アレックス・ローマン監督、世界を驚かせたフォトリアルなCGアニメ「The Third & The Seventh」
2010.01.25.Mon
Category : WS Pickup
"The Third & The Seventh" dir: Alex Roman
2009年末、ネット上で話題騒然となったショートフィルム「The Third & The Seventh」。建築家ルイス・カーンによる「バングラデシュ国会議事堂」や「フィリップ・エクスター・アカデミー図書館」など、名作建築をモチーフにした映像詩だ。なんど見ても信じられないが、この映像、実は全てCG。監督はスペイン・マドリッド在住、映像作家Alex Roman(アレックス・ローマン)ことJorge Seva(ホルヘ・セバ)。会社を辞め、ニートになった彼が一人でコツコツと創り上げた力作だ。
ローマン監督は1979年生まれ。学生時代は絵画やドローイングなど手描きのアートを学んでいたが、友人の家で見た映画「トイ・ストーリー」の画像が彼の人生を変えた。1994年からMS-DOS用の386 DXと3D StudioにてCG制作を開始。1998年からスペインのVFXスタジオで3Dアーティストとして働き始めた。その後建築関係の会社を経て退職し、マドリッドに移住したことをきっかけに個人作品の制作に集中した。
"Exeter Shot -- Making Of"
本プロジェクトのスタートは4年前。建築関係の会社で、写真家によって全く違う建築写真の美学を持っていることに衝撃を受け、本作品のアイデアが生まれたという。ほとんど全てのモデリングとアニメーションを制作し、音楽までも手掛けている。主に3ds Maxでモデリングとアニメーションを行い、「V-Ray」でレンダリングし、Photoshopでテクスチャを加え、After Effectsでポストプロダクションを行った。15分にわたるメイキング映像「Exeter Shot -- Making Of」では「Google Earth 3Dギャラリー」から建築のモデルデータをダウンロードし、編集している過程を見ることができる。ちなみに制作において最も難しかったのは「ミルウォーキー美術館」のシーン。Web上に情報がほとんどなく、リサーチだけで2週間かかったそうだ。
ローマン監督の多彩ぶりはとどまるところを知らず、何百本もの針葉樹をモデリングするために自作のシステムを開発。当初は「OnyxTREE」などの既存のソフトを使用するところだが、ローマン監督オリジナルのソフトウェアにより異なる方向の風に影響される木を創ることを可能にした。制作の過程ではモデリングだけが監督の好きなプロセスで、他はすべて大変だと語る。
ローマン監督の制作は、小さなスケッチから始まる。本物と見間違うほどリアルな作風の秘密は、ローマン監督が写真や映画、広告などをインスピレーションの源としていて、本物のイメージを変えることを好まないからだそう。
あまりに整然としていたり均一化しすぎる傾向がある欧米文化に警鐘を鳴らし、谷崎潤一郎の「陰影礼賛」を賞賛する一面もあるローマン監督。次のプロジェクトは夥しい量のパーティクルを使った身体シミュレーションを予定しているそうだ。