音に生命が宿るMVとは?土屋貴史監督 SJQ「Pico」
2009.11.12.Thu
Category : WS Pickup
近頃海外メディアを賑わせる日本発のミュージック・ビデオ(MV)、SJQ「Pico」をご紹介。実験的で断片的なエレクトロニック・ジャズのサウンドに、カラフルなオブジェがぴったりとシンクロした作品だ。アブストラクトなオブジェが音に合わせて飛び跳ねたり伸び縮みするのが楽しい。
本MVの監督は、東京で活動する映像作家・土屋貴史(takcom™)氏。土屋氏は1979年生まれ、大学在学中の1999年頃からデザイナーやディレクター映像制作に携わる映像制作をスタート。現在はTV局のモーションID制作などを手がけるほか、モーショングラフィック・ツール「Quartz Composer」とVJソフト「Modul8」を駆使したビジュアル・ライブも精力的に行っている。
もともとSJQは、即興音楽の音を集めてコンピューター上で再構成する「ライブエレクトロニクス」という手法を用いるバンド。「Pico」には「音に生命を与え、それらが有機的に反応していくことで音楽を作る」というテーマがあり、土屋氏はそれを動きや形態の面で補強することによって視覚化することを試みた。果たしてどのように制作されたのだろうか?
「基本的には音を元に映像をシンクロさせて動かしています。まず、SJQ魚住氏に、曲の全ての音源を微細なノイズに至るまでパラに分解したトラック(パラ音源)を発注し、それを3D上でラフにプリミティブなオブジェクトに当てはめました。パラ音源は、出力タイミングと波形や周波数の中でしきい値を分けることによって更に分析しています。そこから得られたパラメーターの調節に少しづつスクリプトと手付けによるアニメーションを加え、トライ&エラーを繰り返すことによって、個々のオブジェクトのアニメーションが気持ちよいバランスを追求して行きました」(土屋氏)
制作期間は約4週間。ツールはCinema4dとAfter Effectsを使用。シンプルさと複雑さを同時に感じさせるような表層の追求にもこだわった。
「コンポジットに関しては、After effects上で一部のアニメーションタイミングを更にいじったり、ノイズなどを加えています。これらはオーディオの出力タイミングと波形、周波数の分析に加え、エクスプレッションと手付けアニメーションの組み合わせによって行っています」(土屋氏)
苦労した点は、予算が少なかったためにノートブック一台のみで制作せざるを得ないなどの制作環境。また、管理する音源が多いためにシーンデータが膨大になってしまった。
「音楽の背景や出所、メッセージ性や意味性よりも、音のリズムや音の配置、関係性、グルーブをもっと純粋に楽しむこと、それを映像を媒介することによって実現できないかな、という想いを込めています」と語る土屋氏。本MVには、実験映像の大家ノーマン・マクラレンやコンピューター・グラフィックスの元祖ホイットニー兄弟といったオールドスクールへのオマージュが込められているという。他にもausらミュージシャンとのコラボレーション映像などは土屋氏の
公式Webサイトにて視聴することができる。