日本の片隅からあるFlashアニメが日本中を笑いの渦に巻き込んだ。「た~か~の~つ~め~」と雄叫びをあげ活動の場をTVから映画へと変えた『秘密結社 鷹の爪』だ。先日の劇場公開も記憶に新しい。 それを一人で制作した漢こそ蛙男商会ことFROGMAN。
ホワイトスクリーンは、現在最新作「菅井君と家族石 THE MOVIE」が公開中のFROGMANを直撃!本日彼と対峙するのは同じく日本でも有数のコンテンツクリエイターでありアルツハイムの生みの親ウチヤマユウジ氏である。両氏は、日本のアニメーション制作とは一線を画くいわゆるヌーベルバーグ世代でもある。そんな彼らの制作秘話を新作制作の忙しい時期に包み隠さず答えてくれた。両氏の一言一句にに明日のアニメーションの神髄が隠されているはず。剋目して見よ!
■個人で世界に羽ばたくFROGMAN
ウチヤマ(以下U:)海外の映画祭でも『秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE ~総統は二度死ぬ~』が上映されると伺いました。おめでとうございます!
FROGMAN: 今まで映画祭と名のつく賞という賞に片っ端から落ちて、ようやく引っかかったのがこれなんですよ!2月末に開催されるニューヨーク国際インディペンデント映画祭です。反応が楽しみなんだけど…。キャラクターデザインが評価されているようですが、わかってんのかな…(笑)。
U: それは意外です。さて今回の「菅井君と家族石 THE MOVIE」なのですが、一番苦労した点はどこでしょう?
FROGMAN: 今劇場版にする事によって、果たして当時の馬鹿みたいなテンションを再現できるかっていうのが最大の課題でしたね。それはシナリオにも同じ事が言えますけど。「菅井君と家族石」って本当にアニメーションに関して何も知らなかった時の作品なんです。Flashもわかんないし、声の録音方法も知らず…。当初はPCに録音できることも知らずに、ビデオカメラに直接録音していました…。毎回環境が違って音のレベルやノイズがひどかったですね。最初のDVD版なんて改めると奇跡的にひどい作品ですよね。田園風景の描写も波線ひいて下緑、上青に塗ってるだけでオシマイですよ(笑)。でも多少アニメ― ションがわかるようになってきました。Flashアニメーションで食えるようになって3年目、どうしても上手くなってるんです。アシスタントの人もプロのアニメーターですし、うっかり上手に描いちゃうんですよ。パースもちゃんと測って…。前なんて指の長さも変だし、異様に大きかったり、バランスがバラバラだったりとか、そもそも背景全部写真だったりとか、そんなぐちゃぐちゃ加減が皆さんにウケてたのですが…。
U: 原点を呼び戻すために見直したりしましたか?
FROGMAN: DVDも見直し、イメージトレーニングしてみましたが、うちの谷プロデューサーが「FROGMANさん、何もその当時のテンションにこだわる必要ないんじゃないですか?今だからこそ出来る菅井君を作ればいいんじゃないですか?」って言われて「ああ、そうかな」って。後は素直に作品に取り組みました。
U: 日本ではFlashアニメーションっていうと2ちゃんねるとかで盛り上がっていた表現だったのですが、ここまで作品性、商業的にも広めた功績ってあると思うんですが、Adobe Flashは、ツールとしてどう思いますか?
FROGMAN: アニメのアの字も知らない30過ぎのおじさんが映像作品を実現させたのだから相当優秀なソフトだと思うんですよね。個人制作で映像を作るとなった時にFlashって写真やビデオファイルや色んなものを取り込んで、更にインタラクティブな表現も出来ると。蛙男商会の2D的なアプローチはソフトのバージョンで言うと10世代くらい前の機能しか使ってないんですよね(笑)。個人制作のツールとしては最強だと思います。さらに映像制作のみでなくメディアとしても最強のものだと思ってます。
■今明かされるFROGMANのルーツを落語に見た!
U: 制作側から見ると間髪いれずに進行していく会話劇でリズム感溢れていて、カットも絵でつなぐよりも会話にあわせていますよね。気をつけている事はどんなことですか?
FROGMAN: テンポやリズムは参考にしているのは落語ですね。最初の頃は落語に絵をつけたようなアニメ― ションだっていわれましたが、まさしくその通りなんです。落語は、噺家さんの言葉と表情だけで、BGMやSEも無く口三味線で演じるわけです。自分の作品はいわば落語にうちの雑な絵が付くことで、更に分かりやすくなる事だと思います。それもあって落語を意識して間を詰めて詰めてテンポよく制作しました。
U: 時事ネタから音楽、映画といろんなカルチャーさまざまな要素やネタが盛り込まれていますが一番影響受けたものってなんでしょうか?
