リアル東京を表現するデザインスタジオPOWER GRAPHIXXの12年
2008.01.02.Wed
Category : +PEOPLE
, Features / Interview
東京・代々木のPGオフィス。内装も自分たちで手がけている。
今や定着しているモーション・グラフィックス。しかし12年ほど前には聞き慣れない言葉だった。
カッコいいグラフィックに時間軸が加わった瞬間、世界の表現方法が変わったと言えよう。
デザインスタジオPOWER GRAPHIXX(以下PG)は今年で結成12年。結成当時の96年からいちはやく
モーショングラフィックを表現に取り入れ、今も第一線で活躍し続けている。
MTVJapanの前身VibeステーションIDなど、彼らの表現はポップでありながらもロジカルな面を持ち、Made in
TOKYOのグラフィックスを数々生みだしてきた。今も結成当時のオリジナルメンバーで活動し、
ますます精力的に活躍の幅を広げているPG。
引っ越して間もない彼らのアジトを訪襲し、これまでの道のりや、デザインと映像の関係について伺った。
■POWER GRAPHIXXプロフィール
WEBサイト
半澤雅仁、永竹弘幸、小松好幸、斉藤順也の4名からなる。
紙媒体、映像、ロゴデザインに加えゲームのパッケージデザインやオープニング映像から家具デザインまで幅広い分野で活動中。
最近の作品にUNIQLO JUMP LONDON、SPACE SHOWER TV MVA 07のメインイメージから映像までのトータルデザイン、
METAL GEAR SOLID PORTABLE OPS(2006)、Karasawaショップサインのデザイン、OMODAKAのミュージッククリップ「Cantata No.147」などがある。
家具デザインの分野においてはfrancfrancのためのオリジナル家電を手がけたほか、
「ISTANA Picnic Folding Chair」ではグッドデザイン賞にノミネートされた。受賞歴:
1999年 Vibe Station IDコンテスト 準グランプリ受賞、
2004年 第8回文化庁メディア芸術祭 アート部門審査員推薦作品
■大学のサークル仲間がプロ集団になるまで
――結成した経緯は?
半澤:96年に結成しました。僕(PG代表、デザイナー)と永竹(デザイナー)が大学の同級生で、何か面白いものを
作ろうかと思って大学の建築系のサークルで
後輩だった小松(映像ディレクター)と斉藤(デザイナー)に声をかけたのが始まりです。
当時Power Mac 7500を永竹が持っていて、Macで
何でも出来るぞ!という呼びかけのもとに集まりました。
――学生の延長線から、仕事としてやっていこうと覚悟を決めたのはいつですか?
半澤:大学院に行きつつ仕事する、という選択肢もありましたけどね。
永竹と話して、この仕事一本でやっていこうと決めたのは卒業のタイミングでした。
卒業したときは放り出されたような感覚で、これからはお気楽な感じでは続けられないんだなと。
MUSIC SHUFFLE(2007) Graphics: Junya Saito / Motion: Yoshiyuki Komatsu
(c)SPACE SHOWER NETWORKS INC.
――当時はどのようなスタイルで仕事をされていたのですか?
半澤:永竹の実家にワンフロア空きがあって、5年くらいそこを借りてメンバー全員が半同居状態で仕事をしていました。
各々部屋を借りるほどお金もないので、タコ部屋(寝室の通称。とても男臭い)で寝起きを共にし、
締切りに追われながら、「この生活はいつまで続くのか」なんて考えてました。でも海外のデザイナーと
、どうやって駆け出しの頃を過ごしてきたかって話になると結構な割合で「若いうちは共同生活」って答え
が返ってくるので、自分達だけじゃないんだなと励みになりました。
小松:SHYNOLAもそうだったよね。
――SHYNOLAはロンドンのはずれで共同生活してたんですよね。二段ベッドの下が机で上がベッドとかで(笑)。
そのころはどんな仕事をされてました?
小松:ほとんどの仕事は知り合いや、その繋がりで依頼されていました。主にイベント関係の仕事で、
印刷物や会場用の映像を制作していました。
――PGはかなり初期からWEBサイトを展開していましたね。
半澤:今となっては当たり前の常時接続・高速回線ではない頃(97~98年頃)だったので、
ポートフォリオをWEB上で快適に見せるにも色々工夫はしていました。 当時から我々に興味を持ってメー
ルをくれるのは外国の方が多かったので、英語をメインに展開していました。そうしてスイスのBuro Destructや
オーストラリアのRINZENなどの面白いデザイナー達と親交ができて、今でも来日したときには飲みに行きます。
ここ数年は日本からのアクセスが増えてきて、英語では伝わりにくい部分があるのでバイリンガルで展開しています。
――モーション・グラフィックスを意識したきっかけは?
