I♥INTERNET!アナーキーなアーティスト、ラファエル・ローゼンダール
2010.02.10.Wed
Category : Features / Interview
Rafael Rozendaal(ラファエル・ローゼンダール)氏
Rafael Rozendaal(ラファエル・ローゼンダール)は、その作品のほとんどがインターネット上に存在する現代アーティスト。唇の裏に"INTERNET"とタトゥーを入れてしまう程にインターネットを愛し、またインターネット上でも高いリスペクトを受けている。彼は自分の作品をドメインごと販売し、"常にインターネットでアクセスできる状態にすること"。つまり、誰かに購入された後も、常に世界中のどこからでも24時間アクセス出来るのだ。アートの所有性と公共性を問い続け、決して既成概念には収まらない、"アナーキーなアーティスト"と呼ばれるローゼンダール氏。ただいま開催中の個展「
I’m good」会場であるTakuro Someya Contemporary Artにて話を聞いた。
■ドローイングそのものがアイデアになる
――まずはアーティストになったきっかけから教えてください。
小さい頃は大工になりたくて、次にインダストリアル・デザイナーになりたいと思った。理由は覚えてない(笑)。ずっと絵を描くことが好きで、ポスターやドローイング、タイポグラフィを描き続けるうちに、アートスクールに進学して、アーティストとしての道を歩むことになった。次第にアニメーションを創ることが多くなったけど、ドローイングはいつも僕のアートの中心にある。ドローイングそのものが作品のアイデアになるんだ。
――ドローイングとアニメーション作品の制作にあたってアプローチの違いはありますか?
ドローイングは、ネットからダウンロードしたイメージを、ライトボックスでトレースするだけだからすごく簡単(笑)。完成したドローイングが作品のアイデアのインスピレーションになることが多い。一方アニメーションにはたくさんのアイデアが必要だし、プログラマたちと共同で作業を進めなければならない。
――日本ではインターネットからダウンロードしたイメージのトレースが問題になることもあります。
僕がやっているのは、間違いなく泥棒だよ(笑)。インターネットは物を見る方法を完全に変えてしまったんだ。僕が好きなのは、たくさんの人が面白い画像をフォルダに入れて公開していて、それを眺めるという考え方。無意識で選ぶものを意識している。もちろんコマーシャル作品での盗用は裁判が絡んだり、金銭関係が発生するし神経質な問題だと思うけどね。
――今回の個展ではFlashアニメーション作品と、そのインスパイア源となったドローイングを合わせた展示を行っていますね。
日本の伝統的なドローイングは、薄い線や平面的な色彩など、ヨーロッパとは全く違うものだ。それに対し、日本のビデオゲームやアニメーションは、スクリーンの色のトランジションがすごく強いところに興味を惹かれた。それで日本ではドローイングとアニメーションを一緒に展示することにしたんだ。浮世絵なんかもそうだけど、日本のビジュアル・カルチャーはすべて"ライン(線)"が根源にある。西欧ではモネみたいに、"プレーン(平面)"が根源になっているから、そこがまったく違う考え方だと思う。
――DVDといったパッケージでアニメーションを販売することは考えていますか?
Flashはベクター形式でピクセルじゃないから、アニメーションを綺麗に表現することができる。ビデオにするとどうしても画のクオリティが落ちてしまうから、DVDでの上映は行わないことにしているんだ。
■独特なアイデア、その源泉とは
――あなたの作品はとてもシンプルで独特ですよね。自分のアイデア・作品が受けるという確信がありますか?
他の人がどんな作品を好きなのか、それは全然わからない。もし100万個のアイデアがあったら、そのうち良いものは10個くらいだろう。実際は年に10個くらいのアイデアに絞って、全て作ってるような感じ。一番クールなのは一番バカみたいな作品だと思っている。
――作品のインスピレーションが浮かぶのはどんな時ですか?
ベッドに入ってアニメを見ている時とか、一人で静かな環境にいて、やることがなくて退屈な時とか、いろいろなシチュエーションでアイデアが浮かぶよ。お気に入りのアニメーションはディズニー作品や「
ワイリー・コヨーテ vs ロード・ランナー
」みたいに、アニメーションの動きがいいもの。ストーリーはあまり重要じゃないんだ。でも一番のきっかけは、"やらなくちゃいけない"というプレッシャーだね。
――プログラム部分はFlashクリエイターと組んで仕事をする場合が多いそうですが、どのように作品制作を進めるのですか?
僕のスケッチは半分手描きのドローイングで、もう半分はコンピューターで仕上げるんだ。ドローイングがプログラマに説明するストーリーボードの役割を果たしているんだよ。ほとんどの作品はすごくシンプルでミニマルなものだし、だいたい15時間くらいの時間で制作するようにしている。もし何十時間もかけて"やっぱりこのアイデアはダメだった"なんて言えないからね。たとえばひたすら色の付いたページをめくるだけの作品「colorflip.com」は、雑誌に載っていたコードを利用してプログラマに制作してもらった。
■ローリングストーンズが3枚しかCDを作らない、なんてありえないでしょ。
――あなたがインターネットで作品を発表して、販売後も公開を続ける理由は?
例えば音楽で考えてみると、ローリングストーンズが3枚しかCDを作らない、なんてありえないだろう?DVDを3本だけ制作したら限られた人しか見られないけれど、インターネット上なら世界中の誰もが見ることができる。形ある美術品はコレクターに買われたが最後、仕舞い込まれて、10年に一度しか展示されない。そんなアート作品には興味がないんだ。ドメインを販売するメリットもあって、セカンダリーマーケットに転売されたとしても、贋作が生まれない。販売したドメインの管理はコレクター自身が行ったり、年次の管理費を払ってもらって僕たちが管理することもあるよ。
――根本的な質問ですが、あなたにとってアートとは何ですか?
