Behind The Scene vol.06|teevee graphics
2008.09.16.Tue
Category : Special
映像に関心を持っていない人でも
teevee graphicsがディレクションした映像作品の名前を聞けば「見たことがある!」と思う人が多いのではないか。CMだったら資生堂「UNO」や「INTEGRATE」、NTTドコモの「N705i amadana」といったメジャー企業を多数ディレクションしている。ミュージックビデオだったらRYUKYUDISKOの「NICEDAY feat.BEATCRUSADERS」は文化庁メディア芸術祭2007の審査委員会推薦作品、m-floの「love comes and goes」はMTV VIDEO MUSIC AWARDS 2008 の最優秀グループビデオ賞を受賞するなど、著名なコンぺティションからも高く評価され、少し前の作品になるが、番組のオープニングならテレビ朝日「ニュースステーション」の7代目オープニングタイトル、音楽好きなら音楽チャンネル「MUSIC ON TV」、アニメ好きならアニメ専門の放送局「アニマックス」のステーションIDなどを絶対に見たことがあるはずだ。
■新鮮な驚きを与えてくれる映像制作会社
映像に敏感な人ならばビジュアルディレクターであり映画監督でもある同社代表の小島淳二氏を思い浮かべる人も多いだろう。ミュージックビデオの監督としても数々の名作を生み出してきたことから日本のモーショングラフィックの第一人者と呼ばれたり、お笑いコンビ「ラーメンズ」小林賢太郎氏との映像制作ユニット「NAMIKIBASHI」の映像製作ユニットを結成して“笑いと映像の融合”を試みた作品は国内外から賞賛されている。その評価の高さは、同社が手がけた映像作品を集めてオリジナルDVD「VIDEO VICTIM」シリーズとして発売されているほど、クオリティが高い。
■話題の映像作品を生み出すデュオディレクターチーム
谷篤(Atsushi Tani)プロフィール:
ディレクター。1974年生まれ。武蔵野美術大学建築学科卒業。2001年よりteevee graphicsに参加。
ミュージックビデオ、TVCM、ブロードキャストデザインなどの企画・演出からモーショングラフィックス制作まで、ジャンルを超えて精力的に活動中。最近の主な作品には、キリンジ ”朝焼けは雨のきざし"、SMAP ”ありがとう”、BENNIE K “DISCO先輩”、ファミリーマート "Welcome T-POINT" 、NTT DoCoMo "iD" 、などがある。
teevee graphicsは現在、東京と福岡の2箇所の事務所で制作が行われており、東京は2人のディレクター、アニメーター、CGプロデューサー、マネージャ(技術)の5人、福岡は小島氏、アシスタントの3人で制作が行われている。東京と福岡は距離があるが、ネットワークでギガバイト単位のデータのやり取りもできるようになった現在、電話で連絡を取り合い、共同作業で制作が行われるときもあるという。
そんな小島氏の刺激的なカラーを受け継ぎながらも独自の特色を打ち出し、次々と話題の映像作品をリリースしているのが同社ディレクターの1人、谷篤氏だ。谷氏の映像の特徴といえば、ディレクションだけにとどまらない。谷氏が直接手がけたCGと実写を組み合わせた映像作品は誰もが目を奪われるだろう。SARINAのミュージックビデオ「OUR LOVE」やワコールのCM「style science」など平面が三次元の空間を巻き込んだり、目まぐるしくグラフィックスが変化するような動きにはただ圧倒されるばかりだ。
ワコール"style science" dir: 谷篤
谷氏に空間を活かしたモーショングラフィックスを実現する秘訣を聞いてみると、答えは3DCGソフトの活用にありそうだ。動画関係のツールはAfter Effects、CGのツールはLightWave 3DやPhotoshop、Illustratorなどを使用し、プロジェクトにCGが絡むならば3DCGソフトで素材を作り、どんなプロジェクトでもAfter Effectsで最後はコンポジットする。