FROGMAN: 映画です。人生の中でも映画の占める割合は大きいです。映画監督になりたくて、高校を卒業してから現場で泥まみれになって業界でやってきましたからね。僕は将来絶対モノを作る職業に付くんだと思っていましたから。父親が商売人だったことも理由の一つですが、会社勤めはしないぞと勝手に思っていました。個人的には兄弟が7人もいて大学進学も当たり前じゃなかったんですよね。大学進学は、博士になるとか政治家になるものだと思ってましたし(笑)。でも高校三年になって周りを見渡すとみんな大学に行くわけですよ!「えーお前も行くの?」みたいな感じで。大学進学って普通なんだと高校三年生で気づいたんです。一応進学校なのに(笑)。手に職をつけて映像の世界で映画監督になるぞ!と決意しちゃいました。
U: 絶対に映画監督になれると思いました?
FROGMAN: ええ。妙な事に自分はそうなるんだろうなって確信していました。そういう方向にいけば芽は出るって思ってたり。イメトレしたりしてね(笑)。
■日本のコンテンツビジネスに必要な気風のよさ
U: 日本のコンテンツビジネスに憤りを感じていると本で語ってらっしゃいましたが。
FROGMAN: 映像、アニメ業界って過酷ですよね。日本のジャパニメーションという世界に名だたるアニメーション。しかしその現場の人にはあまり還元されていない実情もあります。ただジャパニメーションという名のもとに過大評価して一人歩きするのは危険なんですよね。「コンテンツビジネスを盛り上げましょう」ということで税金を無駄な使い方するのは勘弁してほしいですね。まず日本のコンテンツビジネス何が問題になのかを見極めてほしい。
日本映画なんて、監督に人格権は認められているけれど、著作権が存在しないんですよ。監督の名前で進行し、創られて、売られてる訳なのに。だから今村昌平さんだってカンヌでパルム・ドール(カンヌ国際映画祭の最高賞)2回も取って世界の今村にも関わらず残ったのは借金だけという事実。おかしいですよね?日本のコンテンツビジネスはそういった偉大な監督を認められないほど文化レベルが低いのか?と。
U: 確かに海外の映画監督を観ていると正当に評価されて、そして成功した人はインディペンデント映画業界に貢献して、といういい循環がありますよね。
FROGMAN: 僕が落語好きなのはそういうところもあるんですよね。冠興行とかビジネスもやりますが根っこのところでは俺たち庶民の話芸ですって感じで貧乏でも快活に生きているんですよね。ああいう気っ風のよさがコンテンツビジネスにも必要なんですよね。
でなければフランスみたいにちゃんとわかっている人がちゃんとわかっているところにお金を落として、国として文化を育てる姿勢になっていけばいいですけどね。
U: さて、本編に戻りますが、ショ― ト作品と長編映画を作る際の大きな違いってなんでしょうか?
FROGMAN: 時間が膨大にかかるだけに集中力が続かないですよ!
CATMANの青池良輔も言っていたんですが、個人制作で一番大切なのが集中力。僕もまったく同感で、何もかも自分で進めないとプロジェクトは前進しませんよね。いかにやる気を維持していくか、というのが凄く大変です。共同作業だと自分がふっと気を緩めても、周りが進んでくれていたり、励ましてくれたりするんですけど。個人制作はこれがないので辛いですよね。集中力を維持する秘訣とかあれば教えてほしいです。締め切りが近づいてきて「あ!いけね」って位ですかね。
U: 映画の場合の制作期間はどれくらいなのですか?
FROGMAN: 絵を制作するプロダクションのみでいうと「秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE ~総統は二度死ぬ~」は二ヶ月くらいですね。「菅井君と家族石 THE MOVIE」も二ヶ月くらいですね。プリプロ段階のシナリオを入れれば「菅井君と家族石 THE MOVIE」の場合半年くらいです。 一番時間かけたいシナリオ制作なんですが、次回作「秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE II ~島根は鳥取の左側です(仮)~」はシナリオに一週間程度しかかけられないんです。「菅井君と家族石 THE MOVIE」は長くて、というのもなかなか書けなくて苦しんだ作品なんですよ。
FROGMAN: 僕ストックしないですよ。ネタ帳も持ってませんし。基本シナリオ執筆時に思いついて書くスタイルです。もちろんテーマや方向性はメモはしますが、盛り込むギャグは即興ですね。お笑い芸人のように言われた事に対して瞬時に返すような事を訓練していた方がいいんだろうなって。以前はネタ帳を持っていましたが、ストックしたネタってなかなか使う機会無いんですよね。
U: では、ネタに迷いが生じる時、人に見せてみたりするんですか?
FROGMAN: 自信ないものは見せる前から自信無いので見せないですね。むしろ人に見せるのは自信のあるものを見てもらって、さらに自信を高めたい時に見てもらう事が多いですね。かみさんに見せるときは相当自信作じゃないと見せないですね。見せてほめられたいんですよね(笑)。
U: プレスコや声のレコーディングをして絵をあてるフローになるかと思いますが、プレスコの時には台本はあるんですよね?またもの凄いキャラクターの量ですが、どのように自分の中で処理してるんですか?
