VJによる一億総放送局化計画!リアルタイム映像編集ソフト「LoiLo Scope」――杉山竜太郎氏(株式会社 LoiLo)に聞く
2010.03.16.Tue
Category : Special
杉山竜太郎氏(株式会社LoiLo 取締役COO) 1975年、静岡県生まれ。
LoiLo Scopeについて、そして自身について、ユーモアをまじえつつ、熱く語ってくれた。
表現において、アイディアが思いついてから形にするまでにかかる時間は、早ければ早いほどいい。しかし映像表現では、使用するツールの複雑さと、膨大なデータ量のために、アイディア実現までの速度が、ツールの操作や制限によって失われる事が多い。
キーフレーム操作やエフェクト処理の複雑さ、レンダリング…。そうした手続きに時間をかける事で、せっかく素晴らしいと思ったアイディアの鮮度が失われる事もあるのではないだろうか。
そうしたツール側の制約から解放し、ペンのように自由で直観的な映像表現を可能にした映像編集ソフトが、LoiLo Scope(ロイロ スコープ)だ。
ロイロの名前の由来は蝋色から。漆器などの仕上げに使われる透明色にインスパイアされた。
■すべてが直観的な「LoiLo Scope」
LoiLo Scopeは2008年の発表以来、GPU(グラフィック・プロセシング・ユニット)を使用した画期的な映像編集ソフトとして、ニューヨーク・タイムズを始め
国内外の様々なメディアで話題を集め、ユーザーも世界レベルで増え続けている。
まず注目したいのは、ゲームを操作するように楽しく編集できるユーザー・インターフェース。ユーザーはすべての確認・操作を、ズームイン・アウトが可能な一つの平面の上で行う事ができるため、映像編集特有の複雑さは全く感じない。また、なによりレンダリングが不要なため、編集やエフェクトを思いつくままに自由に次々と実行する事ができる。さらに、イラスト・アニメーション作成機能や、読み込み・書き出しの対応動画フォーマットの幅広さ、YouTubeへのアップロード機能、GPUによる高速エンコーディングなど、特長を挙げればきりがない。この夢のようなリアルタイム映像編集ソフト、LoiLo Scopeの生みの親、杉山竜太郎氏(株式会社LoiLo)に話を聞いてみた。
LoiLo Scopeのインターフェイス。マルチタッチでますます直感的に操作できる。
ニコニコ動画アップロードに最適なファイルも簡単に書出しできる。
■LoiLo Scopeの生みの親、杉山竜太郎
少年時代から映像への関心が高く、高校時代に放送部で制作したビデオ・ドキュメンタリーでNHK放送コンクール ドキュメンタリー部門 全国二位という経歴を持つ杉山氏。また、ニンテンドーのゲーム・ウォッチ時代から、根っからのゲーマーでもあり、大学時代にはゲーム熱が高じて、ハイエンドのNVIDIAのGPUを搭載した自作PCでゲームを楽しんでいたという。日大芸術学部在学中は、アニメ、CGを中心に学び、制作した作品を発表するために弟の杉山浩二氏や友人らと、VJユニットMICRONを結成し活動を始める。大学卒業後にゲーム業界へ進む事になるきっかけになったのは、このVJの活動だった。セガ(当時)の
水口哲也氏が、VJをやっていた杉山氏に声をかけてくれたのだ。
*水口哲也…ゲームクリエイター・プロデューサー。現Q ENTERTAINMENT代表取締役。
代表作は、セガ「セガラリーチャンピオンシップ」「スペースチャンネル5」「REZ」「ルミネス」など。また音楽プロデューサーとしての顔も持つ。
■ゲーム・デザイナー/映像パフォーマー
セガでは、ゲーム・デザイナーとして映像編集や3D CG、エフェクトの制作を行う。
杉山氏が関わったのは「スペースチャンネル5」や「REZ(レズ)」など8作品だ。
驚くのは、そんな激務の傍ら、週末の夜はVJとしても活動を続けていた事だ。浩二氏が制作したVJソフト「ecou回向」の評判とともに、MICRONの活動もさらに拡がり、高木完氏やDJ KENTAROといったシーンを代表するDJ、書道家の武田双雲氏とも共演を果たす。
また、プロジェクトの合間の長期休暇になると、VJ機材を携えて単身で海外に赴いた。
フランスではルイ十六世の末裔が主催するパーティー(!)やパリコレでの映像パフォーマンス。また、イギリスでは講師として「VJの実技レクチャー」まで行ったという。
イギリス、ボストンカレッジでの講師をしている杉山氏。
■VJソフト「ecou回向」
VJソフトecou回向は、杉山竜太郎氏の強い要望により、現在は株式会社LoiLoのCEOであり、プログラマーの弟、浩二氏によって開発された。竜太郎氏が当時の様子を語る。
「はじめは既存のVJソフトを使っていたんですが、出力が320×240ドットなのであまり画質が良くなかったんです。それで、当時学生だった浩二に相談したんですよ。そうしたら、一晩で作ってくれました(笑)」
このecou回向、当時のシーンに相当なインパクトを与えていたようだが、具体的にどのような事が可能だったのだろうか。さらに竜太郎氏に聞いた。
「MICRONのパフォーマンスが、単純に自分たちで作った映像を見せる事から、ビデオカメラのライブ映像をミックスするようなものに変わっていたんですよ。例えばDJ KENTAROさんのプレイの動きに残像のエフェクトをかけたりとか。武田双雲さんのパフォーマンスだったら、筆の動きに合わせて刀で切ったような跡を残したりとか。そうしたエフェクトをリアルタイムで出せるVJソフトはそれまでなかったんですが、ecou回向はGPUの演算処理能力を使っていたのでそれが可能だったんです」
