世界で通用するということ。映像作家 関根光才インタビュー
2008.12.17.Wed
Category : Features / Interview

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関根光才プロフィール:ディレクター。1976年生まれ。2000年、CM制作会社スプーンに入社。プロダクションマネージャーを経た後、演出を志してCM制作会社ハットの演出部に移籍。2005年、初監督作品となるショートフィルム「RIGHT PLACE」を出品する。UKのBlink、フランスのLes Producersなど海外プロダクションに所属し、2008年2月より、フリーランスの映像ディレクターとして活躍中。代表作にDiesel「Daughter」、CMではNEC「Find Your Gift」など。
「日本から発信されるものが海外よりつまらないと評価されるのは悔しいんです」と映像作家・関根光才は言う。初めて制作したショートフィルム「RIGHT PLACE」でいきなり海外のアワードを多数獲得する華々しいデビューを飾った関根氏。その後、日本国内で多数のCMを手がけるほか、UK、フランス、ドイツなど海外プロダクションにも所属。2008年度はアメリカの広告誌「Boards」にて「Directors To Watch」に選出されるなど、ワールドワイドに活躍の場を広げている。関根氏の国境を越える作品の魅力とは?

■とにかくディレクターになりたかった
芸術一家に育った関根氏は、少しの反発と「考えることを考えたい」という想いから哲学の道に進んだものの、幹より葉の末端にこだわる学問に違和感を感じてアメリカに交換留学。留学先で写真やテレビ制作の基礎を学んだ。

「その時に写真より映像のほうが凄いなと思ったんです。帰国後ディレクターになりたくてCM制作会社に入社したんですが、「5年経たないとディレクターはできない」という風習があったんです。それじゃ自分には遅すぎる(笑)。かといって、仕事で忙殺されて自主制作もできない。フィルムで動画を撮りたい情熱を叶えるためには海外のコンペに応募してみようと。会社で「SHOTS」の海外のCMを見て、こういうアイデアがあるものをやりたいと思ったことが大きかったですね」

■海外に名を轟かせたショートフィルム「RIGHT PLACE」
「RIGHT PLACE」 dir: 関根光才
映像専門の教育を受けていない関根氏にとっては、脚本を書くのも監督も全く初めてのチャレンジだった。「現場では、何を勉強してきたかなんて関係ないんです。死ぬ気でやればどうにかなる」と語るように、そのスキルは制作会社で働くうちに身についたものだという。「毎回準備時間が少ない背水の陣、というのがよかったのかも」と笑う。
そして応募した海外コンペ「AdFest」から生まれた作品がショートフィルム「RIGHT PLACE」。コンビニエンスストアで働く、異常なほどきっちりしている男性の物語。日本を舞台としつつもどこか無国籍な雰囲気が漂う。関根氏の狙いは、今のリアルな東京を切り取って"日本っぽい"感じを海外に伝えることだった。

「日本の映画はローコン(低コントラスト)が多いので、日本っぽさを出すために色を浅くしています。アングルもかなりこだわって、異常にきっちりさせた作品です。グローバルに届けたかったので、同時代の感覚は残しつつ、国籍があいまいな"どこの監督が撮ったのかわからない"感を同時に狙ってますね。出身が東京なので、僕の原風景っていうと「RIGHT PLACE」に出てくるような夜中のコンビニとかなんです。」

「RIGHT PLACE」はRESFEST、カンヌ国際広告祭、ニューヨーク短編映画祭、onedotzero10、エジンバラ映画祭など世界の映画祭を席巻。次の監督作品、Diesel「Daughter」ではカンヌ国際広告祭にて3部門同時受賞を果たした。これほどまでに世界で賞賛を受ける、関根氏の国際感覚のヒミツは、なんと家庭にあるという。

「僕の家で外国人の下宿を行っていて、いろんな国の人がいるのが当たり前だった影響なのか、物事をユニバーサルに見る癖があるんです。日本だけで認められても意味がないというか。単純に、日本から発信されるものが海外よりつまらないとか劣って見えるのが悔しいんですよ。日本のディレクターはこういうものを作れるということを発信していきたい。」
「Daugther」 dir: 関根光才


■関根作品の幹はコンセプト
JEMAPUR「Maledict Car」 dir: 関根光才
「反転した素材を組み合わせるという作業は単純に見えますが、編集にものすごい時間がかかるんです。大量に撮影したフッテージからAvid、 Final Cutに入れて編集したところ、Avidの処理が追いつかない。しかもHDですからね。結局ハイスペック・マシンで合成・編集して、発狂するかと思いましたよ(笑)」
関根氏の最新作品においても、ユニバーサルな感覚が生きている。W+K東京LABのアーティストJEMAPURのMV「Maledict Car」は東京の風景を反転、パターン化し、ゆるやかなマンダラのように見せる美しい作品。海外でも高い評価を受けている。

