ポリゴン・ピクチュアズが語る映画「ホッタラケの島~遥と魔法の鏡~」
2009.10.08.Thu
Category : Movie of Month

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ホッタラケの島~遥と魔法の鏡~」 あらすじ:遥は、普通の高校生。幼い頃母親を亡くし、父親に育てられた凛とした少女です。その遥が、武蔵野にある神社を訪れたときから物語が始まります。子供の頃遊んでいた神社に行くと、捨てられたゴム式のおもちゃの飛行機を運んでいる“きつね”を目撃します。きつねを追っていくうちに、森の中に迷い込んだ遥。不思議な水たまりを見つけ、その生暖かい水に手を入れると…一瞬にして不思議な世界に吸い込まれ、「ホッタラケの島」に入ってしまいます。そこは人間たちが「ほったらかしにした=ホッタラケにした:ものでできた島でした。
あくなき3DCG表現の追及を続けるビジュアルスタジオ、ポリゴン・ピクチュアズ。彼らが映画「スカイ・クロラ The Sky Crawlers」に続いてプロダクション I.Gとタッグを組んだ映画「ホッタラケの島~遥と魔法の鏡~」がただいま劇場公開中だ。フジテレビ開局50周年記念作品ということでファミリー向けと銘打っているが、これまでの日本製3DCG映画への先入観を覆されるケタ違いの映像を見せてくれる。魅力的な表情のキャラクター、奥行きのある幻想的な背景に加えて3Dならではのスピード感溢れる演出に目を奪われるはず。間違いなく日本のCG界の歴史を変えるマイルストーンになる作品だ。果たして今、日本で3DCG映画を作るということはどういう意味を持つのか?ポリゴン・ピクチュアズの代表取締役社長塩田周三氏とプロデューサー牧野治康氏に聞いた。

■過密スケジュール!多摩霊園IGFXに合宿状態!
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左:塩田周三氏 右:牧野治康氏
――この作品は足掛け4年の年月がかけられているそうですね。ポリゴン・ピクチュアズさんが参加するきっかけは?
牧野:約3年の月日をかけて企画、脚本、絵コンテ、キャラクターデザインなどを練った作品で、公開まで丸1年もない制作期間で僕たちが関わって制作することになりました。今回携わったポリゴン・ピクチュアズのスタッフは、総数100名強になります。エンドロールでは各スタッフの所属をポリゴンと明記せず、プロダクションI.Gさんの3Dスタジオ「IGFX」との混成部隊としてクレジットされてます。僕はライン・プロデューサーを担当しました。実際に画作りに取り掛かったのは昨年の夏の終わり頃からですから丸1年もないスケジュールで完成させたことになります。

塩田:I.Gさんのアニメーションの表現力と弊社の得意とするCGアニメのいい融合が結果として出来たと思います。期間と予算を考えるとギネスものですよ。

牧野:当初は物量と時間を考えると、ほぼ不可能に見えました。社内でもそこまで責任負っちゃって大丈夫?というムードが蔓延していたんです。が、実際にキャラクターデザインと背景のスケッチをIGFXさんに見せてもらったところ、非常に魅力的だったんです。このまま静観してしまっていいのだろうか?と思ったんです。また、「ファイナル・ファンタジー」以降、フルCGでの映画製作というのはなかなか気運が上がらなくって、セルに似せたトゥーン・シェイディングのアニメが主流になりつつある中で、モロに3Dのキャラクターを芝居させ、多くの人に見てもらえる作品創りに取り組めるというのは貴重な機会でした。CGアニメの未来の為にもこれを黙って見過ごすことはできないと思ったんです。やるからには我々が完成させて見せようと。

――具体的にクオリティも追求しながらタイトな制作期間で仕上げる為にどのような手段をとられたのでしょうか?
牧野:いろんな方策を考えましたね。「ホッタラケの島」の外の世界の背景、全体の3割強くらいを背景美術のスタジオ美峰さんに2Dで描いてもらいました。全体の3割程度のカットを手で描いてもらう、マットペインティングで乗り切ったんです。残り7割のCG背景においても、セットの質感や素材を美峰さんとコラボレーションしたんです。

――2Dと3Dの協業作業は「スカイ・クロラ The Sky Crawlers」で培った物なのでしょうか?
牧野:もちろんCG監督の長崎高士が「スカイ・クロラ The Sky Crawlers」から関わっているので、2D現場の言語や制作フローも理解しています。ただ今回はもう一歩踏み込んでます。通常だと2D側が創ったフォーマットに沿って3Dを起こしていくのですが、今回はこちらで起こしたものを2Dに制作していただいたりしたんです。すると2D側も更にクオリティを追求してくる。今までは"見合った見合った"状態だったのが、今作ではガッツリと取り組めたと思います。「イノセンス」「スカイ・クロラ The Sky Crawlers」と、これまでのI.Gさんとのお仕事があってこその到達点です。