ecou回向が開発されたのが、1999年。この時点でいち早くGPUの将来性と可能性に目をつけていたというのは、驚きだ。そして、ecouの成功により、杉山氏はさらに先の自分の道を模索するようになる。
cou回向で演算処理を行うGPU(グラフィック・プロセシング・ユニット)。ゲーム制作の現場では、日常的にGPUを描画以外の演算処理に使用していた。NVIDIA GPUは超並列汎用プロセッサ。一度に大量のデータを処理できる。
■株式会社LoiLo設立へ
ある月曜日の朝の事だ。その週末は、通常土曜日だけのVJのイベントが2日連続で続き、直前までecou回向を触っていてそのまま仕事場へ出勤。After Effectsを立ち上げて作業を開始するが何かが違う。
「なんで、これはリアルタイムで動かないんだろう…」
2006年、杉山竜太郎氏は意を決し、ecou回向をベースにした「一億総放送局化を実現するノンレンダリング映像ソフト開発」の企画書をIPA(経済産業省 情報処理推進機構)の未踏事業に応募する。同年12月には見事採択。その資金で翌2007年4月、株式会社LoiLoを設立。続いて10月には、同じく未踏事業から採択を受けた浩二氏もナムコを辞め、本格的にLoiLo Scopeの開発に乗り出す。特に難しかったのは、インターフェースを「どこまでを直観的にした方がいいのか?」そして「どこまで既存のものを踏襲した方がいいのか?」という点だった。
例えば、従来の映像編集ソフトにも見られるタイムライン。その代わりとして「平面上に並べた複数のサムネイルを見る視点が、斜めにずれて立体的に認識され、奥行きで時系列を表現するインターフェース」とか「素材を並べたい順に平面に置き、鉛筆のようなラインで時系列の方向に線を引くインターフェース」といったように、「面白い」アイディアは出たものの、ユーザーが戸惑う事を想定し、結局、既存のタイムラインを採用する事にした。こうした試行錯誤の繰り返しの末、2008年8月、直観的なリアルタイム映像編集ソフトLoiLo Scopeが生まれたのである。杉山氏がある高齢者ユーザーの話をしてくれた。
「公民館で動画編集を教えている高齢者ユーザーの方で、それまでは既存のノンリニア編集ソフトを使って教えていたが、みんな次の授業までに忘れてしまう。ところがLoiLo Scopeを入れてみたら状況が変わって、1個のアクションを教えて次を教えようとしたら、既に次のアクションを直感的に操作していたっていうんですよ。このソフトを作った事で、とても感謝されて嬉しかったですね」
それまで映像編集とは無縁だったような一般ユーザーにも、映像制作の楽しさを教えてくれるLoiLo Scope。その開発コンセプトでもあった「一億総放送局化」が実現される日も近いのかもしれない。
株式会社LoiLoオフィス。フロアにはゴザ!とてもアットホームな雰囲気。
■進化し続けるLoiLo Scope、そしてこれから
昨年の10月には、Windows 7 マルチタッチに対応した「LoiLo Touch」を発表。
画面を直接触って編集する事で、LoiLo Scopeの直観的な操作性をさらに味わう事ができるようになるだろう。そして、今年の2月には、NHKエデュケーショナル監修で、小中学校等の教育機関向けに、40台のPCを先生が一括管理できる機能を付加した「ロイロ エデュケーション」を発表した。LoiLo Scopeは進化し続けている。
更に杉山氏は、最近の新しいユーザーの動向に注目しているようだ。
「オンラインゲームを楽しんでいるゲーマー達の話なんですけど、彼らは自分たちのゲームをキャプチャして、LoiLo Scopeで編集したものを、動画投稿サイトにどんどんアップしているそうなんです。こういう風に、コミュニケーションツールの一つとなっているのは嬉しいです。これからは、こうしたWebサービスと連携した動きというのをLoiLoでもやっていきたいですね」
映像クリエイターであるあなたも、そうでないあなたも、LoiLo Scope体験版にトライしてみよう!映像づくりの楽しさがギッシリつまっています!!
■読者様限定、LoiLo Scopeを2,000円引きに!
今回LoiLo Scopeさんより、なんとホワイトスクリーン割引を限定100名様にご提供決定!本日より1カ月、8,800円が6,800円の2,000円引きで購入できる。方法は、loilo.tvのショッピングカートにて、コード「13-081b37」を入れて頂ければOK。詳細は
Webサイトにて。
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ホワイトスクリーンでは、NVIDIA特製パーカー(XLサイズ)を読者1名様にプレゼント!応募ご希望の方は、
コンタクトフォームより希望プレゼント名と名前・住所・電話番号・メールアドレスを明記してどしどしご応募下さい。締切は2010年3月25日(木)とさせて頂きます。
取材・文:長谷川聡志(映像ディレクター/ライター)
写真:土赤幸生
5つの質問 一問一答
Question 1: 影響を受けたものを教えてください
旅
Question 2: この職に就いたきっかけは?
IPAの未踏事業で採択された事
Question 3: 一番好きな映画は何ですか?
アメリ
Question 4: 作業場のまわりに必ず置いているものベスト3は?
鳥地蔵(友人作の人形)、ビデオカメラ、ドラゴンボール カリン塔のペン
Question5: 今おもしろいもの/事って何ですか?
クロール