マックス&ロバートがやってきた!日本縦断映像ツアー中
2008.05.23.Fri
Category : Features / Interview
左:ロバート・ザイデル 右:マックス・ハトラー 海外メディアでの評価も高い彼ら。英カルチャー誌Dazed and Confusedの「世界で最もエキサイティングな若手アニメーター三人」(マックス)、「注目すべきディレクター30人」(ロバート)に選ばれた。
今まで彼らの個人作品が上映された映画祭は250以上。映像作家としてそれぞれ活躍するドイツ出身のマックス・ハトラー(ロンドン在住)とロバート・ザイデル(ドイツ・イエーナ在住)。二人がタッグを組んで行う「Hattler Vs Seidel」と題するヴィジュアル・ライブパフォーマンスが現在日本を縦断中。
同じドイツ出身ながら、作風も性格も正反対。音楽活動を背景にもつロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)卒のマックスはRESFEST2006を始め多くの映画祭で話題になったモーショングラフィックス作品「COLLISION」など、グラフィカルでポップな作風。対する生物学を背景に持つロバートはデザインの名門バウハウス(Bauhaus University Weimar)出身で、こちらも多々の受賞歴を誇る映像作品「_grau (gray)」をはじめ緻密で有機的、繊細なエクスペリメンタル映像を手がけている。
二人の出会いは2007年、ドレスデン映画祭のエクスチェンジ・フォーラムにて。ヨーロッパの若いアニメーター15人が集結しコラボレーション・ワークを行う催しだった。二人は意気投合し、ビジュアルパフォーマンスでコラボレーションを始める。「もしファンドが取れたら、日本に行って全部遣っちゃおう」と冗談を言い合うくらい、日本に興味をもっていたら彼ら。念願だった来日は、なんと5週間に渡って23箇所を巡る日本ツアーとなって実現。絶賛ツアー敢行中の二人に作品についてのあれこれを伺った。
「Hattler Vs Seidel」のライブ風景。六本木・スーパーデラックスで5月9日に開催されたスナック永子にて。
―― お互いの作品の第一印象は?
マックス(以下M):ロバートの作品は、デジタルなテクノロジーを有機的に使っていてすごく美しいと思った。モーショングラフィックスの映画祭だと新しいテクノロジーや表現にフォーカスしがちな傾向があるよね。それはそれで美しいんだけど、ロバートの作品にはそれ以上の深みが感じられたんだ。
ロバート(以下R):初めて見たのは「COLLISION」。多くの映画祭等で上映されて話題の作品だった。マックスは、作品ごとにいろんな表現を使っている。僕は驚きとともに、そういった多岐にわたる表現を創作し、再解釈しているマックスにとても興味があった。こうしてコラボレーション出来てうれしく思ってる。
■マックスの代表作「COLLISION」
「COLLISION」 Dir: Max Hattler ちなみにビームスでこのイラストをフィーチャーした
Tシャツを販売中。ムービーは
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―― RESFESTでも上映され、審査員賞を受賞した「COLLISION」はポップなグラフィカルなイメージに対し、タイトルは「衝突」ということですが?
M:「Collision」は政治的なメッセージをグラフィカルな表現に解釈した作品なんだ。RCAの卒業制作で作ったんだけど、半抽象性の表現がテーマだったんだ。またサウンドイメージを有効に生かせるようにデザインした作品。
描いた内容に関してだけど、当時、9・11以降のアメリカにすごく憤りを感じていた。それがきっかけでアメリカと中東のシステムを考えたときに、2つのカルチャーの歴史と国旗デザインの間にある相違点と類似性を探すのが面白いと思ったんだ。もちろん対立はあるけれど、結局それらは人間によって作り出されたもので、最終的には人間的なものを表現したかった。そして、その気持ちを言葉ではなく、モーショングラフィックスによって訴えたいと思ったのがきっかけ。
作品内のブルーはアメリカ国旗、グリーンはイスラム圏の国旗を現わしていて、色に注目するとアメリカの色が中東の色を侵略、イスラム圏の反応が浮き彫りになってくる。
色による侵略が始まる前、バイオハザードのシンボルが出てくるんだ。これは隠しサイン。イスラム圏のシンボル三日月がくるくる回って、バイオハザードを作るんだ。隠しアイコンだから、誰も気づいてないけど(笑)。この作品にはそういったストーリー性があるんだ。
僕はたくさんの表現スタイルを一つの作品の中でミックスすることが好きじゃない。だから「COLLISION」は”シンボリズム”、「Theme For Yellow Kudra」は”一人の男性が踊るだけ”など、テーマをシンプルにすることを一番大切にしている。
■MTVで人気に火がついたエコノミー・ウルフ「THEME FOR YELLOW KUDRA」
「ECONOMY WOLF: THEME FOR YELLOW KUDRA」 Dir: Max Hattler 主演のヨハネスは、普段は故郷のウルムで数学の先生をしている。ムービーは
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―― そのエコノミー・ウルフのMVを初めて見たとき、潔さを感じていましたが、そういうことだったんですね。最初からこういう構想だったんですか?