モーショングラフィックスっぽいトーンの映像はAfter Effectsで作られていると思われがちだが、CGのモーションに関してはLightWave 3Dで作られている。たとえば、Euphoriaのミュージックビデオ「butterfly track」の目に見えない蝶の軌跡の部分は、軌跡そのものの軌道をLightWave 3Dで曲線の板を曲げて作り、After Effectsで最終的に調整して作られている。
「After Effectsの3Dレイヤーは曲線が作りにくいので、LightWave 3Dで作ったほうが効率的です。もともとAfter Effectsには3Dレイヤーの機能が搭載されていませんでした。私にはその流れが今でもあるせいか、三次元空間はLightWave 3Dで作業します」(谷氏)。
谷氏の作品はついモーショングラフィックスばかりに目がいってしまうが、手書きやフルCGなどほかの表現方法も見逃せない。堀込高樹と堀込泰行のポップ・デュオ、キリンジのミュージックビデオ「朝焼けは雨のきざし」では素敵なメロディにマッチした童話のような世界をフルCGで表現したり、SMAPのミュージックビデオ「ありがとう」では、メンバー5人をレゴブロックの人形パーツのように可愛く表現した作品もある。
euphoria "butterfly track" dir: 谷篤
「昔から実写志向ですよ。もともと人形アニメーションが好きで、自主制作としてコマ撮り風にとれるカメラを購入してクレイアニメにも挑戦したこともあります。大学では建築学科を専攻していて、CGは建築で2次空間みたいなものを提案したくて使い始めたのですが、やってみるとアニメーションがやりたくなり、こちらの業界に移行していきました。いろんな映像の手法を試したいのですね」(谷氏)。
■Cintiqはキャンバスのような感覚
左手は常にキーボードの位置にあり、ショートカットを入力できる
そんな谷氏の映像制作に欠かすことのできないのがペンタブレットだ。谷氏がはじめてペンタブレットと出会ったのはteevee graphicsに参加した2001年のこと。初めて見たとき「なぜタブレット?」と思ったそうだが、絶対座標で動作する利点を生かし、ペン先の感知するエリアを手首の動く範囲に設定すると、手首のスナップだけでカーソルを操作することができたりという直感的な操作性が気に入り、今ではOSの操作からLightWave 3Dの操作までペンタブレットを使用している。LightWave 3Dは筆圧機能などに関連した機能は搭載されていないので純粋なマウスの置き換えになるが、ペンタブレットはマウスよりもクリックやドラッグ操作にかかる手への負担が少ないと言われている。谷氏もこうした効果が気に入って使い続けているのではないか。
キャンバスに絵を描くようなスタイルでCintiqに向かって描画する
そこまでペンタブレットを使いこなしている谷氏だが、21インチ液晶ペンタブレット「Cintiq 21UX」については設置場所から語ってくれた。Cintiqのユーザー間でよく話題になるのがキーボードの配置位置だ。Cintiqユーザーに話を聞いてみると、“モニタを倒して使うユーザー”と“通常の液晶モニタの角度で使うユーザー”の半々に分かれるが、谷氏は倒さずに使うユーザーの1人だ。左手のキーボードのショートカットを軸に姿勢が決められているような印象で、まるでキャンパスに絵を描くような感覚のスタイルでCintiq 21UXに向かって絵を描いていく。Cintiq 21UXは液晶面を時計回りのように回転もできるが、そういった機能を使っていない。
「デッサンでもあまり絵自体を回転させて描くほうではなかったので、この角度が私にとってベストポジションです。私にとってキーボードのショートカットの打ちやすさを考えてこの配置にしました。みんなどういうふうにして使っているのか話を聞きたいですね」(谷氏)。
■デッサンのタッチが再現できる
谷氏のこだわりは、初代Intuosの頃に付属していたペンだ。Cintiqでもクラシックペンという名称でラインアップされている。
Cintiq 21UXを使って最初に良さを感じたのは“直観的な操作”と話す。例えば、LightWave 3Dでカートゥーンタッチのアニメーションをレンダリングするとどうしてもカートゥーンラインが汚くレンダリングされてしまうときがある。そういった場合は、After Effectsのペイント機能でカートゥーンラインを修正するが、Intuosだと手元と視線が別になるので、細かい修正をしようとするとポイントが選択できないのではと感じるときがあった。Cintiq 21UXは液晶面に直接ペンでポイントを選択するので細かい操作をしてもペン先とポインタがずれることはない。