■多摩霊園IGFXに全員集合!
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© 2009 フジテレビジョン/Production I.G/電通/ポニーキャニオン
牧野:僕たちポリゴンのアニメーションチームは半年くらい多摩霊園のIGFXさんのアニメーターさんと一緒に同じフロアーで作業していました。ポリゴンのアニメーション・スタッフもIGFXさんに集結し、演出の塩谷直義さんと、CG監督の長崎をはじめ多くのメインスタッフたちと、毎日ああでもないこうでもないとやっていました。塩谷さんが制作後にアニメーターを一箇所に集める事によってクオリティの向上につながったとおっしゃってましたが、結局、コミュニケーションなんですよね。僕らは塩谷さんという力のある方と現場がコミュニケーションすることが重要だと思ったんです。メインスタッフ同士のコミュニケーションが希薄だと、どうしても衝突がおきてしまいがちです。スケジュールにも影響してきます。それが今回毎日コミュニケーションできた。しかも多摩霊園って周りになんにもないから仕事するしかない(笑)。

塩田:お互いの善いところを吸収し合って、それを消化し、次のレベルまでもっていくということが画をみても出来たと思います。こういったプロダクションの場合、海外の優秀なスタッフらとアニメーションを制作していく事も一般的にあるのですが、なんとなく消化しきってない感がどうしてもあるんです。この「ホッタラケの島」で起きた消化具合は、今までの物と似て非なる物ではないでしょうか。

――限られた製作期間の中、モチベーションを高めて成功させた秘訣は何でしょうか?
塩田:もちろん細かいところでは文句もでたりはしますけど、やっぱり作品がやりがいのある物だったんですよね。正気ではいられない物量とスケジュールでしたから。新しい物を生み出しているという実感があったんだと思います。これと同じように、イメージボードからスタートして3Dで作り上げるプロセスって、ピクサーなどのスタジオがやっていることですよね。だからあんなに分厚いアートブックがあるわけです。3Dの映画の世界は若いので、そこまで成熟したプリプロの人材がいない。だから画力や色に造詣の深い2Dの世界の人たちの知恵を初めて拝借できたのが収穫でした。お互いのよいところを吸収して消化することはよくできたと思います。

■キャラクターについて
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© 2009 フジテレビジョン/Production I.G/電通/ポニーキャニオン
――主人公名の遥と、声優を務められた綾瀬はるかさんは意図的なんですか?
牧野:この映画は各所で偶然の一致のようなものが相次いで、綾瀬さんもそうだったそうですが、ここぞというときに適任者と巡り会い、困難な局面を乗り越えてきたんです。幸せな偶然の一致ですね。実は映画公開日が8月22日で、プロダクションI.Gの石川社長から長崎にCG監督の打診があったのもちょうど一年前の8月22日だったんです。

――主人公の遥とテオがとても魅力に溢れていて、キャラクターの演出においてどういうアプローチをされたんでしょうか?
塩田:遥のキャラクターはフジテレビさん、IGFXさんが一番こだわったところですね。

牧野:遥って女子高生なので、女子高生に見えないと負けだというのが最初から議論されてました。アニメーションをリードするジーニーズの渡辺昭仁さんが非常に苦労したところでもあるんです。彼が結局とった方法は女子高生を観察する事です。アニメーターの視点で見ていると、女子高生の歩き方、重心や軸などモーションの癖が見えてきたそうです。それらを取り込んだところ、遥に命が吹き込まれた瞬間があったんです。また、声優の綾瀬はるかさんも非常に協力的で、多摩霊園のIGFXさんに併設のスタジオで数シーンを演じてもらって動画をリファレンスとして取り入れました。その一つが渡り廊下のシーンでロボットと雑魚キャラに追われた遥が扉を押したときのリアクションです。綾瀬さんって身体を張った演技も凄くいいんですよね。アニメのリファレンス撮影でも真剣に取り組んでいただき、アニメーションも説得力のあるものに仕上がったと思います。そのようなリファレンスを充実させるという所にはこだわりました。