既知のモチーフ("牛のように見える牛っぽいもの"など)を描く絵画、ドローイング、写真とは別に、ビデオゲームなどの"インタラクティブ"な表現では、"今車に見えているものはピクセルで出来たものだ"という考え方がある。僕が表現として興味があるのは、手の単純なアニメーションとか、ものすごくシンプルでインタラクティブな表現。それは手を撮影した映像とはまったく違う意味を持つ。これが僕のアートのセオリーだよ。
僕は自分のために作品を作っているけど、多くのアーティストがキュレーターに依頼された作品を作っている。まるで"キュレーター用イラストレーター"みたいだ。例えばミケランジェロがシスティナ礼拝堂を描いたのはアートというよりも仕事だった。「ちょっとキリストのヒゲを増やしてくれない?あと最近若者にカトリックが人気ないから、聴衆に若い人を増やしてほしい」なんて言われるような感じでね。他には、アートとはクオリティであって定義ではないという説もある。偉大なもの、それがアートだということだ。そうすると"僕はアーティストです"と言うのが"僕は偉大です"ということになってしまうけど(笑)。
――日本のアーティストでお気に入りの作家はいますか?
荒木経惟
は大好きだ。
加山又造
の作品も最近すごく気に入っている。あとは
草間彌生
かな。
■インターネットは僕にとってリアルな景色、世界そのもの
――あなたは、インターネットが単に情報を探す窓ではなくて、景色や世界そのものになると言っていますね。
僕は既にそれが始まっていると思う。アメリカの有名な発明家、RAY KURZWEIL(レイ・カーツウェル)による"シンギュラリティー"(2045年までに技術革新が起きて人間が不死身になるという説)もその一つ。インターネットはウィキペディアを見るだけのものじゃなくなっている。実際、僕は本物の山よりも、インターネットの中の山のイメージの前でたくさんの時間を過ごしている。だから僕にとってはインターネットがリアルな景色なんだ。それは僕を取り囲む世界だし、たくさんのものを見せてくれるものだから。いつかオンラインでインターネットと繋がって、同じ夢を見ることができたらいいなと思っているよ。
そういえば、僕はGoogleが地球征服を狙う宇宙人だって仮説を立てているんだ。彼らは最初ゆっくり情報を集めて、次第にいろいろなサービスを無料で提供しだす。無料のGoogleフード、Googleスクール、Googleカー…そして平和的なやり方で世界を征服していくんだ。コンピュータを使うようになって人々はバカになったと言われているけど、昔と全然変わらないんじゃないかな。昔の人が賢かったというのは幻想だと思う。
――そういえば、忙しいのは嫌いだと名言されてましたね?
他人から「これをやって」と指示されるのがあまり好きじゃない。"忙しい"というのは、自分がやりたいと思わない時にやらされることだ。自分がやりたいことをやりたい時にやれば、"忙しい"とは言わないだろうから。
――普段の生活で、"恐れ"を感じることはありますか?
それはいつもあるよ。十分な働きをしていないんじゃないか、とか、これは充分に良いアイデアではないんじゃないか?とか。僕は家を持つのも好きじゃない。もし家があったら「カーテンとカウチの組み合わせに始終頭と時間を使わなくちゃいけない。だから、ホテル住まいが好きなんだ。僕の作品はパソコンの中にあるから荷物も少ないしね。
"完璧な場所を求めて、都市から都市へ渡り歩いている"というローゼンダール氏。2009年には3ヶ月日本に滞在し、その他にもメキシコ、アメリカ、ベルリン、パリなど各都市を旅しては制作を続けている。彼の自由な発想のアート作品は彼自身の生き方そのものかもしれない。次はどんな場所から届けてくれるだろうか?個展「
I’m good」は2010年2月20日(土)まで。
Rafael Rozendaal(ラファエル・ローゼンダール)プロフィール:1980年オランダ生まれ。作品のほとんどをWEB上で展開しており、自らの制作プロセスをプログラマーやペインターと共有し完成系へと持ち込む。かつてインターネット・アートのムーブメント"Neen"に所属していた(現在活動休止中)。ブラジルの大統領だった曽祖父、画家の父、ファッション・ジャーナリストの母という風変わりなバックグラウンドを持つ。父は嚴格なカルヴィン派の農夫の家の生まれで、15人の兄弟がおり、1日に8回神への祈りを捧げていた。しかしある日信仰を捨て、アーティストとして活動。ブラジルを訪ねた際に出会った母と結婚したという。公式Webサイトには、アンディ・ウォーホールなど、ローゼンダール氏自身によるフェイク・インタビューが掲載されている。
Takuro Someya Contemporary Art:東京都・築地のギャラリー。
「あらゆるフォーミュラから自由なのが美術であり、人々の価値観を先導するインフラ的な振る舞いを、今後より深めていくと考えています。取り扱う作家にはそうした特性が高く、その意識をアクティブで柔軟に表すことのできるスケール感を求めています。そしてギャラリーがそのプラットフォームとなり、イノベー ションの機会を見出すことを目指します」(ギャラリーより)
5つの質問 一問一答
Question 1: 影響を受けたものを教えてください
愛
Question 2: この職に就いたきっかけは?
アーティストになるために生まれた
Question 3: 一番好きな映画は何ですか?
荒野のストレンジャー
Question 4: 作業場のまわりに必ず置いているものベスト3は?
ノートパソコン、マウス、スピーカー
Question5: 今おもしろいもの/事って何ですか?
日本食