Behind The Scene vol.05|エレクロトニック

2008.08.04 Mon

 

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一昔前まではMVなどのコンテンツを合成や編集するなら、編集スタジオにある特別な専用システムで作業するのが当たり前だった。しかし、最近はごく普通のデスクトップPCベースのノンリニア編集システムからミュージックビデオ(MV)や映画さえも生み出すことが可能である。ここで紹介する映像チーム、ELECROTNIK(エレクロトニック)も撮影から合成、編集までを自らこなす話題の映像クリエイターである。そんなELECROTNIKがディレクターとして活躍した最新ミュージックビデオ「4 Seasons」の制作記の中から映像制作に欠かすことのできないペンタブレットの活用を中心に焦点を当てて紹介していこう。

■話題の映像作品を生み出すデュオディレクターチーム
ELECROTNIKは、MVや番組タイトル、CMのディレクション、デザインなどを中心に活躍している中根浩氏と中根さや香氏による映像制作チームだ。ELECROTNIKの映像の特徴は「世の中にはない、自分らが観たいものを作りたい」というノリの演出だ。たとえば、SEAMOの「Fly Away」(2007/7/25発売) のMVではプロレスの空中技などを取り入れたプロレス試合の映像という奇抜なアイデアを実現したり、bonobosの「THANK YOU FOR THE MUSIC」(2005/5/16発売)のMVではリズムに合わせて巨大な手が地面を叩く不思議な映像はつい目を留めてしまう。
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Elecrotnik 中根浩氏
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Elecrotnik 中根さや香氏
さらに「基本はカメラマンに依頼するが、場合によっては自分で撮るときがある」と語るほど一連のワークフローをこなす技術もウリである。MacにDeckLinkを導入してからはカメラのSDI信号を非圧縮で取り込み、そのまま編集しているということからもスキルや意識の高さがうかがえる。ELECROTNIKの紹介については、ホワイトスクリーンの「ディレクションすべてがおもしろい/Elecrotnikが作るディープな映像世界」でも紹介しているので、そちらも参考にしてほしい。
そんなELECROTNIKのクリエイティブワークに欠かせないツールがAfter EffectsとワコムのCintiq 21UXだ。ELECROTNIKの話を聞いているとAfter Effectsを使えばどんなことでもできる気になってしまう。

たとえば、ライティングで髪の毛がベタッぽくなってしまったら明度などでディテールを修正したり、セットのランプが故障して点滅しなかったら、対象の位置にある点滅しているランプをパスで切って移植して解決したりと、まさにどんな映像でも自由自在に操ってしまえるのではないかという感覚だ。

ELECROTNIKが使っているペンタブレットが、液晶ペンタブレットの最上位機種「Cintiq 21UX」だ。1600×1200ドット(UXGA)表示対応の21.3インチ大型液晶パネルを搭載しており、巨大な液晶画面に直接ペンで描くことができるのが特徴だ。
Cintiq 21UXを使っていて気に入っているのは本体の角度に変化が付けられるところだという。たとえば、まっすぐな線を引くときは本体を回転させると引きやすく、絵コンテを描くときは本体を寝かせる。マーキングするときは本体を立たせるように手軽に角度を変えられるとのことだ。
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Cintiqの回転機能。

■紙に描いた感覚と変わらない
ELECROTNIKがディレクターとして活躍したMicroの「4 Seasons」(アルバム「MAX OUT」(2008/7/9発売)の収録曲)のMVでは、夢とも現実ともつかない竜宮城のシーンと「4 Seasons」の疾走感あふれるメロディーが絶妙にマッチし、楽曲の幻想的な世界観をスタイリッシュに表現している。

ビデオは街角でMicroがベンチに置かれたSAHARA(魔法瓶)を見つけるところから始まり、SAHARAから水があふれ出してできた水たまりの中の映像に触れると、Microを竜宮城へといざなう。たくさんの海草をイメージした女性や花が咲いているのが春のイメージ、珊瑚の裏が白くなっていてひっくり返ると冬のイメージなど、曲のタイトル「4 Seasons」の通り、四季をイメージしている。
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MICRO「4 Seasons」

「4 Seasons」のMVを「企画から一切任された」というELECROTNIKの最初の課題は絵コンテの制作だった。この作品の特徴は「ミュージック・ビデオ」と「CM」をシンクロさせたもので、タイガー魔法瓶「SAHARA」をアピールしながらミュージックビデオを作ること。その際、「アーティストと商品のコラボはあくまでも広告っぽくなく、MVの自然な流れの中で成立させて欲しい」という条件でストーリーを考えなければならなかった。

二人は、「Microさんが魔法瓶の中の世界に入って、戻ってきたらそれが夢だった」というMV中の展開を考えた。
このように湧き出てくるアイデアは、すぐに絵コンテとしてまとめられる。二人が絵コンテを描くのに使用しているのがCintiq 21UXとPhotoshopだ。その絵コンテを見せていただくとまるで紙の上で描かれたような鮮やかなタッチで仕上げられているのに驚く。以前は紙に描いていたが、ペンタブレットを使えば紙と同様のタッチが再現できることや、取り込み作業もいらないことからPhotoshopで描くようになったという。