半澤:
映像をやり始めた頃はやっぱり自分たちがやりたい方向性がつかめなくって。当時コンピューターで作った映像といえば、
ゲームのオープニング映像(OP)に代表されるリアルな3DCGムービーが主流でした。
でも自分たちが作る映像はこうゆう方向ではない、というのは漠然と思っていたんです。
イギリスのデザイナーズリパブリック(以下DR)が手掛けた映像を見たときに、
これはグラフィックデザインから来た映像だと思ってピンときました。そこからVibeとかの方向に行きましたね。
小松:今のようにインターネットで映像を流したりできなかったので、とにかく情報が少なかったです。
「ワイプアウト(1996年)※アートディレクション(以下AD)はDR」のようにゲームのOPを見てカッコイイな
とは思ってたんですけど、やっぱり決定的だったのは DRの仕事を見てですね。自分では良いものができた、
と思ってもDRを見たらもっとやられたみたいな(笑)。国内というよりも外国、特にUKの動きに影響されていました。
RESFESTに応募したのもその頃です。
――当時、グラフィックをどのように展開したいと考えていましたか?
小松:最初のころは一つの映像に自分のやりたいことを何個も詰め込もうとしてたんです
よ。 1秒間のものを作るのにもボロボロになるような作り方をしてたので、長いものを作るこ
とが考えられなかった。 15秒のものを作るのに1か月かかるくらい。ミュージックビデオを作
ることは自分にとっては壁でしたね。そこで音楽と関わっていきたい思いもありましたし。
モーショングラフィックスって、15秒だったら面白いけど4分だと長いっていう風潮があったの
で。初めて手がけたミュージックビデオはシンバルズの「Higher than the sun」だったんですが、そこで少しづつ
学びました。 15秒で面白いもの、4分でも面白いものっていう使い分けは出てきましたね。
■共同作業の強み
SPACE SHOWER TV MVA 07(2006) AD: Masahito Hanzawa / Dir: Yoshiyuki Komatsu (c)SPACE SHOWER NETWORKS INC.
――PGの強みの一つは、グラフィック・デザイナーと映像作家が同じところにいることですよね。
担当は最初から分かれていたんですか?
小松:もともとデザイン好きな人と映像好きな人に分かれてはいました。まず最初に仕事があって、
受けたもののやり方がわからない。それからどのアプリケーションを使えばこれができるかっていうのを
考えるという(笑)。僕はもともと大学時代映画を撮っていたので、映像に興味はありました。
半澤:どのアプリケーションを使えるかがキーになりましたね(笑)。そういうやり方でやってきて、小松は
アフターエフェクツの本
Adobe After Effects 6.0 パワー・クリエイターズ・ガイド
を出すまでに成長したと。
経験のないアプリケーションを覚えていくときに、
新しい方法が発生するんですよ。そこで得たものが新しい定番になって、出来ることが増えて、
スムーズに作業が進められる。同じプロセスを共有していることはやっぱり強みですね。
――その強みを感じた仕事はありますか?
半澤:昨年の「Space Shower Music Video Awards 07」(以下MVA)ではPGがアートディレクションとデザイン、
映像制作を全て務めました。これまでのMVAではアートディレクション、デザイン、映像などを別々の制作会社が担当していたそうです。
そこをPGならまとめて引き受けられる。クライアントからもイベントのトータルデザインとして、
今までにないほどまとまりが良かったとおっしゃっていただいて、そのときに自分達の強みを改めて感じましたね。
ちなみに08年も同じように手掛けさせていただくことになって、現在制作を進めています。
SPACE SHOWER TV MVA 07(2007)A4 Flyer / AD+D: Masahito Hanzawa / Design Support: Coutworks
(c)SPACE SHOWER NETWORKS INC.
――すごく仲がよさそうですが、過去いろいろと乗り越えてきたんでしょうか??
小松:基本根暗なので(笑)盛大な喧嘩とかしたことがないですね。話がもめても一緒にゲームをやったら仲直りしたり。
半澤:「建築を勉強してきた奴は徹底的にディベートして、問題が解決するまで話し合う。おまえ達もそうだ」っ
て駆け出しの頃お世話になった人に言われたことがあります。でも基本的にはゲームで乗り越えています。
――12年の活動で、PGのターニングポイントになった作品はありますか?
小松:VibeのステーションID以降流れが変わったと思います。認められたことで自信もつきましたし。
半澤:あとは2002年にGAS(現ガスアズインターフェイス)からオリジナル映像作品集「PGDVD」がリリースされたことですね。
作品集を出してからは、見た人からPGの作風を知った上で
「こんな映像を作ってもらいたい」っていう依頼が増えた印象があります。作品集にはクライアントワークのほか、
海外のデザイナーとコラボレーションした作り下ろし映像などを盛り込みました。
――クライアントからのアプローチは変わりました?
半澤:名前と作品がどれだけ露出しているかによって変わってくると思います。
PGの作品が知られるにつれて「パワグラさんにお任せします」という感じのオーダーが増えていきました。
メディアへの露出具合によって自由度が変わるっていうのはあります。最近は仕事の規模的に大きくなっ
てきたこともあり、オーダーベースよりも提案ベースが増えています。
小松:「お任せします」っていう仕事は自分たちもやりやすくて居心地もすごくいいんですけど、
規模も予算もある程度大きいものになってきて、クライアントにより良い提案をするっていう
企画的なものを求められる機会が増えてきました。
半澤:そのタイミングもあって法人化はなるべくしてなったというか。
法人化することでいろいろスムーズに進む面もあります。任せられる仕事が大きくなるにつれて法人化は避けられないと感じ、
現在に至ります。
■広がる表現の舞台
――近年はテレビゲームのフィールドでも活躍されているそうですね?
