Behind The Scene vol.09|ニコグラフィックス 泰永優子氏
2009.01.06.Tue
Category : Special
泰永優子氏といえば、村井達雄氏と仙台の大学在学時に結成した2人組の映像ユニット「
ニコグラフィックス」の映像クリエイターだが、その魅力といえば自身が描く鉛筆のタッチを生かした映像ではないか。ロックバンド「ストレイテナー」のシングル「BERSERKER TUNE」では紙に鉛筆で描いたイラストをスキャンしたアニメーションなど、暖かいタッチの映像作品が印象的だ。一方、北海道生まれの人気キャラクター「まりもっこり」をコマ撮りアニメで実現した映像作品「
まりもっこり〜ず」や、3人組音楽バンド「NIRGILIS」のシングル「Brand New Day」ではトランポリン選手・中田大輔選手のジャンプを16台のカメラでタイムスライス+ハイスピード撮影して大胆な映像で話題を集めるなど、個人としてニコグラフィックスとして幅広い手法のディレクションが注目を集めている。
■出会いが映像を目指すきっかけとなった
「まりもっこり〜ず」 (c)2008 KYOWA・JVC Entertainment Company, LTD.
泰永氏が映像業界で活躍するきっかけはミュージックビデオやコマーシャルなどの映像ディレクターとして活躍している
児玉裕一氏との出会いだった。映像クリエイターの多くは最初から業界を特別目指していたわけではなく、無我夢中で突き進んだらそこが映像業界だったなんて話をよく聞くが、泰永氏も特に学生時代から映像業界を目指していたわけではなかったという。
学生時代を仙台で過ごしていた2001年のこと。その当時は友人とデザインユニットを結成してはTシャツなどのデザインをして満足していたような感じだったという。そんな時に友人の何気ない誘いで仙台市の複合文化施設「せんだいメディアテーク」のCG展で流すための映像を編集するボランティアに参加し、そこで講師としてきていた児玉氏と出会う。「本当に映像編集は初めて。そのときは覚えるのに必死だった」という泰永氏は、イベントで流す作家たちの作品を順番に並べてクレジットを入れていくという編集作業をここで初めて体験した。
児玉氏との出会いはボランティアだけで終わることがなかった。その後児玉氏から「東京に行くことが決まっているんだけれども、もしよかったら一緒にCMを作ってみないか」と声をかけてもらえたのだ。恐らく、泰永氏はボランティアで見た映像のエネルギーにどんどんとひかれ、児玉氏もボランティアで活躍する泰永氏たちの姿勢やセンスに目が留まったからこそ誘うことにしたのではないだろうか。その後の展開をこう語る。
「上京した児玉さんから ある日映像の連番データとペンタブレットをプレゼントされたんです」と語る。つまり、これを使ってマスクを抜いてくれということだったのだ。映像業界にかかわる若手クリエイターが必ず経験する「ペンタブレットでマスク抜き」の作業だが、泰永氏もこうした作業で映像制作の基礎やペンタブレットの操作を習得していったという。
今では泰永氏のデスクを見ると液晶ペンタブレットCintiq 21UXとペンタブレットIntuos3の2台を同時に使っていてマウスがない。そのプレゼントがきっかけで、すっかりペンタブレットに溶け込み、PCの操作や作画をすべてペンタブレットでこなしている。ペンタブレットを2種類同時に使いこなすなんてなかなか豪華な例ではないか。
■子供の描く絵を目指したイラストレーション
ペンタブレット2台を導入した作業現場
泰永氏は2009年2月4日にリリースされるテイ・トウワのニューアルバム「BIG FUN」の初回限定盤・DVDに収録されるMVのイラストを担当した。曲は11月3日から先行配信されている「Mind Wall」で、メロディ、リズムどれも気持ちがよくてとにかくかっこいい楽曲だ。このMVのアニメーションの元となるすべての静止画を泰永氏が作画しているのだが、そのイラストが実にユニーク。「想像で描いたのでなんの鳥と言われると困ります。」と言う通り、鳥であれば羽がタイルで、目はサングラス。とにかく個性が際立っている。
それもそのはず。今回のMVを指揮する中村剛監督が目指した映像は「子供が見る夢、イメージが断片的につながっていくビデオ」。絵コンテは監督が描いたかなり詳細なものがあるが、監督も想像で描いていて、泰永氏がこれを見てさらに自分の中のイメージで描いていく。
「監督から“子供の描く絵に似た現実に忠実ではない絵、子供らしい絵を描いてくれ”といわれていました。私の子供のような絵がちょうどよかったのかもしれないですね。だから、鳥とかUFOとか車とか実物の写真を見ながら描くのではなくて、私の中の想像のイメージを忠実に描いていきます。すると、リアルなんだけれどもリアルではない。不思議な絵ができるのですね。」
泰永氏のPCのデスクトップに自分の絵が設定されているが、この絵も自分のタッチをコントロールする工夫だっだ。
「今回の映像のコンセプトはあくまでも"子供らしい絵"です。しかし、長い時間描いているとどんどん描き慣れてしまって子供っぽくない、まとまった絵になってしまうのです。そこで自分のタッチが変わらないようにデスクトップに自分の描いた理想的な絵を常に表示して、意識しながら描いています。」
■Cintiq 21UXでワークフローの短縮化
中村監督の目指すアニメーションは完全な3DでもAfter Effectsで作ったものでも手書きのアニメーションでもない。すべてが混ざった感じのアニメーションだった。動きは映像クリエイティブチーム「Caviar」のスタッフ、田向潤氏が3DやAfter Effectsで組んで動かすが、場合によっては泰永氏のほうで味が出るように細かく連番を1枚ずつ手で描いて提供する場合もある。