M:最初は別のシーンも入れる予定だったんだけど、シンプルさを極めることによってより作品に強さが出るからね。
―― 確かに主演のヨハネスはキャラクターがたってますしね。
M:出演しているのは幼稚園からの友達のヨハネス。アメリカに住んでいた時、ハンバーガーを食べすぎたらしくって(笑)、ちょっとぽっちゃりしてドイツに帰ってきた。それで彼を撮ったら面白いんじゃないかと思って。僕の実家の裏の森で、ヒップホップをガンガンに流しながら踊るヨハネスをテスト撮影したりしてたんだ(笑)。それをバンドに見せたら気に入ってくれて。このビデオがMTVで評判になって、第2弾のビデオ「Mount Allen」を制作することになった。ヨハネスがライブに出演した所、バンドよりもヨハネスの方がお客さんに受けちゃって。バンドはちょっと不安に思っているそうだよ(笑)。僕の制作スタイルはいろんな表現があるけれど、取り組み方は一緒なんだ。有機的に作品を仕上げていく、そこで起きたことが次から次に発展していくようにね。
「Mount Allen」 Dir: Max Hattler ちなみに、ヨハネスはすっかりパフォーマンスに目覚めてしまったらしい…。ムービーは
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「HATTLER: NACHTMASCHINE」 Dir: Max Hattler ミュージシャンでマックスの父の「
HATTLER」の曲をフィーチャーした作品。お互いの作品を気に入ったため、コラボレーションした。 ムービーは
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「IKEA: HOUSE OR HOME」 Dir: Max Hattler ただの箱である「HOUSE」と、人が帰る場所「HOME」の違いを描くアニメーション。 「コマーシャルの仕事で人々と共同で働くことを学んで、すごく楽しんだよ。」とマックス。
「drift」 Dir: Max Hattler マックスの最新作。「体に近づいたら、どんな風に見えるだろう?」をテーマにホラーな雰囲気を伝えたかったという。ムービーは
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■オーガニックな質感をCGに取り入れるロバート・ザイデル
「_grau」 Dir: Robert Seidel
| music: heiko tippelt, philipp hirsch ムービーは
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―― ロバート氏にお聞きします。「_grau」は有機的なグラフィックが10分に渡って展開する作品ですが、コンセプトを教えて下さい。
R: 僕は個人的な記憶から作品を作り始めることが多いんだけど、この「グレイ」という作品は、友達との会話がきっかけで生まれた作品。「世の中は白と黒で割り切れる。世の中善悪だ」という友人の発言に対し、僕はその中間=グレイがあると思って。線画やスケッチを有機的に発展させたいと思い、大学を訪ねてリサーチを重ねていたんだ。
ある時、その途中に交通事故に遭ったのがきっかけで個人的な要素をこの作品に入れていこうと思った。そこでレントゲンの写真を撮ったり、よりパーソナルなものを作品に取り入れてみた。最初のカラフルなシーンがその事故を表していて、ライトが飛び散ったりしている様子、記憶を描いている。その後子供時代や過去の記憶が時間的に、空間的にも広がって入り交じっていく。
―― アブストラクトなオブジェクトを描く時、どのようにしての強さや深みを作品に与えますか?
