幸せを呼ぶ「まりもっこり」。ニコグラフィックスのDVDリリース制作秘話。

2008.03.25 Tue

 


「まりもっこり~ず」 人形のデザインもニコグラフィックスが手がけた
ここで質問です。日本で一番ホットなご当地キャラは?…答えはもちろん北海道阿寒湖発の「まりもっこり」。 ”キモかわいい”キャラクターに加え、女子高生の間で「股間をなでると幸せになれる」という伝説によって大ブレイクした有名キャラ。母親から携帯ストラップをお土産にもらった時にその席巻ぶりに軽く衝撃を受けたのは去年の夏。

そんな老若男女に愛されるまりもっこり、映像化のプロジェクトがただいま続々進行中。まずは爆発的なダウンロード数を記録した「まりもっこり着ムービー」。続いて歌手デビューにあたってCaviar田中裕介氏監督がミュージックビデオ(MV)を制作。
そしてこの度、映像作品「まりもっこり~ず」として2008年3月26日にDVDリリースが決定。しかもコマ撮りアニメーションでコアスタッフがほぼ女子だという。監督を手がけたのはこれまでNIRGILIS「Brand New Day」 、ZAMURAI弐などのMVを手がける映像作家、ニコグラフィックスの泰永優子さん。たびたびインタビューにも登場して頂き、ホワイトスクリーンではすっかりおなじみの彼女。人形アニメ作家、上乗直子さんとともに、まりもっこりのキャラ作りやチェコ仕込みのコマ撮りアニメの撮影方法を伺った。

■まりもっこりがファミリーで登場。制作を手掛けたのは女性クリエイター
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左:上乗直子さん 右:泰永優子さん(ニコグラフィックス)
―― まりもっこりのアニメ化おめでとうございます。
ニコグラフィックス(以下ニコ):2007年に手がけたまりもっこりの着ムービーアニメーションが好評で、アニメーションDVDのお話を頂いたんですけど、まりもっこりのどこか憎めないキャラクターを生かすために、人形を使って「やらされてる感」が出せれば面白いと思って。
基本的にこの作品は女性向けなので、女性が引かないギリギリのラインを任せられた感じです。メインスタッフが5人、そのうちコアスタッフ3人が女子というプロジェクトなので、ファミリーみたいにアットホームな雰囲気で制作できればと。まりもっこりに家族を作って、サザエさん的ファミリームービーを目指しました(笑)。

―― では、今回初登場となるまりもっこりの家族について簡単に紹介をお願いします。
ニコ:パパもっこりは間抜けでおとぼけ。ママもっこりは天然だけど怒ると怖い。ベビーが一番変態で、頭がいいんだけど何考えてるか分からない不気味なキャラです。まりもっこりが一番普通の子で、スポーツ万能、友達も沢山いる、女の子にももてる優等生なんです。
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まりもっこりファミリー キャラクターの設定は撮影するときにお互い意見を出しながら確立されていったそう。1話と4話ではキャラが微妙に違うかも?

―― キャラの方向性が見えた瞬間はありましたか?
ニコ:実はまりもっこりは下ネタ禁止をスローガンに制作したんですよ。まりもっこりの生みの親である株式会社キョーワさんの要望もあって、モッコリしてるんだけど普通の生活を送っているギャップを楽しもうということになりました。
それが見えたのが最初の登場場面で、まりもっこりが趣味のグラビアに夢中になっているシーン。部屋でくつろいで本を読むといえば当然腹這いだということで、実際やらせてみたらもっこりでシーソーみたいになっちゃって(笑)。その時に「普通のことをやらせると面白くなる」っていうまりもっこりの方向性が見えましたね。