「作品を制作する時、僕はコンセプト・アートのように意味をすごく大切にするんです。今回も企画を提出した時、ED HOLDSWORTH(エド・ホールズワース)の作品に似ていると言われたんですが、やりたいことの意味が全く違うのでこれで行こうと。東京をパターン化して見せようと考えたんですよね。東京って何だろう?っていうことを、記号化することによって発見して欲しい、何となく感じてほしい。旅をした人が東京を見た記憶とか、東京に住んでる人がもう一度考えるようなきっかけを目指しました」

「Imagine! Japan sings for Turkey」 dir: 関根光才
2008年5月10日に開催された映像のイベント「Pangea Day(パンゲアデイ)」のための作品「Imagine! Japan sings for Turkey」。関根氏は明治時代に、和歌山県で難破したトルコの船「エルトゥールル号」を日本が助けた事件を忘れなかったトルコが、イラン・イラク戦争で危機に陥った日本人を助けたエピソードを元にトルコ国歌を題材として選んだ。「ボランティアの仕事なので、好きなことをやりました。このエピソードは知る人ぞ知る話だったので、この作品から知って、トルコで誰かと仲良くなるとか、そういうことができたらいいなと。」


■世界で通用するということ
NECのCM「Find Your Gift」 dir: 関根光才
様々なCMを手がけてきた関根氏。コミカルなもの、CGを使ったもの、様々な作風だがどれも関根氏らしさが出ている。共通しているのは、どれもウィットに富んだ、ひねった視点。作品ごとにそのウィットををストーリーやアート・ディレクションで表現している。さまざまなメディアで面白い作品を作り続ける秘訣とはなんだろう?

「僕が思うに、CMとショートフィルムの企画ってすごく近いんです。長編とショートフィルムより近いですね。特に最後にオチとか、やられた!って感じさせる事が秘訣だと思うんです。映画のように長い時間をかけて人の心を動かすのとは違う手法です」

関根氏にとって、CMとは資金・設備面で環境が整ったところで実験的なことを行うことができる場だそう。キャスティング中心の日本のCM界とは逆に、海外ではアイデアやコンセプトが重視される。

「そういうことを実現した第一人者は、野田凪さんや辻川幸一郎さんだと思います。皆さんに共通しているのは、国境を意識してないということ。その人の性質にもよりますけど、自分にやりたいことがあって、それを完結させてくれる所であれば国も問わないのではないでしょうか」

海外との仕事を成功させる秘訣は、、コミュニケーションを十分にとることだという。やはり海外での仕事には苦労も多いようだ。

「演出は人とのコミュニケーションが一番重要です。そのためには語学力は不可欠です。また、アイデアが良くても企画が海外のフォーマットに合わなかったり、予算の見積もり方でコンペに負けたこともあります。コミュニケーションの大事さ、企画書の意味を改めて知りました」

Adidas Originals「safety wear」 dir: 関根光才
Adidas Originals のグローバルCM。礼儀正しい日本人のために、代理で恋人に別れを告げる「別れ屋」の男の物語。
また、関根氏は日本を舞台にした海外撮影が増えて欲しいと語る。

「普段、海外のチームが日本でハッピーに撮影したという話をあまり聞かないんですが、僕がディレクションしたUKのプロダクションの仕事で、珍しく成功したことがあって。それもやっぱりコミュニケーションが鍵だったと思うんです。撮影前にいろんな会話をしていた積み重ねが、信頼して任せてくれる事につながったと思います。海外のクルーが日本に来るのって、今までの事例が少ないから彼らはすごく不安だと思うんです。でも実際には日本のスタッフくらい働くスタッフはいませんよ!海外クルーと一緒にレベルの高い仕事をするためにも、実例を増やしていかないと普通に撮影する状況は生まれません」

経済・政治の世界でも至るところで叫ばれるグローバル化。でも大切なのはコミュニケーションの積み重ねで生まれる信頼関係なのだろう。世界を目指すクリエイターが増えていくことを願う。ゆくゆくは、長編映画を撮りたいと語る関根氏。「映画って人生を変える力がありますよね。長い時間をかけて物語るということの意味とかをすごく考えています」とのこと。きっと素晴らしい映画になるはず。期待してます!

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