R:僕にとってスケッチは自分自身をクリアにするためのものなんだ。自然や体の一部といった僕にインスピレーションを与えてくる物をスケッチに落とし込み、一つ一つのシンプルなスケッチを合成したり、複雑に組み合わせていく過程で、アイデアを圧縮し、エモーショナルな部分や深み探求している。99%はそこには描かれてないけれど、感じることの出来るものなんだ。花が咲くのを見ると、色や動きに個人的な記憶や感情と繋がる何かを感じたりするよね。スケッチを書くのは作品の半分を占めていて、表現での解決法というよりは作品の準備、リサーチに時間をかけるよ。
僕の作品のイメージははっきりしていないから、人々は僕の作品に何が映っているのかよくわからないかもしれない。ただ感じたり、記憶したり、奇妙なオブジェクトだと思ったり、かつて休暇で見た光景だと思ったりしてくれればいいんだ。作品創りにおいては、美しく、エモーショナルな訴えかけを一番重視しているんだ。
「E3」 Dir: Robert Seidel イギリスへの短期留学時代に描きためたスケッチをもとに制作した。刺激的な海外生活がだんだんと日常化していく過程を描いた。ムービーは
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zero 7 feat. jose gonzalez「Futures」 Dir: Robert Seidel 「Futures」は、ロバート唯一のMV作品。「_grau」がきっかけでオファーがあったが、「MVにしてはあまりに変わっている」という理由でお蔵入りに…。自身で開発したエフェクトを使用している。ムービーは
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■美術館の壁面に映像を投射する「processes: living paintings」
「processes: living paintings」 Dir: Robert Seidel | light designer, technical supervisor: florian licht フィルテック博物館はロバートが小さいころから通っていた博物館。収蔵されている剥製や石を夢中で見ていたそう。
ムービーは
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ロバートの最新プロジェクトは、ドイツの自然史博物館「フィルテック博物館」の100周年記念イベントにて行った「リビング・ペインティング」。35メートル×16メートルの博物館に映像を投射する一夜限りのプロジェクトだ。インスタレーション会場の博物館の外壁に音とシンクロさせて映像を投射し、内部からも窓をライトアップさせるという複雑なオペレーションで行われた。
―― タイトルが「リビング・ペインティング」ですが…。
R:この作品のテーマはリビング・ペインティング(生きている絵画)なんだ。静止画やスケッチは絵画といえるよね。今回のムービも絵画的なアプローチをしている。動く、生きている絵画。この会場は自然史博物館だったから、自然界の過程を表現する5つの絵画(ムービー)を用意したんだ。何かが育ったり、動いたり、歩いたりするような基本的な自然界の要素。そして建物に投影することによって、それ自体も生命を帯びたような演出をしている。
―― 5つの映像と屋内の照明、音をシンクロさせて投射するなんて複雑そうですよね。オペレーションはどうやって?
R:僕ともう一人。彼が3つのプロジェクターとソフトウェアを調整して、ミュージアムの中の光を反応させたりテクニカル部分の担当をした。予算の都合でリハーサルが出来なかったからぶっつけ本番だった。プロジェクターも安物を使っていたから、十分明るく映し出せるか不安だったんだ。だからその周辺の街灯や建物の灯りなど全ての電気を消してもらえるように交渉した。しかも会場の壁にリフォーム用の足場が組まれていたからそれを外すように闘わなければならなかったし…。沢山の不確定要素があって、僕自身最終形が確認できたのが当日だった。当日は2万人の人が見てくれて、みんなすごく楽しんでいたと思う。
■次作映画の内容はトップシークレット?!
マックスとロバート、ライブ風景。Zero7のMV「Futures」でロバートが開発したエフェクト(物をひずませたりするようなエフェクト)を使用したライブパフォーマンス。
―― 今後二人が制作するショートフィルムのプランを教えて下さい。
M:トップシークレット(笑)。共同作業のファーストステップであるライブはラフな感じで、即興形式だね。
R:ライブでは「Futures」のような技法を使っているんだ。ビデオデータをダウンロードしてそれが壊れていると、写っているものが見えたり見えなかったりするよね。そうやってオリジナルの一部分が見え隠れする奇妙な現象を作っている。
M:映画はライブとはもっと違うものになると思う。独DEFA Foundationからファンドを受けて、来年からショートフィルムを作り始める予定だよ。
―― 最後にお二人にお聞きします。日本で見た一番美しい風景は?