■コマ撮り撮影の現場とは?!
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シナリオがまず完成し、続いてコンテを起こした。「でもこのコンテが最初の試練。コマ撮りアニメの場合どうしたらいいかわからなくって、ワンカットの中で起こる流れをマンガみたいに描いちゃったりして。」と泰永さん。
―― コマ撮りの現場って、実際の撮影はどのように行われるんですか?
上乗:事務所の一角に暗幕を張って、その中にセットを組んで。撮影も動かすのも私です。ちなみに撮影した機材は一眼レフのサイバーショット。プレビュー用の機材は「ランチボックス」を使用しました。ランチボックスはその名の通り箱のうえに蓋がついてるような形なんですが、その中にデジカメに撮影した画像をため込んでいきます。ボタンを押すと前のコマ、今のコマというように簡単にプレビューできるんです。OKテイクを泰永さんに渡すというフローです。

ニコ:もらった画像は、連番をAdobe After Effects(AE)で軽く1分くらい組んでApple Final Cut Proでオフライン、最終的にAEに戻してエフェクトを付けていきました。やる前はコマ撮りって決めカットが多いから楽だと思ってたんですけど、全然違いました。コマ撮りの人形を固定するピンをフォトショップで1枚つづ消していったり、いろいろ手間があったんです…。

―― アニメは何フレで撮影したんですか?
上乗:10フレーム/1秒間です。25分を3か月で撮るスケジュールだったので、制作スケジュール的な考慮もしました。1日に撮れるのは5~15秒、1日2、3カットくらいで、セットが変わらなければ1日30秒くらい進むこともあります。


■上乗さんに聞く!コマ撮りテクニック
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半立体アニメーションで撮影された昔話のシーン。 
―― それでは気になるシーンについてお聞きします。「もっこり太郎の巻」の昔話のエピソードはニュアンスが違いますね。
上乗:他のシーンと違って、板の上に平面的な人形を置いて全て俯瞰で撮影しています。これは半立体と言って、紙や布などの立体素材で作るアニメで、普段はこちらのほうがニーズが高いんです。立体人形で長尺ものって手間がかかりすぎるので、実はなかなか制作のお話ってないんですよ。半立体は全部パーツがバラバラで、動きが自由に出来るところがメリットです。
監督さんが人形とキャラクターを作って私は動きを担当することが多いですね。本来一番きれいなやり方は硝子台をセッティングして透過光で撮影してマスクを切る方法ですね。人形は上質の発砲スチロールを削って作りました。

ニコ:半立体の表現って背景のCGとすごくしっくりきて、作ってて一番楽しかったですね。

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液体をコマ撮りで表現するには…?
―― こちらは温泉のシーン。コマ撮りで液体のシーンって難しそうですが。
上乗:乳白色の液体はボディシャンプーです。ここでは本物の液体を使ってます。お風呂が沸騰する表現はボディシャンプーにスポイトで空気を入れこんで、そうすると泡が残ったり消えたりするので自然の力でブクブクして見えるという。湯気は合成で入れています。

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家族が一糸乱れず踊るダンスシーン
―― ダンスシーンなど、コマ撮りで一気にいろんな要素が動く時にはどうやって整合性を取っているんですか?
上乗:基本的には監督の希望を聞いてアドリブで人形を動かしますが、音楽やセリフがあるときは綿密なタイムシートが必要になることが多いです。何秒、何フレの時にこのキャラクターがこの動きをするというのを記したものですね。このダンスシーンでは、振付師の踊りをフレームに落としたものを基にタイムシートを作りました。

―― 人形アニメならではの苦労ってありました?
ニコ:みんな顔のパーツが一緒だから上乗さんには苦労かけましたね。
上乗:そもそもまりもっこりって、眉毛がないから感情表現がすごく難しいんですよ。口がガバッと開いたりとか、元のフォルムを変える表現はできなかったんです。だから目の部分をちょっとずつ動かしてみたらかえって気持ち悪くなったので(笑)、首を大きく動かして感情を表現しました。あと、キャラは手も足も短いので物を屈んで拾うこともできないし、ハイタッチするとキスしてるように見えちゃうとか物理的な制約が難しかったですね。