FROGMAN: シナリオまずありきですね。読みながら、面白いなって思ったら書き換えます。昔は厳格にキャラクター別に声を変えるべきだと思っていました。映画関連の声優さん達とお会いして、「声はいくつくらい出るんですか?」と話したところ、皆さん3、4パターン位だそうです。僕も同じくなんですよね。結局、その役を演じることなんですよね。そう思った瞬間に気が楽になりました。「秘密結社 鷹の爪」シリーズに出てくる吉田くんの声と大家さんの声は非常に似てるんですが、吉田くんは絶対に「あんた達」なんて言いませんし「総統!総統!」って言い回しからまず始まります。声色そんなに変えなくてもいいんだなって。最近では、逆に声色が変わんなくって、「どっちが台詞言ってんのかわかんないですよっ」なんて指摘されたり(笑)。
U: 僕も同じような制作過程をとってるんですが、プレスコするときに結構セリフを噛むんですよ。
FROGMAN: 僕も凄い噛みますよ!実は僕音読がへたくそな人間なんですよ。壮絶に噛みながらやってますけどね。一発で原稿1枚読んだ事無いですよね。この前CSチャンネルでアテレコで声優とナレーションを担当したんですよ。自分以外の演出でセリフを読む機会は初体験しました。台本は膨大な量で、セリフ噛みまくりで、先方怒りまくり…。先方の方と名刺交換したら、裏側に耳なし芳一ばりに「ちゃんと練習してこい」といった内容が明記されてまして…。最後に「また来週来ますからよろしくお願いします。」と。悲しい事に6週間毎回怒られてました。しかし、経験してみて、原稿は、読み込めば良くなるんだなと今頃気づきましたね。最近は、自分の作品も練習後に声を入れるようになりましたね。今更遅いっつーの(笑)。
U: 今回はDVD上映と伺ったんですが、前作「秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE ~総統は二度死ぬ~」はプリントでしたね?Flashのマスターデータを35mmにプリントする際のフローを教えてください。
FROGMAN: 当時使っていたFlashがバージョン8.0だったんですが、そのバージョンでQuickTimeを書き出すと、ベクター化された凄く軽いQTになります。それを更に、Adobe Premiere Proの1.5(現在はCS3)で読み込み、オフラインの作業やSEをつける作業を行います。それが本編集でもあるんですが、その後、TIFの連番でHDに書き出しを行います。それをそのままテープは一切介在せずデータで東京現像所に持ち込むわけです。TIFを持ち込むのですが、データの容量だと1テラとかになってしまいます。
■FROGMANが見た成功の秘訣とは?
U: 今は、制作の環境も整っていて自主制作でアニメーションを作っている人も多いと思うんですが、FROGMANさんの経験上成功する秘訣とはなんでしょうか?
FROGMAN: もしメディアに取り上げられる事を成功とするならば、「なんじゃこりゃ」っていう話題性がある人を驚かせるモノを作るしかないですよね。YouTubeなどで作品発表を行い、PV数を稼ぐのが一番早道なのかなと思います。
U: 次のステップは何でしょうか?
FROGMAN: 次は安定して作品制作する事です。1回や2回ぐらい面白いものを世に送り出すことはたぶんできるんです誰でも。でもやっぱりプロである限り良い作品を安定供給していくべきなんですよね。
2ちゃんねる等Flashアニメで皆さん面白いものを沢山発表していたわけです。しかし一人の作家が安定供給できずに続かない場合の方が多いんです。つまりプロで求められているのはクオリティ維持ですね。よく無茶しないでと言われるんですが、これだけ数こなしまくれば自分の実力の底上げにも役立ってると思うんですよ。一種の千本ノックですね。プロですから(苦笑)。
― まさしく修行ですね(一同)!
自身を叱咤激励しながらも迷いの無い姿勢で怒涛のように作品を創作するFROGMAN氏の最新映画「菅井君と家族石 THE MOVIE」。ただいまTOHOシネマズららぽーと横浜、TOHOシネマズ川崎に加え関西地区のTOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズ二条にて公開中!そしてナント夏には「秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE II ~島根は鳥取の左側です(仮)~」も劇場に登場予定。はたして間に合うのか…?
兄たち(6人)
Question 2: この職に就いたきっかけは?
夢だったから
Question 3: 一番好きな映画は何ですか?
タクシードライバ―
Question 4: 作業場のまわりに必ずおいているものベスト3は?
コー ヒーの入ったポット、子供の写真、熊手
Question5: 今おもしろいもの/事って何ですか?
仮面ライダー電王
1971年、東京都出身。高校卒業後に「北の国から」をはじめとするテレビドラマや映画の制作現場に従事。映画ロケで訪れた島根県で運命の女性と出会い結婚&移住。近所の海産物業者でバイトをしながら極貧生活を満喫。2003年の妻の妊娠を機に、再び映像制作を始めようと一念発起する。監督・脚本・キャラクタ― デザイン・録音・FLASH・編集・声の出演などを一手にまかなうマルチ・クリエイタ― 。
1980年10月14日生まれ。作画から声優までを一貫してワンマンで行う、やりたい放題の末っ子アニメーター。「間」と「タイミング」にこだわり、映像における「笑い」を一人で追究し続ける。DVD「アルツハイム」がナウオンメディアより発売中。