M:横浜のランドマークタワーから見た夕日。水平線と大都市が一緒に見えて。
R:日本の食べ物に興味があるんだけど、どれも素晴らしく美しく職人気質を感じる。どれも新鮮でデリカシーがあって、フレッシュでカラフル。渋谷の「東急フードショー」はアートギャラリーみたいだった。ヨーロッパでも食べ物にインスパイアされるけど、ここは違う惑星みたいだ。
グラフィカルなビジュアル表現に興味を持つマックスと、自然と人間の記憶を呼び起こす作品を紡ぐロバート。正反対の二人だけに、その化学反応も強力なものに違いない。両者の個人&コラボレーション作品にともに新作が待ちどおしい!
※日本ツアーの日程については
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5 つの質問 一問一答
Question 1: 一番影響を受けたものを教えてください
マックス:ロイヤル・カレッジ・オブ・アートに行ったこと
ロバート:自然+太陽
Question 2: この職に就いたきっかけは?
マックス:音楽とビジュアル作品への興味の中で育ったこと
ロバート:一生をかけて打ち込めることを探した結果
Question 3: 一番好きな映画は何ですか?
マックス:ビッグ・リボウスキ
ロバート:たくさんありすぎて難しいけど、「ファイトクラブ」
Question 4: 作業場のまわりに必ず置いているものベスト3は?
マックス:甘いもの、エナジードリンク、音楽
ロバート:カオス、水、インターネット
Question5: 今おもしろいもの/事って何ですか?
マックス:東京にいること!
ロバート:日本の食べ物
■プロフィール
・マックス・ハトラー(MAX HATTLER)
1976年ドイツ生まれ、ロンドン在住。英ロイヤル・カレッジ・オブ・アート卒業。いままでにAnnecy、RESFEST、DOTMOVなど、世界中の250以上のフィルムフェスティバルにて作品を上映されている。現在は、アニメーションスタジオBermuda Shortsのディレクターの一人として活躍しながら、
Goldsmiths Collegeでも教鞭を取っている。「Hattler Vs Seidel」はAurora Festivalでパフォ
ーマンスを披露した。
フィルモグラフィ
Drift (イギリス&ドイツ/2007年/3:33)
Striper v0.1 (イギリス/2007年/0:30)
Collision (イギリス/2005年/2:30)
Everything Turns (イギリス/2004年/1:15)
Alpraum (イギリス/2001年/5:00)
コマーシャル&ミュージックビデオ
ET1: Ident (イギリス/2008年/0:20)
IKEA: House or Home (イギリス/2007年/1:00)
Economy Wolf: Mount Allen (イギリス&ドイツ/2007年/3:40)
Economy Wolf: Theme For Yellow Kudra (イギリス&ドイツ/2006年/3:00)
Hattler: Nachtmaschine (イギリス/2005年/4:15)
Hattler: To Bed (イギリス&ドイツ/2003年/3:00)
・ロバート・ザイデル(Robert Seidel)
1977年ドイツ生まれ、イエーナ市在住。Friedrich Schiller University Jenaで生物学を学び始めるが、クリエイティブな領域へと転向し、バウハウスでメディア・デザインを修める。今までにDOTMOV、onedotzeroなど250以上のフィルムフェスティバルの他、Royal Museum of Fine Arts (ベルギー)、ZKM(ドイツ)、Wilhelm-Hack-Museum (ド
イツ)などの世界中の美術館やギャラリーにて作品を上映される。アーティストとしての活動以外にも、ビデオディレクターやジャーナリストも務める。
フィルモグラフィ
appearing disappearance (ドイツ/2007年/0:35)
Futures (ドイツ/2006年/3:58)
winzerla woods (ドイツ/2005年/1:37)
_grau (ドイツ/2004年/10:01)
E3 (ドイツ&イギリス/2002年/3:00)
Lightmare (ドイツ/2001年/4:30)
アーキテクチュアル・プロジェクション
processes: living paintings (100 Years Phyletic Museum Jena, ドイツ/2008年/ 35 x 16メートル)
dive painting #1 (Sleek Magazine, Berlin, ドイツ/2007年/50 x 4メートル)