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ヤン・シュワンクマイエルの作品を見てコマ撮りアニメを志した上乗さん。でもビールがおいしいチェコというお国柄、教師陣が朝から酔っ払っていたり言葉の壁があったりで、「授業そっちのけでアニメーションばかり作ってました」とのこと。今後は、キャラクターの動きや間だけで面白い作品を構想中とのこと。

―― 最後に、この撮影の感想を聞かせてください。
上乗:最初話が来た時、面白いんだけどどうやって作ればいいのか悩みました。でもやっていくうちにキャラクター達がかわいくなってきちゃって。やってて楽しい撮影でしたね。
ニコ:いまだに監督ってピンとこないですけど(笑)、何より出演者の演出が大変でした。ドラマを撮ってる気分でしたね。途中からコマ撮りで自分たちが動かしてるってことを忘れるくらい。3か月の撮影が終わったあと、MVの世界に戻って浦島太郎みたいに感じました(笑)。撮影は最後の1週間くらいで楽しくなってきたくらいなので、またやってみたいと思っています。

伝統の人形劇がアニメとご当地キャラの融合に。ちなみに「幸せになる」というまりもっこり伝説を証明するかのように、このDVDに関わったメンバーが続々結婚するなどハッピーな知らせが訪れたそう!いよいよその伝説を不動のものにしているまりもっこり。ぜひともDVDを見てHappyな春を迎えましょう!

■まりもっこり~ず
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限定版「超もっこり限定DVD-BOX」
通常版「通常もっこりDVD」
発売:2008年3月26日(水)
価格:限定版 \3,600(税込)、通常版 \2,100(税込)
品番: VTZF-5003(限定版)、VTBF-5053(通常版)
企画・製作・発売元:JVCエンタテインメント株式会社
販売元:ビクターエンタテインメント株式会社
(c)2008 KYOWA・JVC Entertainment Company, LTD.
5つの質問 一問一答
Question 1: 一番影響を受けたものを教えてください
ニコ:マンガ
上乗:学生のときに見たシュワンクマイエル作品
(でも自分の作品には全然反映されてません)
Question 2: この職に就いたきっかけは?
ニコ:絵を描くのが好きだったから
上乗:学生の頃人形アニメーションを撮り始めてやめられなくなりました。
Question 3: 一番好きな映画は何ですか?
ニコ:映画じゃないですが、ブルーノ・ボツェットの「ボレロ」(アニメーション)
上乗:「パット&マット」というチェコのアニメーションシリーズ
Question 4: 作業場のまわりに必ずおいているものベスト3は?
ニコ:お茶、好きなネコの写真、ケータイ電話
上乗:Podcast(アンタッチャブルのシカゴマンゴ、バナナマンのバナナムーンなど)、ハッピーターン(お菓子)、ピンセット
Question5: 今おもしろいもの/事って何ですか?
ニコ:ラジオ(Podcast)
上乗:グリーンカレーを作る。
■プロフィール
ニコグラフィックス:
泰永優子(やすなが・ゆうこ)と村井達雄(むらい・たつお)、いずれも1979年生まれのクリエイティブ・ユニット。仙台の大学在学時によりコンビを組み、地方CM、テレビ番組などの制作に携わり始める。2003年には活動拠点を東京に移し、アニメーション制作、CG制作、CDジャケットデザイン、MV などを幅広く手がける。MV代表作に岡野宏典「レモネード」、ハナレグミ「Black bird」、甲本ヒロト「真夏のストレート」、ミドリカワ書房「保健室の先生」など。

上乗直子:
1978年石川生まれ。大学在学中に人形アニメーションの制作を始め、卒業後、立体アニメーションを学ぶためチェコへ留学。現在都内にて、立体アニメーション作家として活動中。第13回夕張ファンタスティック映画祭ファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門グランプリ、第10回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門審査員推薦作品、第6回東京アニメアワード学生部門優秀賞、などを受賞。
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