一コマは640×480の高い解像度で描かれているので、個々のコマだけを大きく表示すれば演出のポイントがよくわかる。さらに、テキストはテキストレイヤーで描かれているので、後からの修正に対応できるようになっている。このような絵コンテはだいたい1~2日で仕上げているという。

「ペンタブレットを使えば紙に絵を描く感覚に近いニュアンスがデジタルで出せるというのがいいですね。マウスでペイントする際、線の太さを変えたいときに筆の設定を変えなければいけませんが、ペンタブレットならば筆圧感知があるので1つの設定で細い線や太い線が引けたりするのが凄く便利です。表現力も上がるし、クオリティも上がるという感じですね。板型のペンタブレットIntuos3を使う場合は、入力エリアに紙を敷いてペン先はフェルト芯を選ぶと紙に描いているような感覚で描けるのも見逃せません。」(中根浩氏)
「IllustratorやPhotoshopでラインを書いて、After Effectsにもっていくことがよくあります。そんなグラフィックの素材を作るときベジェのカーブが均一なラインだと形はかっこよくなりませんが、ペンタブレットを使えば筆圧感知で強弱を付けられます。小さい点を打つ場合は力を弱く、大きな点を打ちたい場合は、力を入れればいい感じです。」(中根さや香氏)
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「SAHARA」CM絵コンテ ※大きい画像を見るにはクリックして下さい。

■直観的で生産性があがる
編集作業の中でも時間がかかるのが、画面内に映ってしまった不要なものをデジタル合成によって消す「バレ消し」の作業だ。「4 Seasons」の回転台のシーンではモーターがどうしても写ってしまうので、マスク抜きでモーターを隠している。回転台の周りにはスモークが炊かれているので、そのスモークをコピーして、モーターの上に乗せて消すという作業だ。しかし、単純にほかのスモークを載せると、今度はアーティストの足が隠れてしまう。そこで、ステージから飛び出ている手や足のパスを切ってスモークの上に乗せて解決している。

言葉で説明すると簡単な説明になるが、この作業は約10秒のカットで約300枚の画像を1コマ1コマずつマスク抜きをしなければならない。このような地道な作業は、派手なエフェクトを作るよりずっと時間のかかる作業になるが、Cintiq 21UXを使うと正確なマーキングが簡単にできるので作業負担の軽減になるという。
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上部にモーターが見える。
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マスク処理後。
「ペンタブレットを使えばマーキングを正確に合わせることが可能になったり、すぐに横の色を拾って塗ることがきます。今回のように膨大な枚数のバレ消しを一枚一枚効率よく作業していく場合にはペンタブレットなしでは考えられませんね」(中根浩氏)。

ロックバンド「RIZE」のMV「KAMI」の制作ではハイスピードで一粒の液が垂れるのを全部マスクで追っていき、マスク抜きでカラコレを行う機会があったが、その際にもっともCintiqの効力を感じたという。

「白黒の世界から一粒の液によって世界が色づくというコンセプトで、ポイントカラーを使って表現しました。落ちてきた素材は、ハイスピードカメラではじけているところまで実写で撮影したものです。1粒の状態で上から落ちるときはパス、飛び散ったところはペイントで一コマ一コママスクを抜いて色を足していきます。そのときもCintiq 21UXを使いましたが、ポイントを打つのに大活躍しました。これは非常に細かくて、2秒ちょっとの画像なので80枚くらいのマスクを1枚ずつ描くということを前提にすると、ペンタブレット無しでは考えられない作業です。」(中根浩氏)。
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RIZE「Live or Die」より

■手ごろなモデルも選びたい
ELECROTNIKがAfter Effectsで素晴らしい映像を制作できる背景には、きちんとしたマスク抜きやペイント機能を使って地道な作業が行われているからであることがわかった。この時間がかかる作業をペンタブレットが支えているといってもいいだろう。

最後に、Cintiq 21UXを使っているELECROTNIKにペンタブレットの選び方を聞いてみた。

「現在はCintiq 21UXを使っていますが、機会があれば12インチの液晶ペンタブレットも使ってみたいです。映像制作の場合は、Cintiqのモニタ以外にもマスモニで素材の色を確認しながら進めるために、Cintiqのモニタだけで完結することはありません。ですので、デスクの横に一個おいて置いて、マスク抜きの作業のときにひざの上に乗せて使うという選び方もあると思います。」(中根浩氏)

Cintiqは、21.3インチモデルのほかに12.1インチ液晶モニタを搭載したCintiq 12WXも発売されている。約405×270×17mmのコンパクトな薄型設計なので、各自の制作環境に合わせて使い分けることによって更に利便性があげることも可能だろう。

Cintiq 21UX
ワコム社の数あるペンタブレットの中でも最高級機種であるCintiq21UX。21.3型モニタを搭載した液晶ペンタブレットで直接モニタに描画が可能。Intous3テクノロジを採用しているので、高精度、高分解能、高速読み取りはもちろん、1,024レベル筆圧機能のほか、Intuos3用の各種オプションの利用が可能だ。
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最上位モデル「Cintiq 21UX」

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