作業に入る前にペースを試算すると、約40シーンのイラストや先に紹介した部分的なアニメーションの作画をするには、一日一枚のペースで描き終えていかなければならないことが分かった。このペースを実現するには従来のイラスト制作のように紙にペンで描いてスキャンしていては効率は悪いし、男の子が好きそうな機械っぽいシーンだと作画に3日ぐらいかかることが想定された。そこで作業時間を短縮させるためにツールとして選んだのが「Corel Painter X」と「Cintiq 21UX」だった。
Painterはブラシ機能と画材表現力に優れており、デジタル上でもアナログに描いたようなナチュラルな表現に定評のあるツールで、一方Cintiq 21UXは紙に描くようにペンで直接液晶画面へダイレクト入力ができる21.3インチ液晶モニタを搭載した液晶ペンタブレットだ。泰永氏は純粋なアナログ派のクリエイターだが、初めて使うこの2つのツールの組み合わせはまったくアナログと感覚が一緒で、新しい環境にすんなりと溶け込めたという。
特にCintiq 21UXを実際に使ってみたうえで特に気に入ったポイントとして最初に挙げたのは「画面の回転機構」だ。多くのクリエイターは長い線を描く時や大きい曲線を描く場合、自分の手の癖というものがあるため、画面に対して並行に引くよりも原稿を斜めに回転させて引いたほうがきれいな線が引ける場合が多い。Cintiq 21UXには液晶モニタ部分を物理的に回転させる機能が搭載されているので、各自の癖に合わせて最適な角度で作画することが可能だ。
「Painterにもキャンバスをソフトで回転させる機能が搭載されていますが、数クリック分の工程を経なければなならく、思考が分断されてしまいます。Cintiq 21UXは物理的に画面を回転できるので思考を止めることがありません。」
Cintiq 21UXを使い始めてからストレスの軽減も感じられたという。従来のIntuosシリーズのような視線と手元が別のペンタブレットだとどんなに慣れていても引きたい線が引けないことがある。Cintiq 21UXを使うと視線と手元が同じなので線を描き直す回数は確実に減り、集中力が長くなったという。
「“腕はもうちょっと太くしたほうがいい”と言われたら、すぐにデータを修正してまた確認してもらうことができます。こういう確認の工程でも時間の短縮になりますね。」
Cintiq 21UXとの出会いをきっかけに絵コンテもPhotoshopで描くようになったという。クリエイターにとってペーパーレス化は予想以上に効果が高そうだ。
■Cintiq 21UXだから気分が盛り上がる
TOWA TEI "Mind Wall feat. Miho Hatori" Dir/Pr: Takeshi Nakamura (CAVIAR)
|Prod: CAVIAR|Illu : Yuko Yasunaga (nicographics)|VFX : Jun Tamukai (CAVIAR)
(C) Columbia Music Entertainment, Inc.
Cintiq 21UXは、デジタルの作画環境の中でもっとも没頭できる最高のデジタルデバイスだ。手元や視線がアナログと同じスタイルになるというだけでなく、気持ちも作画と一体になれる。泰永氏はCintiq 21UXを使ったときの気持ちの高まりをこのように語る。
「Cintiq 21UXを使っていると夢中になってしまいますね。あと気分が乗ってきたら椅子から立ち上がって描いてみたりすることもあります。本当にその時の気持ちをぶつけて作業ができるツールですね。」
アナログとデジタルがシームレスになれる。そのメリットを生かして、今後の作品づくりの方向性を語ってくれた。
「Cintiq 21UXを使えば気軽にイラストを描いてAfter Effectsで動きを付けることが可能になるので、自分で描いたイラストをどんどんと動かしていきたいですね。私は描いた人のタッチを生かした手描き風のアニメが好きなので、実写とそういうタッチを混ぜたような新しい作品を実現したいなと思っています」
Cintiq 21UX
ワコム社の数あるペンタブレットの中でも最高級機種であるCintiq21UX。21.3型モニタを搭載した液晶ペンタブレットで直接モニタに描画が可能。Intous3テクノロジを採用しているので、高精度、高分解能、高速読み取りはもちろん、1,024レベル筆圧機能のほか、Intuos3用の各種オプションの利用が可能だ。
最上位モデル「Cintiq 21UX」
(全文はこちら)
■TOWA TEI「BIG FUN」
2009年2月4日発売
発売:hugColumbia
初回限定盤・DVD付 豪華プレミアムセット ステッカー付
¥3.300- (tax in) COZP-350/351
通常盤(CD:全10曲 初回ステッカー付)
¥2.800- (tax in) COCP-35351
BIG FUN特設サイト
http://columbia.jp/towatei
■TOWA TEI プロフィール
DJ/音楽プロデューサー。1990年、"ディー・ライト"のメンバーとして米エレクトラよりデビュー。2007
年、音楽プロダクションhuginc. を、コロムビアミュージックエンタテインメントとhugColumbiaを立ち上げ
る。DJやプロデューサーとしての活躍の他にも、数々のヒット商品のCM制作やブランディングに携わり、映画の音楽監修や携帯電話のサウンドプロデュース、さらには商品開発を手がけるなど、活動は多岐に渡る。
www.towatei.com
www.myspace.com/towatei
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