小松:最初の仕事はPSPのゲーム「METAL GEAR AC!D2」(KONAMI)でした。AC!D2は外伝的な内容なので、
クライアント側がこの作品で従来のゲームとは違った新機軸を出したいと考えていたんです。
KONAMIのディレクターの方に、ぜひPGとやってみたいということで声を掛けて頂きました。
こちらの好きなテイストで映像とメインビジュアルを制作して、PGのデザインがゲームの内容にもフィードバックされました。
半澤:続いてメタルギアの本編、MPOとMPOプラスを制作しました。
まずロゴマークを開発の段階から考えました。採用された後は、そこからOP映像、限定版のパッケージ、サウンドトラック
のビジュアルなどいろいろ作ってひとまとまりの仕事ですね。
――ゲーム用の映像制作は、普段手がけているものと違いはありましたか?
半澤:まずPSPの画面は小さいので、小さくても成立するデザインを作ります。いろいろな仕組み
や容量の問題などの制約をクリアしつつ、短くスキっと見せてタイトルに行くという流れですね。
小松:オープニング映像はMVを作る感覚に非常に近いと感じました。もともとゲーム自体が面白いタイトルだったので、
共感を持ってストーリーを追いながらデザイン、映像に起こしました。メタルギアの他には「みんなのゴルフ5」
のオープニング映像も手掛けています。「みんなのゴルフ5」は企画の段階から参加して、
コンペに通って外部のCGデザイナーと制作したものです。外部のデザイナーと仕事をするのも刺激になりますね。
――グラフィックを映像以外に展開することについては?
半澤:TシャツはユニクロのUTやBEAMS Tなど様々なブランドでかなりの数をやってます。
最近ではスケートボードのデッキやスノーボード、
自転車など。たまに紙とは違うプロダクトに落とし込まれると新鮮で面白いですね。
――携帯電話にモーション・グラフィックが使われることも多いですよね。
斉藤:解像度や容量の制限はありますが、グラフィックを見てもらうきっかけとして良いものだと思います。
携帯のスペックが上がってるので、フラッシュがスムーズに動いたり技術が進歩すればグラフィックも見やすくなりますね。
小松:ムービーで言うなら制限がある中でどうやって逆手にとるかというところなんです。
色数が少なくて、シルエットベースのグラフィックを情報量が少ない中で面白く見せて行く工夫を楽しんでいます。
作る側の自己主張ではなく、毎日見ても飽きの来ないものって何だろうというのを考えています。
"Roundscape" (2005) Motion & Graphics: Yoshiyuki
Komatsu / Music: TKHS
■今後の展開
――それでは今後の展開は?
半澤:現時点では、基本的には発注があって制作するスタンスになっていますが、
これからは例えば自社ブランドや、自分たちでどういうものを作るか決めるところからやりたいなと思っています。
小松:僕の場合は今まで内部のデザインを生かす方向で取り組んできたんですが、
外部のカメラマンや美術の方と絡む上でPGらしい映像とはどういうものなのかを掘り下げていきたいと思っています。
映像もプロジェクションするだけじゃなくて空間として見せるとか、さまざまな表現をしていきたいですね。
永竹:僕はひとつのことやってると飽きちゃうので(笑)。デザイン、映像、
写真など今までやってきたことをまとめて家具デザインに入れ込んでいます。
僕は家具もグラフィック・デザインだと思っているんです。最初は個人名義で制作していましたが、
最近の作品にはPGの署名を入れています。ゆくゆくはPGブランドとして展開できればと思っています。
半澤:今まではPGの中で完結して外側に表現していましたが、これからは手慣れた手法に偏らずに外部の人
とも絡んで新しいことを追及して行きたいと思いますね。
――ありがとうございました。
5 つの質問 一問一答
Question 1: 一番影響を受けたものを教えてください
半澤:80's Thrash Metal
永竹:海外経験(イタリア・ミラノ8年 アメリカ1年)
小松:野球
斉藤:レゴ、理科の授業
Question 2: この職に就いたきっかけは?
半澤:Mac
永竹:Apple Computerとの出会い
小松:大学にあったHi8の編集システム
斉藤:コンピュータ
Question 3: 一番好きな映画は何ですか?
半澤:フルメタルジャケット
永竹:Lost Highway
小松:ピーター・グリーナウェイ全般
斉藤:ダイハード(ブルース・ウイリスの映画)、300
Question 4: 作業場のまわりに必ずおいているものベスト3は?
半澤:ヘッドフォン、DICとPANTONEのカラーチップ、PSP
永竹:セルフロックメジャー、用紙見本帳、EOS5D
小松:XYLITOLガム、PSP、Nintendo DS Lite
斉藤:コンピュータ、計算機、コピックマーカー
Question5: 今おもしろいもの/事って何ですか?
半澤:娘(3歳)の成長過程
永竹:トータルデザイン
小松:Windows
斉藤:マンガ