――表情はどのように演出しているんでしょう?
牧野:アニメーションはすべてアニメーターの感性の世界なんです。有効な方法論というのがなく、上手い人がつけるのがいいんです。なのでスタッフィングには徹底的にこだわりました。お願いしたいと思っているアニメーターのスケジュールが空くまで待ったりして。進行には悪影響を与えたんですが…。一番顕著なのが、フェイシャルではないのですが、飛行機が花火の中をかいくぐって、落ちて羽を飛ばされてジェットコースターになる見せ場のシーン。そこは「スカイ・クロラ The Sky Crawlers」の飛行機のアニメーションを殆ど一人で手がけた天才的な大串映二というアニメーターのスケジュールを待って担当してもらってます。2Dアニメの世界ではよくある事なのですが、CGの枠ではなかなかはまらない方法なんです。キャラクター・アニメーションは結局演技なので、その演技を出来る人が必要なんです。

塩田:遥のキャラクターについては、それに加え、IGFXの宮本浩史さんが、この情報量を発見したのも大きいと思います。感情を出す為にそぎ落としていって、この配分を導きだしたのが素晴らしいですね。

■日本的なCGアニメーション手法とは?
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テオの家 © 2009 フジテレビジョン/Production I.G/電通/ポニーキャニオン
――今回ハリウッド的ではない、日本的な方法論でこの映画を制作されたと伺いました。
牧野:一つにはアメリカというよりもピクサーではない手法として2Dアニメーションの技術を積極的に取り入れてます。

塩田:セルとの融合は明らかに日本ぽくさせている最たる物ですね。

牧野:特に背景美術に反映されていて、全てのシーンの背景を美術監督の感性にゆだねています。全体の7割を占めるCG背景も、美術監督・野村正信さんの描いた美術ボードをもとに全カットの背景を制作してます。手描きの絵は、あくまで一人の絵描きのテイストなので、それに向かってみんなが追いかけていき、統一感を図っています。野村さんにアートディレクションは一任して、彼がOKを出すまでCG側が工夫を重ね、世界を創っていってます。

――アートディレクションという事ですが、野村氏のほうでキャラクター・デザインや衣装デザインまで監督されているのですか?
牧野:日本のアニメの特徴でもあるのですが、美術監督は動く物には一切干渉しません。 まずのキャラクターのデザインを行う方がいます。今回「ホッタラケの島」人間世界のキャラクターはヒラタリョウさん、「ホッタラケの島」の住民は石森連さんという方が担当されています。お二人とも30代前半と若手なんですが、彼らの出したリファレンスを一気に追いかけるんです。そのデザインを元にモデリングを行いますがその際にキャラクターの肌色や、身にまとう物の色は、キャラクター専門のカラーデザイナーが担当します(2Dアニメーションでは色彩設計といいます)。

塩田:2Dの世界と3Dの世界を融合させるというところに今回大きな挑戦があったんです。例えばカメラマップだったら、スタジオ・ジブリで経験をつんだ松村智香というスタッフに担当させる事でスピードアップを図ったりしています。ホッタラケの世界にいったん入ると、ほとんどCGだったりするんですが、キービジュアルにそってCGで絵作りをする、絵描きを中心に作業を進めるというのは日本的なんじゃないでしょうか。

――目眩のするような作業量なんですね。実際にキービジュアルから完成の絵までどのようにブラッシュアップしていったんでしょうか?
牧野:テオが住んでいる家を創るのにCG側でかなりの作業を引き受けて、数ヶ月費やしてしまったんですよ。最初は三週間の予定が三ヶ月かかってしまった。でもそのおかげでこの人の絵がこうなるよ、という方程式が出来たんですね。影付けの範囲や、細かいテクニックを習得できたんです。その三ヶ月の間は行き違いもありました。美術監督からすれば、「なんでわかんないの?」、CG側からすれば「いや、絵で描くと簡単かもしれませんが…」というような。でも直接CGの現場に美術監督にきてもらい、実際に画面の前に座ってPhotoshopをつかって、「トタンの質感はこうなんだよ」と一筆いれるだけで、ぐっとよくなる。説得力があるんですね。そういう経緯をへてCGのスタッフ側に絵描きのスキルに対するリスペクトがだんだん生まれてきました。その後はキービジュアルがラフな段階でも完成イメージまでもっていく事ができるようになりました。

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© 2009 フジテレビジョン/Production I.G/電通/ポニーキャニオン

――丁寧に創られてますね。また2Dと3Dの制作現場でこのような壁があったのにも驚きです。
牧野:使っている言語も違えば、スケジュール感もまるで違う。CGだと1分に数ヶ月かけたりするんですが、2Dでは一話22分もあるテレビアニメを2~3ヶ月かけて制作しています。