Cintiqの筆圧感知は優れているので、直接After Effectsのペイント機能で手描きっぽいアニメーションも直接制作が可能だ
もう1つのポイントは手描きのような書き味と優れた筆圧感知機能だ。谷氏は、デッサンのような微妙なタッチを直接PCで描くことができないと思っていたが、Cintiq 21UXを使えば鉛筆で描いたような柔らかいタッチが再現できることに驚いたという。
「いままで使っていたのは初代のIntuosなのですが、それよりも全然精度が上がっているのがすぐに体感できました。紙に描いているのとほぼ変わらない感覚は凄いですね。私はデッサンっぽいタッチが好きなのですが、あのタッチがCintiq 21UXだと再現できるのが嬉しいです」(谷氏)。
現在、絵コンテを描く際は紙とペンを使っており、修正などはスキャニングして行っていたが、これからはCintiqを使って最初から直接描くことも考えているという。
■モニタとしてのクオリティも高い
上:LightWaveの絵を修正中 下:修正完了
動くイラストならばLightWave 3Dで起こすがトーンラインに修正が必要になる場合もある。Cintiqならば直接修正したいポイントをペンで選択できるので、こういった作業が楽にできる
映像制作に関わるクリエイターならば、誰もがモニタの色味についても厳しい目を持っているはずだ。谷氏が現在使用しているモニタは、国内メーカー製のカラーマネージメントに対応した最高峰の液晶モニタだが、輝度が高いせいか赤の再現性が気になる。一方、Cintiq 21UXではこのような違和感を抱くことはなかったという。
「モニタの品質で一番気になるのが赤の発色です。今使っているモニタは発色とか強すぎて明るいのが気になります。Cintiq 21UXの液晶モニタは色に全然不安はなく、むしろ現在使っているカラーマネージメント対応モニタよりもいいように感じます」(谷氏)。
今後、谷氏にディレクターとして企画したい映像を聞いてみると「ストーリーもの」と答えてくれた。いったいどんなセンスに溢れた作品が完成するだろうか。知的でクールな映像や情緒的な可愛さをもった谷氏の映像に今後も注目したい。
Cintiq 21UX
ワコム社の数あるペンタブレットの中でも最高級機種であるCintiq21UX。21.3型モニタを搭載した液晶ペンタブレットで直接モニタに描画が可能。Intous3テクノロジを採用しているので、高精度、高分解能、高速読み取りはもちろん、1,024レベル筆圧機能のほか、Intuos3用の各種オプションの利用が可能だ。
最上位モデル「Cintiq 21UX」
(全文はこちら)
谷篤監督に5つの質問 一問一答
Question 1: 一番影響を受けたものを教えてください
ティム・バートン
Question 2: この職に就いたきっかけは?
ミズヒロ・サビーニのアニメを雑誌でみた
Question 3: 一番好きな映画は何ですか?
スターウォーズ
Question 4: 作業場のまわりに必ず置いているものベスト3は?
おもちゃ(映画系フィギュア)/お茶(Love Body)/イヤホン(ヘッドフォンではな
く)
Question5: 今おもしろいもの/事って何ですか?
オリンピック(水泳の北島康介)
teevee graphics / ティ・ビィ・グラフィックス:1995年3月設立。ディレクター小島淳二・谷篤・田辺秀伸を中心に、CGアニメーター、アシスタントディレクター、デスク・マネージャーの9人のメンバーで構成され、テレビコマーシャル、ミュージックビデオ、ブロードキャストデザイン、ロゴアニメーション、VJなどジャンルを超えて多くの印象的な映像作品を輩出している。また、オリジナルショートフィルムの制作にも積極的に取り組み、その作品はRESFEST(USA)やonedotzero(UK)など海外の映画祭でも注目を集めている。オリジナル作品を収録したDVD ”
VIDEO VICTIM ”は口コミで噂が広まりスマッシュヒットを記録、”
VIDEO VICTIM 2”も絶賛発売中。4月より福岡スタジオが、スタート。