいけないという制作的な原因でしょうけど、それでよかったと思います。

樋口:スピンオフだと、いいキャラクターが出てきても殺さなくちゃいけないのが辛いところですね。

■破天荒な作戦を緻密に描くのが魅力
Season3KV.jpg
樋口監督は生まれ変わったらバルター(中央)になりたいそう。
――プロの監督から見て、「ギャラクティカ」の特撮はどう思われますか?
樋口:僕にとっては特撮テクニックよりも、作戦というかアイデアに感じるものがあります。物語のなかでは、作戦を立てて、そのイメージをなんとか絵にしなければならない。「ギャラクティカ」には、僕も「見てえ!」って思うアイデアが出てくるんです。特にお気に入りなのは、「Exodus, Part 2」(【転:Season3】#304)の大気圏に入ってからのジャンプ。絵にしたときに一番かっこいいシーンですよ。そういう破天荒な作戦を緻密に描くのがいいですね。

庵野:あれは素晴らしいです。燃えながらバイパー(戦闘機)が出て、激突寸前にアダマがジャンプ。これはいい設定だと思いました。重力の影響もなく、大気圏でも関係なく、ポンといなくなる設定がないと、この作戦はムリですよね。

――他には?
庵野:セットに関しては、レトロなところが素晴らしい。昔の「宇宙戦艦ヤマト」の波動エンジンがバルブだったみたいに、「ギャラクティカ」もメーターがアナログじゃないですか。針が赤いところにいったらピンチとか、わかりやすい(笑)。スピンオフでは、ペガサスを描くのに艦内のセットも作ったのが凄いですよね。でも、映像にはドア面だけしか出てこないので、セットを組んだのはパーマネント2面か3面なんだと思いますけど(笑)。

「僕の生理的なものはテレビに近い。テレビをやりたい」(庵野監督)
RAZOR_main.jpg
庵野監督お気に入りのスターバック(右)。「強さと正直なところ。あんまりウソいわないですよね。」スターバックはエヴァでいうとアスカに近い。
――それではお客さんからの質問コーナーに移ります。“お気に入りのシーンを教えてください。”
樋口:やっぱペガサス3部作ですね。それぞれのブリッジに手ごまを配置して、いつでも殺せるぜっていうのを解除するところがボロボロきましたね。(#212:「再生船(後編)」)

庵野:「死んだやつのことは知らない」と言っていたスターバックが、最後にジョッキを上げながら死んだ全員の名前を言うところがよかったです。(#215:「傷跡」)

――2人が「ギャラクティカ」に影響されたところはありますか?
樋口:最近僕は宇宙に行ってなくて、時代劇ばっかりなんでそんなに影響はないですね(笑)。というか逆にギャラクティカのフォロワー的作品も多く、気をつけたいと思います。広い絵から「ギャッ」とズームするとか。

庵野:映画「スカイクロラ」にあったね。僕は最近「ハゲタカ」も観たんですけど、実写っていいなあと思いましたよ。特に映画じゃなくてテレビシリーズがいい。長いお話をちょっとずつやるのはいいなあと思います。僕の生理的なものはテレビに近いんです。だから劇場版を作っても長くしてしまう。僕は映画よりもそっちのほうがやりたいですね。

――映画よりもテレビのほうに魅力を感じるということですか?
樋口:僕もそれが強くなってますね。映画は始まった瞬間に終わりの種まきを始めているから、終わるために始まっているんです。それが最近さみしくって。いいキャラクターを育てても、二時間後にはお別れですからね。

庵野:ギャラクティカは「この人が出れなくなる」とか、そのときの制作の状況でどんどん脚本を変わっていったと思うんですよね。それが面白いんです。最初に大まかなプロットはあったけど、「このキャラクターはどう動くか」とか細かいことは考えずに作り出したのがわかります。

■わからないから見続ける
Season3302.jpg
樋口監督お気に入りのブーマー(左) 右はアダマ艦長
――2人が脚本家だったら、どんな結末にしますか?
庵野:脚本家じゃないのでわからないです。僕はあまり見ているものの先読みをしないタイプなので。この話これからどうなるんだろう、は自分では考えない。お客さんとして楽しみます。

樋口:僕も同じです。「僕だったらこうする」というのがあるのは不満があるからですよね。それがわからないから見続けたいんだと思いますね。

現在、XMENのブライアン・シンガー監督で映画化のプロジェクトも進行中の「GALACTICA/ギャラクティカ」。アメリカ社会をも風刺する重厚なストーリー世界に一度足を踏み入れたら、あまりの面白さに戻れなくなってしまうかもしれない…!スピンオフ版「RAZOR/ペガサスの黙示録」は9月25日発売。

Tags:
トラックバックURL:http://white-screen.jp/white/wp-trackback.php?p=2913