塩田:プロダクション・デザイン、イメージボードからスタートして、それを3Dに置き換え、アーティストとインタラクションしていくプロセスはピクサーなどは普通にやっていて、よく「アート・オブ・ピクサー」とかの本とか見かけますよね。なので僕たちのような、もしくはそれ以上の丁寧な仕事をしているんです。日本の3DCGの映画の世界って若いというか、無いんですよね。キャリアがCGから始まったという人が結構多いので、成熟したプリプロダクションの人材が僕らの世界にいないんですね。今回は歴史のある2Dの世界、半端なく画力のある方、造詣の深い方たちのお知恵を拝借し、3Dに反映できたというか、短い期間で成熟したパイプラインが構築出来たんじゃないでしょうか。2Dの世界も3DCGでどんな事ができるか可能性を垣間見れたんじゃないかと思ってます。多分ここで生み出されたものっていうのは、凄い短期間で仕上げたって言うのもありますが、スタート地点にやっとたったようなものだと思ってます。世界レベルで活躍するには何が必要か、どれだけ手間ひまかけなくちゃいけないかというところに到達出来たと思います。

牧野:僕たちが心がけた事のひとつにメインスタッフそれぞれの担当領域を侵犯しないという事がありました。逆に言うとアートディレクションは野村正信さんが全てをにぎっていて僕らはそれを追いかける。アニメーションに関しては塩谷さんの演出を追いかける。いわゆるダブルディレクションをしないということです。テオの家に三ヶ月かかったのも無駄に思えるかもしれませんが、必要な無駄だったんです。ポリゴンで背景をつくるとここまでいけるという野村さんとの信頼関係もそうして出来上がってきたんです。塩谷さんとの作業も同様に深めていきました。

――アニメーション映画では演出と監督とCG監督と、監督業が細分化されてますが、それぞれがどこまでやっているのか教えてください。
牧野:アニメの世界は、分業制なんです。絵作りに対する作業量が膨大すぎて、すべてを一人が司るのは大変なんです。世界感を創ってどんな映画にするのかという骨子、脚本、デザインをきめるのは監督。各カットを現場で実現していくディレクションは演出が担当します。このいわゆる現場監督はI.Gさんの若手ホープの演出家であり、非常に優秀な原画マンでもある塩谷さんが担当されてます。映画の中で最も人気のあるキャラクター、コットンのデザインも手がけてます。映画「スカイ・クロラ The Sky Crawlers」で非常にインパクトのある仕事をされた方で、キャラクターが新聞を奇麗に折り畳むシーンがあったんですが、あの原画を描いたのも塩谷さんなんです。アニメーションに対する想いが演出家として映画一本分しっかりある方で、それをCGの言語に置き換えて現場をディレクションするのが、長崎の担当するCG監督なんです。まともにやろうとすると非常に衝突の置きやすい座組みかもしれないのですが、最初に打ち合わせで擦り合わせから、長く共に過ごす時間を作りました。最後は言わなくても判るというレベルまでいったのですが、人間同士の信頼関係が今回の映画のクオリティに繋がっていると思います。それは一朝一夕にはできない事なんです。

――人間のコミュニケーションでも2Dと3Dの融合がなされたんですね。他に特筆すべき制作話はありますか?
塩田:アニメーションの作業分担ですね。

牧野:さっきの話ですが、上手い人がつけないと魅力がでないというのは如実にあるんですよ。上手い人ができるだけ多くの主要キャラを担当できるようにする為に、髪の毛や衣服の揺れ、そしてモブキャラなどの周辺的アニメーションを分業化したんです。通常、そのカットのアニメーションは全て一人のアニメーターが担当するものなんですが、とにかく遥とテオの魅力を最大限にもっていく為、プライマリー(主要キャラの基本芝居)とセカンダリー(周辺的アニメーション)とにアニメーターを分けたんです。その結果、上手い人が遥やテオの中心的アニメーションをじっくり手がけることで、クオリティの底上げが出来たと思っています。

塩田:アメリカだとキャラクター別にアニメーターを分ける分業制はよくやっているけれど、一つのキャラクターに対して難度の高いアニメーション(プライマリー)とそうでないセカンダリーに分けるというのはやっていないんじゃないでしょうか。

――表情はプライマリーが、服や髪の揺れなどはセカンダリーがやっていったという事なんですね。
塩田:一番美しいのはPhotoshopのレイヤー機能のようなアニメーション用のレイヤー機能をつかって弊社で開発している制作インフラに取り込んだ骨組みを作って、予算、クオリティを維持していく事ですね。日本は特に阿吽の呼吸が通じるので、今までなんとかやって来れていたんだと思いますが、CG産業の成熟を考えると、このような分業制を取り入れていくべきじゃないでしょうか。

牧野:これは人材を育成するスキームにもなるんです。

塩田:この導入に伴い、セカンダリーを担当させられたアニメーターはやっぱり気分がよくないわけです。今まではカット内の全てをまかされてたのに、なんでひらひらばっかり?!とね。でも成熟した組織の中でやっていく為には自分の立ち位置を認識する事と、次のステップが明確になる事が必要。目標ができてくるはずなんです。

牧野:CG表現の新しい試みというところでいうと、もっている力、技術を最大限発揮させたという点ですね。今回関わったCG会社が全社結集して出来る事をちゃんとやって、これだけのクオリティを結果として出せたという事について、CG会社は誇りをもっていいと思うんです。今回、東映アニメーションさんやダンデライオンさんも参加しているのですが、彼らのもっている技術でモブ配置をするものがあるんです。町中にうわっと人を配置し、設定パラメーターによってボタン一つでアニメーションさせるツールなんですが、それを今回のプロジェクトで拠出してくれたんです。ただしアニメーションを流し込む為に、対象のモデルも、ホッタラケで使用している仕様ではだめで、メッシュの数を減らした物が必要なんです。町にあふれるキャラクターをつくるだけでも一杯一杯だったのですが、その上この手間も追加されるという事になったんです。それをジーニーズさんが引き受けてくれて、リグ等の追加作業はポリゴン・ピクチュアズが担当して、更に東映アニメーションさんのツールをテクニカルディレクター保科功がチューンアップし、モブを扱う各社に提供したんです。これはポリゴンピクチュアズだけでは出来なかった事です。東映アニメーションさん、ジーニーズさん、ダンテライオンさんらのもっている技術を拠出し合ったんですね。この映画は、国内でも名だたるCG会社が作品の求心力のもと、技術や負担をシェアして完成させたものなんです。

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© 2009 フジテレビジョン/Production I.G/電通/ポニーキャニオン
――オープンソース的なものが起こった現場だったんですね。
塩田:本当の意味でのオープンソースを行うにはまだ日本は成熟していないと思います。ただ、今プロジェクトにおいて現場ではこういったことなしでは無理な事も多かった。日本では150名を超えるCG会社は3つくらいしかなく、そのどれもが地価の高い東京に集中している。今後この手の大作を量産していく為にも、日本に合った新しい方法を見つけなくてはいけないと思ってます。 日本市場ではCGアニメーションでこれくらいの大規模な長編プロジェクトというのが少なく、なんとかなっていたんですね。今回培ったノウハウや方法論を更に改善、成長させていくには継続が必要です。ピクサーの例をみてみてもプロジェクトをやる度に倍々で技術革新が成され、制作力が上がってきてるんですね。僕たちCGプロダクションの一番恐れている事は、CGアニメのこういったプロジェクトが途絶えてしまう事です。「ホッタラケの島」の事例のように、この期間、予算、クオリティで物をつくれているプロダクションって世界でも他にないと思います。友人のジム・モリス(ピクサーのジェネラル・マネージャー)もトレーラーをみて「凄い」と言ってくれていて、提供している付加価値は高いと思うんです。そこに投資してもらえるようなマインドになってくるとプロジェクトも増えるのかと思っています。

牧野:CGアニメが可能性を秘めたまま、じりじり留ってる状態でなく、ディズニーのアニメよりピクサーの「トイ・ストーリー」の次回作が楽しみ!というような、日本のCG界にもいいスパイラルが定着するといいなと思っています。

「スカイ・クロラ The Sky Crawlers」で歩み寄り、「ホッタラケの島~遥と魔法の鏡~」では完全に融合した2Dと3Dの世界。世界で日本にしか生み出せないCG作品の第一歩を彼らが踏み出した。今回は絵作りだけだが、今後ポリゴン・ピクチュアズではそれ以上のものを手掛けたいそう。日本のCG界の可能性を秘めた本作品、これからのCG界を担う次世代のためにも、ぜひ劇場に足を運んで欲しい。

■映画「ホッタラケの島~遥と魔法の鏡~
公開中
監督:佐藤信介
配給 : 東宝
牧野さんに5つの質問 一問一答
Question 1: 影響を受けたものを教えてください
手塚治虫の漫画
Question 2: この職に就いたきっかけは?
「イノセンス」のオープニングを観て
Question 3: 一番好きな映画は何ですか?
七人の侍
Question 4: 作業場のまわりに必ず置いているものベスト3は?
携帯、時計、万年筆
Question5: 今おもしろいもの/事って何ですか?
落語をiPodで聞くこと
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